2024年の最低賃金額は50円UPし、全国平均は1054円。東京は改定後1163円になる見通し

2024年の最低賃金額は50円UPし、全国平均は1054円。東京は改定後1163円になる見通し
目次

今年度の最低賃金(時給)について、厚生労働省は全国平均で50円(5.0%)の引き上げを目安とすることを決定しました。

全国加重平均額は、1054円(昨年1004円)となり、新たな最低賃金額は、10月以降に適用されます。

この記事では、令和6年(2024年)の最低賃金額の目安や最低賃金の計算方法について紹介します。自社の時給額が最低賃金を割っていないか、また周辺の時給相場の上昇などもチェックをしましょう。

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2024年度の全国最低賃金は?

2024年度の全国最低賃金は、昨年度の引上げ額(43円)をさらに上回り、全国で50円の引上げ額(目安)となりました。

以下、具体的な最低賃金の金額や近年の引上げ状況、給与形態別の計算方法について解説します。


【2024年度】全国都道府県別の最低賃金一覧

2024年(令和6年)7月25日、厚生労働省は令和6年度地域最低賃金額改定の目安について公表し、47都道府県すべてで50円の引上げとなることが分かりました。

改定は2024年10月の予定ですが、目安通りに最低賃金が引き上げられた場合、最低賃金が1,000円を超える都道府県は次の15都道府県になる見込みです。

北海道(960円→1010円)

茨城県(953円→1003円)

栃木県(954円→1004円)

東京都(1113円→1163円)

神奈川県(1112円→1162円)

埼玉県(1028円→1078円)

千葉県(1026円→1076円)

岐阜県(950→1000円)

静岡県(984円→1034円)

愛知県(1027円→1077円)

三重県(973円→1023円)

滋賀県(967円→1017円)

大阪府(1064円→1114円)

京都府(1008円→1058円)

広島県(970円→1020円)

以下、各都道府県の2024年の最低賃金改定額(目安)を、2023年の最低賃金額と比較する形でまとめました。

都道府県

2024最低賃金(目安)【円】

2023最低賃金【円】

引上げ額

ランク

東京

1163

1113

50

A

神奈川

1162

1112

50

A

大阪

1114

1064

50

A

埼玉

1078

1028

50

A

愛知

1077

1027

50

A

千葉

1076

1026

50

A

京都

1058

1008

50

B

兵庫

1051

1001

50

B

静岡

1034

984

50

B

三重

1023

973

50

B

広島

1020

970

50

B

滋賀

1017

967

50

B

北海道

1010

960

50

B

栃木

1004

954

50

B

茨城

1003

953

50

B

岐阜

1000

950

50

B

富山

998

948

50

B

長野

998

948

50

B

福岡

991

941

50

B

山梨

988

938

50

B

奈良

986

936

50

B

群馬

985

935

50

B

石川

983

933

50

B

岡山

982

932

50

B

新潟

981

931

50

B

福井

981

931

50

B

和歌山

979

929

50

B

山口

978

928

50

B

宮城

973

923

50

B

香川

968

918

50

B

島根

954

904

50

B

山形

950

900

50

C

福島

950

900

50

B

鳥取

950

900

50

C

佐賀

950

900

50

C

大分

949

899

50

C

青森

948

898

50

C

長崎

948

898

50

C

熊本

948

898

50

C

秋田

947

897

50

C

愛媛

947

897

50

B

高知

947

897

50

C

宮崎

947

897

50

C

鹿児島

947

897

50

C

徳島

946

896

50

B

沖縄

946

896

50

C

岩手

943

893

50

C

※厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧

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最低賃金の改定(引上げ)の流れ

 最低賃金は、公益・労働者・使用者代表の各同数の委員で構成される「最低賃金審議会」で議論の後、都道府県労働局長が決定するものです。

 最低賃金法第9条では、決定の際の地域につき、次の3点を考慮して最低賃金を定めるよう規定されています。 

○労働者の生計費
○賃金
○通常事業の賃金支払能力

 なお、2023年度の審議経過の動きは、以下の通りとなっています。

日にち

スケジュール

6月30日

○中央最低賃金委員会(諮問)
○第1回目安に関する小委員会

7月12日~26日

第2回~第4回目安に関する小委員会

7月28日

○第5回目安に関する小委員会(目安の確定)
○中央最低賃金審議会(目安額を答申)

