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最初の上司との関係がキャリアに大きく左右する!?~新入社員を迎える前に気をつけておきたい事~vol.3

2019.03.12 / 愛知・岐阜

大谷 直之

株式会社Reproject 代表取締役

こんにちは、株式会社Reprojectの大谷です。お待たせいたしました、この連載も第3回目となりましたね。今回も引き続き、筆者の体験談をもとに新入社員を迎える際に心がけるべき意識とコツをいくつか取り上げたいと思います。

【過去の記事】
・新入社員を迎える前に気をつけておきたい事~安易な離職と指示待ち人間を生まないために~

・「お客様にすると、勘違いする」~新入社員を迎える前に気をつけておきたい事~vol.2

新入社員の方々は、入社すると自身のキャリアにおいて大きな変化を迎える節目に直面することとなります。学生だった今までとは環境や求められる事も大きく変化し、その変化に戸惑うことも何度もあるかと思います。

Vol.1でもお伝えしたように、そんな人生において大きな節目にいる新入社員の方々はその直面する変化に不安を感じることが多くあるかと思います。きちんと新入社員に成長してもらうためには、まずは教育担当の方はその不安の気持ちに共感し、接することで「信頼」を得ることがスタート地点です。

とはいえ、Vol.2でもお伝えしたように、新入社員を「お客様」にしてはなりません。1から10まで手取り足取り教えてあげることは、成長の阻害要因となります。

「自分の力で為し得た」という「自己効力感」を得てもらえるように接する必要があります。困難に打ち勝ったという成功体験がもっとチャレンジしようという更なる熱意を生み出します。失敗しないようにと、親切心で事細かく熱心に教えようとしたことが、逆にアダとなり「指示待ち人間」を生み出す元凶となってしまうことがあるので注意が必要です。


トランジション・サイクルとは?



Vol.1でもお伝えしたように、当時20代後半勘違い上司であった私は、新入社員T君のやる気を削ぎ、そして1年足らずでT君を離職させてしまいました。

「個人のキャリア発達」「組織の成長」等のためには何が必要かということが分かってきた今では、「あの時ああしておけば」、「何故こうしたことを理解していなかったのだろう」と後悔の念がやみません。そんな後悔の念が生まれる時に、当時知っておきたかったといつも思うのが「トランジション・サイクル」についてです。

「トランジション・サイクル」とは、ロンドン・ビジネス・スクールのナイジェル・ニコルソンが提唱したキャリア理論で、個人のキャリア発達は以下の4つの状態を循環しながら発達していくという考え方です。




「Ⅰ(Ⅴ).新しい世界に入る『準備』段階」
新入社員で言えば、就職活動をする学年になり、ホームページや先輩の話等を通して就職活動に備えるといった段階です。ミドル層の方で言えば、別の部署に異動が決まり新しい部署に関することを調べたり、勉強したりといった段階になります。

この段階で過度な期待や浮かれた楽観的な考えにより甘く考えていたり、逆に過度な恐怖や嫌気を持ってしまうと次の「遭遇」段階において悪影響を及ぼします。

「Ⅱ.実際にその世界にはじめて入っていって、いろいろなことに『遭遇』する段階」
新入社員で言えば、実際に内定をもらった企業で働き始めるといった段階です。新たな世界に入り、自分の知らないことや予想していなかったことなどが次々と起こり、Vol.1で紹介したように不安や恐怖心を抱いたり、逆に興奮したりなど、感情や情緒が大きくうごめいていきます。

この段階で「Ⅰ準備」の段階で自分が考えていた状況と大きく違っていたりすると「こんなはずじゃなかった!」といった戸惑い(リアリティ・ショックと呼ぶ)が大きくなり、最初からつまづいたり、拒絶したり、その仕事を「やめる」ことを選んだりします。

「Ⅲ.新しい世界に溶け込み『順応』していく段階」
遭遇した新しい世界に徐々に溶け込んでいく段階です。Vol.2でも紹介したように新しく遭遇したことにチャレンジし、乗り越えるという成功体験を繰り返し「自己効力感」を得ていくことで、成長し順応していきます。

しかし、ここで逆に順応できなかったり、「学習性無力感※」などを感じてしまうと、情緒不安定になったり、チャレンジすることをやめたり、諦めてその仕事を「やめる」ことを選んだりします。

※学習性無力感・・・心理学者のマーティン・セリグマンが提唱した理論。
挫折や失敗の経験の繰り返しによって、学習される無力感であり、通常、自己効力感の著しい低下を伴い、以下のような心理状態に陥る。

①「何をしても無駄だ」と思い、環境に対して自ら働きかけようとしなくなる。
②実際には成功できるようなことに対しても学習意欲を失う。
③情緒的に混乱する。
学習性無力感は伝染し、チーム等のグループにおいても集団的無力感が起こる場合がある。

