2018年、配偶者控除拡大で「103万円の壁」が崩れたら?

2017.03.27 / 愛知・岐阜
たくさんの壁?
こんにちは。税理士法人ベリーベストの岸健一です。
昨年末に国会で議論されていた「配偶者控除の改正」。すったもんだの挙句、2018年1月より現在の103万円から150万円に引き上げられる見込みとなったことはご存知の方も多いと思います。
ではこの改正によって、現在パートで働いている方にどのような影響があるでしょうか?
また、それによって企業にはどんなリスクがあり、どう対応したらよいでしょうか?
どの壁が一番高いのか?
まずは、現在の税制上の「壁」について、ご説明しましょう。
実は、扶養の範囲内にはいくつかの種類があります。
100万円の壁・・・住民税の扶養範囲
103万円の壁・・・所得税の扶養範囲
130万円の壁・・・社会保険の扶養範囲
この3点です。
例えば、夫の年収が600万円の場合で、妻が100万円稼いだ場合から200万円稼いだ場合に、世帯手取りがいくらになるか計算してみましょう。
※なお今回の事例は、2016年10月に改正された社会保険適用拡大の対象外企業に働く妻を例にお話しさせていただいています。関連記事として、2016年10月より始まった社会保険適用拡大に関する記事はこちらをご覧ください。
単位は万円です。
ちょっとわかりづらいので、大事なところをフォーカスしたグラフを作ってみました。
縦軸が世帯手取り年収、横軸が妻の年収です。
注目したいのは、130万円で一度ピークを迎え、そこから下降。130万円時代と同じ手取り世帯年収を稼ぐには、なんと150万円ちょっと稼がないといけないということです。つまり、130万円には大きな壁があるということです。
130万円稼ぐと社会保険の扶養が外れ、妻が社会保険料を控除されることにより世帯手取り年収が減少。130万円と同じ世帯手取り額を維持するためには150万円稼がねばなりません。
時給1,000円だとして200時間、時給1,500円としても133時間の労働を加えて130万円と同じ世帯手取り年収。これは辛いですよね。世間が130万円の壁を意識するのは当たり前だと思います。
逆に言えば、100万円と103万円の壁はそんなに意識することはなさそうです。
確かに夫の配偶者控除がなくなりますが、配偶者特別控除という緩衝ゾーンがあります。妻の年収が103万円を超えたからと言って即配偶者控除の38万円がなくなるわけではなく、38万円の特別控除が収入に従って徐々に減らされるイメージとなります。
従って、意識すべきは100万円、103万円の壁ではなく、130万円の壁のほうであるといえます。
しかしながら、世間一般では103万円の壁を超えると大損だという風評があり、パートタイマーは103万円を強く意識して働いていらっしゃいますよね。
この103万円の壁は、ただでさえ労働者が不足している日本国内において大きな問題となっています。
【結論】103万円の壁はなくなるが、130万円の壁が重しとなる
そこで現政権は、専業主婦やパート主婦の社会進出を図るために、2018年から103万円の壁を取り払って150万円に引き上げる見込みになったのです。
従って、103万円の壁という風評は消え去ると予想されます。しかしながら社会保険の130万円の壁は変更なし。従って、130万円の壁が今後の重しになるでしょう。
今後に向けて企業はどう対応すべきか?
ではきたる2018年の改正に向けて、企業はどのように対応すればいいでしょうか?
まずは、現在103万円の扶養範囲で働いている方がどれくらいいるかを把握するとよいでしょう。そして、その方たちに向けて2018年の改正後にどのような働き方をしたいかをヒアリングしてみましょう。まだ改正を意識していない方も、それによって自分の働き方の見直しをするきっかけになります。
2018年以降は、130万円の壁と150万円の壁が存在することになりますが、正直なところ、社会保険の改正がない限りは130万円の壁を意識せざるを得ません。もちろん、妻が社会保険の扶養を外れて単独で社会保険に加入した場合には、将来受け取る年金の額が増加することになりますので、その点はアピールできます。
どうしても長時間働いてほしい優秀な方には社会保険料負担分の賃金上昇を約束する、あるいは正社員等へ処遇を引き上げる方法をとるのが現実的かもしれません。いずれにせよ、労働力確保のために、税制、社会保険の改正は注目し続けたいですね。
飲食店などのサービス業界は、主婦の方々が多く働いています。主婦の働き方の変化は企業側としても注視すべきことです。今回の改正を機に、人材確保の施策をより強化してみてはいかがでしょうか?