8月18日

○全都道府県の地方最低賃金審議会で改定額を答申
※(これにより最低賃金全国加重平均値が確定)

10月上~中旬

2023年度地域別最低賃金の発効

※参照元:厚生労働省|2023年度の最低賃金決定額について


すべてのランクで「50円増」となった背景

2024年度の地域別最低賃金額の目安が、すべてのランクにおいて一律50円増となった背景には、都道府県間における格差が縮小傾向にあること、政府が地域格差の是正に意識を向けていることなどがあげられます。

2023年度では、その後に最低賃金の改定額が目安を超えた県も少なからず存在したものの、目安はAランク41円、Bランク40円、Cランク39円という形で公表されています。

それを考えると、全ランクの50円増というのは、これまでに類を見ない増額です。

そもそも、最低賃金のランク制度は1978年にスタートしてから現在に至るまで、1人あたりの都道府県民所得や1世帯あたりの消費支出など、複数の経済指標から作成される「総合指数」をもとにランクの見直しを行っています。

この総合指数の差によって、都道府県の最低賃金額にも差が生じていました。

しかし、47都道府県の総合指数の差が縮小しているにもかかわらず、地域別最低賃金の差が拡大していることを背景に、2023年にはそれまでA・B・C・Dの4ランクだったものが、A・B・Cの3ランクに改定されました。

そして同年、2023年度では過去最大となる全国平均43円の最低賃金額改定となり、翌年の2024年には47都道府県で50円の引上げが目安として公表されています。

このような引上げの流れを鑑みると、最低賃金の更なる上昇および格差縮小は、十分想像し得る未来と言えるでしょう。


中央最低賃金審議会の小委員会の動き

厚生労働相の諮問機関である「中央最低賃金審議会」の小委員会で、2024年6月25日から始まった議論では、労働者側、使用者側それぞれが次のような主張を戦わせていました。

労働者側

物価高や最近の賃上げ傾向を踏まえ、「60円超」の引上げを求める

使用者側

経営が苦しい中小企業への配慮から、「20円程度」の値上げを求める

その上で、小委員会側は使用者側の主張に理解を示しつつも、以下の点を重視し引上げ額の目安を50円としました。

  • 消費者物価指数(生活必需品に限る)の直近の上昇率が、平均5%超となっていること
  • 春闘により5%超の大幅賃上げが実現したこと

実際に、2024年の春闘では、高水準の賃上げの動きが相次いでいる状況でした。

労働団体の連合は、物価水準が最低賃金に近い水準の賃金で働く人たちの暮らしに大きな影響を及ぼしているとし、過去には次のような点に触れつつ労働者の最低賃金引上げを要請していました。 

  • 人件費上昇分を価格転嫁しやすい環境の整備
  • 最低賃金がきちんと支払われているか監督する体制の強化
  • 最低賃金の地域間の金額差縮小 など 

特に、最低賃金の地域間の金額差は、地方から都市へ労働力が流出する一因と考えられています。

要請が功を奏したのか、2024年度の最低賃金額の目安は一律50円増となりました。

これにより、地方の企業における採用率向上が期待される一方、雇用コスト増大が懸念要素となっています。 

もっとも、政府は2030年代半ばに1,500円、連合は2035年までに1,600~1,900円程度の水準まで最低賃金を段階的に引き上げる目標を掲げています。 

このことから、遅かれ早かれ最低賃金額が上昇することは確定的と考えられるため、企業としても未来を見据えた対策を講じる必要があります。


最低賃金の計算方法

 最低賃金を各職場で計算する際は、それぞれのスタッフにどのような形で給与を支払っているのかによって、計算方法が変わってきます。

 具体的には、時給制・日給制・月給制それぞれの給与形態において、計算方法に違いが生じます。


給与形態を問わず共通しているルール

 最低賃金の対象となる範囲は、基本給および諸手当と定められています。

 具体的には、実際に労働者に支払われる賃金の中から、以下のような手当等を除外したものが、最低賃金の対象です。 

○結婚手当
○賞与
○割増賃金(時間外・休日・深夜など)
○精勤手当、皆勤手当
○通勤手当
○家族手当

 よって、役職手当や資格手当などは、最低賃金で計算する諸手当の中に含まれる可能性があります。 

 

