介護施設で外国人を採用するメリット・デメリットとは?採用方法も解説

介護施設で外国人を採用するメリット・デメリットとは?採用方法も解説
目次

少子高齢化・人口減少により、労働人口が減り続けている日本。 特に介護福祉業界においては、労働者不足が嘆かれています。

そんな介護福祉業界でよく検討されるようになったのが、外国人の採用です。しかし、外国人を採用することに対して、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、外国人採用を検討している介護福祉事業者へ向けて、外国人を採用する方法、メリット・デメリット、注意点などについて解説します。

外国人労働者は雇用するべき?メリット・デメリットと3つの注意点を解説


介護福祉施設における外国人採用の実態

近年、コンビニやスーパーなど、さまざまな場所で働く外国人の姿を目にするようになりました。日本で働く外国人が増えたのは、介護福祉業界も例外ではありません。

厚生労働省発行の「外国人介護職員の雇用に関するガイドブック」(平成31年3月)によれば、平成20年からスタートした介護福祉施設で外国人を雇用する方法の一つである EPA に基づく介護福祉士候補者の受入れ人数は年々増加しています。平成31年1月1日の時点で677箇所の介護施設で3,165人の外国人職員が雇用されています。


外国人介護職員の雇用に関するガイドブック

また、介護福祉養成校への留学生は、平成30年度の時点で1,142人となっています。受入者数は年々右肩上がりに増えており、現在はさらに増えていることが予測できるでしょう。

受け入れ先が増えるにつれて、外国人を採用する心理的なハードルも下がっていきます。日本人の労働者人口が減っていく中、今後は外国人採用が当たり前の時代になっていくでしょう。


介護福祉施設で外国人を採用する4つの方法

外国人は日本人と異なり、さまざまな手続きを踏んだ上で採用する必要があります。ここでは、介護福祉施設で外国人を採用する4つの方法についてご紹介しましょう。

●介護福祉施設で外国人を雇用する4つの在留資格

在留資格種類概要特徴
介護・2つのルートあり
①外国人留学生が介護福祉士の養成校に通い、国家資格を取得
②技能実習か特定技能かEPAで就労して実務経験を積み、国家資格を取得
・介護スキルが高く、就労期間の制限もない
・難関のため、母数が少ない
特定活動
(EPA介護福祉士)

他国との経済連携強化を目的とする協定
インドネシア、フィリピン、ベトナム3か国で介護福祉に関して一定の知識を持った外国人が施設に就労
・入国後4年目には介護福祉士の受験が必要
・合格すれば、永続的に働くことができるが、不合格の場合は帰国
技能実習日本から諸外国への技能移転を目的とする。技能実習生は入国後、日本語と介護の基礎などに関する講習を受けてから介護事業所へ雇用。
・最初の日本語入力、介護スキルは高め
・技能実習生の受け入れが一般的になり雇用しやすい
・終了期間は最長5年
・介護福祉士を取得すれば永続的に働くことが可能
特定技能就労目的で外国人材を受入れるための在留資格・在日人材も可能
・就労制限は最長5年
・介護福祉士を取得すれば永続的に働くことが可能



1)在留資格「介護」

日本語スキル、および介護スキルが高く、就労期間に制限なく働けるのが在留資格の「介護」です。取得するには2つのルートがあり、一つ目は介護福祉士の養成校に通い、国家資格を取得する方法です。

二つ目は、実務経験を積むルートで、まずは後述する特定活動(EPA)または技能実習、特定技能で就労し実務経験を3年積み実務者研修終了し、国家試験に合格する方法です。

いずれも、日本人でも難関とされる国家資格の介護福祉士を取得しているため、即戦力として期待できます。

日本語の理解度についても、問題なく日常会話を行えるレベルです。

しかし、これだけ高いスキルを取得するのは非常に難しいのが実情。資格を取得している外国人は、ごくわずかです。介護福祉士を取得している外国人に出会うのは非常に難しいと言われています。

このような外国人を採用するには、事業者自らが介護福祉士の養成校に働きかける必要があるでしょう。まずは周辺の学校に問合せ、留学生の受け入れ状況や入学要件について聞いてみましょう。


2)在留資格「特定活動(EPA介護福祉士)」

EPAとは、他国との経済連携強化を目的とする協定のこと。介護福祉業界においてもEPAが推進されており、海外より介護福祉士候補者を受け入れることができます。
対象国は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国。介護福祉に関して一定の知識を持った外国人が日本語教育を受けた後、施設にて就労する流れとなります。

入国後4年目には介護福祉士を受験する必要があり、受け入れ先は合格のサポートをする必要があります。

外国人と介護施設をつないでいるのは、「公益社団法人国際厚生事業団」(JICWELS)です。毎年、JICWELSが外国人の受け入れ先を募集しているので、希望する事業者はチェックしてみてください。
公益社団法人国際厚生事業団|EPA看護・介護受入事業


3)在留資格「技能実習」

外国人技能実習制度は、日本の技術を他国へと移転し、母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした制度です。2017年より、介護福祉分野に関しても技能実習制度の対象となりました。