配偶者控除や制度に関するご相談は、あらゆる専門家が在籍するベリーベストグループまでご相談ください。
こんにちは。税理士法人ベリーベストの岸健一です。
昨年末に国会で議論されていた「配偶者控除の改正」。すったもんだの挙句、2018年1月より現在の103万円から150万円に引き上げられる見込みとなったことはご存知の方も多いと思います。
ではこの改正によって、現在パートで働いている方にどのような影響があるでしょうか?
また、それによって企業にはどんなリスクがあり、どう対応したらよいでしょうか?
どの壁が一番高いのか?
まずは、現在の税制上の「壁」について、ご説明しましょう。
実は、扶養の範囲内にはいくつかの種類があります。
100万円の壁・・・住民税の扶養範囲
103万円の壁・・・所得税の扶養範囲
130万円の壁・・・社会保険の扶養範囲
この3点です。
例えば、夫の年収が600万円の場合で、妻が100万円稼いだ場合から200万円稼いだ場合に、世帯手取りがいくらになるか計算してみましょう。
※なお今回の事例は、2016年10月に改正された社会保険適用拡大の対象外企業に働く妻を例にお話しさせていただいています。関連記事として、2016年10月より始まった社会保険適用拡大に関する記事はこちらをご覧ください。
単位は万円です。
ちょっとわかりづらいので、大事なところをフォーカスしたグラフを作ってみました。
縦軸が世帯手取り年収、横軸が妻の年収です。
注目したいのは、130万円で一度ピークを迎え、そこから下降。130万円時代と同じ手取り世帯年収を稼ぐには、なんと150万円ちょっと稼がないといけないということです。つまり、130万円には大きな壁があるということです。
130万円稼ぐと社会保険の扶養が外れ、妻が社会保険料を控除されることにより世帯手取り年収が減少。130万円と同じ世帯手取り額を維持するためには150万円稼がねばなりません。
時給1,000円だとして200時間、時給1,500円としても133時間の労働を加えて130万円と同じ世帯手取り年収。これは辛いですよね。世間が130万円の壁を意識するのは当たり前だと思います。
逆に言えば、100万円と103万円の壁はそんなに意識することはなさそうです。
確かに夫の配偶者控除がなくなりますが、配偶者特別控除という緩衝ゾーンがあります。妻の年収が103万円を超えたからと言って即配偶者控除の38万円がなくなるわけではなく、38万円の特別控除が収入に従って徐々に減らされるイメージとなります。
従って、意識すべきは100万円、103万円の壁ではなく、130万円の壁のほうであるといえます。
しかしながら、世間一般では103万円の壁を超えると大損だという風評があり、パートタイマーは103万円を強く意識して働いていらっしゃいますよね。
この103万円の壁は、ただでさえ労働者が不足している日本国内において大きな問題となっています。
【結論】103万円の壁はなくなるが、130万円の壁が重しとなる
そこで現政権は、専業主婦やパート主婦の社会進出を図るために、2018年から103万円の壁を取り払って150万円に引き上げる見込みになったのです。
従って、103万円の壁という風評は消え去ると予想されます。しかしながら社会保険の130万円の壁は変更なし。従って、130万円の壁が今後の重しになるでしょう。
今後に向けて企業はどう対応すべきか?
ではきたる2018年の改正に向けて、企業はどのように対応すればいいでしょうか?
まずは、現在103万円の扶養範囲で働いている方がどれくらいいるかを把握するとよいでしょう。そして、その方たちに向けて2018年の改正後にどのような働き方をしたいかをヒアリングしてみましょう。まだ改正を意識していない方も、それによって自分の働き方の見直しをするきっかけになります。
2018年以降は、130万円の壁と150万円の壁が存在することになりますが、正直なところ、社会保険の改正がない限りは130万円の壁を意識せざるを得ません。もちろん、妻が社会保険の扶養を外れて単独で社会保険に加入した場合には、将来受け取る年金の額が増加することになりますので、その点はアピールできます。
どうしても長時間働いてほしい優秀な方には社会保険料負担分の賃金上昇を約束する、あるいは正社員等へ処遇を引き上げる方法をとるのが現実的かもしれません。いずれにせよ、労働力確保のために、税制、社会保険の改正は注目し続けたいですね。
飲食店などのサービス業界は、主婦の方々が多く働いています。主婦の働き方の変化は企業側としても注視すべきことです。今回の改正を機に、人材確保の施策をより強化してみてはいかがでしょうか?
配偶者控除や制度に関するご相談は、あらゆる専門家が在籍するベリーベストグループまでご相談ください。
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