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従業員に長く活躍してもらうために~職場定着支援助成金とは?~

2017.10.16 / 名古屋

家原 理(いえはら おさむ)

社会保険労務士法人ベリーベスト 社労士

求人の傾向


平成29年7月度の有効求人倍率は、全国で1.52倍と非常に高水準でした。その中でも、愛知1.84倍、静岡1.57倍、岐阜1.80倍、三重1.65倍と、東海エリアはいずれも全国平均を上回る水準の倍率となっており、この傾向は継続しています。

1人の求職者に対し、1.5~2社の企業が求人を出していますから、良い人材を確保するために、採用力を向上させることは、企業の取り組みとしてますます重要になっていますね。

ただし、せっかく採用をしても、入社した従業員が短期で離職してしまったら、それまで採用活動にかけたコストはおろか、他の従業員の業務負荷の増加や、社内の雰囲気の悪化など、会社にとっては大きなマイナスとなってしまいます。

そこで今回は、離職率を下げる取り組みに対して助成される「職場定着支援助成金」についてご紹介します。

離職の原因は?


まず、従業員の離職理由はどのようなものでしょうか。気にはなっても、なかなか退職者に本音は聞きづらいかもしれません。

以下の表は、厚生労働省が平成28年12月に発表した「転職者の(前職の)離職理由」から、転職者の「主観的な離職理由」をピックアップして、当事務所で結果をまとめたものです。

男女および年代ごとに、多かった離職理由を1位~3位まで順位付けしました。



上記のデータから、特に30代において、男性は「会社の将来が不安だった」、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が最も多いことがわかります。また、「給料」や「労働条件」はいずれの年代でも離職理由の上位に入っています。

そして、上述のようなデータが出ているということは、多くの会社が同様の理由で悩んでいるということでもあります。では逆に、上手くいっている会社はどのような雇用管理を実践しているのでしょうか?

「魅力ある職場づくり」と職場定着支援助成金


良い雇用管理を実践している企業の共通ポイントとして「魅力ある職場づくり」があります。

この「魅力ある職場づくり」という言葉は厚生労働省も提唱しており、この取り組みをしている企業は、①従業員の意欲向上、②業績・生産性の向上、③人材確保、の3点で効果が上がっていると、調査データ(※1)でも明らかになっています。

(※1)厚生労働省「今後の雇用政策の実施に向けた現状文政に関する調査研究事業」(平成27年)

さて、ここでいう「魅力的な職場作り」とは、誰にとって魅力的な職場なのでしょうか?
この場合は従業員ですね。従業員にとって魅力的な職場であるからこそ、上記の①~③が実現されるのです。

そして、非常に前置きが長くなってしまいましたが、この「従業員視点での魅力的な職場づくり」に大いに活用できる助成金が、今回ご紹介する「職場定着支援助成金(雇用管理制度助成)」なのです。

中小企業の雇用をサポートする「職場定着支援助成金」


職場定着支援助成金は、2段階に分かれた助成制度を持つことが大きな特徴です。
具体的には、Ⅰ.雇用管理制度の導入時、Ⅱ.目標離職率の達成時、にそれぞれ助成金が支給されます。

Ⅰ.雇用管理制度の導入時
新たに雇用管理に関する制度を導入した時に、助成金が受給できます。
具体的に助成対象となる雇用管理制度は、次の表の①~④になります。いずれの制度も、導入するごとに10万円が助成されます。



特に研修制度やメンター制度は、制度として規定はしていなくても、既に実践されている会社も多いかもしれません。上の図に沿った取り組みを、自社がしているか、また今後出来そうかを、いま一度確認して検討頂くと良いかと思います。

Ⅱ.目標離職率の達成時
Ⅰ.の制度導入・実施の結果、離職率の低下に成功した場合、その目標達成に対して助成金が支給されます。

雇用管理制度を導入する前の「計画時離職率」と、制度を実施した後の「評価時離職率」を比べて、会社の雇用保険の被保険者数ごとに定められた数値(=下げ幅のポイント)を上回る離職率低下を達成することで、57万円が支給されます。



このとき、離職率は「対象事業所内の雇用保険一般被保険者数」の人数をベースに計算します。

なお、もともと離職率が低く、(計画時離職率)-(離職率の目標低下ポイント)がマイナスとなる場合や、新規事業の創出で計画時離職率が計算できない場合は、評価時離職率が0%であることが達成要件となります。また他の助成金同様、生産性要件を達成している会社は、助成額が最大72万円まで上がります。


離職率のハードルをクリアするために


ここまで、職場定着支援助成金について説明をしてきました。
本助成金は、上述のⅡ.にあったように、離職率低下の実現が支給要件になっています。しかし、雇用管理制度を取り入れさえすれば、離職率が下がるわけではありません。

雇用管理制度を導入する前提として、
(1)自社の従業員の退職の傾向はどのようなものか
(2)上記の退職傾向を解消するために、どのような雇用管理制度を導入すれば効果的か
などを、ぜひ確認してみることをおすすめします。

(1)に関しては、従業員アンケートや個別の面談を実施して、従業員視点での「自社の良い所」「改善した方が良い所」など、従業員の声を収集してみるのも良いでしょう。

(2)に関しては、どのような制度が自社に合うのか、(1)の結果をもとに、労働局の担当者や社労士など専門家に相談することも有効です。

ぜひ「従業員にとって魅力的な職場づくり」のきっかけとして本助成金を活用し、離職率低下の目標を達成して、下図のような好循環を作り出してもらえればと思います。



おわりに


2017年度も下半期に入り、本年度の助成金に関しては既に申請を締め切っているものも出ています。

しかし、助成金は思い立った時に直ぐに申請・受給できるものではありません。計画書の作成・提出や、就業規則など規定の変更、更には実施期間等を含めると、1年を越える取り組みが必要なものも多くあります。

来年度以降の助成金も見据えて、労働局や専門家との相談時に使える診断用カルテを作成いたしましたので、ぜひご活用頂ければと思います。

特に中小企業にとっては、返済不要である助成金を上手に活用することで、設備投資面や社内体制作りで大きな恩恵を受けられる場合が多くあります。長期的視点も含めて、活用をご検討頂ければ幸いです。

筆者プロフィール

家原 理(いえはら おさむ)
2005年に社会保険労務士資格を取得し、大手資格学校にて社労士教材を作成。
その後、大手社会保険労務士法人を経て、2011年に独立し、社会保険労務士事務所を開設。現在、社会保険労務士法人ベリーベストに在籍中。

【本人よりコメント】
労働社会保険関係法令は、近年頻繁に改正され、その仕組みも複雑化しており、その流れに適切で柔軟に対応することが会社経営に求められています。社会保険労務士としての専門知識や経験を活かし、複雑な仕組みをわかりやすく、そしてタイムリーにアドバイスすることでサポートすることを心がけています。

社会保険労務士法人ベリーベスト:http://www.vbest-sr.jp/

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