時給制の計算方法

 一部の例外を除いて、最低賃金は1時間あたりの賃金で定められているため、基本的には次の公式に当てはめて考えることができます。

 【時給額≧最低賃金額】

 単純に考えて、各都道府県における地域別最低賃金と同じ、あるいはそれ以上の時給額であれば、最低賃金法違反とはなりません。

 例えば、静岡県の地域別最低賃金は984円となっていますが、自社のパート・アルバイトスタッフの時給が950円だった場合、最低賃金法違反となります。

 今後は、スタッフと雇用契約を結んだ時期と比べて最低賃金が上がるケースが増えるものと予想されますから、定期的に時給を改定できるよう準備しておくと安心です。 

 

日給制の計算方法

 日給制で働いているスタッフの最低賃金を計算する場合、時間給と比較できるよう、次の計算式で判断します。

 【日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額】

 また、計算する際は手当も時給換算する必要があり、賃金と合算して考えます。 その際は、1ヶ月あたりの手当を1ヶ月の平均所定労働時間で割って算出します。

 次の例で考えてみましょう。

<例>
北海道で、次の条件で働く日給制の労働者
○1日の所定労働時間8時間
○月の勤務日は10日
○日給は7,600円
○資格手当16,000円
〇1ヶ月の平均所定労働時間 168時間

【日給の時給換算】
■7,600円÷8時間=950円/時間(①)

【1時間あたりの資格手当】
■16,000円÷168時間=95円(1時間あたりの資格手当(②))

【時給換算した賃金】
■①+②=1,045円>960円(北海道の最低賃金額)

よって、労働者の賃金は北海道の最低賃金額より高いので問題ない。

実際に計算すると少々複雑ですが、特定の産業について設定されている「特定最低賃金」の中には、日額・時間額の両方が定められているケースがあります。 

その場合は、日給制の賃金労働者につき「日額」が適用されるため、計算の手間が省けるでしょう。


月給制の計算方法

 月給制で働くスタッフに関しても、日給制と同様に時給で即時確認ができないため、次の公式で算出・確認します。

 【月給÷1ヶ月の平均所定労働時間≧最低賃金額】

 また、月給制で働くスタッフについて確認する場合、各種手当の中で最低賃金の対象となるもの・ならないものを選別して計算することが大切です。

 次の例で考えてみましょう。

<例>
埼玉県で、次の条件で働く月給制の労働者
○1日所定労働時間8時間(週休2日制)
〇1ヶ月の平均所定労働時間168時間
○基本給120,000円
○職務手当20,000円
○資格手当20,000円
○家族手当10,000円

【月給換算分】
■120,000円(基本給)+20,000円(職務手当)+15,000円(資格手当)=160,000円(①)
※(家族手当は月給換算分に含めず)

【1か月平均所定労働時間】
■168時間(②)

【時給換算した金額】
■①÷②=952円<1,028円(埼玉県の最低賃金額)

上記より、労働者の賃金は埼玉県の最低賃金額より低いので問題がある。

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最低賃金引上げにともなう影響

 最低賃金が引き上げられると、労働者にとっては良い傾向といえる反面、雇用する立場の企業にとっては必ずしも手放しで喜べる状況とはいえません。

 以下、企業側で押さえておきたい、最低賃金引上げにともなう影響について解説します。


従業員に支払う賃金が増える

 最低賃金が引き上げられるということは、同時に従業員の時給等の最低額も引き上げられることを意味します。

 茨城県でこれまで時給920円で働いていたアルバイトスタッフにつき、時給を33円上げて953円とした場合、以下の通り負担が増えることになるからです。 

○1日の労働時間が6時間の場合                :33円×6時間=198円の増額
○上記条件で1ヶ月の勤務日数が20日の場合 :198円×20日=3,960円の増額
○上記条件による1年間の時給増額分           :3,960円×12ヵ月=47,520円の増額

