採用率を上げる面接の魔法 ~採用面接とは動機づけの場である~

採用率を上げる面接の魔法 ~採用面接とは動機づけの場である~
目次

求職者>求人企業という地平にたつ

面接は、問い合わせ対応や応募受付など、これまでの採用プロセスとは違う性格のものです。これまでは、できるだけ母数の離脱を防ぐためのコミュニケーションでしたが、面接では採用するかどうかをジャッジする、母数を自ら絞り込んでいくコミュニケーションとなります。さらに言えば、このプロセスで少しでも納得のいく絞り込みを実現するために、ここまでのプロセスで極力離脱を抑える工夫をしてきたわけです。

では、コミュニケーションのあり方は、どう変えていくべきなのしょうか。結論としては、変える必要はありません。選別するという意識、雇ってやるという上からの目線は、ぜひ横に置いていただきたいのです。「採用活動とは営業活動である」、と心得ていただくとわかりやすいかもしれません。

まず、面接のハード面です。できれば集団ではなく個人面接、そして1回の面接には最低でも30分、できれば1時間を割いてください。面接場所についても、職場環境による制約はありますが、できるだけ個室などの話しやすい場面設定を心掛けていただきたいです。要は応募者の緊張をときほぐし、会話のしやすい環境をつくるのが肝だということです。


面接官の上から目線に不満アリアリ



ツナグ働き方研究所の採用プロセス行動調査で、「面接を受ける際に不満に思ったことはありますか?」という質問に対して、「ある」と回答したのが50.7%。ふたりにひとりは、採用面接で不快な思いをした経験があるようです。具体的には「面接官の態度が上から目線だった」48.8%、「面接官が親切ではなかった」26.2%、「面接官の態度が怖かった」23.8%と、トップ3はすべて面接官の対応への不満でした。

一方、「回答に困る質問をされた」が22.0%、「こちらの質問に対する回答が不十分だった」が15.1%と、内容に対する不満は相対的に低いスコアです。面接の不満が面接官の「態度」に集中していることを、より鮮明にするデータといえます。何を聞かれるかよりも、どう聞かれるか、が重要だということです。

また、「面接官以外の従業員の態度が歓迎的でなかった」が17.6%、「面接官以外が面接のことを知らなかった。会場に到着しても案内されなかった」が少ないながらも5.4%と、スタッフの対応にも若干ではありますが不満が。応募対応のコラムでも述べたようにスタッフへの共有はとても重要。面接会場への誘導方法など、事前の指示出しはマストです。


後半30分は動機づけタイム

冒頭で面接に1時間割いていただきたいと述べたのは、見極めに30分、見極めた後の動機づけに30分を使っていただきたいからです。アルバイト・パート採用の場合、ぜったいこの職場で働きたいという強い応募動機を持つ応募者は希少だ、とくりかえし述べてきました。だからこそ、面接段階での動機づけタイムこそが採用確率を格段に向上させてくれる魔法の時間となりうるのです。

では、一体どんなコミュニケーションが有効なのでしょうか。



「面接を受けている際に、応募先からどのような対応を受けると、『そこで働きたい』という気持ちが強くなりますか?」という質問をしたところ、「仕事に関する説明を十分にしてくれる」という回答が89.5%でトップの支持で、次いで「こちらの質問に対して、納得のいく回答が得られる」が83.9%。

要は、具体的に働くイメージが湧く情報を提供できるかどうか。「仕事に関する説明」は言うまでもなく「こちらの質問」というのは働くイメージを喚起するための情報収集に他なりません。「仕事場・オフィス内を案内してくれる」も74.4%の高スコアでした。ある意味、最も働いている自分をイメージできる職場見学という手法を使わない手はありません。


面接官も見極められている

前述の質問に対する回答で「自分の話をじっくり聞いてくれる」というコミュニケーションも80.4%と非常に高い支持を得ました。応募者に対する傾聴の姿勢も働きたくなる気持ちを刺激するポイントのようです。「質問に納得のいく回答が得られる」というのも、応募者起点の質問に真摯に向き合っている姿勢ともいえます。まさに自己の存在を受け入れてもらえるというか、大切に扱ってもらっているというか、マズローでいうところの社会的欲求を満たすことになり、当然モチベーションはあがります。


ただし大切に扱うといっても面接官=応募者というほどの対等な力関係が求められているわけではありませ
ん。もちろん採用の見極めプロセスである面接は、面接官≻応募者という暗黙のヒエラルキーのうえに存在しているわけですから、ほんのちょっとした応募者へのイマジネーションでも十分ということです。逆に雇ってやるという尊大な無意識が、面接時のコミュニケーションに透けてでてしまうということを肝に銘じるべきです。気持ちのうえでは面接官=応募者、いや面接官≺応募者というくらいの意識で臨んでいただきたいです。


即決であがるモチベーション



面接後の合否連絡までの猶予期間についても質問してみました。「面接後2~3日以内」までで8割を超える結果となり、応募から面接設定の連絡までのタイムリミットとほぼ同じ傾向となりました。ただし意外だったのが「面接中にその場で」の合否連絡を望む声が16.2%も存在したことです。いわゆる即決希望です。

実は、面接時の動機づけポイントを聞いた前述の質問においても、「面接の場で採用と伝えられる」と働く気持ちが強くなるとの回答が72.7%もありました。面接中のその場で採用を通知することは、単に採用辞退を抑止するためのディフェンシブなコミュニケーションではなく、その職場で働くモチベーションを向上させてくれる効能を持つオフェンシブなコミュニケーションということです。他の応募者と比較検討したいとか、採用手続きに時間がかかるとか、即決しにくい制約条件もあるでしょうが、もし即決できる状況なら、間違いなく面接の場で採用を伝えたほうがお得です。そのモチベーションが定着・活躍につながる原動力となるのですから。


平賀 充記
記事を書いた人
平賀 充記

1963年 1963年10月1日 長崎県生まれ。 
1988年 同志社大学卒。リクルートフロムエー入社、人事部門で新卒採用を担当 
1992年 社内遊学制度でNY駐在。個人広告の研究。
 1998年 アルバイト情報誌「FromA東海版」編集長に就任。 以降、「FromA関東版」「FromA_NAVI」「タウンワーク」「とらばーゆ」「ガテン」など求人メディア統括編集長をへて 
 2012年 株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門執行役員に就任。
 2014年 株式会社ツナグ・ソリューションズ入社。取締役商品開発本部長に就任。同年、 ツナグ働き方研究所設立 所長就任 

株式会社ツナグ・ソリューションズ:http://www.tsunagu.co.jp/
求人広告ナビ:http://kyujin-saiyo.net/