問合せを応募に変える魔法 ~ふたりにひとりが下見に行く時代~

問合せを応募に変える魔法 ~ふたりにひとりが下見に行く時代~
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スマホの普及で、応募手段は電話回帰

求人情報の収集はウェブやアプリを利用する「デジタル化」、応募アクションは電話で行う「アナログ化」のトレンドが加速しているようです。もちろんスマートフォンというデバイスの普及によるものです。



我々、ツナグ働き方研究所で行った採用プロセス行動調査では、全体の61.1%が電話という応募手段を利用している結果となりました。最も利用する応募手段においても46.9%と過半数近くのスコアを獲得しています。

ネットの求人専門サイトを利用した人が電話で応募した割合は62.8%。同様にキーワード検索で情報収集した人も63.3%が電話で応募していました。双方とも実に3分の2が電話での応募です。スマホでサクッと仕事を探して応募の電話をするまでの時間は、早ければ30分くらいでしょうか。このスピード感に対応できなければ、応募者はすぐに逃げていきます。

もちろんメール応募に関しても迅速なレスポンスなど対応力を問われますが、リアルタイムに対応を迫られる電話応募においてはより顕著。その時に面接設定にこぎつけられるか。店長からの折り返し、では待ってもらえない可能性が大です。


意外にも、応募は1社ずつ

複数応募によるバックレなどが指摘されていますが、実際の応募状況はどうでしょうか。



実は、今回の調査では「複数の求人に並行して応募する」と回答した割合は、全体の15.8%。採用現場のリアリティからすると低いスコアに見えませんか。

ただし「厳選した理想の求人だけ応募する」という本命至上主義も27.4%にとどまっていて、いちばん多かったのが「ひとつの求人に応募し、落ちたら次の求人に応募する」という回答。過半数の56.9%を獲得しています。複数同時応募しやすいネットでの応募ではなく電話応募のスコアが高かったことも影響しているかもしれません。

いずれにせよ、「複数応募はしないが本命一本でもなく落ちたら次」というこの結果をどう受け止めればいいのでしょうか。求職者の立場になって考えると、職場にすごいこだわりがないのであれば、複数応募して比較検討しながらちゃっちゃと職場を決めたほうが合理的だと思うのです。

1社受けてダメなら次の1社というのは、「この職場がいい」ではなく「この職場でもいい」ということ。この熱量の希薄さこそが、面接率の低さやいわゆるバックレにつながっているのでしょう。


ふたりにひとりは下見に行く時代

一方で手間を惜しんでいないデータもあります。下見です。



最近は、応募する前に下見に行く求職者が多いという声を聞いていたので、今回の調査項目に入れてみたところ、職場の下見に行ったことがあると回答した割合は51.2%。

特に若年主婦層は60.6%と脅威の下見率で、逆に60代シニア男性は38.9%とやや低いスコア。でも60代の年配の男性が4割下見にいくというのは、逆にすごいことのような気もします。 

では下見に行って、なにをチェックしているのでしょうか。

「店・勤務場所の雰囲気」が55.3%、次いで「自宅からの通勤の利便性」が54.2%と、この2項目が2強でした。

下見派の多い若年主婦層では「店・勤務場所の雰囲気」が70.2%と、その職場が働きやすい環境かどうかを見極めているのが顕著です。

一方、年齢が上がるにつけ「自宅からの通勤の利便性」をチェックする傾向が高まります。下見に行くと回答した60代シニア女性のうち、この通勤という点をチェックしているのは68.1%に上ります。

面接地にたどりつけなかったというデータもあり、親切な誘導案内が求められます。


単なる問合せを応募に変える錬金術

「あの、更衣室って男女別々でしょうか?」

これはあるLGBT(性的少数者)の方からの問合せでした。ツナグ働き方研究所の運営母体であるツナグ・ソリューションズが営むアルバイトの応募受付コールセンターにかかってくる電話の中には、このように「応募する」という意思表示前の「問合せ」も存在します。

年齢制限撤廃もあって募集広告には年齢の記載がなくなっていますが、自分の年齢で採用してもらえるのか不安に思うシニアの方からの問合せもあります。

勤務時間応相談と記載されていても、育児で短時間しか働けないママからすると本当に相談にのってもらえるのか不安に感じがちです。

自分のコンディションに自信のない求職者ほど、応募する前に確認しておきたいことが多くなるのです。そして昨今のダイバーシティな時代においては、こういった問合せが増えることが予想されます。

こういった応募未満の問合せが、少し背中を押してあげるような会話や対応によって、れっきとした1件の応募に変わる可能性は、非常に高いといえます。錬金術というおおげさな表現を使いましたが、まさに採用プロセスにおけるちょっとしたコミュニケーションが試される瞬間です。

平賀 充記
記事を書いた人
平賀 充記

1963年 1963年10月1日 長崎県生まれ。 
1988年 同志社大学卒。リクルートフロムエー入社、人事部門で新卒採用を担当 
1992年 社内遊学制度でNY駐在。個人広告の研究。
 1998年 アルバイト情報誌「FromA東海版」編集長に就任。 以降、「FromA関東版」「FromA_NAVI」「タウンワーク」「とらばーゆ」「ガテン」など求人メディア統括編集長をへて 
 2012年 株式会社リクルートジョブズ メディアプロデュース統括部門執行役員に就任。
 2014年 株式会社ツナグ・ソリューションズ入社。取締役商品開発本部長に就任。同年、 ツナグ働き方研究所設立 所長就任 

株式会社ツナグ・ソリューションズ:http://www.tsunagu.co.jp/
求人広告ナビ:http://kyujin-saiyo.net/