「Ⅳ.もうこの世界は新しいとはいえないほど慣れて、落ち着いていく『安定化』段階」
自分の役割や目標などを理解し、また組織の中で信頼関係も生まれ、いわゆる一人前となっていく段階です。しかし、前の「順応」段階でうまく適応できていないと、自分自身に自信が持てなかったり、自分自身をごまかしたり、仕事への意欲を失い、諦めの気持ちを持ったりします。「諦め社員」としての、悪い方向での安定化も起こります

そして、また新たな事に遭遇するⅠ(Ⅴ)に戻り、循環しながらキャリアが発達していく(成長していく)という考え方です。こういったサイクルを回るたびに一皮むけ、上昇のスパイラルを描いていくこととなるのです。


最初の上司との関係がキャリアに大きく左右する



当時の私がとった行動は、T君が「遭遇」したリアリティ・ショックを増大させ、更には自己効力感を奪い、「順応」どころか、戸惑いや不安を更に大きくし学習性無力感を引き起こすような接し方をしていたのではないかと、思い出す度に後悔が募るのです。

本来は新入社員が「遭遇」したリアリティ・ショックを理解しながらも、自分で為し得たという成功体験の基に自己効力感を上げることで職場に「順応」してもらい、1人前になってもらうという「安定化」の状態にすることが、上司の仕事だったにもかかわらず・・・。

最初の配属先の直属上司と良い関係を築いている新人の方が、入社後の幻滅感(リアリティ・ショック)も緩和され、適応状態が良いとされ、直属上司と部下との間で活発にやり取りがあるかどうかで関係性の良否が決まるというデータが出ています

また驚くべきことに、ここでの関係性の良否が20年以上経過しても効果をもたらしているという調査結果が出ているのです。
最初の上司がどのような人であったかどうかが今後何十年も続く一人のキャリアにも影響してしまうというのです。

仰々しい話にはなってしまいますが、事実として、教育担当となったあなたは、目の前にいるその人のキャリアに何年にもわたり大きく影響を与える人間になる存在なのだという認識が必要となります。

私の話になぞらえれば、私の行動はT君のキャリアに対して大きなマイナスを与え、また組織においても大きなマイナスを与えた行動だったのです。

確かにキャリアは個人のものであり、究極的責任は個人に帰属するものではありますが、組織内の各個人のキャリアが円滑に進むことで、組織としてもより良くなっていくこともまた事実です。

そういった組織であれば、個人と組織の双方がより良い形で上昇をしていきますが、そうでなければ、組織の活動が停滞してしまう可能性も否めません。

もしこの文章を読んでいる経営陣の方がいらっしゃるようでしたら、

・自社組織の現状はどうなっているのか?
・当時の私のような思い違いをしている従業員はいないか?

などをヒアリング、従業員意識調査などを行い、正しく現状を認識することを強くお勧めします。


組織としてのフォローや外部の力を借りる



また現実的なところ、自分の仕事を持ち、手一杯となっている現場の教育担当者の方も多いのではないでしょうか。現場の教育担当者にだけ重い責任を背負わせるだけでなく、組織としてのフォローや外部の力を借りることも選択肢としてあります。

例を挙げれば、

・採用段階で、現実の仕事の姿を入社後のギャップをなるべく少なくできるようイメージしてもらえるような採用活動
・人事担当者よる定期面談
・キャリア・コンサルタント等の外部メンターの活用
・新入社員の気持ちの準備を促す内定者研修等の実施
・トランジション・サイクルに合わせた年間を通した定期的な新入社員研修の実施
・教育担当者への「教育者研修」の実施

など、組織として取れる選択も多くありますので、うまく活用することも重要な事かと思います。

「働き方改革」と叫ばれる現在ですが、DNAの螺旋階段のように、組織と個人のキャリアの双方がうまく絡み合い、スパイラルを描いて上昇していけるような状態をイメージしながら、新入社員と接すると良いのではないでしょうか。

また当社では、「思い描くあるべき姿に生まれ変わる」をコンセプトに組織コンサルティング、社員研修等を行っております。
ご希望に合わせて下記サービスもぜひご検討いただけますと幸いです。

伴走型新入社員研修
http://re-pjt.com/new-employee-training/
従業員意識サーベイ
http://re-pjt.com/employee-survey/

次回、vol.4では「動機付け要因と衛生要因」をテーマにお伝えできればと思います。

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筆者プロフィール

大谷 直之
大手人材サービス会社に新卒入社。マネージャーとして、多くの新規出店、立て直し事業に従事。そこで身につけた実践力を武器に独立。組織活性化のためのビジョン明確化~課題発見~アクションプランの策定を得意とし、自らも組織コンサルタント、研修講師として様々な企業問題解決に取り組んでいる。

「思い描く、あるべき姿に生まれ変わる」が企業コンセプト。クライアントが目指すビジョンを、時間をかけじっくりと明確化させたうえで行うコンサルティングは、満足度の高さに定評がある。

株式会社Reproject代表取締役 静岡大学教育学部卒。2級キャリアコンサルティング技能士。趣味は園芸。

株式会社Reproject http://re-pjt.com/

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