 スタッフの数が多ければ多いほど、増額分の金額はかさむことになり、それだけ自社の人件費負担も大きくなることが予想されます。

 状況次第で、働くスタッフの数や勤務時間などを再検討することも求められるでしょう。


質を重視した採用にシフトする必要が生じる

 予算が限られる中で最低賃金を守ることを考えると、どの企業においても多くの人材を採用するのは難しくなります。

 最低賃金が上昇傾向にある状況においては、採用初期の段階で優秀な人材・欲しい人材を選べるよう、質を重視した採用にシフトする必要があるでしょう。

 競合他社に先駆け、早い段階で時給を高くすることにより、優秀な人材を呼び込むのも一手です。

 ただし、周囲と足並みを揃えるような時給額で様子を見ていると、採用活動における賃金での差別化は難しくなるため、できるだけ早期に対応することが求められます。 


人手不足のリスクが生じる

 扶養控除というルールがある日本においては、アルバイト・パートスタッフが「働きたくても働けない」状況が常態化しています。

 児童手当の拡充にともない、扶養控除は廃止が検討されているものの、2023年11月現在においては扶養控除内で働く労働者が数多く存在しています。

 最低賃金が上昇することで時給が上がってしまうと、多くのアルバイト・パートスタッフが労働時間を減らして対応することが予想されます。

 その結果、スタッフの数は十分なのに、シフトが埋まらない店舗・職場が増えてしまうおそれがあります。 


正社員の待遇も再検討の必要がある

 最低賃金上昇も含め、時給額はアルバイト・パートスタッフにとって“差し迫って重要な問題”の一つに数えられます。

 これまでよりも時給が下がるようなことがあれば、その労働者は転職先を探そうと考えるでしょうし、時給が上がれば今後のモチベーションにも良い影響を与えることが予想されます。

 その一方で、主に月給制の正社員に関しては、そもそも“雇用契約を結んだ時点で最低賃金を下回る給与でない”ケースが多く見られます。

 そのため、最低賃金額が上がっても自分の待遇が変わらないことに、少なからず不満を抱いている正社員がいるかもしれません。

 企業としては、最低賃金の上昇に合わせて、正社員の待遇についても再検討することが大切です。


企業は最低賃金引上げにどう向き合うべきか

 最低賃金引上げについては、いち企業の所存で増減できる話ではないため、経営者・人事としては「発効を受けてどう対応するか」について考えを巡らす必要があります。

 以下、最低賃金引上げという状況を、自社のチャンスに変える視点についてご紹介します。 


従業員の時給増(賃金増)をスキルアップにつなげる

 時給を増やすこと自体は、最低賃金法にのっとって粛々と行う必要があるものの、ただ増やすだけでは企業の発展につながりません。

 時給を上げた分だけ労働の質を高められるよう、最低賃金引き上げを契機に従業員の意識改革につなげましょう。

 自社で勉強会を実施したり、外部講師を招いて業務の質の向上につなげたりと、色々な施策を講じることが大切です。

 技能を賃金に反映させられるようにするなど、これまでの人事評価制度を改正するのもよいでしょう。


DX等による省人化・業務効率化を推進する

 最低賃金が引き上げられる状況が続いた場合、「これまでと同じように人材を雇用できない」と判断した結果、採用活動を一時的に縮小する選択肢を選ぶ企業も増えるはずです。

 しかし、今までと同様のパフォーマンスを実現するためには、人の手“以外”の力を借りる必要が生じてきます。

 具体的には、DX化やFA(ファクトリー・オートメーション)など、これまで人力で行ってきた分野を抜本的にデジタル化・機械化することなどがあげられます。

 従業員の人数に限らず、これまでと同じ、あるいはそれ以上の仕事量をこなせる体制を整えることは、将来の省人化・業務効率化につながります。


従業員が早めに退社できる仕組みを整える

 マンパワーに頼ることが多い職場の中には、従業員の労働時間が長くなりがちなところも少なくありません。

 労働時間が長くなれば、その分だけ残業代もかさむことになりますから、普段の仕事の中で「労働時間の短縮(業務の効率化)」ができないかどうか考えてみましょう。

 物理的にパソコンを定時でシャットダウンさせたり、管理職以上の職員が定時退社を心がけたりする方法もありますが、本来その日に終わっていなければならないはずの仕事が終わらなければ本末転倒です。

