交通費はどう払う? 計算方法や支給要件・不正受給・在宅勤務についても解説!
正社員やパート、アルバイトを雇用する際、従業員に対して通勤費を支払うと定めたら、支払う必要があります。出張費は、業務に必要な経費のため、会社が支払う必要があります。
今回は、交通費はどう計算するのか、どのような支給要件やパターンがあるのか、不正受給の予防方法など、交通費全般について詳しく解説いたします!
企業が支払う交通費とは
企業が支払う交通費は、大きく分けて3種類です。
- 毎日の通勤にかかる通勤費
- 毎日の営業活動でかかる旅費交通費
- 出張でかかる出張交通費
通勤交通費は支払い義務のない費用ですが、多くの企業が福利厚生として通勤手当を支給しています。
営業や出張の際に請求する交通費は出張交通費、旅費交通費と呼ばれ、会社から行き先までの公共交通機関運賃を計算の上、支給します。
不正受給を防ぐため、現金ではなく切符や交通系カードを利用する例も少なくありません。
移動に必要なタクシー代、有料道路の費用、駐車場代、宿泊費なども交通費です。
通勤費の場合は、1回の電車賃ではなく、定期券を利用したり、自動車で通ったりなど、さまざまなケースに応じて支給されます。
次に、通勤時の通勤費をどのように計算するべきなのか、チェックしてみましょう。
通勤費の計算方法
通勤費の計算は、公共交通機関を使用するのか、自動車やバイクを利用するのかによって変わります。一般的な計算方法、支給額をみてみましょう。
公共交通機関を利用する場合
電車やバスなど、公共交通機関を利用して通勤する従業員の場合、自宅最寄駅から会社までの区間に応じた、1ヶ月分の定期券代を主に支給します。
通勤費の支給方法に決まりはありません。会社の方針に応じて、3ヶ月分や6ヶ月分の定期券代を支給しても問題ありません。
支給方法や税金については、この後詳しく解説いたします。
自動車やバイクを利用する場合
自動車やバイクで通勤する従業員の場合、以下の計算で通勤費を決定するのが一般的です。
自宅と会社の往復距離×1ヶ月の平均労働日数×ガソリン代÷平均燃費
この時、注意したいのが燃費とガソリン代です。
燃費が車種によって違うこと。
また従業員一人ひとりに燃費を申告してもらうのが難しいことから、きちんと通勤費を賄えるように、燃費があまり良くないという設定で計算する例が多くみられます。
ガソリンについても、世界情勢などの影響があり価格が年々高騰しています。
半年に一度、1年に一度など、地域のガソリン平均価格を調べ、差が開いていないか確かめておきましょう。一般社団法人日本エネルギー経済研究所の石油情報センターの地域価格を参考にする会社もあります。
※一般社団法人日本エネルギー経済研究所
バイクと電車など、公共交通機関と自動車やバイクを合わせて使う場合は、それぞれの距離や区間に応じて同じように計算し、合算してください。
通勤費の支給要件はかならず就業規則へ
従業員に必要な通勤費を速やかに支給するためにも、通勤費の支給要件を事前に定めておきましょう。
通勤費を支給する場合は、支給要件を就業規則に掲載の上、労働基準監督署へ届け出が必要です。
就業規則と合わせて、社内規定や雇用契約書にも支給要件を明確化しておきましょう。
具体的には、
・支給限度額
・支給できる交通手段の種類
・燃費やガソリン代についての考え方
などを記載します。
【例文】
(通勤手当)
第□条 通勤手当は、公共交通機関を通勤に利用する者へ、最も合理的なルートで通勤した場合にかかる実費として支給する。月額○○○円を限度とし、片道〇㎞以内の場合は支給しない。
「通勤手当をもらっていながら、徒歩や自転車で通勤する従業員がいる」といった不正受給を防ぐなら、「通勤手当は会社が許可した場合を除き、徒歩、自転車通勤する者には支給しない」このような一文を付け加えておくと安心です。
通勤費に税金はかかる?
