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販売した側が処罰される!未成年者飲酒・喫煙禁止法とその対策

専門家コラム

2017.08.08 / 名古屋

牧野 孝二郎(まきの こうじろう)

弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士

梅雨も明けて、今年も本格的に夏が到来しました。

冷えたビールを飲みたくなる季節ですね。居酒屋やレストランではビールを注文する機会が増え、コンビニでお酒をつい買ってしまうことも多いでしょう。お店としては売上が伸びて嬉しいわけですが、この時期は特に気をつけるべき点がありますよね。

それは、未成年者へのアルコール、たばこの提供です。飲食店、コンビニエンスストアでは常に意識しているポイントではありますが、リスクが高まる時期のため、普段以上に気をつける必要があります。

今回は、未成年者へのアルコール、たばこの提供を防止するために、お店側が取り組むべきポイントについてお伝えします。

そもそも法律はどうなっているの?


未成年者飲酒禁止法第1条1項
“「満二十年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス」”

未成年者喫煙禁止法第1条1項
“「満二十年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」”

20歳になるまではお酒を飲んではいけません、煙草を吸ってはいけません、ということですね。もっとも、未成年者がこれら法律に違反した場合でも、この未成年者を罰する規定はありません。

しかし、未成年者飲酒禁止法は、同時に
①営業者であって業態上酒類を販売又は供与する者が
②未成年者に対し
③未成年者が飲用に供することを知りながら
④酒類を販売又は供与した場合には
⑤50万円以下の罰金に処す旨を定めています。

また、酒類販売業者が、未成年者飲酒禁止法の上記規定に反して罰金刑に処された場合には、酒類販売業者の免許が取り消される可能性があるなど行政上の責任を負うことにも注意が必要です。

これと同様に、未成年者喫煙禁止法は、
①未成年者に対し
②未成年者が自用に供することを知りながら
③煙草や器具を販売した場合には
④50万円以下の罰金に処す旨を定めています。

そして飲酒禁止法と同じように、たばこ小売販売業者が上記規定に違反して処罰されたときには、たばこ小売販売業の許可が取り消される可能性があるなどの行政上の責任を負います。


未成年者飲酒禁止法及び未成年者喫煙禁止法の検挙人数




未成年者飲酒禁止法の送致人数は、平成25年には172人、その内、営業者が未成年者と知っていて販売したケース(知情販売)は134人、平成26年には150人(営業者の知情販売は124人)、平成27年には162人(営業者の知情販売は108人)となっており、営業者の知情販売の検挙人数は、108人から134人程度となっています。

同様に、未成年者喫煙禁止法の送致人数をみていきますと、平成25年には1259人、その内、知情販売は531人、平成26年には1168人(営業者の知情販売は460人)、平成27年には1119人(営業者の知情販売は341人)となっており、営業者の知情販売の検挙人数は、341人から531人程度となっています。

ともに減少傾向にあるのは、近年、未成年者の喫煙・飲酒に対して社会的な関心が高まるにつれて、飲食店等での未成年者飲酒・喫煙の防止に対する取り組みが広まっていることや、特に喫煙に関しては、そもそも社会全体の喫煙率が低下していること等が影響していると考えられます。


コンビニのアルバイトが未成年者にたばこを販売してしまった


近年、未成年者喫煙禁止法違反の事例ではありますが、平成25年に高松高等裁判所で行われた裁判がニュースになりました。

これは、コンビニエンスストアで、同店のアルバイト従業員が、当時15歳(高校1年生)であった未成年者に対し、たばこを販売したというものでしたが、このアルバイト従業員に、未成年者に対して販売した認識があったかどうかがまず争いとなりました。

原審の丸亀簡易裁判所は、従業員に、未成年者に対して販売した認識があったと判断し、同従業員に対し、有罪判決(罰金10万円)を言い渡しました。

また、原審は、未成年者喫煙禁止法第6条の定めにより、コンビニエンスストアを経営する法人についても、未成年者喫煙禁止法違反があるか否かを判断しました。

この判断のポイントは、
①従業員に、法令違反が認められなければ、事業者(法人を含む)も刑事責任を負わない
②従業員に、法令違反が認められたとしても、事業者に行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くしていたことを立証することができれば、事業者は刑事責任を負わない、ということです。

そして上記事案では、以下のような指導をしていたことから、違反行為の発生を防止する措置を実施していたと判断されました。

・レジスターにおける年齢確認の精算システムが置かれていたこと

・事業者が従業員に対し、未成年者喫煙禁止法による罰則についてや、年齢確認システムによる年齢確認を行うべきこと、及び未成年者の店員や不慣れな店員の場合に複数の従業員で対応されていることが記載されている「確認書」に日付及び氏名を記載して毎月1回は提出させるなどの指導をしていたこと

なお、控訴審である高松高等裁判所は、このアルバイト従業員に、未成年者に対して販売した認識があったとは言えないと判断し、従業員に対し無罪を言い渡した上、未成年者喫煙禁止法第6条の規定は、従業員が同法第5条に違反する必要があるところ、控訴審は従業員に対し無罪を言い渡しているため、会社についても無罪である旨判示しました。


事業者が行うべき対策


上の参考事例から、事業者が、未成年者の飲酒又は喫煙に関し、刑事上若しくは行政上の責任を負わないために、具体的には、以下のことを行っておくべきだと考えられます。

・一見して明らかに20歳を超えているお客様以外のお客様に免許証等の提示を求め、年齢確認を徹底する。

・未成年者の飲酒・喫煙の禁止を呼び掛けるポスター等を店内に貼る。
※未成年の飲酒禁止ポスターはこちらからダウンロードが可能です。

・「<重要>お酒・たばこの未成年者への販売禁止について」、「未成年者に『お酒・たばこ』を絶対に販売してはなりません」、「『年齢確認』を確実に実施するよう徹底しましょう」のほか、未成年者飲酒禁止法による罰則や処罰された場合に店舗の営業継続ができなくなること、未成年者の店員や不慣れな店員の場合に複数の従業員で対応されている旨を記載した「確認書」などを作成し、毎月1度は回覧し、署名させる。

・アルコール飲料としての酒類やたばこの特性、特に未成年者の心身に対する悪影響及び未成年者と思われる者に対する年齢確認の実施方法などの従業員研修等を実施する。


専門家は「転ばぬ先の杖」


お客様が増えることは売上増につながり、経営としては嬉しい限りですが、忙しい時期にこそトラブルが多く発生します。一度トラブルが起こってしまうと、その対応にお金、時間、労力など様々なリソースが費やされてしまいます。お店の信頼や従業員のモチベーションなど、目に見えない損害もあるでしょう。

何よりも大切なのは、事故が起きる前に未然に防ぐことです。今回の記事で、事前対策の具体的な方法を挙げておりますが、法律の理解や対策の進め方などを顧問弁護士に相談する事をお勧めします。
弁護士はトラブル時に登場すると思われがちですが、本質的にはトラブルを未然に防ぐために活用頂ければと思います。

筆者プロフィール

牧野 孝二郎(まきの こうじろう)
法政大学法学部、中央大学法科大学院卒業。
2011年に司法試験に合格し、2012年に弁護士法人ベリーベスト法律事務所に入所。
入所後、損害賠償請求事件及びフランチャイズに関する業務を多数取り扱う。

難しい法律問題も分かりやすく説明し、常に身近な法律家であることを心がけています。
懇切・丁寧をモットーに、一人でも多くの方の「肩の荷」を、少しでも軽くできれば嬉しいです。


弁護士法人ベリーベスト法律事務所 https://www.vbest.jp/
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