リモートワークとは?メリット・デメリット、導入時のステップと注意点
政府が推進する働き方改革によって、多様な働き方ができる企業が増えてきています。
そこで今回は多様な働き方の代名詞にもなりつつある「リモートワーク」について、近年注目されている背景とメリット・デメリットを解説いたします。
また、これからリモートワーク制度の導入を検討中の担当者向けに、導入時のステップと注意点についても併せてご紹介いたします。
リモートワークとは
リモートワークとは、会社のオフィス以外の場所で働くワークスタイルのことです。英語の「遠隔(=Remote)」と「働く(=Work)」の2つの言葉でつくられた、比較的新しい造語です。
ICTの発達により、これまでの「会社に出社して働く」というスタイルから、「時間や場所にとらわれずに働く」という新しい働き方として誕生しました。
現在、サテライトオフィス勤務やモバイルワークなど、多様な働き方が選択できる会社が増えています。
リモートワークが注目される3つの背景
近年、増加傾向にあるリモートワークはなぜ注目を集めているのでしょうか?
大きく3つの背景があります。
①国による働き方改革の一環
②通勤コストが軽減
③新型コロナウイルス感染による影響
①国による働き方改革の一環
少子高齢化社会の日本の課題として、労働人口減少問題が挙げられます。規模を問わず、あらゆる企業が人材不足に頭を悩ませているのが現状です。そこで国が慢性的な人材不足を解消するために掲げているのが、働き方改革です。
この改革では、将来の日本の全労働人口の1割をリモートワーカーで占めることを目標としています。インターネットの技術向上により、会社以外でも働く環境を整えられるようになったことは、日本社会にとって大きな進歩といえます。
②通勤コストが軽減
震災や自然災害などをきっかけに通勤コストを見直しする企業が増えています。
通勤に伴う交通費や移動時間、満員電車のストレスなど、これまで従業員と企業が負担だった通勤コストも、リモートワーク制度を導入することによって軽減されることから注目される一因となっています。
③新型コロナウイルス感染症による影響
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症によって、緊急事態宣言が何度も発令されました。その影響でリモートワークに切り替える企業が一気に増えました。
国も導入を進める企業に対し、「テレワーク推進強化助成金」「働き方改革推進支援助成金」などで支援を行っています。このことも普及の後押しになり、注目される一因となっています。
リモートワークの実施状況
2021年に総務省が通信利用動向調査の一環で、「テレワーク導入状況に関する調査」を実施しました。
2021年のテレワーク導入企業の割合は2020年より4.4ポイント増加し、5割を超えました。今後導入予定がある企業を含めた割合は、6割近くに達しています。
実施理由を見ても分かるように、新型コロナウイルスの感染対策防止策として導入が増加しています。
※総務省「令和3年通信利用動向調査の結果」
リモートワークの従業員のメリット
リモートワーク制度を実施するにあたって、従業員にどのようなメリットがあるのかご紹介いたします。
①育児中や介護中の人も仕事と両立しやすくなる
長い人生ではさまざまなことが起こります。たとえば、結婚・妊娠・出産・育児をきっかけに退職せざるを得なくなったり、高齢の親の介護や自身の病気などで毎日オフィス勤務するのが難しくなったりすることがあります。
従来では、こうした状況になるとキャリアを諦めざるを得ませんでしたが、リモートワーク制度の推進により、やる気やスキルがあれば仕事を継続できるようになったのは大きなメリットです。
②自分のライフスタイルを大事にできる
場所で生活しながら仕事を続けられるようになるので、会社のある都市以外に移住して地方生活を楽しんだり、海外にいながら仕事を続けたり、家族との時間を増やしたりできるようになるのも大きなメリットです。
③通勤時間やストレスからの解放
リモートワークでは、通勤に伴う疲労やストレスが軽減されます。これまでよりも自分のスケジュールに合わせて仕事ができる上に、通勤時間がなくなった分の時間を他のことに活用する余裕も生まれます。