通勤費の支給を検討するにあたり、気になるのが所得税の問題です。
通勤費は毎月の給与と合わせて支払うケースが多いこともあり、課税対象だと思われがちですが、限度額内であれば非課税対象となります。
就業規則に支給要件を記載する際は、非課税限度額に則り支給額を決定するとよいでしょう。ただし、非課税限度額を超えて支給しても全く問題ありません。
それでは次に、非課税となる条件をみてみましょう。
公共交通機関の非課税限度額
電車やバスなどの公共交通機関の非課税限度額は、1ヶ月15万円までです。
新幹線などで遠距離通勤する場合も、月に15万円以内であれば非課税の対象となります。
自転車や自動車の非課税限度額
自転車や自動車の非課税限度額は、会社と自宅の距離(片道)によって変わります。
片道の通勤距離 | 1カ月当たりの限度額 |
2キロメートル未満 | 全額支給 |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
55キロメートル以上 | 31,600円 |
出張交通費や宿泊費など、業務で必要な費用は通勤距離と関係なく非課税です。
通勤費の支給パターン
通勤費の支給については就業規則で決定しますが、企業によって主に3つのパターンがあります。非課税限度額を考慮しながら、どの支給方法が最善なのか、検討してみましょう。
ここでは、支給パターン別のメリットデメリットを解説いたします。
全額支給
非課税限度額関係なく、実際に必要な通勤費をすべて支給するパターンです。
「通勤費がネックになり就職を迷っている」
という人材にはとくに嬉しいシステムといえます。
従業員満足度の高い支給パターンですが、遠距離通勤の従業員が増えれば増えるほど、企業の負担が大きくなります。
自社従業員の通勤エリア、通勤交通手段などを検討の上、慎重に判断しましょう。
一律支給
住んでいる地域や交通手段関係なく、一律いくらで支給するパターンです。
通勤費の計算や不正受給の心配をしなくて良い、という点がメリットです。
ただし、通勤距離に関係なく支給されることで、不公平感も出てくるので、この方法はほとんど採用されていません。
規定内支給
先ほどご紹介しました、就業規則や社内規定に準じて通勤費を支払うパターンです。
非課税限度額内で通勤費を支払いたい場合は、この方法を選びましょう。
従業員にも企業にも負担が少ない方法のため、広く取り入れられています。
給与計算担当者にとっては、従業員一人ひとりに応じた計算が必要、という点が若干デメリットです。
在宅勤務時の通勤費はどうする?
新型コロナウイルスの流行を機に、業務をテレワークへ切り替える企業が増えています。
従業員の出社が必要なくなった場合、通勤費はどのように計算するべきでしょうか?
もっとも確実なのは、リモートワークに備えた就業規則の変更です。
「在宅勤務時は通勤費を支給しない」
という文言を加えておけば、会社へ出社しない日の通勤費負担を軽減できます。
ただし、就業規則は簡単に変えられるものではありません。
従業員に内容を周知し、理解を得た上で、変更に踏み切りましょう。
電車やバス、自動車などを使用した日のみ通勤費を支払う、実費支給を導入する企業もあります。
ただし、実費支給の日数が多くなった場合、定期代を超えてしまう可能性があります。
どちらがより負担を減らせるのか、計算した上で導入を検討しましょう。
通勤費のかからないリモートワークですが、水光熱費やインターネット代、自宅にオフィス環境を整える費用など、従業員負担が多くなりがちです。
テレワークで必要なくなったオフィスの水光熱費、従業員向けの無料自販機といった福利厚生費を、在宅勤務手当として還元すると、より働きやすい環境を提供できます。
通勤費の不正受給を防ぐ方法3選
ここからは、通勤費の不正受給を防ぐ方法をご紹介します。
方法1:返還請求について周知する
従業員による通勤費の不正受給が発覚した場合、当事者の従業員へ返還請求が可能です。
万が一、不正受給が合った場合は、速やかに返還請求を求めること、悪質な場合はより重い罰則があることを周知しておきましょう。
中には、悪気なく不正受給しているケースもあります。
不正受給の事例を共有することで、未然に勘違いで不正受給をするケースを防ぎましょう。
方法2:定期券のコピーを提出してもらう
定期券購入を確認するなら、定期券のコピーの提出が間違いありません。
コピーの手間や保管が大変な場合は、月に1度担当者へ、定期券の画像を送付するシステムを導入しましょう。
方法3:連絡手段を用意する
従業員が誰かの不正受給を知った時に、会社へ通報する手段を用意しておきましょう。
匿名で連絡できるメッセージボックス、受付専用メールアドレスなどがあると、意見を寄せやすくなります。
通報が入ったら速やかに実態を調査して、事実の場合は返還請求や処分を検討しましょう。
まとめ
通勤費がきちんと受け取れる会社は、従業員にとって働きやすい企業です。
交通手段に応じた通勤費、出張時の速やかな経費計算業務を心がければ、好感度が上がり、企業貢献度のアップも期待できます。
所得税の非課税枠や不正受給など、あらゆる面を考慮した就業規則も欠かせません。
ガソリン代や在宅ワークなど、時代に合わせて定期的に内容を見直しながら、企業も従業員も納得のいく通勤費を提示しましょう。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。