【製造派遣特集:第3回】製造派遣企業の3つの戦略タイプと課題

2017.07.26 / 名古屋
こんにちは、ヒトクル事務局です。
ヒトクルでは製造派遣業界にフォーカスし、求人市場の推移、企業調査、求職者調査から業界の課題を解決するヒントを探る全6回のシリーズでお届けしています。
第1回目は、製造派遣業の求人広告件数の推移についてのレポートしました。【愛知 製造派遣特集:第1回】求人広告件数 推移【2015年5月~2017年5月】
第2回目は、製造派遣業の時給の推移についてレポートしました。【愛知 製造派遣特集:第2回】時給推移【2015年5月~2017年5月】
Webサイトの案件数の推移では、大幅に求人案件が増加しているのが見て取れました。また、時給についても最低賃金の上昇以上の上げ幅になっています。
以上のことから、現在の人材確保が非常に厳しく、時給を上げて人材を確保しようしている企業の動きがデータから見て取れました。
第3回目の今回は、静岡・愛知を主として展開する製造派遣企業20社のご担当者さまに、アルバイトタイムスがヒアリングを実施した内容をレポートさせていただきます。
このレポートは特定の20社にヒアリングした内容から、その中でも際立った傾向をまとめたものです。自社の課題と照らし合わせて、何らかのヒントにしていただければ幸いです。
3つの戦略タイプ
今回ヒアリングをさせていただいた製造派遣企業がとられている戦略として、大きく3つの戦略タイプに分けることが出来ました。
※上記のタイプ分類は、これに正確に合致する企業があるというわけではなく、ヒトクル事務局で傾向を掴みやすくするために独自にまとめた内容となります。
・取り扱い案件は、軽作業から3交代まで製造業の中でも幅広く、古くからの取引企業が多い。
・求職者ターゲットは、製造経験者の比率が高め。
・集客手段としては、フリーペーパー、Web、イベントなど幅広い手法を実施。
・ベトナムなど外国人研修生の受け入れを強化
・市場に合わせ応募数が減るなか、集客にかけるコストが増加する傾向あり
製造派遣企業として歴史のある、老舗企業に見られるタイプで、ナショナルクライアントとの取引も多いです。このタイプは、入社祝い金や寮費無料など待遇面の施策を打ち出し、あらゆる手法を実施しているため、集客にかけるコスト配分が高い傾向にあります。
このタイプの課題は、二つ挙げられます。
一つ目は、応募単価の高騰を解消すべく、派遣先である顧客企業へ時給や勤務時間などの勤務条件の改善交渉をし、応募確率を高めることです。
顧客と対等に改善交渉をしていくためには、担当者が求職者や地域の情報を把握・分析し、それを顧客に対して説得することが必要です。現在のところは個々の担当者の力量に任されているところが大きいようです。
二つ目は、「派遣未経験者をいかにして取り込むか」です。このままでは、限られた経験者層を取り合っているため、いつまでも人材難を脱することができない可能性があります。
・求職者の属性や地域を明確にし、そのターゲットが働きやすい案件のみを受注
・積極的に案件を開拓せず、集客がしやすい案件のみを受注する
・求職者ターゲットは、ターゲットを絞り込んでいるため派遣未経験層の取り込みにも繋がっている
・集客手段としては、コストを下げながら新しい手法を常に試している
人材確保が困難な今、依頼を受けた案件をすべてを受注していると、膨大な集客コストがかかってしまいます。
そこで、自社のもつ強みを最大限に活かすために、女性やシニアなど特定のターゲットを明確に絞りこみ、そこにリソースを集中することで集客コストを下げる戦略をとっています。
集客コストを軽減したことで、マッチングやCS向上の取り組みに投資をすることが可能です。
このタイプの課題は、同軸への参入障壁を高める必要があることです。そのため、顧客ごとのインナーシェアを高める取り組みが必要となるでしょう。
・製造だけではなく、介護・販売・サービスなどの異なる業種の案件を積極的に開拓している
・同じ業種でも、異なるメーカーを開拓している
・求人案件ごとに細かくばらして各求職者ターゲットにフィットさせる
・ラインナップをフックに、未経験者向けの登録相談会を実施
製造派遣業界でも、比較的後発の若い企業に見られる戦略タイプです。
