【採用の成功事例も紹介!】介護業界の人手不足の原因や対策、活用できる助成金について

【採用の成功事例も紹介!】介護業界の人手不足の原因や対策、活用できる助成金について
目次

介護業界では人手不足による影響が深刻化しています。特に2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、さらに事業所の人材不足が進むと問題視されています。

そこで、今回は介護業界の人手不足の背景や現状、原因や対策について解説していきます。採用の成功事例や活用できる助成金も紹介しますので、ぜひ目を通してみて下さい。

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介護業界の人手不足が発生している背景や現状について

まずは介護業界の人手が不足している背景を確認します。その上で、介護業界の現状についても考察しますので確認しておきましょう。


介護業界で人手不足が起きている背景とは?

介護業界で人手不足が起きている背景として、「高齢化」と「少子化」の2つが挙げられます。

日本は全体の人口に占める高齢者の割合(「高齢化率」と言います)が非常に高く、内閣府の令和4年版高齢社会白書によれば28.9%となっています。
(出典:内閣府、令和4年版高齢社会白書

高齢化率はさらに上昇すると推計されているため、一人ひとりの介護士や看護師が介護で担当する人は今後増えていくでしょう。そうなれば、さらに人手不足が深刻化する事態になってしまいます。

また、日本では高齢化とともに少子化も進んでいます。出生数で見ても年々減少しているため、新たな介護人材となる若い労働者を確保する施策は必須と言えます。


介護業界の現状を考察

こうした介護業界の問題は、現場でも大きな影響を与えています。令和3年度に実施した調査でも、63%という介護事業所が人材不足を感じているという結果(※)になっています。
(※出典:介護労働安定センター、「介護労働実態調査」結果の概要について

さらに労働条件や仕事に関する悩みの調査においても、人材不足の影響が大きく出ています。

●労働条件等の悩み、不安、不満等(複数回答)(上位抜粋)

悩み、不安、不満等の内容令和3年度(%)令和2年度
人手がたりない52.3(%)52.0(%)
仕事のわりに賃金が低い38.338.6
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)30.030.6
健康面(新型コロナウイルス等の感染症、怪我)の不安がある28.120.5
有給休暇が取り難い25.626.8
業務に対する社会的評価が低い25.426.0
精神的にきつい24.725.6
休憩が取り難い
21.121.1

(※出典:介護労働安定センター、「介護労働実態調査」結果の概要について

内容として「人手が足りない(52.3%)」という悩みが非常に多くなっています。

また、人手不足による個人の負担が大きいためか、「身体的負担(腰痛や体力に不安)が大きい(30.0%)」、「有給休暇が取り難い(25.6%)」といった悩みも多い現状です。


介護業界における離職理由

介護業界の人手不足の具体的な原因には、どのようなものがあるのでしょうか。前述した背景以外では介護職からの離職理由にその要因が表れており、主に下記の理由があります。


原因① 人間関係に問題があるため

まずは人間関係による問題です。

介護職を辞めた理由の多くは「職場での人間関係に問題」があったためとなっています。

介護スタッフは日ごろから多くの人と関わる機会があります。介護者やそのご家族、同じ事業所のスタッフや上司、医療機関の職員などとも接するため、人間関係で苦労することは多いでしょう。

したがって、介護施設の利用者だけでなく、介護スタッフに対しても適切なケアなどを行い、離職を防止する取り組みが必要と言えます。


原因② 結婚・出産・育児等のため

続いての考えられる原因として「結婚・出産・育児」があります。こちらも介護職からの離職理由として上位を占めます。介護事業の労働者の多くは女性であり、およそ全体の7割ほどです。そのため、若い女性労働者の中には結婚や出産を機に介護職を辞めてしまうケースが多いと考えられます。

こうした事態を防ぐ方法としては、育児休業制度を充実させるか、復職制度などで事業所に再就職してもらうよう促すのが有効かもしれません。


原因③ 施設・事業所の運営や理念に不満があるため

事業主や経営者の運営や理念に納得できないために離職するケースも多く存在します。

多くの介護事業所は経営理念や運営方針について、社会的に意義深い立派な目標などを定めています。こうした経営理念や運営方針に感銘し、就職した方もいるでしょう。

しかし、実態は立派な運営方針や理念とは異なり、施設利用者にとって不便なサービスや悪い態度を取っているケースも存在します。こうしたギャップに不満を抱き離職してしまうことも多いと考えられます。


原因④ 他に良い仕事や職業を見つけたため

さらに離職の理由として「他に良い仕事や職業を見つけたため」という答えも多くを占めます。

介護職は「3k(きつい・汚い・危険)」と呼ばれるほど厳しい仕事だとされています。したがって、当初は高い志を持って始めた仕事でも、次第に心が折れて別の職業に魅力を感じてしまうことも多いと考えられます。