また、出社が必要なくなるので、自分の好きな服装で仕事ができる気楽さもメリットといえます。
リモートワークの企業のメリット
リモートワーク制度を導入することで、企業にとっても4つのメリットがあります。
①従業員の離職防止
リモートワークができることで、従業員がさまざまなライフステージ(結婚、出産、育児、介護など)の変化の中でも離職の選択をせずに済みます。これによって優秀な人材の喪失に歯止めをかけやすくなります。
②コストの削減
従業員の離職を防ぐことで新たな人材採用や研修などにかかるコストを削減することができます。また、従業員の出社回数が減ることで通勤手当も削減することができます。
③従業員のモチベーション向上
リモートワーク導入で、従業員にとっても働きやすい環境が実現されます。企業としても従業員のモチベーションを上げることで全体的な生産性の向上が期待できます。
④企業イメージの向上
リモートワークを導入することは、「働き手にとって優しい会社」「生産性のみならず、従業員のワークライフバランスも重視する会社」といったプラスのイメージを世の中に発信することにもつながります。こうしたイメージ戦略によって、より優秀な人材が集まりやすくなります。
リモートワークの従業員のデメリット
リモートワーク制度にはメリットもありますが、デメリットも2つあります。
①自宅だと仕事に集中できない人も
会社では上司や同僚の目もあるので仕事に集中できる人も、「在宅勤務だとリラックスしてしまう」「生活のものが目に入ってしまい、つい気になってしまう」など、リモートワークでは集中が難しい人がいます。
②仕事の開始と終わりが曖昧になりやすい
リモートワークでは、仕事とプライベートの境界線が曖昧になりがちです。朝礼もなく、いつでも仕事を始められる一方で、自分のスケジュール管理が甘い人にとってはダラダラしやすい環境にもなります。
リモートワークの企業のデメリット
リモートワーク制度を導入することで、企業にも3つのデメリットがあります。ここではその対処法もご紹介いたします。
①従業員同士、上司と部下のコミュニケーション量が減少
リモートワークでは、部署の人とのコミュニケーション量が減りがちになります。従来であれば、仕事の相談も雑談しつつ解決したり、仕事のアイデアを話し合ったりといったことができる一方、リモートワークではそれができないため、孤独に感じる人も少なくありません。そこで、どのように仕事を進めていくかなどのコミュニケーションを取る方法として、ビジネスチャットツールが活用されています。
【ビジネスチャットツールの主な種類】
・Chatwork
・Slack
・Microsoft Teams
・LINE WORKS
・Talknote
など
②勤怠管理が難しい
企業側にとってはリモートワーカーの勤怠管理をどのようにするかという課題が生じます。そこで、多くの企業が勤怠管理ツールを導入して管理を行っています。
リモートワークで働く側にとっても「きちんと勤怠管理されている」という意識がもてるので、出社時と同じような緊張感をもてるようになります。
【勤怠管理ツールの主な種類】
・AKASHI
・KING OF TIME
・ジョブカン勤怠管理
など
③仕事の進捗状況の把握が難しい
プロジェクトの遂行にあたり、リモートワークをしている従業員の進捗状況が把握しにくいという課題があります。
また、リモートワーク中の従業員側にとっても、チーム全体で取り組むプロジェクトの全体像がわかりにくいというデメリットがあります。
こうした課題を解決するために、多くの企業ではプロジェクト管理ツールを導入しています。タスク管理や情報共有が行いやすくなるため、スムーズに遂行できるようになります。
【プロジェクトツールの主な種類】
・Backlog
・AdFlow
・Redmine
・Wrike
・Jira
・Asana
など
リモートワークの導入ステップ
リモートワーク制度を導入する時は、適切なステップを踏み進めていくことになります。ここからは導入ステップを解説していきます。
1. リモートワークの目的を説明
2. リモートワーク対象範囲の決定
3. 現行の社内制度の把握
4. リモートワーク導入計画書、セキュリティガイドラインの策定
5. リモートワークに必要なICTツールの導入
6. リモートワークのトライアル実施
