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年末に考える、2017年の労働問題の振り返りと対策

専門家コラム

2017.12.01 / 名古屋

成田 哲也(なりた てつや)

弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士

こんにちは、ベリーベスト法律事務所の成田です。

2017年も残り1ヶ月となりました。今年も様々な労働問題がニュースで取り上げられましたが、とりわけ多かった話題はやはり「長時間労働」に関するものではないでしょうか?
大手企業の長時間労働がニュースなどに取り上げられ、人々の関心が高まっています。

この記事では、2017年に起こった長時間労働に関する事例と、今年施行された労働に関する改正法をまとめております。来年の企業活動に向けて参考にしてください。
なお、記事の最後に「労務リスクチェックシート」のご紹介をしています。合わせてご活用ください。

2017年は長時間労働が要因となった労働問題が多く発生


2017年にニュースで取り上げられた労働問題を振り返ってみましょう。

【ヤマト運輸の残業代未払い】
宅配業者最大手のヤマト運輸の博多北支店において、2016年6月から7月の労働時間管理が適正でなく、労働基準法に違反している疑いがあるとして、ヤマト運輸と博多北支店の幹部2人が福岡地方検察庁に書類送検(事件が検察庁に送られること)されました。

配達員に対して労使協定で定めた上限を超える違法な長時間労働をさせたこと、配達員に対して残業代の一部を支払っていなかったことが具体的な理由です。ヤマト運輸は2017年2月から未払い賃金について全社調査を始め、同年9月までにグループ全体で合計約240億円を支払っています。

【セコムに是正勧告】
2017年7月、警備業最大手のセコムが東京の労働基準監督署から労働基準法違反(長時間残業)で是正勧告を受けました。

【電通の違法残業】
大手広告会社である電通の社員が2016年12月に自殺し、労災に認定されました。
自殺した原因は自殺する直前に残業時間が大幅に増加したことにあると労働基準監督署が認定しました。労働基準監督署は、自殺する直前の1カ月の残業時間を月約105時間と認定しました。しかし、適切に勤怠管理がなされていたか不明であり、実際の残業時間はもっと多かった可能性はあります。また、社員の遺族は上司によるパワハラ行為があったと主張しており、これも自殺の原因である可能性もあります。

【三菱電機での新入社員自殺「パワハラ」提訴、長時間残業】
三菱電機の新入社員だった男性が自殺したのは上司などによるパワーハラスメントや社内でのいじめが原因であるとして、2017年9月に亡くなった社員の両親が三菱電機に対して損害賠償を求めて訴訟提起しました。同社では、2017年1月、新入社員に違法残業させたとして、労働基準法違反の疑いで、三菱電機と新入社員の上司が書類送検されました。

【小中学校の教員による長時間労働】
教員でも長時間労働が問題となっています。文部科学省が発表した教員勤務実態調査(2016年度)では教員の平均勤務時間が小学校、中学校でおもに1日平均11時間を超えています。いくつかの自治体では、早退勤デーや土日の部活休止日を試行しています。また、小中学校の夏休みを10日程度に短縮し、1日あたりの授業時間を減らすことで教員の長時間労働の解消を図る自治体も出てきています。

このように、2017年は長時間労働が要因となった労働問題が多く発生した年といえます。あわせて、労働に関する法律も改正され、施行されていますので、あわせて確認しておきましょう。


働き方改革の方針のもと法改正が進む



「働き方改革」は、50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰もが活躍できる社会を実現するための改革です。働く人の立場、視点で取り組み、多様な働き方を可能にし、働き手を増やし、労働生産性を上げることが目的です。
2017年にも、労働に関する法律が改正されました。振り返る意味でも押さえておきましょう。

・改正育児介護休業法
・改正男女雇用機会均等法

人事担当者は抑えておきたい!【2017年最新版】法改正一覧にて詳しくご紹介しています。

労働者による労働相談は年度末にピークを迎える



私どもの法律事務所にも多くの労働相談をお寄せ頂いております。特に多くなる時期は年度末にあたる2月、3月です。区切りということで、人の入れ替えが激しくなるこの時期は、解雇、退職などが増えることで、必然的にトラブルも多くなってきます。


年度末に向けた対策を


今年は長時間労働のニュースが注目される年でした。そして、年度末には労働トラブルが多くなることから、今の時期にしっかり現状を振り返り、対策をとることが必要です。
特に労働トラブルの温床となる長時間労働への対策についてみていきましょう。



ポイントは上記の2つです。ひとつずつみていきましょう。

① 未払い残業代について

従業員に対して残業させたにも関わらず残業代を支給していないと、未払いの部分について付加金や遅延損害金を付けて支払わなければいけなくなる可能性があります。場合によっては送検されることもあります。このため、未払いの残業代がないようにしましょう。

