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【2017年1月1日施行】マタハラ防止義務化であなたの会社が今すぐに取り組むべき2つのこととは!?

専門家コラム

2017.06.07 / 名古屋

三木田 直哉(みきた なおや)

弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士

企業には実に多くの人が集まり一緒に仕事をしています。そして、人が集まれば少なからずストレスが発生し、様々な問題が起こる要因となります。職場内のハラスメント問題も、企業が少なからず抱えている課題です。

2017年1月1日より、マタニティー・ハラスメント(通称:マタハラ)を防止する事が企業に義務付けられました。マタハラ問題と企業に与える影響、その対応策について今日はお話したいと思います。



意外に多い!?4人に1人がマタハラ被害


今回の法改正の概要をお話しする前に、まずはマタハラの実態についてご紹介いたします。

連合非正規労働センターのマタニティー・ハラスメントの意識調査によれば、25.6%の人がマタハラの被害に遭っています。周囲でマタハラに遭った人がいると答えた人は、23.2人になります。およそ4人に1人の割合でマタハラに遭っている人がいることになります。

また、2015年11月に厚生労働省が行ったマタハラに関するアンケート結果※では、マタハラを経験したことがある女性の割合は、正社員で21.8%、派遣社員で48.7%、契約社員13.3%、パート5.8%とかなり多くなっています。




そもそも何が義務化されたの?


男女雇用機会均等法および育児・介護休業法が改正され、妊娠、出産、育児休業、介護休業等を理由とする、上司、同僚による就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置を事業主に義務付ける規定が新たに新設されました。

これが、今回義務化された「マタハラ防止措置」ということですね。

では、あなたの会社が今すぐに取り組むべき2つのことはいったいなんでしょうか?



大きくこの2つに集約されます。

【ひとつめ】法改正により義務付けられた項目を最低限実施する




それでは、最低限実施する必要がある義務付けられた項目とは具体的にどのようなものがあるかを見ていきましょう。

① 「職場内でマタハラがあってはならない」という方針の明確化及び周知、啓発
② マタハラを行った者に対する対処の方針、内容を就業規則等で文書化、周知、啓発
③ マタハラ相談窓口の設置
④ 相談窓口担当者の適切かつ広範な対応
⑤ セクハラ等とあわせて相談応対できる体制の整備
⑥ 事実関係の迅速かつ正確な確認
⑦ 被害者に対する適正な対応
⑧ マタハラを行った者に対する適正な措置
⑨ 再発防止措置
⑩ 実情に応じた業務体制の整備等必要な措置
⑪ 妊婦側が制度を利用できるという知識を持つこと、コミュニケーションを図りながら業務を進めるという意識を持つことなどの周知、啓発
⑫ 相談者、行為者等のプライバシー保護のための適正な措置及びその周知
⑬ 相談をしたこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由とする不利益取扱の禁止及びその周知、啓発

以上の13項目について、企業がしっかり取り組まずに発生したマタハラ被害に関しては、民事上の責任を問われる可能性があります。

このような事態を防止するため、会社としては、周囲の労働者の業務負担等にも配慮することが必要であり、妊娠、出産した従業員の側においても、制度の利用ができるという知識をもつことや、体調等に応じて適切に業務を遂行していく上で周囲と円滑なコミュニケーションを図ることが求められるといえるでしょう。

上記13項目では、主に規則や仕組みを整備するという点について述べておりますが、規則を作ればマタハラ問題はなくなるかというと、もちろんそんなわけはありません。

問題は「運用」です。規則や仕組みを浸透させるために、運用レベルに落とし込んだプランを考える必要があります。


【ふたつめ】三者間のコミュニケーションを増やす




続いて、「経営側・妊婦・妊婦でない者、三者間のコミュニケーションを増やす」取り組みを実践するための4つのポイントをお話します。

① 快適な環境を作っていきたいという共通認識を共有する
マタハラが会社内で横行すると、会社にとっても従業員にとっても良いことは何一つありません。お互いにマタハラなどのハラスメントがない、快適な職場環境を作るといった共通の認識を持つことが重要であるといえるでしょう。

② マタハラと、そうでないものとの線引きを決める
実際にマタハラが問題となるケースでは、マタハラを行っているという意識を欠いているケースが多いように思われます。それは、どこからがマタハラで許されない行為にあたるのかといった線引きが難しいところにあります。そこで、どこからがマタハラにあたる行為なのかについて、明確に線引きをすることが重要です。

③ 妊婦が納得した上で、出来る仕事と出来ない仕事を分ける
マタハラは許されない行為ですが、仕事上、妊婦や出産後の従業員に配慮しなければならないのは当然のことです。しかし、配慮したつもりがマタハラと受け取られてしまうこともあります。そうならないように、何が出来る仕事で何が出来ない仕事なのか、お互い話し合った上で、共通の認識を持つことが大切です。

④ 妊婦への理解促進を目的とした従業員へのハラスメント研修の実施をする
マタハラやパワハラなどのハラスメントについて、一般的な認識はあるけれども、具体的にどういう行為が、なぜ問題なのかといった点にまで理解できている従業員は多くないように思います。そこで、ハラスメントの専門家を招いて研修をすることによって、従業員の知識と意識を高めることも重要なことでしょう。


妊娠発覚!相談なしに異動、解雇されたことへの最高裁の判決とは!?