7. リモートワークの評価と改善
1.リモートワークの目的を説明
まずは社内全体にリモートワーク制度を導入する目的を説明します。導入する目的はさまざまありますが、なぜ導入する必要があるのか、自社の課題解決に絡めて明確に示すことが重要となります。
【導入目的事例】
・多様な人材を獲得するため
・職場環境の改善
・生産性の向上
・出産・育児・介護による離職の防止
・ワークライフバランス
・自然災害、感染症蔓延時の事業継続
など
2.リモートワーク対象範囲の決定
次は、リモートワークを実施するにあたって対象となる従業員、業務内容、実施日数、導入の形態などを検討していきます。導入の方法はさまざまあり、企業や業種などによっても異なります。自社に適した導入ができるように対象範囲を決定します。
3. 現行の社内制度の把握
これまでの就業規則や人事評価では、リモートワークで働く従業員の状況をカバーしきれないおそれがあります。怠けてしまう人もいれば、長時間労働をする人も想定されます。そこで社内制度の変更が必要となります。終業規則、給与制度、勤怠管理、人事評価制度、ICTツール環境、セキュリティツールの現状を把握していきます。
4.リモートワーク導入計画書、セキュリティガイドラインの策定
リモートワーク導入計画書を策定します。
【導入計画書内容】
1. 導入スケジュール
2. 対象従業員、業務内容
3. 実施頻度(回数)
4. 制度と社内ルール
5. リモートワーク実施に伴う研修の実施日とその内容
6. 実施後の検証内容
5.リモートワークに必要なICTツールの導入
リモートワークに必要となるICTツールの導入となります。現在、ICTツールにはさまざまな種類があるので、自社にとって最適なものを選択していくことになります。
●会議やリアルタイムのコミュニケーション
・Web会議システム
・テレビ会議システム
●社内コミュニケーションやスケジュール、ファイル、連絡先の共有
・チャットツール
・グループウェア
●勤怠管理業務
・タスク管理ツール
・勤怠管理ツール
●コスト削減
・ペーパーレス化ツール
●セキュリティ
・セキュリティソフト
6.リモートワークのトライアル実施
いよいよリモートワークのトライアルです。開始後はトラブルの発生もよくあるので、社内でサポート体制を整えておきます。トライアル期間は企業にもよりますが、約3ヵ月~6ヵ月が平均となります。この段階で改善点の洗い出しを行います。
7.リモートワークの評価と改善
トライアル期間終了後、企業の売上やコストの削減率などに変化があったか照らし合わせながら評価をしていきます。また、リモートワークで働いた従業員には課題や不満がなかったかヒアリングを行い、改善へとつなげていきます。
リモートワーク制度導入時の注意点
リモートワーク制度を導入するにあたり、どのようなことに注意すればいいでしょうか?ここでは重要度の高い3つをご紹介いたします。
①情報漏洩
自社の機密情報や顧客情報の流出は社会的信用にも関わるため、セキュリティ対策は徹底して行わなくてはいけません。従業員が業務にあたり順守するセキュリティガイドラインを策定し、セキュリティ意識を高める研修を行いましょう。
②ノートPC、タブレット、情報記録媒体の紛失・盗難
ノートPCやタブレット、情報記録媒体を従業員に貸与して業務を行うことになりますが、社外での紛失や盗難には十分気をつけるよう注意喚起が必要となります。
③不適切な通信環境への接続
公共の場所で接続可能な無線LANは、暗号化キーが公開されていたり、暗号化されていなかったりとセキュリティに不備がある場合があるので、第三者に通信内容を見られるリスクがあります。
特にモバイルワークを行う人で、どうしても使用せざるを得ない時は、お店や自治体などが正式に提供するWi-Fiを利用することや、重要情報のやり取りは控えるなど、研修で周知徹底しましょう。
まとめ
今回はリモートワークのメリット・デメリットや、導入のステップと注意点などをご紹介しました。多様な働き方を実現するリモートワークは、今後も引き続き導入が進んでいくことが予想されます。導入する際は十分な準備をして進めていきましょう。
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