景気に左右されがちな製造業だけでなく、長期的に需要が見込める介護業界の案件や、比較的採用がしやすい販売やイベントの案件も幅広く開拓しています。また同じ製造業の同じ職種でも、異なる派遣先を開拓することで、リスクを分散する戦略をとっています。
積極的に業種やメーカーを問わず新規の案件を開拓することで、求職者側からも「新しい仕事がいつもある」という期待を醸成できるというメリットがあります。
一方、案件数が増えるにあたって1人あたりの担当案件が増え、派遣先やスタッフに対して丁寧なフォローができなくなる恐れがあります。
上記のことからこのタイプの課題は、そこにどのように対応していくかになります。具体的には、以下のような取り組み事例があります。
・担当者を増やす
・組織化する
・個人の専門性を高める
共通の課題と解決の方向感
ここまで3つの戦略タイプと、それぞれが抱える課題について整理しました。ここからは、戦略に限らず製造派遣業界が抱える共通の課題について取り上げていきます。
①自社サイトを活用した集客手法の確立
自社の求人サイトを立ち上げ、日々案件を更新している企業がほとんどです。ただし、そこからの応募数は、全体の中でも少ない割合となっているようです。
特に、従来の集客手法で応募単価が高騰している企業においては、自社サイトから低コストで流入を増やすサイクルの構築が必要となります。
②派遣という働き方の啓もう
現在製造派遣業界で働く方の多くは、同じ製造派遣経験者です。限られた母集団のなかでの人材の取り合いは、集客コストが高騰していくばかりです。そこで、派遣未経験者層の取り込みのために、「派遣」という働き方の啓もうが必要です。
「派遣」に対する一般的なネガティブなイメージを払拭し、「派遣」だからこそ可能なメリットや多様な業界でキャリアアップができることなどを伝えることで、「仕方なく」派遣ではなく「あえて」派遣という選択をする求職者を増やしていくことが必要です。
③同業界内でのアライアンス
派遣会社同士のアライアンス=企業提携です。
自社で期間満了した人材を、スタッフが要望すれば提携している派遣会社を紹介するなど、すでにごく一部では取り組んでいる事例もあります。
案件・求職者・エリアなど、自社の得意分野と重ならない、相互に補完できる企業とのアライアンスは検討の余地が残っているかもしれません。
④派遣登録者データベースの活用(リピート促進策)
過去に登録した派遣スタッフの名簿やデータを保有している企業は多いものの、それをリピート促進に活用している企業はまだ多くないようです。
日頃から、しっかりと派遣登録者情報をデータベースに登録しておくために、誰にでも簡単に使えるシステムの導入および継続的に運用するためのフローの構築が必要となります。
⑤マッチング率・定着率を高めるための工夫・改善
すでに取り組んでいる企業も多くみられるのが、派遣会社への帰属意識や、派遣スタッフと派遣先とのマッチング率を高め、長期にわたって活躍してくれる人材を育成する施策です。
具体的には、以下のような取り組み事例があります。
・登録スタッフに定期的にアンケートを実施し、不満を吸い上げている
・社員にキャリアコンサルタントの資格取得を奨励している
・こまめに派遣先に顔を出し、スタッフ・顧客とのコミュニケーションを取る
スタッフ、クライアント双方の理解をしっかり深め、長く定着・戦力化するスタッフを派遣することで、顧客企業の信頼を勝ち取ることができるでしょう。
⑥顧客の課題を解消するコンサルティング機能の強化
「期日までに、必要な人数の人を送る」というビジネスから、これからの時代に合わせた、「人材」リソースに関する顧客課題解消のスペシャリストになる、という業務領域拡大の路線があります。
例えば、生産性に課題のある工場ラインの担当者様に、生産工程を組み直しながら、調達しやすい人材をうまく活用するための、ソリューションを提案する、などです。
他社との明確な差別化を図ることで優位性を確保し、顧客企業のインナーシェアを高めることが可能になります。
いかがでしょうか。今回は、静岡・愛知の地元で活躍する製造派遣企業20社でヒアリングした調査結果から、業界における課題についてレポートいたしました。
【製造派遣特集:第4回】求職者調査レポート~派遣就業者の本音~「派遣スタッフの本音」では、実際に製造派遣スタッフとして働いたことのある方へ聞いた
・製造派遣で働こうと思った理由
・求職者が重視していること
・一度雇用された派遣会社に再度仕事を紹介してもらいたいか?