原因⑤ 収入が少ない・将来に見込みが立たないため

上記以外では「収入が少ない」という理由も多くなっています。介護業界では前述した「3k」の要素に加え、「給料が安い」という理由も含め「4k」であるともされます。

これは厚生労働省の調査によっても判明しており、全産業の平均給与に比べ7万円ほど少ないという事実があります。
(出典:厚生労働省、令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果
(出典:日本経済団体連合会、日本経済団体連合会、2021 年6月度「定期賃金調査結果」の概要

こうした離職要因も介護職で人材不足が発生している要因の1つと言えるでしょう。

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人手不足を解消するための対策とは?

では、介護業界の人手不足を解消する方法はあるのでしょうか。主な対策としては下記のような施策が効果的でしょう。


対策① 職場・労働環境・評価制度の見直し

まずは職場や労働環境の見直しを行うことです。どのような対策でも、せっかく入った介護士が劣悪な労働環境ですぐに離職しては元も子もありません。労働時間、賃金、休憩時間やシフト体制に無理がないかなどを常にチェックしましょう。

賃金面ではキャリアアップ(またはキャリアパス)制度を設けるのも一つの方法です。モチベーションの高い人材は、より良い待遇を求めて資格取得やスキルアップに励むでしょう。

また、明確な基準を設けた評価制度を設定するのも効果的です。逆に、どのような基準で昇給や昇進がなされるのか分からないと、労働者側も働く意欲が出ませんので注意しましょう。

あとは人間関係での離職が多い問題もあるため、困ったときに相談できる相談窓口の設置や、介護スタッフのケアを行う制度も取り入れるのが効果的です。


対策② IT化やシステムの導入

介護業界では、日々の書類作成や介護者の管理を紙媒体やエクセルで行っているケースが多くなっています。したがって、こうした作業での負担を減らせるよう、ペーパーレス化を進めるのも一つの手段でしょう。

また、IT化で効率化する方法もあります。チャットワークによる情報共有や勤務シフト自動作成システムの導入、グループ通話が可能なLINE WORKS で負担を減らしている事例もあります。

その他には、夜間の見守り支援ロボットなども、介護の負担軽減だけでなく、人件費削減や介護者の健康管理・ケアの面で注目されています。


対策③ ユニットケアの導入

ユニットケアは、固定されたスタッフが10人程度の入居者を1ユニットとして共に生活し、ケアも行っていく介護のスタイルです。

従来では複数人で1部屋を利用する体制が一般的でしたが、ユニットケア型の場合には個室があるため、入居者のプライベートが確保できます。

また、スタッフ側にとっても入居者一人ひとりに沿ったケアが可能になります。担当する入居者が変わることも基本的にないため負担が減り、入居者との信頼関係を築きやすい点もメリットになります。


対策④ 採用活動の見直し

介護事業者が人材不足を解消する方法として、採用活動を見直すのも一つの手です。

介護職員の採用手段として多いのがハローワークや求人サイトですが、こうした媒体の他に採用管理システムを導入して採用活動を効率化することも検討しましょう。

合わせて、自社ホームページやSNSなどを活用し、長期的な採用ブランディングをすることで採用コストの削減につなげることができます

その際には、仕事のやりがいや事業所の魅力が伝わるようなサイト・投稿内容にして応募を募りましょう。

採用ブランディングとは?メリットや背景、導入の手順をわかりやすく解説


対策⑤ 外国人労働者の雇用

どうしても日本人の労働者が雇えない場合には、外国人労働者を雇用する方法もあります。特に外国から日本に来て働きたいという労働者は、基本的に若い人が多い傾向であるため、こうした人材を積極的に採用するのも良いでしょう。

厚生労働省発行の「外国人介護職員の雇用に関するガイドブック」(平成31年3月)によれば、平成20年からスタートした介護福祉施設で外国人を雇用する方法の一つである EPA に基づく介護福祉士候補者の受入れ人数は年々増加しています。

平成31年1月1日の時点で677カ所の介護施設で3,165人の外国人職員が雇用されています。

受け入れ先が増えるにつれて、外国人を採用する心理的なハードルも下がっていきます。日本人の労働人口が減っていく中、今後は外国人採用が当たり前の時代になっていくでしょう。

