離職率の高い美容業界で、驚きの定着率90%。その取り組みとは?
今回、美容業界では驚きの定着率を実現している会社がある、という噂を聞き、ヒトクル事務局の池田が突撃取材をしてまいりました。
名古屋市を中心に6店舗展開している、美容室チェーンの株式会社シュリンプ。スタッフ、特に女性が働きやすい取り組みをして、離職率が高い(入社1年目で53%、2年目で70%が離職)と言われる美容業界で、離職率10%前後という驚異の職場環境を実現しています。
現在の離職率を実現するまでに、どのような取り組みをしてきたのでしょうか。同社の専務取締役小林さまに、お話をおうかがいしました。
―そもそもなぜ、女性が働きやすい環境をつくろうと思ったのでしょうか。
戦力になるころが、退職のピーク。その悪循環を断ちたかった
美容業界は女性が多く働いています。当社でも、男女比は3:7くらいです。
学校を卒業して、20代後半になり、やっとスタイリストとしてお店にも貢献してくれるようになった優秀なスタッフが、結婚・出産で家庭に入ってしまうことが多い。今までの環境では、家庭と両立しながら、美容師を続けることは難しかったのです。
だから、会社として家庭と仕事の両立ができる職場づくりというのは、会社の成長のためには、必要不可欠なことでした。
―具体的にはどんな取り組みをされていますか?
業界の常識を破る「しあわせプラン」
当社で「しあわせプラン」と呼ばれている支援制度があります。
例えば・・・
①1年間の産前産後休業・育児休業を取得可能
②日曜休み
③就業時間を2時間短く勤務する
上記のほかに、状況に応じて本人と面談をして決めることも多いですね。例えば、出産後の復帰は、1年としていますが、待機児童の問題もありますし、本人と相談して決めています。他には、お店にお客様用の託児所を設けているのですが、困ったときは社員も預けることができます。
あ、「しあわせプラン」という名前ですが?ネーミングは社長です(笑)「社員にしあわせになってもらいたい」という思いが込められています。
制度を浸透させていく中で、大変だったことはなんですか?
しあわせプラン第1号を、社員全員で応援した
一番初めに「しあわせプラン」をとったスタッフが、一番大変だったと思います。お客様のために時間を延長してでも、サービスをしたい気持ちはある。でもそれをやってしまうとずるずるになってしまう。今後自分に続いていく後輩のためにも、しあわせプランを浸透させるためにも、区切りをつけなくてはならない。忙しいのに帰らなくてはならないという、ジレンマがあったと思います。
会社として気を付けたのは、彼女が自分が早く帰ることに、罪悪感を持たないようにすることです。そのためには周りのスタッフの協力体制が不可欠。そして、ありがたいことに、みんな仲間思いで助けてあげたい、という環境でした。
もちろん、彼女もその気持ちに甘えることなく自分ができることはきちんとやる、という姿勢をもっていましたね。
この取り組みのおかげで離職率が下がったのでしょうか?
経営理念の浸透が大きいですね
しあわせプランを作ったということだけで離職率が改善した、というよりも、女性も含めたすべての社員が働きやすい職場づくりをした結果として、離職率が下がっていると考えています。
比較的早い時期に、美容室では当時珍しかった、社員が社会保険に入れるようにしました。他にも、教育・研修に力を入れていますし、給与面も今年から基本給を上げています。賞与は年2回なるべく出すように毎月積み立てをしています。
そして大きいのは「経営理念」の浸透でしょうか。
当社の経営理念には「素的」という言葉があります。「すてき」って漢字だと「素敵」って書くことが多いと思いますが、敵にかなわない、勝てない、ということではなく、的を得たということでこの漢字にしました。「君たちはなんのためにシゴトをしているのか」を新入社員研修や日々の仕事なかで伝えています。
この理念の浸透もあり、現在は人間関係が理由で辞めるスタッフは少ないですね。理念がしっかりしているので、何かあったときに、立ち返ることができます。ずれていたら戻る、周りのスタッフが教えてくれることで、悪い人間関係になりにくいです。
今後考えている取り組みはありますか?
美容師になると、こんないいことがあるんだよ、と伝えたい
現在週休2日(定休日週1日)なのですが、それを3年後に完全週休2日にしたいと考えています。そのために必要なのは、お客様からの評価をいただくしかありません。完全週休2日制にしても会社の業績が上がる、スタッフの給与が上がるというのが理想です。技術の向上はもちろんですが、土日に来られるお客様には、次の予約をとってもらうようにして、お客様にご不便をかけないにしています。
美容師って、給料もよくないし、立ちっぱなしだし重労働だと思われていますよね。
私たちは、美容師にはこんなにいいことがあるんだよ、こんな感動があるんだよ、と伝えていきたい。美容師になりたい、という人を増やしていきたいんです。そのために、お店に職場体験にきてもらったり、美容学校の学生に話をする機会をどんどん作っていきたいと思います。
(取材日:2016年9月9日)
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