ここからは、実際にあったマタハラ裁判の2つの事例を紹介します。


広島市の病院で理学療法士として副主任の地位にあった妊娠中の女性が、妊娠をきっかけに軽い業務への配置転換を希望したところ・・・

異動後に副主任を外され、出産後に職場復帰を果たしたが管理職には戻れませんでした。


最高裁は、男女雇用機会均等法第9条3項に違反するとして、

「女性労働者の母性を尊重し、職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失がある」と判断し、
慰謝料としての100万円と、降格から退職までの手当を支払うことを命じる判決を下しました。

「妊娠による降格は原則禁止で、自由意思で同意しているか、業務上の理由など特殊事情がなければ違法で無効」という初の判断を最高裁が示し、マタハラに対して雇用主へ厳しい対応と意識改革を示した、重要な判例です。



カバンの製造、卸売業の会社で、製造管理、営業サポートの仕事の業務を行っていた女性が妊娠したことを伝えたところ・・・
「協調性がない」「社員としての適格性がない」
という理由で解雇されました。

地裁判決で、解雇は無効であるとの判決が下りました。

このように、マタハラに関わる会社側の対応については、会社に厳しい判決が出される傾向にあります。軽い気持ちでした措置が、後に重大な問題に発展することも考えられますので、会社としても、妊娠や出産をした従業員の対応には、十分に注意する必要があるといえるでしょう。


マタハラ問題が企業に与える深刻な影響とは


ハラスメントは企業規模に関わらず起こりうる問題です。一朝一夕の対応ではなく 継続して会社が対応しなければ甚大な影響を与える問題です。 マタハラ問題を放置して良いことなどありません。例えば、下記のような悪影響が職場に発生してきます。

・職場の雰囲気が悪くなる
職場でマタハラが行われていれば、職場の雰囲気はとても悪くなります。女性の働き方についての国民の意識が高まっているなかで、職場でマタハラが行われていれば、良い気分になる人はいないでしょう。

・メンバーの士気が下がる(次は自分かもという不安)
妊娠、出産しても働き続けたいと考える女性は増える傾向にあります。そんな中で、自分の身近な同僚がマタハラにあったとしたら、妊娠、出産をしても働き続けたいと考えている従業員は、その会社で長く働きたいとは思わないでしょう。次は自分、いつか自分もあのように、と思われてしまいます。

・一度決めたことを守らない会社への不信感が増大
就業規則を改定し、マタハラ問題改善に向けて頑張ろうと従業員に発信したにも関わらず、実際の現場で何らの改善策、前向きな取り組みを採らなければ、従業員の士気は低下し、会社に対する不信感は増大するでしょう。会社側の本気の姿勢が問われています。

・企業側への損害賠償
厚生労働省が定めたマタハラ防止指針を適切に履行していない会社は、使用者責任などの民事上の責任を問われる可能性があります。

・SNS等で世間に公表され社会からの信頼失墜
一般人のSNSの投稿によって、多大な損失を被った会社は多くあります。しかも、ネガティブな情報であればより情報は拡散し、大きな話題を呼ぶ傾向にあります。「自分の会社ではマタハラが横行している」といったSNSが拡散すると、会社の社会に対する信頼は大きく低下することでしょう。

・優秀な人材の流出
今は昔に比べ、転職市場が活発になっており、必ずしも終身雇用という雇用形態が一般的なものではなくなってきています。そのような中で、マタハラが横行すれば、より働きやすい会社で働くことを求めて、会社を去る優秀な従業員が増えるでしょう。


問題にしっかり向き合いましょう!


セクハラに関しては多くの企業で認知されるようになりましたが、マタハラに関しては、男性の知識不足等の理由など、それぞれの立場で悩みを抱えている労働者が多いという現実があります。今回の法改正により、マタハラに関しての企業への防止措置を義務付けた意味は大きいといえるでしょう。

しかし、事務的な制度を整えたことで解決できるほど簡単な問題ではありません。経営側、妊婦、妊婦でない者の三者間でコミュニケーションを取り、相互理解に努めながらそれぞれが働きやすい職場環境を作っていくことが重要になります。

「マタハラ防止措置」に関してご不明な点や、就業規則の見直し、運用面などでお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所までご相談下さい。

筆者プロフィール

三木田 直哉(みきた なおや)
関西大学法学部卒業。同志社司法研究科修了。
刑事事件、一般民事事件、企業法務など様々な分野に精通。
英語も堪能で、外国人の人権問題にも興味を持つ。

労働問題は、その時々の社会の状況によって、対応の仕方が
目まぐるしく変化します。労働問題を専門に扱っているからこそ
見える視点というものがあります。
最後まで諦めない、そんな思いで共に戦いましょう。

弁護士法人ベリーベスト法律事務所 https://www.vbest.jp/
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