介護施設で外国人を採用するメリット・デメリットとは?採用方法も解説


対策⑥ 介護業務に対するイメージ改善

さらに、「4k」という悪いイメージがある介護職の仕事に関して、イメージを改善するようにして採用活動を進めるのも効果的です。

そのためには、充実した福利厚生であることや体力的な負担の軽減への取り組み事例をアピールする方法が良いでしょう。

介護労働実態調査においても、介護人材が職場を選ぶ理由として「賃金が適当である」、「法人の理念や方針に共感したから」、「福利厚生が充実しているから」といった理由は下位になっています。

逆にこういった理由での就職が上位に来るように採用条件を改善すれば、他の事業所との差別化にもつながり採用は増えるでしょう。


対策⑦ 復職支援制度の導入

介護業界では特に女性の割合が多いことから、結婚や妊娠、出産を機に離職してしまうケースが多くあります。したがって、一度事業所を辞めたとしても、スムーズに復職できるような制度を導入しておくことも介護人材確保の一つの手段と言えるでしょう。

なお、自治体によっては再就職した場合に「再就職準備金」を交付しているところもあります。条件を満たせば返還が免除されますので、こうした制度の内容を介護労働者に伝えておくのも良いでしょう。


介護業界での採用成功事例(採用活動の見直し)

次に介護業界で採用活動の見直しをおこない、成功した事例を確認しておきましょう。ぜひ参考にして自社での採用戦略に役立ててみて下さい。


事例① 株式会社アルバ 介護事業所

株式会社アルバ様は、愛知県で9つの介護施設を運営しています。同社は、求人誌と求人サイトで採用活動を行っていましたが、応募数が地域や時期によって偏りがあるという課題がありました。

そこで、採用管理システムを導入したところ、Indeedを初めとした複数の求人サイトへ連携がされ、応募数が安定的に確保できるようになりました。

導入した採用管理システム「ワガシャ de DOMO」は求人のプロが運用代行するサービスで、定期的に求人記事の改善・更新をしたことで長期的に効果がでるようになったそうです。

「愛知県×介護」で月平均10件以上!地域や時期による偏りが減り、安定的に応募数を確保。


事例② 沖縄にじの会

沖縄県那覇市で介護施設を運営されている沖縄にじの会さまは、新施設のオープンに伴い採用管理システムを導入したところ応募者獲得に成功しています。

以前は、求人誌とハローワークでの採用活動で、月に数件の応募数しかなかったそうです。新しい介護施設のオープンで80名近い人員を確保しなくてはならなく、頭をかかえていたところ、採用管理システムを紹介されて導入したそうです。

おかげで月に3~4件の応募がコンスタントにくるようになり、採用にも成功しているとのこと。さらに、求人誌で応募してくる方よりもWebで応募してくる方は、意欲が高い方が多いという効果がありました。

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介護人材の採用で活用できる助成金

最後に介護人材の採用で活用できる助成金についてご紹介します。様々な制度がありますので、適用できないか確認してみましょう。


① 特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は厚生労働省から助成金が支給される制度です。ハローワークにて紹介された労働者を継続雇用すると支給されます。支給金額や詳細な要件はコースごとに異なるため、適用を受けたい助成金のコース内容は確認しておきましょう。

コースには65歳以上を雇用した際に支給される「生涯現役コース」や、母子家庭の母・障害者などの就職困難者を雇用した際に支給される「特定就職困難者コース」などがあります。


② トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は早期就職を促す助成金制度です。こちらも厚生労働省が実施する制度で、紹介業者やハローワークを通して人材を雇用することが条件です。

なお、週30時間の労働時間を下回らないこと、そして期間3カ月のトライアル雇用でなければいけません。

ちなみに支給対象者は、1年以上の離職期間があること、生活困窮者であることなどがあります。こちらも様々なコースがありますので確認してみて下さい。


③ キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、企業内でキャリアアップの取り組みを実施した際に支給される制度です。

有期契約の労働者を正規雇用に転換した場合などに助成金が支給されます。こちらは雇用以外でも支給される助成金があるため見ておくと良いでしょう。

具体的には、有期雇用労働者等の賃金規定を改定した場合に支給される「賃金規定改定コース」があります。


介護業界の人手不足解消には、戦略的な採用活動が不可欠です

介護人材が不足している背景や現状、具体的な原因や対策、そして成功事例や助成金制度もご紹介しました。

少子高齢化による影響で人手不足となっているのはどの業種でも同じです。しかし、介護の職種は人のケアなどを中心に行うため、体力的にも精神的にも負担が大きく、敬遠されがちな職種と言えます。

ただ、同じ介護業界でも優秀な人材を雇用できている事業所はあるため、採用活動でいかに工夫できるかが雇用のポイントとなるでしょう。

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ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。

「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。

アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/

社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。