残業代が未払いの場合とはどのようなケースでしょうか?
それは、会社の就業規則などで定められた残業代を支払っていない場合や、労働基準関係法令に定められた最低限の残業代を支払っていないことを指します。

ちなみに、就業規則は労働基準法89条により、常時10人以上の労働者を使用する使用者(会社)は就業規則を作成する必要があります。就業規則には始業時間、終業時間、賃金に関する事項を記載する必要があり、行政官庁に届け出をしなければいけません。
基本中の基本ですが、規則や法令に基づき、しっかりと残業代を支払いましょう。

② 違法に残業させないようにしましょう

違法に残業をさせてしまった場合でも送検されることがあります。残業代の未払い状態が長期化している場合、残業自体が違法である状態が長期化している場合、またはその両方が長期化している場合など送検される可能性が高くなります。

実際に公表されている事例では、技能実習生1名に違法な時間外労働を行わせ、割増賃金約5万円を支払わなかった場合に送検されています。

違法に残業をさせてしまうとは、どういうケースでしょうか?
労働基準法32条1項より、会社は、労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはいけないとあります。しかし、労働基準法36条より、労使協定(通称:サブロク協定)を結び、行政官庁に届け出た場合には32条の制限を超えて残業させることができます。

このため、そもそもサブロク協定がないにもかかわらず休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させた場合は労働基準法32条に違反しており、違法な残業をさせることになります。

では、サブロク協定で上限なく残業時間を決めることができるのかという点ですが、上限があります。一般の労働者の場合、1カ月で45時間、1年で360時間です。

ただし、臨時的に制限時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合、特別条項付きの協定を結べば、1カ月で45時間、1年で360時間の制限を超えて残業させることができます。あくまで臨時的なものですので常態化している場合には違法な残業と評価されると考えられます。

特別条項で設けることができる残業時間に関して現時点で法律上の上限はありません。ただし厚生労働省は、脳や心臓疾患による過労死の労災認定基準とし、発症前1カ月間に約100時間、または発症前2~6カ月間に1カ月当たり約80時間を超える残業があった場合に過労死の危険性が高まり、業務と発症との危険性が強いとしています(過労死ライン)。

このことから、これらを超えて残業をさせることは従業員の健康を害する可能性があり、健康を害した原因が残業にあると評価されるため、残業時間がこれらの基準を超えないように注意すべきです。

【厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」】
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/040324-4.html

【厚生労働省 過労死ライン】
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf


違反するとどうなるか?



上記は、労働基準法に定められたものであるため、違反すれば送検される恐れがあります。

また、2017年5月から、厚生労働省はいわゆる「ブラック企業リスト」の公表を開始しました。これは、送検事案、局長指導事案をホームページに公表するというものです。

掲載する情報は、企業・事業場名称、所在地、公表日、違反法条項、事案概要、その他参考事項となっています。労働基準関係法令違反に係る公表事案として公表されてしまうと、企業としての信用を落とすことになります。

【厚生労働省 労働基準関係法令違反に係る公表事案(ブラック企業リスト公表)】
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf

また、従業員から訴えられるというリスクも高まるため、法令遵守にしっかり取り組みましょう。

最後に、従業員の残業時間を正確に把握するためには、当然、従業員の勤怠管理を適正に把握する必要があります。厚生労働省は勤怠管理についても、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表しています。あわせて、確認してみましょう。

【厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」】
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html


まとめ


法令遵守は企業経営において取り組まないという選択肢はありません。しかし、「認識していなかった」という経営者がいるのも事実です。認識していないからと言って責任を免れられるわけでありません。基本的なことではありますが、今一度、労働に関する法令を見直すことで不要なトラブルや損害を被らないように対策に取り組みましょう。

そこで、あなたの会社の労務リスクについて把握するための、チェックシートをご用意いたしました。7つの質問で簡単に労務リスクが確認できます。ぜひ、自社の状況を確認してみてください。

年度末に差し掛かり、労働問題が多くなって来る前に対策を行うことが大切です。具体的な対策方法やトラブルでお悩みの方はベリーベスト法律事務所の「労働問題チーム」までご相談ください。

筆者プロフィール

成田 哲也(なりた てつや)
大学では化学を専攻し、卒業後、国家公務員になる。
その後、法科大学院へ進み、司法試験に合格し、弁護士になる。
現在、ベリーベスト法律事務所に所属している。
一般民事事件、企業法務を広く担当し、労働問題であれば労働者側、使用者側の事案を担当している。


労働問題に限らず、トラブルが発生したり、困った場合にはすぐに弁護士に相談されることをおすすめします。
残業代の請求であれば請求できる期間が限られていますし、退職の合意をした後に退職について争うことは厳しくなってきます。
困った場合にはすぐに弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所 https://www.vbest.jp/
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