履歴書には保管期間があるって本当?法律や実務上のメリットを解説
日本の法律では、企業が社員の履歴書を保管することが義務付けられており、一般的には退職後5年(当面の間3年)経過するまで保管義務があります。不採用の応募者の場合は、保管義務がありません。
しかし、その必要性や保管期間、方法について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。また、誤って廃棄してしまった場合の対処法や、保管期間が過ぎた場合の取り扱いについても気になるところです。
この記事では、これらの疑問を解消すべく、履歴書の保管について詳しく解説していきます。
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そもそも履歴書を保管する必要はある?
採用した社員の履歴書は一定の期間、保管しなければなりません。実は保管方法は法律によって厳密に規定されているのです。
履歴書の保管は法律上の義務
日本の法律では、企業が履歴書を保管することが義務付けられています。
具体的には、労働基準法第109条において、
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない
※e-Gov法令検索/労働基準法第109条
と定められています。
この法律に違反した場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。法律の規定を遵守し、適切な保管管理を行うことで、企業は労働者の権利を守り、法令遵守の姿勢を示すことができます。
履歴書を保管する実務上のメリット
履歴書を保管することには、実務上のメリットも多く存在します。
まず、履歴書は個人の経歴やスキルを詳細に記載した資料であり、今後の人事評価や能力開発の参考になります。
また、万が一、入社後に経歴詐称が発覚した場合、その重要な証拠となります。退職した社員についても残しておくことで、退職後に労働紛争などが生じた場合の重要な証拠となるでしょう。
不採用者の場合は法律上の保管義務はありませんが、採用プロセス終了後の返却希望に対応するために一定期間は保管しておいたほうがよいでしょう。
返却は義務ではありませんが、できるだけ真摯に対応したほうが不採用者にネガティブな感情を残さずに済むからです。
履歴書の保管期間
履歴書の保管期間は、それがどのような状況のものであるかにより異なります。
在職中の社員の場合、退職者の場合、不採用者の場合、それぞれ異なる期間が設けられています。ここからは、具体的な保管期間とその後の対処法について詳しく見ていきましょう。
対象 | 保管期間 |
在職中の社員 | 雇用継続中は保管 |
退職した社員 | 退職後5年(当面の間は3年)経過するまで保管 |
不採用になった応募者 | 保管義務はなし |
在職中の社員の場合
社員の履歴書の保管期間については、一般的には退職後5年(当面の間は3年)経過するまでとされています。つまり、雇用継続中は何十年でも保管しなければいけないということでもあります。採用が終わったからといって破棄してしまわないようにしましょう。
この保管期間については、以前は3年間と定められていましたが、2020年の労働基準法改正により、5年間(当面の間は3年)に延長されました。
退職者の場合
退職者の場合の保管期間は、退職した日から5年間(当面の間は3年間)です。
これは、退職者が再就職を希望する場合や、企業が過去の労働事情を確認する必要が出てきた場合などに、必要となる情報を確認できるようにするためです。
また、労働訴訟などのリスク管理の観点からも、退職者の履歴書を適切に保管することは重要となります。
不採用の応募者の場合
不採用となった応募者については、法律上の保管義務はありません。しかし、それでも一定期間は保管することが望ましいでしょう。
なぜなら、採用選考について後日何らかのトラブルが発生した際に証拠となる可能性があるからです。具体的な保管期間は企業により異なりますが、一般的には応募から半年から1年程度は保管する企業が多いです。
ただし、履歴書は個人情報なので、保管する際は個人情報保護法を遵守する必要があります。プライバシー保護の観点からも、適切な方法で管理し、保管期間が経過した後は、個人情報を適切に破棄することが求められます。
これらの点を踏まえ、不採用者の書類管理については、しっかりとしたルールを設け、遵守することが大切です。
不要な個人情報を保管しないという観点では、不採用者には履歴書を廃棄する旨を通知しておいたり、必ず返送して社内に個人情報を保管しない方法もあります。
履歴書の保管方法
履歴書の管理方法については、紙媒体と電子データの2つの観点から考えることが重要です。どちらの方法でも、適切な整理と管理が求められます。
