日給月給制の特徴、日給や月給と違う点、メリット・デメリットを解説!
様々な給与体系の一つとして、日給月給制と呼ばれる1日を計算単位として給与を固定し金額を算出する給与体系があります。他にも似た制度として日給、月給日給制なども存在しますが、どのような違いがあるのでしょうか。
そこで、本記事では日給月給制の本記事では日給月給制給与体系の概要やポイント、他の給与制度との違いやメリット・デメリットを紹介していきます。
欠勤や遅刻、早退などがあった場合の減額計算の方法も記載していますので、人事や労務担当の方はぜひチェックしてみてください。
日給月給制の概要とポイント
日給月給制は、1日を計算単位として給与を固定し金額を算出する給与体系です。あらかじめ月額ベースの金額が定められており、その分から欠勤・遅刻・早退の時間分を減額する仕組みとなっています。
日給制と混同されやすい制度ですが、違いとしては日給月給制が月の基本給が決められているのに対して、日給制は「働いた日数分」の給与しかもらえません。欠勤や早退等で金額が決まるか、実労働の日数で金額が違うかと言う点で「日給月給制」と「日給」は異なるのです。
その他、日給月給制では下記のような特徴もありますので、確認しておきましょう。
- 欠勤しても有給を取れば減額されない
- 残業代も受け取れる
- 休日出勤による手当も出る
- 長期休暇は企業ごとのルールで変わる
① 欠勤しても有給を取れば減額されない
日給月給制の場合、有給を取得することが可能です。他の給与体系と同じで「雇い入れから6カ月経過している」、「その期間の全労働日の8割以上出勤している」といった条件を満たせば日数が付与されます。
なお、日給月給制では休んだ際に有給を充てれば欠勤扱いにならず、給与が減額されないメリットもあります。利用できる付与日数に関しては、継続勤務した年数によって変わりますので確認しておきましょう。
ちなみに、有給休暇の付与対象者は雇用形態の違いがあっても変わりません。出勤日が少ないパートやアルバイトでも、付与はする必要がありますので覚えておきましょう。
② 残業代も受け取れる
残業代をしっかり受け取れる点も日給月給制での特徴です。この点も給与体系の違いは関係なく、1日8時間、もしくは週40時間を超えて勤務すると、残業代を受け取ることが可能になります。なお、労働時間が夜10時以降~翌日の朝5時に掛かった場合は、深夜割増の賃金も発生します。
日給月給制では、遅刻や早退分の給与を減額できるため、事業者としては人件費を抑えられるメリットがあります。しかし、残業代はもちろん、休日出勤や深夜労働があった場合は割増賃金の支払い義務がありますので注意しましょう。
③ 休日出勤による手当も出る
日給月給制では、休日に働いた場合に休日手当も出るメリットがあります。なお、法定休日の勤務の場合は、基礎賃金額の35%上乗せ分を支払う必要があります。法定外休日の勤務は、週40時間以内であれば休日出勤手当は未発生となりますが、超過した場合は時間外労働で基礎賃金額の25%上乗せ分の支払いが給与計算で発生します。
ちなみに、法定休日とは労働者が取れる週1日の休日、もしくは4週4回の休日を指します。土日祝日が法定休日ではありませんので気を付けましょう。
④ 長期休暇は企業ごとのルールで変わる
長期休暇があった場合に扱いが変わる点も日給月給制の特徴です。仮に企業内のルールで年末年始休みや夏季休暇が公休となっていれば、休みを取っても欠勤にはなりません。
しかし、公休となっていないケースでは、有給を消化して休みを取る必要があります。有給による長期休暇取得であれば欠勤とはなりませんが、そうでない時は欠勤で給与から減額されてしまうため注意が必要です。
日給月給制を採用する場合は、長期休暇がどのような扱いとなっているのか、あらかじめ従業員に周知しておくようにしましょう。
日給月給制によるメリットについて
日給月給制のメリットについて確認してみましょう。主な利点としては下記のような事項があります。