 結果的に、個々の従業員が仕事を持ち帰るようなことになれば、従業員はプライベートを犠牲にして仕事に臨まなければなりません。

 そこで、現在働いている従業員の残業時間を考慮して人数を増やせば、従来よりも個々の従業員の稼働時間を減らすことにつながります。

 例えば、以下のような例で考えてみましょう。

<例>時給1,000円のアルバイト従業員5人が、月20日勤務で1日あたり1時間の残業をしている

【1日あたりの残業代】
1,000円×1.25(割増率)=1,250円

【20日働いた場合の5人の残業代】
1,250円×20日×5人=125,000円

【残業の理由】
職場の清掃や翌日の準備などに時間が取られる

上記のような事情がある場合、一月にかかる5人の残業代が125,000円のため、月100,000円程度のコストで清掃要員を雇用するという方法も考えられます。

 清掃の実務経験がある人材を雇用し、毎日または隔日で清掃を担当してもらえれば、5人の従業員の残業が短縮される可能性があります。

 もちろん、何が残業等の問題になっているのかは職場により異なるため、事前に従業員へのヒアリングが必要です。

 これまでの体制を継続してかかるはずだったコストと、従業員を増やした場合のコストを比較してみて、自社にとって良いバランスを模索してみましょう。


最低賃金の発効前を狙い採用する

 毎年10月頃に最低賃金が発効されるというスケジュールは変わらないため、多くの企業が時給を引き上げるタイミングは、どうしても人材獲得における競争率が高くなります。

 そのため、最低賃金の発効前を狙って時給を上げるなど、早い段階で良い人材を雇用できるよう採用活動を進めたいところです。


公的支援を活用する

 賃金引き上げは多くの企業にとって負担がともなうため、国側でも支援制度を整えています。
具体的な制度としては、次のようなものがあげられます。


業務改善助成金

 業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資・コンサルティング等を行った場合に、それらの費用の一部を助成する制度のことです。

 賃金を引き上げた労働者の数や引き上げた金額に応じて、助成率は最大で9/10、助成上限額は600万円となっています。 


キャリアアップ助成金

 キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内におけるキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善といった取り組みを実施した事業者を助成する制度のことです。

 複数のコースが用意されており、最低賃金と関連するコースとしては「賃金規程等改定コース」があげられます。

 このコースで助成金が支給されるためには、対象となる労働者の基本給の賃金規程等を3%以上増額改定・適用する必要があります。

 基本的な支給額は中小企業で1人あたり50,000円ですが、賃金引き上げ率が5%以上の場合は1人あたり65,000円となります。


中小企業向け賃上げ促進税制

 中小企業向け賃上げ促進税制とは、中小企業などが前年度より給与額を増やした場合に、増加額の一部を法人税から税額控除できる制度のことです。

 個人事業主の場合は、所得税から税額控除できます。

 具体的な要件としては、青色申告書を提出していること、雇用者全体の給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加していることなどがあげられます。 


働き方改革推進支援資金

 働き方改革推進支援資金は、事業場内最低賃金の引上げに取り組むなど、非正規雇用労働者の処遇改善・長時間労働の是正に取り組む中小企業を支援するものです。

 事業場内最低賃金の引上げに関しては、2%以上引き上げたケースが支援の対象となり、設備資金・運転資金を低金利で借り入れることができます。 

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最低賃金法に違反した場合の罰則とは

 最低賃金法に違反した場合、最低賃金額との差額を労働者に支払う必要があります。

 もし、地域別最低賃金額・特定最低賃金額以上の賃金額が支払われなかった場合は、次のような罰則の対象となります 

<地域別最低賃金額以上の賃金額が支払われなかった場合>
50万円以下の罰金(最低賃金法第40条) 

<特定最低賃金額以上の賃金額が支払われなかった場合>
30万円以下の罰金(労働基準法第120条)


最低賃金法違反で気を付けたいケース

 最低賃金法違反は、悪意を持って違反するケース以外にも、勘違いや誤解によって生じる場合があります。

 具体的には、次のようなケースに注意しましょう。 

注意すべきケース

詳細

出来高払い

出来高制の場合も、最低賃金が適用される。
【賃金総額÷賃金算定期間における出来高払制等で労働した総労働時間≧最低賃金額(時間額)】

試用期間

試用期間中も最低賃金が適用される。


まとめ

 最低賃金が引き上げられることは、一見すると労働者にとって良いことのように思えますが、実際には企業側の事情もあるため一概には判断できません。

 最低賃金が上昇する中、収益が増えない状況が続けば、人材の確保にも悪影響が及ぶことでしょう。

 企業としては、自社の将来を担うための人材を育てつつ、業務効率化に向けた環境整備等を進める必要があります。

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ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。