技能実習生は、以下の流れで介護福祉施設へ就労します。

1.入国前と入国後で約10~13か月、日本語と介護の基礎を講習で学ぶ 

2. 介護施設へ入職し、実務経験を積む 

3. 入社1年後に「技能実習評価試験」を受験し、2号に移行する

 4. 入社3年後に「技能実習評価試験」を受験し、3号に移行するか、帰国する

 5. 入社5年後に「技能実習評価試験」を受験し、特定技能に移行するか、帰国する


また、帰国せずに介護福祉士を取得すれば、永続的に日本で働き続けることも可能となります。
他の在留資格に比べて、最初の日本語能力・介護スキルは低めですが、技能実習生の受け入れが一般的なものになりつつあることから、雇用しやすいでしょう。

一方で、「技能実習」の理念はあくまでも、発展途上国への技能移転により国際貢献することです。そのため、雇用するにあたり、いろいろな制約があります。夜勤、人員配置基準換算、新施設勤務、転勤は原則不可などです。

一般的にはなっているものの、入社まで期間がかかること、いくつもの制約を許容することが前提となります。

技能実習生の雇用にあたり、受入調整を担う監理団体を探して問い合わせてみましょう。OTIT(外国人技能実習機構)の ホームページには、監理団体を検索できるページもあります。

OTIT(外国人技能実習機構)


4)在留資格「特定技能」

 特定技能は、2019年4月施行の改正入管法にて深刻な労働者不足を解消するために外国人を雇用できる新しい在留資格です。 他の在留資格とは異なり、日本の労働者不足を解消するのが主な目的です。

最も大きな特徴は、在日人材(すでに何らかのビザで日本にいる外国人)を採用できることです。例えば、留学生(留学ビザ)、就職活動生(特定活動ビザ)、ITエンジニアや営業など(技術人文知識国際業務ビザ)、技能実習生(技能実習ビザ)、永住者(永住ビザ)、日本人の配偶者(配偶者ビザ)などがあります。

特定技能は、こういった日本で他のビザで住んでいる人もビザを切り替えて採用可能です。

一方、技能実習やEPAは、いま日本にいる人(在日人材)ではなく、いま母国にいる人(ビザ持ってない)のみが、採用の対象になります。
よって、
・入社までに時間がかかる(技能実習介護の場合、1年くらいかかる)
・来日するための飛行機やパスポートの手配も必要
・日本での生活習慣がない
・日本語は勉強レベルで実生活で使ったことがない

ということになるので、ケアが必要です。

就労期間は最長5年で、介護福祉士を取得すれば永続的に働くこともできます。技能実習とは異なり、夜勤や人員配置基準換算、新施設転勤、転勤などの制約がないのも導入しやすいポイントです。

一方で、技能実習とは異なり転職が可能な在留資格なので、転職する可能性があるのは企業にとっては心配かもしれません。

特定技能は、以下3つに合格した外国人が対象です。

・日本語能力試験(N4以上)もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル以上)」 

・介護日本語評価試験

 ・介護技能評価試験


人材紹介会社や、外国人専用の求人媒体を活用することで雇用できます。


介護福祉施設で外国人を採用する5つのメリット


「外国人を採用した方が良い気はするのだけれど、具体的なメリットがいまいちわからない」という方も多いのではないでしょうか。ここでは、介護福祉施設で外国人を採用する5つのメリットをご紹介します。


人材を確保できる

当然のことながら、最大のメリットは人材を確保できる点です。
「外国人介護福祉人材の受入れの実態等に関する 調査研究事業報告書」(令和2年3月)によれば、約7割の事業所が従業員不足を感じているのが現状です。

従業員不足が慢性化している原因の一つは、日本の少子高齢化によるもの。そのような中で、外国人の採用は希望の光と言えるでしょう。

また、日本に働きに来る外国人労働者は、20代を中心とした若い世代が多いです。体力面で重労働と言える介護福祉業界において、若手の人材確保は必須です。


業務改善につながる

外国人を採用する際には、今までの仕事の進め方では通じないケースがあります。日本人の常識が通じない可能性も高く、今までマニュアル化していなかったことや言語化していなかったルールが浮き彫りになるかもしれません。

これは一見デメリットにも思えますが、中長期的に見るとメリットと言えます。

浮き彫りになった課題に対して向き合うことで、教育体制の強化ができるでしょう。外国人が働きやすい職場は、日本人にとっても働きやすい職場である可能性が高いです。

結果として、求人への応募が増えたり、業務がスムーズに行えたりと良い変化を起こすことができます。


国際貢献につながる

外国人を採用することで、自然と国際貢献にもつながります。介護福祉施設で身につけたスキルを活かして、母国でも活躍してくれるかもしれません。

また、収入の一部を母国にいる家族へ仕送りする人もいます。日本で働くことにより、本人や家族の暮らしが楽になることもあるでしょう。


異文化コミュニケーションを楽しめる

外国人を雇用することで、介護施設内で異文化コミュニケーションを図ることができます。これは介護施設の利用者にとっても、既存スタッフにとっても新鮮です。
施設に新しい風が吹き、雰囲気が良くなることもあるでしょう。

