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最低賃金引上げ対策「業務改善助成金」活用のすすめ

専門家コラム

2017.10.06 / 名古屋

家原 理(いえはら おさむ)

社会保険労務士法人ベリーベスト 社労士

今年も最低賃金が改定されましたね。全国平均で25円引上げと、2年連続で大幅な引上げとなりました。今後も最低賃金の水準は上がり続けていくことが予想されますので、このタイミングで自社の賃金を見直す会社も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは「業務改善助成金(中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金)」です。
この助成金は、正式名称にもあるように「中小企業の、最低賃金引上げ対策の、費用を補助する助成金」です。



概要


最低賃金の引上げによって消費が拡大し、企業の取引機会も増えて収益性が向上することを期待して、国は最低賃金の引上げを推奨しています。

一方で、企業が最低賃金の引上げを実行に移すには様々な壁があるはずです。最大の壁は、引上げた賃金を支払うための利益をどう確保するかでしょう。

従業員のために賃上げはしたいけれど、今の売上や利益のままでは経営が圧迫されてしまう・・・そんなジレンマを抱えて足踏みをされている会社も多いのではないでしょうか。

本助成金では

「業務改善を行い、生産性を向上させて利益を増やすことで、最低賃金の引上げを行う」

という考え方を採用しています。

業務改善(設備投資など)は、当然お金がかかりますが、今よりも多くの利益を得るために必要なプロセスだと捉えて、その業務改善費用に対して国が一部補助をしてくれるのです。
最低賃金を引上げさえすれば支給される助成金ではありませんので、注意してくださいね。



具体的には、

・POSレジシステム導入による在庫管理の効率化
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・インターネット受発注機能があるホームページの作成による業務の効率化
・専門家の業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
・人材育成・教育訓練による業務の効率化

などを実行した上で、最低賃金を引上げた会社に対して、本助成金が支給されています。

受給できる会社の条件および、支給要件は以下の通りです。




詳しくご紹介していきましょう。

どんな会社が受給できるか?


業務改善助成金を受給するには「事業場内最低賃金が1,000円未満(時間額)」の「中小企業・小規模事業者」であることが前提となります。
以下の図をもとに、自社が中小企業・小規模事業者に当てはまるか、確認してみてください。



次に、自社の最低賃金を確認してみましょう。やり方は、通常の最低賃金の算出方法と同じです。最低賃金に含まれる賃金項目を確認の上、日給や月給の場合は、時間給に換算します。
複数の事業場を持っている会社であれば、事業場ごとに確認をしてください。



尚、本助成金の最低賃金引上げの対象となるのは、雇入れてから6ヶ月が経過した労働者となります。最低賃金が1,000円未満であれば、本助成金が定める最低賃金の引上げ対象となります。



主な支給要件


次に、主な支給要件を見ていきましょう。
以下の図を参考に、自社が支給要件をクリアしているか、またはクリアできそうかを確認してみてください。



ここでのポイントは、
(1)業務改善に掛かる費用が、本助成金で対象となる経費に相当するか、きちんと確認する
(2)改定後の賃金がその事業場の最低賃金となることに留意する
の2点です。

(1)ですが、
・単なる経費節減を目的とした経費 (例:LED電球への交換 等)
・不快感の軽減や快適化を目的とした職場環境の改善経費 (例:エアコン設置 等)
・通常の事業活動に伴う経費 (例:交際費、消耗品費、広告宣伝費 等)
は、助成金対象の経費とは認められません。

(2)ですが、最低賃金を引上げた結果、それよりも賃金が低い労働者がでてしまった場合には、その労働者も賃金引上げをする必要が出てきます。賃上げの対象者が増えることになりますから、注意してください。

また、③不交付事由に関してですが、今回賃上げのために取り組む業務改善(設備投資など)に関して、すでに他の助成金で申請を行っている場合も不交付となります。

具体的な助成額など


では、具体的にどれくらいの金額が助成されるのでしょうか。

本助成金は、最低賃金の引上げ額によって、5つのコースに分かれています。コースごとに助成の上限額が変わります。
具体的な助成額は、以下のように計算します。
(設備投資などにかかった費用) × (助成率) = 助成額(※)
助成額(※)が、助成の上限額を超えていた場合は、助成の上限額が支給されます。



尚、上の表の助成率の欄にある「生産性要件」とは、支給申請時の決算書類に基づく生産性指標と、その3年前の決算書類に基づく生産性指標を比較して伸び率が6%以上伸びている場合をいいます。

申請~受給プロセス


では、実際申請するとなったら、助成金が支給されるまでに、どんな手続きが必要なのでしょうか。
申請~受給までのプロセスを下図にまとめました。



「申請すればよし」というわけではなく、申請後にきちんと業務改善が図られているか、最低賃金が引上げられているかが、賃金台帳などをもとにチェックされます。

もし自社だけで運用が難しい場合は、労働局職員に積極的に相談したり、専門家を活用することも検討しましょう。

尚、愛知県・静岡県・東京都では、本年度の業務改善助成金の申請期限は平成30年1月31日までとなっていますので、本年度の申請を検討している方はご注意ください。

おわりに


業務改善助成金について色々書いてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

自社の生産性を上げることで利益が増え、労働者の賃上げで職場のやる気が上がれば、企業活動の良い循環が作り出せそうですね。

また、業務改善助成金以外にも、賃金引上げを支援する助成金はあります。

非正規雇用労働者のキャリアアップに対して助成される「キャリアアップ助成金」なども、上手く活用することで、労働者の賃金引上げを行うことができます。「キャリアアップ助成金」については、こちらの記事を参照ください。

ぜひ専門家や労働局の職員などに積極的に相談をして、自社にとってより良い助成金を活用し、貴社の発展に繋げてください。

筆者プロフィール

家原 理(いえはら おさむ)
2005年に社会保険労務士資格を取得し、大手資格学校にて社労士教材を作成。
その後、大手社会保険労務士法人を経て、2011年に独立し、社会保険労務士事務所を開設。現在、社会保険労務士法人ベリーベストに在籍中。

【本人よりコメント】
労働社会保険関係法令は、近年頻繁に改正され、その仕組みも複雑化しており、その流れに適切で柔軟に対応することが会社経営に求められています。社会保険労務士としての専門知識や経験を活かし、複雑な仕組みをわかりやすく、そしてタイムリーにアドバイスすることでサポートすることを心がけています。

社会保険労務士法人ベリーベスト:http://www.vbest-sr.jp/
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