面接率を上げる応募対応の魔法 ~応募の賞味期限は2日~

面接率を上げる応募対応の魔法 ~応募の賞味期限は2日~
目次

応募してから面接設定までのタイムリミットは2日



ツナグ働き方研究所が行った採用プロセス行動調査では、求職者の応募スタイルは「ひとつの求人に応募し、落ちたら次の求人に応募する」が主流でした。

では「次の求人に応募する」までの時間的猶予はどのくらいでしょうか。この「応募の賞味期限」ともいうべき調査項目では、「応募当日」から「2~3日以内の連絡」までの回答が合計で83.2%を占めました。属性でみると複数応募派が多い若年主婦層は「2~3日以内」と回答した割合が87.9%。

一方、本命決め打ち応募派が多いシニア男性層は「2~3日以内」という回答が74.0%と、その差が14ポイントもあります。やはり同時に応募した数と待てる期限には相関関係がみられました。積極的な活動をしている求職者への対応は当然ながら迅速な対応が必要になります。

とにもかくにも2~3日を超えると8割以上の応募が水泡に帰すというのは、けっこうシビアな結果です。掲載期間が1週間という求人メディアが多いなか、掲載終了後に吟味してまとめて対応しよう、では間に合わないのです。


キャンセルしたことがあるのは33%

なんらかの理由で面接をキャンセルしたことのある割合は33%。

その理由で圧倒的なのが「より興味がある他社で採用が決まったから」という回答で55.8%。

次に「その企業・店舗に興味がなくなったから」が19.0%、

「応募後の最初の連絡(面接設定の連絡)が遅かったから」が17.1%と続きます。

対応スピードが直接的な原因となっての面接キャンセルは、それほど多くありませんが、気になるのが多数を占める「他社で採用が決まった」という項目です。

「複数の求人に並行して応募する」割合自体は全体の15.8%にすぎませんでしたから、文字どおり本命が他にあって他社に行ったというパターンは、実は意外と少ないはず。

むしろ迅速な面接設定対応ができなかったことによって他社への応募に切り替えたと考える方が自然かもしれません。現に連絡が遅いイコール不採用、と感じるという応募者の声が多数ありました。やはり応募対応の初動スピードは、採用プロセスにおいて極めて重要なポイントだと思われます。


スタッフ全員に応募対応の意識を!




「応募時の電話・メールの対応が不満だったから」という理由でキャンセルしたのは15.4%。

簡単な確認と面接日時設定という短いやりとりの中で応募者が面接に行く気持ちを失くしてしまうというのは、スコア以上に見過ごせない「痛い」コミュニケーションだと捉えるべきでしょう。

ありがちなのが募集活動中であることを職場のスタッフ全員に共有していないというミス。なにも知らずに応募電話を受けたスタッフがあたふたしてしまうのは当然です。

また面接会場まで行ったにも関わらずキャンセルをしたという応募者、また下見してイメージと違ったという理由で面接をキャンセルした応募者を合わせると19.2%になります。

60代女性に至っては36.2%と、キャンセル理由の1/3がイメージのギャップによるものでした。実際、下見に行ったシニアの方が職場を見て「自分の年齢ではできそうにない」「仲間になれそうにない」と諦める例も少なくありません。これは募集時の過剰な広告表現が多分に影響していると思います。

ひとりでも多くの応募を獲得したい採用担当者はつい対象者の間口を広げた表現をしがちですが、過度なアピールは結果的にうまくいきません。


面接場所にたどり着けない?

ある飲食チェーン店でこういうケースがありました。勤務地自体は郊外の駅前にあるお店なので、自宅の近くで働きたいという主婦層のニーズと合致し、応募は相当数集まるのですが、面接来訪率が著しく低いのです。

理由は面接場所でした。

店舗のスペースが狭く面接するのが困難だということもあって、面接地を都心の高層ビル街にある本社オフィスに設定していたのです。のちに数人の応募者から異口同音に面接場所の敷居の高さを指摘され、原因が判明しました。

ふだんの行動範囲がもっぱら自宅近辺で、高層ビル街などにはあまり足を運ばない主婦層には、都心に出るアウェイ感がハンパないのです。この飲食チェーンはその後、面接予約者に駅から本社ビルへの行き方を記した地図をFAXなどで必ず送るようにしました。

今回の調査で「場所の案内が不親切でたどりつけなかったから」というキャンセル理由は5.5%と、決して高いスコアとはいえません。とはいえ、ほんのちょっとした工夫でこのキャンセルが回避できることを考えると見逃せないポイントです。複雑な立地である場合、丁寧な説明を心掛けたいものです。


そもそも応募動機が希薄?

面接キャンセル理由のなかで、採用担当者からするともっとも残念なのが、興味がなくなったという項目でしょう。

「その企業・店舗に興味がなくなったから」が19.0%、

「その業界・業種に興味がなくなったから」が10.9%。

「面接を受けるのが面倒になったから」というガックリする理由も10.4%あります。

「他社に決まった」「連絡が遅かった」というキャンセルには、迅速な対応という対処法がありますし、「対応が不満」「たどり着けない」には、丁寧な対応という対処法があります。

これらは、いずれも自分たちの対応次第で改善できる内的要因に括ることができますが、「興味がなくなったから」というのは外的要因であって、自分たちの改善ではどうにもできないものです。

ただし、ここで強調したいのは、アルバイトマーケットにおいては、応募の動機は希薄であり微弱であるという認識にたつしかない、ということです。

積極的に職場を求めてガツガツ応募するわけでもなく、応募の賞味期限も短く、急がないと他社に決める、あるいはすぐに興味を失ってしまう。まさに「淡雪」のような応募を有効なものにしていくには、結局のところ「迅速な対応」に尽きるのです。


平賀 充記
記事を書いた人
平賀 充記

1963年 1963年10月1日 長崎県生まれ。 
1988年 同志社大学卒。リクルートフロムエー入社、人事部門で新卒採用を担当 
1992年 社内遊学制度でNY駐在。個人広告の研究。
 1998年 アルバイト情報誌「FromA東海版」編集長に就任。 以降、「FromA関東版」「FromA_NAVI」「タウンワーク」「とらばーゆ」「ガテン」など求人メディア統括編集長をへて 
 2012年 株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門執行役員に就任。
 2014年 株式会社ツナグ・ソリューションズ入社。取締役商品開発本部長に就任。同年、 ツナグ働き方研究所設立 所長就任 

株式会社ツナグ・ソリューションズ:http://www.tsunagu.co.jp/
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