保管方法 | 詳細 |
紙媒体 | キャビネットや専用の保管箱を使用し、鍵をかけて簡単に閲覧できないようにする |
電子データ | パソコンやサーバーに保存。パスワードによるアクセス制限やファイヤーウォールによるセキュリティ強化が必要 |
紙媒体での保管方法
紙媒体での履歴書は個人情報を含むため、第三者から見られないように保管することが求められます。たとえば、キャビネットや専用の保管箱を使用し、鍵を掛けて簡単に閲覧できなくすることが推奨されます。
さらに、検索性も重要です。一般的に紙は電子データに比べて検索性に劣ります。したがって、ファイリングなどによってすぐに目当ての書類が見つけ出せるように保管しておく必要があります。
特に履歴書の場合はどの書類の保管期限がいつ切れるのかが重要な情報であるため、それがわかりやすいようにファイリングの仕方を工夫しましょう。
電子データの保管方法
電子データでの履歴書保管は、紙媒体に比べてスペースを取らず、検索も容易なため効率的です。しかし、データの漏洩や紛失に注意が必要です。
まず、パソコンやサーバーにデータを保存する際は、パスワードによるアクセス制限やファイヤーウォールによるセキュリティ強化を行いましょう。
また、採用管理システムやオンライン履歴書保管システムなどのクラウドサービスを利用する場合も、信頼性の高いサービスを選び、定期的なバックアップを忘れないようにしましょう。
さらに、退職者や不採用者の個人情報を含むデータは、保管期間が過ぎたら適切に消去することが重要です。管理者がこれらの対策を講じることで、電子データの保管は非常に効率的かつ安全な方法となります。
誤って履歴書を廃棄してしまった場合
履歴書を誤って廃棄してしまったという事態は、企業にとって深刻な問題を引き起こす可能性があります。
そのため、まずは廃棄した事実を確認し、可能であれば履歴書の内容を復元することが重要です。
履歴書の内容は、社員の採用時の情報や、その後の人事評価、労働証明書の作成などに必要なデータを含んでいます。
これらの情報が失われると、企業の人事管理に支障をきたす可能性があります。また、法的な問題も生じる可能性があります。
履歴書の廃棄は、個人情報の取扱いに関する法律に触れる場合もありますので、早急に対応を行うことが求められます。もしも誤って廃棄してしまった場合は、採用担当者だけで処理しようとせず、上司や法律の専門家に相談するなどして適切な対応を行いましょう。
退職者の履歴書って保管期間が過ぎたあとはどうするの?
退職者の履歴書の保管期間が過ぎた後、どのような対処をすべきなのでしょうか。保管期間を過ぎた履歴書はただ単に捨ててしまって良いのでしょうか。
それとも特別な手続きが必要なのでしょうか。また、保管期間を過ぎてもなお履歴書を保管し続けていた場合、何か問題はあるのでしょうか。これらの疑問について、次のセクションで詳しく解説していきます。
履歴書の破棄方法
履歴書の破棄方法については、個人情報の保護に気をつける必要があります。まず、単純にゴミとして捨てるのは避けましょう。
個人情報が詰まっていますので、それを無闇に外に出すことは許されません。適切な方法としては、シュレッダーで細かく裁断するか、焼却する方法があります。どちらも個人情報が第三者の手に渡るリスクを最小限に抑えることができます。
また、専門の業者に依頼することも一つの手段です。業者に依頼すれば、適切に破棄してくれますし、その証明も得られます。
ただし、業者に依頼する場合は、信頼できる業者を選ぶことが大切です。個人情報の取り扱いについて確認し、安心して任せられる業者を選んでください。
保管期限が過ぎても保管していた場合
保管期限が過ぎても保管していた場合、何か問題があるのでしょうか。答えは「はい」です。
まず、個人情報保護法により、個人情報を適切な期間で破棄しなければならないという義務があります。保管期限を過ぎても保管し続けると、この法律に違反する可能性があります。
また、保管している履歴書が不適切に取り扱われ、情報漏洩の原因となることもあります。これは企業の信頼を損ない、法的なトラブルに発展する可能性もあります。
さらに、不必要に保管し続けることで管理コストが増大するというデメリットもあります。
したがって、保管期限が過ぎた履歴書は適切に処分することが、法的な問題を避けるだけでなく、経済的な観点からも推奨されます。
まとめ
履歴書の保管は法律上の義務であり、社員、不採用者、退職者それぞれに適した保管期間があります。また、保管方法も紙媒体と電子データの両方が存在し、それぞれに適した方法があります。
保管期間が過ぎた場合の対応も重要です。以上のことを踏まえ、適切に保管しましょう。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。