どこがわかれ道?パート定着のための必須3要素とは?

どこがわかれ道?パート定着のための必須3要素とは?
目次

某ホテル・客室清掃パートに学ぶ「定着」のポイント

前回、人手不足のホテル業界、それも人気があるとはいえない「客室清掃」職において、パートが定着しているホテルの事例をご紹介しました。
【実例】『お掃除のおばちゃん』あつかいは一切なし!客室清掃パートが辞めないホテルで実践していることとは?

それも、実際に同ホテルで働いているパートさん自身にインタビューし、彼女たちの上司であるマネジャーにも聞いたところ、下記がポイントになっていることが分かりました。具体的には、



といったことがポイントになっていたかと思います。


パート定着の必須3要素~相思相愛になるために

実はここには、パート定着の必須3要素が、集約されています。具体的には、以下の3つです。

①働きやすさ・処遇納得度
②コミュニケーション・参加・参画
③やりがい・自己成長

この3つは、私がかつて取材記者として、パート・アルバイトを雇用する企業や、パート・アルバイトで働く人を、多数取材するなかで見出した、「パート・アルバイトさんと相思相愛になるための」ポイントです。逆に言えば、この3つを感じてもらえなければ、パートさんと相思相愛にはなれません。つまり、辞めていってしまいます。特に「よそにいくらでも仕事がある」今は、その傾向が顕著です。



ちなみに、上の図1に示したとおり、この3つがいずれも高いのが「相思相愛ゾーン」。自社がここに位置していれば、そこで働くパート・アルバイトさんは「夫の転勤」「子どもの就学」「学校卒業」など、不可抗力がない限り、辞めることはあまりありません。一方、この3つがいずれも低いのは「危機的ゾーン」。入社して、自社をこのように感じた人は、早々に辞めてしまって当然です。


働く上で「制約のある」人たちのマネジメント・ポイント

ちなみに、この3つは、どれも同じくらい大事です。でも、敢えて「①働きやすさ・処遇納得度」を第一にしているのは、パート・アルバイトさんはそもそも、働く時間に制約がある人たちだからです。家事や育児、あるいは学業など、仕事以外にも「大事な役割」があるため、無理なシフトを押し付けたり、働く時間に融通が持たせられない職場では、そもそも続けていけません。

つまり「働きやすさ」のプライオリティが、正社員に比べて、圧倒的に高いのです。その分、部分的な仕事となりがちで、処遇もそう高くはできないのが普通です。

でも、そこにも「納得度」は必要です。例えば「時給相場が高まり、新規採用できないので、新人パートの募集時時給は上げたけど、先輩パートの時給は据え置いたまま」などは愚の骨頂。先輩パートの「納得」は到底得られません。会社側から「相思相愛」を踏みにじるようなものであり、ベテランスタッフの退職を生んでも、仕方ないでしょう。


パートには「やりがい・自己成長」欲求がない?

一方「③やりがい・自己成長」についてはどうでしょうか。いろいろな企業で話していると、たまに「パート・アルバイトは腰掛仕事。うちには、やりがいを求めたり、自己成長したい人なんていない」と決めてかかっている人を見かけます。でもこれは、大変にもったいない思い込みです。



というのは、やりがいや自己成長は、有名なマズローの欲求5段階説(上の図2参照)の「第4段階 承認欲求」「第5段階 自己実現欲求」に相応するものであり、人の根源的な欲求の一つだからです。

ちなみに「①働きやすさ・処遇納得度」は「第1段階 生理的欲求(寝食が満たされる)」「第2段階 安全欲求(安心して安全に働ける)」に、「②コミュニケーション・参加・参画」は「第3段階 社会的(所属・愛情の)欲求」に相応します。

「③やりがい・自己成長」意識の高いパート・アルバイトさんは、仕事上の工夫をしたり、リーダー的な役割につくことにも積極的です。会社にとって、頼れる戦力になっていってくれます。こうしたパート・アルバイトさんを「育てる気がない」マネジメントは、大変にもったいないことです。

本連載の第二回で、相思相愛な企業の事例としてクリーニング業「喜久屋」さんをご紹介しました。
【実例】3K職場でも人が辞めない理由~相思相愛マネジメント②~
ぜひ、これを読み返してみてください。相思相愛の3要素が見事に内包されていることに、気付いていただけると思います。

次回は、「②コミュニケーション・参加・参画」について定着率を上げるために、コミュニケーションを「仕組み化」する!で詳しくご紹介いたします。

平田 未緒
記事を書いた人
平田 未緒

早稲田大学卒業。1996 年に求人広告企業アイデムに入社。同社人と仕事研究所にて、「人とマネジメント情報誌」の記者・編集者を担当後、編集長を経て、2009 年よりアイデム人と仕事研究所所長。

この間、パート・アルバイト、女性社員の採用・戦力化、CS、ES、評価・賃金・教育制度、モチベーションアップ、マネジメントなどをテーマに、数多くの企業と働く人を取材する。また『パートタイマー白書』の企画・調査等に携わり、現場情報に詳しい。

 2013年に独立し株式会社働きかた研究所を設立。企業に向けて「パート・アルバイトの採用・定着・戦力化」「女性社員の活躍 」等、コンサルティング活動を行う。他に、厚生労働省等各種公的委員会の委員、専門誌への執筆、講演も多数。米国CCE,Inc.認定GCGF-Japanキャリアカウンセラー。一般社団法人エチケット・サービス向上協会理事。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方~「相思相愛」を実現する10ステップマネジメント~』『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(共にPHP研究所)などがある。

働きかた研究所 
http://hatarakikata.co.jp