・今後希望する働き方
などのアンケート結果をレポートいたします。
なお、名古屋・三河の採用に関するトレンド情報について知りたい方は、こちらからご登録が可能です。
ヒトクルでは製造派遣業界にフォーカスし、求人市場の推移、企業調査、求職者調査から業界の課題を解決するヒントを探る全6回のシリーズでお届けしています。
第1回目は、製造派遣業の求人広告件数の推移についてのレポートしました。【愛知 製造派遣特集:第1回】求人広告件数 推移【2015年5月~2017年5月】
第2回目は、製造派遣業の時給の推移についてレポートしました。【愛知 製造派遣特集:第2回】時給推移【2015年5月~2017年5月】
Webサイトの案件数の推移では、大幅に求人案件が増加しているのが見て取れました。また、時給についても最低賃金の上昇以上の上げ幅になっています。
以上のことから、現在の人材確保が非常に厳しく、時給を上げて人材を確保しようしている企業の動きがデータから見て取れました。
第3回目の今回は、静岡・愛知を主として展開する製造派遣企業20社のご担当者さまに、アルバイトタイムスがヒアリングを実施した内容をレポートさせていただきます。
このレポートは特定の20社にヒアリングした内容から、その中でも際立った傾向をまとめたものです。自社の課題と照らし合わせて、何らかのヒントにしていただければ幸いです。
3つの戦略タイプ
今回ヒアリングをさせていただいた製造派遣企業がとられている戦略として、大きく3つの戦略タイプに分けることが出来ました。
※上記のタイプ分類は、これに正確に合致する企業があるというわけではなく、ヒトクル事務局で傾向を掴みやすくするために独自にまとめた内容となります。
・取り扱い案件は、軽作業から3交代まで製造業の中でも幅広く、古くからの取引企業が多い。
・求職者ターゲットは、製造経験者の比率が高め。
・集客手段としては、フリーペーパー、Web、イベントなど幅広い手法を実施。
・ベトナムなど外国人研修生の受け入れを強化
・市場に合わせ応募数が減るなか、集客にかけるコストが増加する傾向あり
製造派遣企業として歴史のある、老舗企業に見られるタイプで、ナショナルクライアントとの取引も多いです。このタイプは、入社祝い金や寮費無料など待遇面の施策を打ち出し、あらゆる手法を実施しているため、集客にかけるコスト配分が高い傾向にあります。
このタイプの課題は、二つ挙げられます。
一つ目は、応募単価の高騰を解消すべく、派遣先である顧客企業へ時給や勤務時間などの勤務条件の改善交渉をし、応募確率を高めることです。
顧客と対等に改善交渉をしていくためには、担当者が求職者や地域の情報を把握・分析し、それを顧客に対して説得することが必要です。現在のところは個々の担当者の力量に任されているところが大きいようです。
二つ目は、「派遣未経験者をいかにして取り込むか」です。このままでは、限られた経験者層を取り合っているため、いつまでも人材難を脱することができない可能性があります。
・求職者の属性や地域を明確にし、そのターゲットが働きやすい案件のみを受注
・積極的に案件を開拓せず、集客がしやすい案件のみを受注する
・求職者ターゲットは、ターゲットを絞り込んでいるため派遣未経験層の取り込みにも繋がっている
・集客手段としては、コストを下げながら新しい手法を常に試している
人材確保が困難な今、依頼を受けた案件をすべてを受注していると、膨大な集客コストがかかってしまいます。
そこで、自社のもつ強みを最大限に活かすために、女性やシニアなど特定のターゲットを明確に絞りこみ、そこにリソースを集中することで集客コストを下げる戦略をとっています。
集客コストを軽減したことで、マッチングやCS向上の取り組みに投資をすることが可能です。
このタイプの課題は、同軸への参入障壁を高める必要があることです。そのため、顧客ごとのインナーシェアを高める取り組みが必要となるでしょう。
・製造だけではなく、介護・販売・サービスなどの異なる業種の案件を積極的に開拓している
・同じ業種でも、異なるメーカーを開拓している
・求人案件ごとに細かくばらして各求職者ターゲットにフィットさせる
・ラインナップをフックに、未経験者向けの登録相談会を実施
製造派遣業界でも、比較的後発の若い企業に見られる戦略タイプです。
