異業種で培った視点で、ITを駆使し独自の成長路線を歩む飲食チェーン

異業種で培った視点で、ITを駆使し独自の成長路線を歩む飲食チェーン
目次

有限会社アップハート 代表取締役
河西 弘之さま

外食産業の低迷が続く中、静岡県西部・中部に11店舗の飲食店を展開し、さらに東京、静岡に新規店の開業準備を進めている企業があります。各店とも店長は若い世代で勤続年数の長い人が多いとのこと。好調な経営と人材確保の秘訣はどんなところにあるのでしょう。

有限会社アップハート代表取締役の河西弘之さんに、独自の経営戦略や人材観についてお話を伺いました。

~創業までの経緯を教えてください~


社長になることを前提に就職先で経営のスキルを学んだ

大学生の頃、就活中に適性検査というのをやりました。
そうしたら私は経営者に向いているという評価を得て、そういう道もあるんだなぁと気づき、本気で社長を目指すことにしました。だから就職先を決めるにあたっては、将来自分が経営者になった時、役立つスキルを身につけられる会社で働こうと決めていました。

新卒で入ったのは有名な婦人靴メーカー。ここで商品企画や販売のノウハウを学びました。次にコンピューターのシステム開発会社に転職。ここではITやシステムの基本を身につけました。その後、自動車部品メーカーの系列会社に役員として勤務し、経営の具体的な手法や財務、資金調達などの知識を学びました。

3つの会社を経て29歳になった時、準備が出来たと判断し、アップハートを設立しました。社名は自分のモットーである「向上心」に由来しています。


~なぜ飲食業にチャレンジしたのでしょうか?~


自分が心から満足できる飲食店を作りたかった

「飲食業はその地域の文化そのものです」と語る河西さん
もともと外食が好きで、当時は週の半分以上はいろんな店で食事やお酒を楽しんでいました。けれども自分が心から満足できる店がなかなか見つからない。飲食店の中には、採算重視で低価格のあまりおいしくない食材を使っているところもあり、そういうやり方にも抵抗がありました。

ならば自分で店を開いて、お客様が「本当においしい」と言ってくれる料理を出そうと思ったんです。そのためには自分が責任をもてる安心安全な食材にこだわりたいと考え、地元でおいしい野菜を生産している方を訪ねて回ることから始めました。農家や調味料メーカーなどあちこちに足を運びました。

幸い、浜松は全国有数の野菜の産地で、おいしくて安心な無農薬野菜を栽培している人がたくさんいるんです。それも追い風になりました。


~無農薬を看板にしている個人店は多いですが、御社のようにグループ全店で無農薬を実現しているケースは少ないのではないでしょうか?~


個人の腕に頼らない、会社としての「強み」を重視

当社では全店で使用している野菜の95%が無農薬野菜です。確かに扱いは難しいです。泥を洗い流し、虫がついていないかをチェックする手間がかかるし、日持ちもしないし、旬以外の時期は生産量が激減します。それでも、やっぱりおいしさが全然違うんです。

創業当時、無農薬野菜は割高だという人もいましたが、本当においしいものをお客様に提供すれば、採算は後からついてくるというのが私の理念です。実際に店舗が増えていることがその答えだと思っています。

無農薬野菜のおいしさをより多くの人に知ってもらうために、各地にいろんなタイプの店を出店し、手ごろな値段で提供する。料理人個人の腕に頼るのではなく、アップハートが経営する店に行けば、どこでも無農薬野菜のおいしい料理が食べられる。そういった「店」全体の強み、「会社」としての強みを重視しています。


~社員の定着率が高いと聞いています。人材観を教えてください~


飲食業界特有の師弟関係は当社の方針にマッチしない

先にも述べたように、会社組織としての社会的な地位向上を目指しているので、採用や雇用についても一般企業的な発想をベースにしています。

採用については、同業の飲食店からスカウトするようなことはなく、異業種からの転職や新卒を基本としています。飲食業界特有の師弟関係や職人気質なものがある方は、当社の経営方針にマッチしないことが多いからです。

また人事考課制度に基づいて、売上目標達成者には賞与や昇進があり、逆に成果が出なければ後退もあります。店長は2年に1度ペースで店の異動もあります。

日曜日は全店休業(※)というもの飲食店業界では珍しいようです。理由は簡単です。自分が会社員だった経験上、家族と一緒に休みをとりたいし、長時間労働もしたくない。それは当社の社員たちも同じだろう!と。

そして仕事を効率よく進めるために、食材の発注や在庫管理、各店の情報などはすべてIT化し、各々のスマホで確認できるようにしています。各店の「今日のメニュー」も写真に撮ってアップ。今、どこの店でどんなことをやっているのかが一目でわかり、ITのフル活用で各店、社員同士のつながりが深くなりました。

※東京・静岡駅ビル新店は除きます。

~最後に今後の目標と課題を教えてください~

「ゆくゆくは海外で日本のおいしい食材をアピールしたい」と語る河西さん
今年は東京都内と静岡駅構内に新たに2店がオープンします。積極的に店舗数を増やしていく理由は、会社を大きくすることで社会的な評価や社会への貢献度を高めたいからです。

今後は当社で扱う食材を加工する自社工場の設立や、現在の客層にはあまり含まれていない子どもや高齢者の方に向けて、無農薬野菜をベースとした飲食業の展開も検討しています。

反面、組織の規模が大きくなると社員数も増え、目指すベクトルの方向がブレやすくなるという心配があります。

常に向上していくという「アップハート」の創業精神を、今後もしっかりと経営の中心に捉えて、さらなる発展を目指していきます。

(取材日/2017年2月28日)


取材協力
有限会社アップハート
総務・営業企画部/静岡県浜松市中区田町329-20 2F
事業内容/飲食サービス業・食品製造業
HP/http://upheart.jp/index.html

ヒトクル編集部
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ヒトクル編集部

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