居場所づくり、それこそが経営者の仕事

専門家コラム

2017.11.01 / 名古屋

三ッ口 洋一

Team N+1 代表

「ええ〜っ、そんなの・・・・アリエナイ」


中小企業の社外広報部を目指すTeam N+1の三ッ口です。

「私を成長させてくれる会社に就職したい」
二十歳を過ぎた大学生が真顔で言いました。
「働くというのは自分を抑えて家族のためにお金を稼ぐことですよね。だから僕には付き合ってる彼女がいますが、家庭を持ちたいとは思えないんです」とは別の大学生。

ともに男の子で、いわゆる偏差値の高い大学の学生です。
仕事の内容でもなければ業種ですらない。そもそも働くということに動機がないんですね。

私もそうですが、昭和のおじさんたちには衝撃的ですよね。
「勉強やスキルアップなんて自分でするもんだろ。そんなことまで会社がやることなのか!」
「頑張っていっぱい稼いで、家族を豊かにしたいと思わないのか!」
おじさんたちの声が聞こえてきそうです。

残念ですが、そんな価値観は通用しません。
お互いに「アリエナイ」のです。


子どもは大人の背中をよく見ている


大人の私たちが、家族を顧みず仕事に没頭したり、挙句の果てに体や心を病んだり、そこまでいかなくても辛そうにしているのを、子どもたちはよく見ています。

にも関わらず、大人たちは言います。
ああしろ、こうしろ、あれするな、これしちゃダメ・・・・。
お父さんだけじゃないですよ。お母さんも学校の先生もみんなです。

これは偏見ですが、そういうことを言う方は、みなさん幸せそうな顔をしていません。一様に辛そうです。

子供たちはやりたいことがやれず、やりたくもないことや苦手なことの克服に多くの時間をとられます。

あれができない、これがだめだと何年も言われ続けて楽しいはずがありませんね(「生まれたときには五体満足で生まれてきてくれてありがとう。それで十分だよ」なんて言ってたくせにね)。やがて子供たちは気づきます。

「思った通りのことを言ったり、好きなことをやろうとしてはいけないんだ」
「僕のようなダメな子が生まれてきたおかげでお父さんやお母さんに苦労をかけているんだ」
「親や先生の言うことさえ聞いていれば、私なんかでも許されるんだ」
「ああ、働くってそういうことなんだ、生きていくってこういうことなんだ」

あるいは
「あんたたちみたいになんかなりたかねえよ」
と大人になること自体を悲観してしまうかもしれませんね。


低い自己肯定感


子供たちがそう思ってしまうのも無理ありません。親も先生もみんな良かれと思ってやっているので、誰も悪くないのですが、全部勘違いです。

そしてそれらの結果「自己肯定感」はどんどん下がります。内閣府が毎年発表している「子ども・若者白書」の平成26年版で「今を生きる若者の意識~国際比較から見えてくるもの~」という特集が組まれています。
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/index.html

先進6か国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国、スウェーデン)との比較の中で日本人の若者(13-29歳)の自己肯定感は最低です。そのギャップを埋めようと子供たちは何とかしてダメな自分の存在を正当化する免罪符を手に入れようとします。それが偏差値や学歴、資格だったり、知名度のある企業に就職することだったりするのはないでしょうか。


経営者はどう捉えるべきなのか


もちろん若者全部がそうだと決めつけるわけではありませんが、人を雇おうとするなら、経営者はまずはそんなふうに育てられた彼らを受け止める度量が必要です。

たとえ自信がなさそうにしている者にも「必ず何か才能と可能性があるはず」と信じられるかどうかですね。それを活かす仕事や環境が作れるかどうか、経営者の手腕が問われているのです。そういう時代なのだと私たちが認識しなければなりません。

やる気があって、元気で、健康で、前向きで、真面目な人がいい。誰だってそうです。でも若者に限らず、そんな人はいません。幻想です。

ある企業の採用担当者が言っていました「大学生で、健康であいさつができれば御の字」だと。なぜそんな⾵になってしまったのでしょうね。教育や社会や企業や家庭が悪いのでしょうか?

いいえ、違います。責任は私にあります。あなたにもあります。でも私もあなたも誰も悪くありません。今の社会の価値観を構成しているのは私たちです。現状を受け入れ、これから何をどうしていくかが大事です。今さら犯人探しなど意味がありません。

ありのままの彼らを受け入れ、育てていきましょう。能力のない人などいないのです。本人も気づいていない、あるいは隠しているかもしれません。⾒つけて伸ばしてやろうではありませんか。


居場所づくりこそが経営者の仕事


ある⼟⽊⼯事業では、⼤学の建築科から⼈を採⽤することを⽌めました。最初は思うように⼈が採れなかったということもありますが、それだけではありません。同社の社⻑いわく「私たちが欲しいのは現場を仕切れる現場監督。なのに⼟⽊科の学⽣でさえ、オフィスで図⾯を引くのが仕事だと思ってる。それならいっそ素⼈の⽅がマシ」と考え⽅を変えたのだそうです。

もちろん最初は覚えることがたくさんあって苦労するかもしれませんが、そのうちマネジメントの才能を発揮する人が出てくるのだそうです。「他社で評価されなかった人たちが、小さな成功体験によって目つき顔つきが変わるんだ。それを見出すのが、私は最高に嬉しい」と社長はおっしゃっていました。

美術科から人が来たり、異業種から転職してきた人が生き生きと活躍しています。素晴らしいと思いませんか。

そういうことがどんな企業にも当てはまるわけではありませんが、私たち経営者や大人が、年齢も性別も関係なく、萎縮して自信をなくしている人たちを受け止めて、居場所を作る。そこで秘めたる力を引き出し、自信をつけ、たのもしい戦力に育て上げる。そんな企業に人が集まります。

先輩のコンサルタントは「人はお金と志のあるところにしか集まらない」と言い切りました。経営者の皆さん、そんな時代の空気を感じませんか?企業=経営者=あなたの考え方・在り方=志が、企業のブランドを形作るのです。

筆者プロフィール

三ッ口 洋一
1961年名古屋市生まれ。プロトコーポレーションと中部経済新聞社で、雑誌編集、経済部記者、ビジネスセミナー開催、広告営業、フェイスブックページ運営などを手がける。約30年間のメディア業界で得たノウハウと2万人を超える人脈とで「中小企業のための社外広報部」というニーズに応えるべく2014年独立。2016年には名古屋女子広報チームNPR48B(Nagoya Public Relations 48 for Business)発足。中小企業庁未来企業サポート「ミラサポ」登録専門家。メルマガ「不定期ビジネスニュース」管理人。起業家支援イベント「N-1グランプリ」実行委員。
【Team N+1】http://hitouch0520.wix.com/team-nplus1
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