① 残業代や休日出勤手当で給与が増える可能性がある
日給月給制は、前述のように残業代や休日出勤手当が出る特徴があります。したがって、法定休日に労働した場合や会社規定の所定労働時間を超えて勤務した場合は、割増賃金が支給されますので給与が増える可能性があるのです。
ちなみに、所定休日の勤務の場合は、休日労働による割増賃金支給の必要はありません。通常勤務と同様の賃金と、時間外労働があればその割増分の支給のみとなります。
法定休日か所定休日かによって給与額の算出方法は変わりますので、間違えないように注意しましょう。
② 月額給与が決まっているため安定した収入を得られる
月額の給与のベースが決まっている日給月給制では、安定した収入を得やすいというメリットもあります。予期せぬ欠勤や遅刻等のトラブルがなければ減額もされませんので、収入の見込みがつく安心感を得られるでしょう。
また、仮に欠勤や遅刻等があっても減額分の計算は簡単にできますので、支給される金額が把握しやすいメリットがあります。減額計算には給与月額や月の所定労働時間、欠勤・遅刻・早退などの時間数といった情報が必要ですので、あらかじめ確認しておきましょう。
③ 休暇を取りやすい
日給月給制は有給休暇が付与されますので、休暇を取得しやすい点も大きなメリットです。仮に欠勤しても有給を充てれば減額されないため、収入面でも労働者に利点がある制度となっています。
日給月給制のデメリットとは?
日給月給制にはデメリットも存在します。
欠勤・遅刻・早退が多いとその分給与が減ってしまう可能性があります。有給休暇を充てられれば減額はされませんが、あまりにも欠勤が多いと日数が足りず、給与が減りますので気を付けましょう。
日給月給制以外にはどのような給与体系があるのか
給与体系には、日給月給制の他にも様々な形式があります。主要な体系には以下のようなものがありますので、必要に応じて導入を検討しましょう。
① 時給制
時給制は、1時間あたりの勤務を基に時間給を定め、給与金額を決定する給与体系です。主に勤務時間や曜日が不定期であるアルバイト、パート社員などに適用されるケースが多い制度です。
なお、正社員の場合は月給制が多い印象ですが、必要に応じて時給制にしても構いません。事例で言えば、下記の業界では時給制にしている企業が増えています。
- 飲食業界(接客・調理スタッフ、デリバリースタッフ など)
- サービス業界(美容室アシスタント、ホテルのフロント担当 など)
- 教育業界(予備校講師、塾講師 など)
- 販売業界(ドラッグストアのスタッフ、スーパー店員 など)
- 介護業界(介護スタッフ など)
上記のような業界や職種は勤務時間が不定期ですので、時給制の方が良い場合もあるでしょう。労働者自身が働き方を調整しやすい利点もありますので、導入を検討してみましょう。
② 日給制
日給制は1日あたりの給与が定められている給与体系です。日給月給制との違いは、月額ベースで給与が定められていない点であり、働いた日数分に応じて給与が支給されます。
なお、1日単位で給与は定められていますが、就業規則に記載を行えば遅刻や早退時の賃金減額も可能です。適用する際には、控除方法の決定・給与計算システムへの導入・社内への周知を必ず行いましょう。
ちなみに、日給制の場合は月の勤務日数によって給与が変わります。日給月給制の社員は、所定労働日数が20日も、22日の月も基本給与は変わりません。しかし、日給制の場合は勤務日数が増えればそれだけ多くの給与を受け取れるのです。
③ 月給制
月給制は、1ヵ月単位で給与が定められている給与形態です。主に正社員に適用されている給与支払いの仕組みであり、欠勤・早退・遅刻時の減額の扱いの違いで、さらに下記の3種類に分かれます。
- 日給月給制・・・基本給+手当をベースに減給分の時給を算出して、遅刻や早退分を減額
- 完全月給制・・・欠勤、遅刻、早退があってもその分を減額せず毎月定額を支給