施設内で母国に関わるイベントを企画すれば、いつもと違う形で利用者に楽しんでもらえます。また、日本人とは視点が異なることも多く、これまで気づけなかった打開策を提案してくれるかもしれません。


介護福祉施設で外国人を採用する3つのデメリット


メリットの多い外国人採用ですが、やはりデメリットもあるのが事実です。あらかじめデメリットを理解した上で、採用を検討しましょう。ここでは、介護福祉施設で外国人を採用する3つのデメリットをご紹介します。


入社手続きに手間がかかる


日本人を雇用するのとは異なり、採用時の手続きに手間がかかることが最大のハードルです。外国人を雇用するときに必要な手続きは、主に以下の2点。

● 在留資格の手続き:出入国在留管理局へ書類を提出する
 ● ハローワークへの届出:外国人雇用状況の届出を提出する


大人数の外国人を採用する場合には、労力がかさんで何かしらの業務を削らないといけなくなるかもしれません。
ただ、最初は大変に感じると思いますが、手続き自体はシンプルなものが多いです。流れさえつかめれば、スムーズに進められるでしょう。


入社後の管理に手間がかかる

入社手続きだけでなく、入社後にも管理で手間がかかります。技能実習は管理組合、特定技能は登録支援期間による支援が必要です。自前で行うことも可能ですが、実際に可能なのはごく一部で、ほとんどの企業が外部委託をして費用が発生することになります。

また、定期的な入管への報告も必要です。


コミュニケーションをとるのが難しい

やはり課題となるのは、言語の壁です。指示が聞き取れなかったり、利用者とのコミュニケーションに誤解が生じたりすることもあるでしょう。

実際の現場では、介護記録の記載で教育に時間がかかるケースが多く発生しています。施設によって異なりますが、PC、タブレット、手書きなど漢字をつかって自力で記載しなくてはなりません。介護記録を通して、社内・スタッフ間のコミュニケーションが大きな課題となります。

教育には十分に時間がかかることを念頭に置き、外国人職員がスムーズに業務を行えるよう、既存スタッフがサポートできる体制をつくりましょう。


教育に時間がかかる

日本人スタッフと同じように教育しても、外国人職員にはうまく伝わらないこともしばしば。就労前にある程度の日本語を勉強しているとは言えど、完璧には理解できないケースが多いのです。

「とにかく人手不足で、即戦力がほしい」と感じている事業所は、外国人を採用することでより大変になってしまいます。外国人職員を即戦力として見るのではなく、中長期的に育成する必要があることを理解しておきましょう。


介護福祉施設で外国人を雇用する際の注意点


外国人を雇用する際には、日本人とは違う注意点があります。ここでは、介護福祉施設で外国人を雇用する際の注意点を解説しましょう。


国の文化や信仰を尊重する

日本人とは、文化や信仰、常識までもが異なります。

日本の価値観を押し付けるのではなく、相手の国を尊重してコミュニケーションをとることで、信頼関係を築けるでしょう。
しっかりとした配慮ができれば、働きやすい雰囲気をつくることができます。

例えば、以下のような配慮ができます。

● ラマダン(断食)期間中は、体調に問題がないか気遣う
 ● お祈りの時間を確保する


こちらが歩み寄ることで、長期間の就労にもつながるでしょう。


既存の職員に理解してもらう

外国人を採用するにあたって、現職員に理解してもらわないといけません。スタッフの理解を得ず勝手に採用を進めると、トラブルの原因となります。

実際に外国人職員と働くのは、今働いているスタッフです。スタッフの協力がなければ、職場環境が悪化する可能性もあります。

なぜ外国人を採用するのか?採用後は何をすれば良いのか?を明確に示すことで、協力を得られるはずです。採用を進める前に、しっかりと説明しておきましょう。


日本になじむように公私ともにサポートする

生活面の物理的な支援だけではなく、精神的なケアもとても大事です。介護の在留資格の場合、日本に長期滞在を希望する方が他の職種より多いです。異国の日本で一緒に働く仲間として、できる限り公私ともにサポートすることで職場でも長く貢献してくれる人材に育ちます。

具体的には以下のような配慮をするとよいでしょう。

・同郷のスタッフを複数名採用して、孤立しないようにする
・同郷のコミュニティにばかり依存しないように、日本人との交流機会をつくる
・日本のことをたくさん教えてあげる


まとめ

人材が不足している介護福祉業界では、今後もその傾向が広がる見込みです。採用フローは決して難しいものではなく、多くの介護福祉施設で外国人職員の受け入れが拡大しています。外国人の採用は、もはや必須項目となるのかもしれません。

人手不足に悩んでいる事業者は、外国人の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。

「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。

アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/

竹下昌利 外国人材採用支援部 部長
監修した人
竹下昌利 外国人材採用支援部 部長
2000年アルバイトタイムス入社。静岡、東京、横浜、名古屋で新規事業・求人メディア事業を担当。 2018年から現職である外国人採用支援事業(東京)に従事。在日ミャンマー人材に限定したサービス(人材紹介とミャンマージョブフェア)を提供している。 ITや建築などのエンジニア、2019年から介護(特定技能)の業界における紹介実績あり。