離職率が66%→14%に改善。パチンコチェーンで実施した人事改革とは?
田村総業株式会社 人事総務部主任
高木 嶺児さま
苦労して採用した人材がすぐ辞めてしまう。なかなかスタッフが定着しない。そんな悩みをもつ企業は少なくありません。
今回は、人事の意識改革で従業員の離職率を60%台から14%へと劇的に引き下げ、人材の定着を実現しているパチンコチェーン田村総業株式会社人事総務部主任、高木嶺児さんにどのような取り組みをされているかについてお話を伺いました。
~高木さんが現職に就いた経緯を教えてください。~
前職はホテルマン、店舗スタッフを経て3年前から人事部へ
新卒で伊豆長岡のホテルに就職。4年ほど接客サービスの仕事をしていました。結婚して子どもが生まれたのでもっと収入を増やしたいと思い、田村総業株式会社に転職しました。
地元でもともとこの会社のことはよく知っていたので、未経験でも不安はありませんでした。
今年で社歴は14年目。店のスタッフ、主任を経て3年前から現職の人事部です。
~以前はスタッフの定着率が低かったとのこと。原因はどんなところに?~
入社前と入社後のギャップが離職の原因
パチンコ業界は傍から見ると仕事内容の割に時給が高く、ラクに稼げる仕事・・・というイメージがあるようです。そのため、安易な気持ちで応募をしてくる方が少なくありませんでした。しかし、当店では店を「プレイステーション」と捉え、お客様に楽しいひとときを過ごしていただくアメニティ空間への変革を推進しています。
そのためには、質の高いサービスやおもてなしが必要で、スタッフひとり一人の資質とスキルが問われます。それに対応できず、自分が描いていた仕事のイメージと違うとすぐ辞めてしまうわけです。
求人広告を出し、面接をして採用し、仕事のやり方を教える。
人材の確保には多くのコストがかかっているのに、採用した人がどんどん辞めてしまえばすべて無駄になってしまう。現在、私の上司にあたる人事担当者は、以前からこの課題をなんとか解決したいと考えていたようです。
~高木さんが人事に配属された理由もそのあたりにあるのでしょうか?~
以前は人事は一人ですべてを担当していましたが、私の上司の「人財」を大切にするという想いから増員され、3年前から私が配属され、続いてもう二人が配属され4人体制になりました。直接業績に関係ない部署を強化するのは、会社にとっても大きな決断だったと思います。
それに応えるために、「スタッフの離職率を下げ、定着率を高める」という目標を掲げて、この3年間いろんな取り組みを行ってきました。
~取り組みの内容を具体的に教えてください~
人事主導で採用と導入教育を集約し合理化
まず、採用面接と初期の導入教育の一元化です。
今までパート・アルバイトの採用は各店で行っていました。しかし店長の負担が大きく、A店では条件が合わない人もB店なら採用できたのに・・・という行き違いもあったので、人事が一括して行うことにしました。これで各店にバランスよく人材を振り分けることができるようになりました。
また、以前は新人の3日間の研修も各店に任せていました。しかし新人の側になって考えると、面接で会う人、会社の規約や手続きを説明してくれる人、研修を行う人がそれぞれ違うと戸惑いや不安が大きくなります。
また、店によって研修の内容にもバラツキが出てしまいます。
そこで、面接から研修まで人事が一括して行い、新人の方に安心感、信頼感を持ってもらえるように配慮しています。
さらに、本社と各店で重複している事務作業などを見直し、本社に集約することも推進しています。自分が店にいたからよくわかるのですが、店長の事務処理などの雑務はかなり多く、本来力を注ぐべき店の運営、接客サービスに支障がでることもありました。
そこでこれらを合理化し、店長には本来の仕事に全力を注いでもらう。店長に時間的、精神的なゆとりができると店のチームワークも向上し、業績面にもいい影響を与えているようです。
そして、採用する人材についても意識を変えました。毎日フルタイムで働いてくれる人がいい・・・と望んでもそういう人はなかなか採用できません。ならば視点を変えて、子育て中の女性を戦力にできないか?と。
育児に手がかかるうちは短時間勤務で、そしてだんだん育児の手が離れてきたら、長時間勤務に移行してもらうという方針です。
現在、子育て中の女性スタッフの比率は増えており、女性目線のあたたかみのある接客がお客様にも好評です。
~これらの取り組みで離職率はどのくらい変わったのですか?~
離職率が3年で劇的に改善
上のグラフは平成26年から平成29年2月までの退職者数と離職率の推移です。今期は、まだ2月までの数値までしか出ていませんが、離職率で比較すると3年前の4分の1以下まで改善しています。
長く働く人が増えてきたので、平均年齢も35.6歳と以前より上がっています。
~劇的な変化ですね。人事主導の改革をここまで実現できた理由は?~
現場と人事のかけ橋に
ひとつ目は、会社としての意思ですね。以前から人材育成の重要性、スタッフを定着させる必要性を強く説いていた上司の力が大きいです。
ふたつ目は、おこがましいようですが、私自身が現場とのかけ橋になれたことでしょうか。年齢も近く長く現場に居たので店長たちの心情がよくわかり、相互理解がしやすかった。時には店長とやり方が違って言い争いになったこともありますが、お互いに会社を良くしようという想いは同じなので、最後はわかりあえるんです。
~人事としての今後の課題は?~
数あるパチンコ店の中で「タムラ」を選んでいただくために
離職率をさらに下げ、正社員もパート・アルバイトの方も、誰もが長く働き続けられる職場環境を整えていきたいです。
パチンコ店は今や地域の皆様のコミュニケーションの場。顔なじみのスタッフとおしゃべりするのが楽しみで、頻繁にいらして下さる方が多いんです。実は設備や遊具は他社もあまり大差がありません。その中で「タムラ」を選んでいただくためには、やはり人材がポイント。人事の責任は大きいですが、これからもがんばっていきます。
現場で活躍されているスタッフの方からもお話を伺いました。
仕事と育児がストレスなく両立できる職場
スタッフ 菊池 桃夏さん
以前は介護関係で働いていましたが、子どもの急病などの時に休みが取りづらく、そんな時に求人を見て応募しました。3年前のことで、下の子はがまだ1歳のときです。
「平日のみで1日4~5時間しか働けません」と伝えましたが、快諾してくれました。正直、サービス業で土日出勤しなくてもいい、という職場はなかなかありません。
同じような立場のスタッフが多いので、シフト交代なども気兼ねなくできて働きやすいです。子どもが成長して、今ではシフトにたくさん入れるようになりました。顔なじみのお客様も増え、毎日楽しく働いています。3年前の転職は大正解でした。
(取材日/2017年2月24日)
取材協力
田村総業株式会社
本社/静岡県田方郡函南町塚本276
事業内容/プレイステーションタムラ函南本店・香貫店・古奈店・清水町店流通、賃貸マンション
HP/ http://www.tamura-sougyo.co.jp/index.html
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