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親族への承継がうまく進まない理由、第2位は「税金対策」。プロが教える、その対策とは?

専門家コラム

2017.02.07 / 名古屋

島本 広幸

税理士法人ベリーベスト 税理士

事業を維持していくうえで、経営者にとって避けて通れない問題として「事業承継」があります。

事業承継は難しい問題です。子供が継ぐか、誰が継ぐか、廃業するか、選択を誤れば従業員や周りの取引先にも迷惑が及びます。事業承継は相続と違い、利害関係者は家族だけではないのがポイントです。

経営者にとって、事業承継は最も難度の高い経営課題であると同時に、法務・税務・金融などの専門的観点を踏まえて対策を立てなければ、利害関係者から喜ばれる承継は非常に難しいでしょう。

前回昨年6月に事業承継についての記事を投稿させていただき、「事業承継を行う3つの方法」について取り上げました。承継の方法は①親族、②従業員への承継、③M&A です。前回の記事をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。

今回は「①親族」への承継にフォーカスし、その具体的な税金対策についてお話しします。


親族への承継がうまく進まない理由とは


事業承継で悩んでいる中小企業経営者は実に60%超に上ります。中でも、親族に引き継ぎたいと考えている方は全体の70%と非常に高い数字ですが、実際は多くの方がうまく引き継げないと感じています。その理由は下記のグラフの通りです。

規模別の親族に事業を引き継ぐ際の問題



後継者となる者の能力不足を課題に感じる経営者が多い中、「相続税・贈与税の負担」への対策は事業承継を取り組む際の重要な課題となっています。今回は、私の専門である「相続税・贈与税の負担」の対策についてご紹介していきましょう。


「税金対策」は承継の方針を決めたのち速やかに


事業承継は、まず株や土地、建物などの資産評価を行います。その後、誰に承継するかの方針を決め、最適な事業承継プランを考えていきます。この時に登場するのが「税金負担」の問題です。この問題解決は非常に専門的ですので、税理士のアドバイスを取り入れることが重要です。
具体的に、事業承継で取られる税金対策の2つの手法をご紹介します。

1.株価対策

株価対策は、事業承継において必ず取り組むべき対策の1つといえます。
事業承継を進めるに当たり、現経営者の引退に向けた株の移転が必要となります。

M&Aを行うときは、会社が少しでも高く売れたほうが良いので、株価が高い方が嬉しいことですが、子供に継いでもらうときは、株価を下げた方が良いのです。

なぜなら、後継者は社長の地位だけ引き継ぐわけではなく、会社をコントロールするだけの自社株を取得する必要があるため、株を受け継ぐ際に、贈与ならば後継者が負担する贈与税は低くなりますし、売却ならば負担する購入資金が軽く済みます。売却の場合は、現経営者の負担する譲渡税も軽く済むのです。

上記のように「株価を下げる」やり方が効果的なケースとしては、非上場の親族経営の会社で、自分の子供(もしくは親族)に引き継ぎたいと考えている場合です。株価が高額だった際、事業承継にとっては大きな障害となります。

株価を引き下げる方法は、大きく分けて3つあります。



株価計算は複雑ですが、一般的に株価が上がる要因としては、利益と純資産(資産-負債)が多いときです。利益を抑えるための対策としては、退職金積立目的の生命保険の活用、オーナー社長への生前退職金の支給といった手法がよく用いられます。

但し、利益を抑える対策は、今年度の税制改正により、これまでのようなドラスティックな効果が得難くなる可能性があります。

純資産引き下げについては、含み損のある不動産の売却や、高収益部門の譲渡・切り離しといった手法があります。その他にも、配当金の引き下げを株主総会で決議させることや、発行株式自体を増やすといった手法も有効です。

その他の対策ですが、組織再編や種類株の導入その他様々な手法があり、前二者よりも大きな効果が得られることも多く、事業の長期的な発展にも寄与するもので、今や事業承継対策の柱とも言えます。詳細についてはお問い合わせ頂ければご提案いたします。

事業承継には必ず株価対策が必要になりますが、一朝一夕にできるものでもありませんし、現経営者の早世もありうることから、対策は早いに越したことはないでしょう。しかし、効果は非常に大きいので検討するのが良いでしょう。


2.信託の活用

2つ目の対策は、まだそれほど一般的でない信託を活用した手法です。

例えば、A社というオーナー会社があります。現オーナー(父)が株式の大半を持っています。子ども(後継者)に引き継ぐため株式を生前贈与しました。ところが、贈与後に後継者が急に亡くなってしまいました。そうすると、株式はその後継者の配偶者へ相続されることになります。

その配偶者は相続税を払わなければならず、多くの場合はまとまったお金がないため、後継者の妻にとって義理の父親にあたる現オーナーに株式の買い戻しを要求することになります。

自分の子供にあげたものが、巡り巡ってお金を払って自分で買い戻すという大きなトラブルに発展します。

そこで、民事信託を活用することが有効です。事業承継における信託を見ていく前に、信託に関する基本構造をみていきましょう。
下の図1を見てください。信託には、主に委託者、受託者、受益者の3社が存在します。委託者がある特定の目的のために受託者に財産を預け、その利益は受益者が受け取ります。

【図1】



以上を踏まえて、先ほどのケースで、事業承継にあたって自社株式に信託を活用すると図2のようになります。

【図2】



自社株式を保有している現オーナー(父)が、自社株を子供に生前贈与しながらも、議決権は自分の手元に残すなどの設定が可能となります。これは議決権と、配当等の経済的利益を受ける権利が、信託を設定することにより分離したといえます。

また、現オーナー(父)が「民事信託」を活用してその子供(後継者)が亡くなった後の次の後継者(株式の所有者)をあらかじめ決めておくことでトラブルを回避することもできます(受益者連続型信託)。

信託は事業承継の問題を大きく前進させる手法として注目されています。
日本ではまだまだ馴染みが薄い手法ですが、法整備も進み、活用しやすくなっておりますので、ぜひ専門の税理士にご相談下さい。


専門家を上手に活用してスムーズな事業承継を実現する




専門家は事業承継になくてはならない役割を担います。最初にお伝えしましたが、事業承継は最も難度の高い経営課題であると同時に、法務・税務・金融などの専門的知識が必要になります。

これを経営者ひとりで取り組むことは、相当な覚悟を持って臨む必要があります。このような時に、税理士や弁護士などの専門家は、経営者にとって大変心強い存在となるでしょう。

現経営者の突然の早世により、今すぐに判断を迫られ、争いに発展するという最悪のシナリオを迎えないためにも、心配や不安をお持ちの方は、私ども税理士法人ベリーベストまでお気軽にご相談下さい。一緒に「事業承継」問題に取り組んでいきましょう。

筆者プロフィール

島本 広幸
旧株式会社第一勧業銀行(現株式会社みずほ銀行)に入行し、事業承継・組織再編コンサルティング部門の上席部長代理を歴任。融資、債権回収、事業承継、法人の組織再編から信託まで幅広い銀行業務に精通。1997年、2001年には頭取表彰受賞。銀行を退職後、経験を活かし税理士登録。

対銀行コンサルティングと、事業承継・資産承継の実行までのコンサルティングを本当に行えるのは、銀行融資と税務に精通した金融マンと税理士が一番適任であると思います。常にお客様の側で同苦し、ともに喜び、ともに悲しむ、そんな人間臭いコンサルティングを目指しています。

税理士法人ベリーベスト:http://www.vbest-tax.jp/
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