景気に左右されがちな製造業だけでなく、長期的に需要が見込める介護業界の案件や、比較的採用がしやすい販売やイベントの案件も幅広く開拓しています。また同じ製造業の同じ職種でも、異なる派遣先を開拓することで、リスクを分散する戦略をとっています。
積極的に業種やメーカーを問わず新規の案件を開拓することで、求職者側からも「新しい仕事がいつもある」という期待を醸成できるというメリットがあります。
一方、案件数が増えるにあたって1人あたりの担当案件が増え、派遣先やスタッフに対して丁寧なフォローができなくなる恐れがあります。
上記のことからこのタイプの課題は、そこにどのように対応していくかになります。具体的には、以下のような取り組み事例があります。
・担当者を増やす
・組織化する
・個人の専門性を高める
共通の課題と解決の方向感
ここまで3つの戦略タイプと、それぞれが抱える課題について整理しました。ここからは、戦略に限らず製造派遣業界が抱える共通の課題について取り上げていきます。
①自社サイトを活用した集客手法の確立
自社の求人サイトを立ち上げ、日々案件を更新している企業がほとんどです。ただし、そこからの応募数は、全体の中でも少ない割合となっているようです。
特に、従来の集客手法で応募単価が高騰している企業においては、自社サイトから低コストで流入を増やすサイクルの構築が必要となります。
②派遣という働き方の啓もう
現在製造派遣業界で働く方の多くは、同じ製造派遣経験者です。限られた母集団のなかでの人材の取り合いは、集客コストが高騰していくばかりです。そこで、派遣未経験者層の取り込みのために、「派遣」という働き方の啓もうが必要です。
「派遣」に対する一般的なネガティブなイメージを払拭し、「派遣」だからこそ可能なメリットや多様な業界でキャリアアップができることなどを伝えることで、「仕方なく」派遣ではなく「あえて」派遣という選択をする求職者を増やしていくことが必要です。
③同業界内でのアライアンス
派遣会社同士のアライアンス=企業提携です。
自社で期間満了した人材を、スタッフが要望すれば提携している派遣会社を紹介するなど、すでにごく一部では取り組んでいる事例もあります。
案件・求職者・エリアなど、自社の得意分野と重ならない、相互に補完できる企業とのアライアンスは検討の余地が残っているかもしれません。
④派遣登録者データベースの活用(リピート促進策)
過去に登録した派遣スタッフの名簿やデータを保有している企業は多いものの、それをリピート促進に活用している企業はまだ多くないようです。
日頃から、しっかりと派遣登録者情報をデータベースに登録しておくために、誰にでも簡単に使えるシステムの導入および継続的に運用するためのフローの構築が必要となります。
⑤マッチング率・定着率を高めるための工夫・改善
すでに取り組んでいる企業も多くみられるのが、派遣会社への帰属意識や、派遣スタッフと派遣先とのマッチング率を高め、長期にわたって活躍してくれる人材を育成する施策です。
具体的には、以下のような取り組み事例があります。
・登録スタッフに定期的にアンケートを実施し、不満を吸い上げている
・社員にキャリアコンサルタントの資格取得を奨励している
・こまめに派遣先に顔を出し、スタッフ・顧客とのコミュニケーションを取る
スタッフ、クライアント双方の理解をしっかり深め、長く定着・戦力化するスタッフを派遣することで、顧客企業の信頼を勝ち取ることができるでしょう。
⑥顧客の課題を解消するコンサルティング機能の強化
「期日までに、必要な人数の人を送る」というビジネスから、これからの時代に合わせた、「人材」リソースに関する顧客課題解消のスペシャリストになる、という業務領域拡大の路線があります。
例えば、生産性に課題のある工場ラインの担当者様に、生産工程を組み直しながら、調達しやすい人材をうまく活用するための、ソリューションを提案する、などです。
他社との明確な差別化を図ることで優位性を確保し、顧客企業のインナーシェアを高めることが可能になります。
いかがでしょうか。今回は、静岡・愛知の地元で活躍する製造派遣企業20社でヒアリングした調査結果から、業界における課題についてレポートいたしました。
【製造派遣特集:第4回】求職者調査レポート~派遣就業者の本音~「派遣スタッフの本音」では、実際に製造派遣スタッフとして働いたことのある方へ聞いた
・製造派遣で働こうと思った理由
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