言葉は似ていますが、それぞれ上記の様な違いがありますので覚えておきましょう。月給制は毎月ほぼ定額ですので、企業側は毎月掛かる人件費を把握しやすく、従業員側は安定した給与を得やすいメリットがあります。
④ 年俸制
年俸制は1年単位を基準にした給与体系です。主に成果主義を重視する会社や外資系企業、プログラマーやSEなどの専門職種などで採用されています。
こちらもメリットとして、企業側は1年で掛かる人件費を把握しやすい点があります。また、従業員には成果が評価されれば給与が大きく上昇する点、年単位で定めているため突然の会社の業績不振でも給与減額がされにくい点などのメリットが存在します。
支給方法に関しては、年単位の給与金額を12~14分割して支払う方法が一般的ですので、導入する際にはチェックしておきましょう。
⑤ 完全月給制
欠勤・遅刻・早退による賃金の減額がない月給の制度が完全月給制です。こちらも月単位で給与が定められているため、毎月決まった金額が支給されます。しかし、日給月給制や月給日給制とは違い、欠勤や遅刻、早退による賃金の減額がない給与形態となります。
例えば、病気やケガなどで半日休みを取ったとしても、完全月給制の場合には満額の給与が支給されるメリットがあります。残業代や深夜労働、休日労働に対する割増賃金も支給されますので、安定した給与を受け取れる給与形態と言えるでしょう。
日給月給制の計算方法について
最後に日給月給制の計算方法もチェックしておきましょう。欠勤・遅刻・早退ごとに解説していますので確認してみてください。
欠勤時の日給月給制の減額計算
日給月給制で欠勤が発生した際には、下記のような方法で欠勤分の計算を行います。
●欠勤での控除金額 = 月の固定的給与 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間 × 欠勤日数
なお、月ベースの給与は「日給×当該月の労働日数」を掛けた金額となります。仮に基本給が25万円、職務手当3万円、月の平均所定労働時間が160時間(1日では8時間)で欠勤が2日あった場合は、
(25万円+3万円)÷ 160時間 ×(8時間 × 2日)= 28,000円
となりますので、28,000円が給与から減額されます。
遅刻時の日給月給制の減額計算
日給月給制で遅刻が発生した際には、下記の方法で遅刻分の計算を行います。
●遅刻での控除金額 = 月の固定的給与 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間 × 遅刻した時間
仮に基本給が25万円、職務手当3万円、月の所定労働時間が160時間(1日では8時間)で遅刻の時間が45分あったとすると、
(25万円+3万円)÷ 160時間 ×(45分÷60分)= 1,312.5円
となりますので、小数点以下を切捨てた1,312円が給与から減額されます。
早退時の日給月給制の減額計算
日給月給制での早退分は、下記のような方法で計算します。
●早退での控除金額 = 月の固定的給与 ÷ 1ヵ月の平均所定労働時間 × 早退した時間
仮に基本給が25万円、職務手当3万円、月の所定労働時間が160時間(1日では8時間)で、3時間の早退があった場合は、
(25万円+3万円)÷ 160時間 × 3時間 = 5,250円
となりますので、5,250円が給与から減額されることになります。
日給月給制を導入する際はメリットとデメリットを把握しておきましょう!
日給月給制のポイントやメリット・デメリット、その他の給与体系や減額する際の計算方法も解説しました。日給月給制は、欠勤・遅刻・早退による給与金額の減額が可能ですので、企業にとっては人的コストの削減につながるメリットがあります。
しかし、一方では欠勤のハードルが高まるなどのリスクも存在しますので、必ずメリットとデメリットの両面を把握した上で導入は決めましょう。
併せて、自社に最適な給与体系が他にないか、本記事を確認しながら検討してみて下さい。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。