裁量労働制とは?メリットやデメリット、導入方法を徹底解説!

裁量労働制とは?メリットやデメリット、導入方法を徹底解説!
目次

近年、政府主導で行われている働き方改革。その中でも注目されているのが「裁量労働制」の制度の適正な導入や運用です。

業務内容によっては、企業側と労働者どちらにもメリットがある働き方ですが、実際に導入する際にはどのような手順や方法で行うのでしょうか?

今回は裁量労働制の概要やメリット・デメリット、他の裁量労働制と異なる点や導入のステップもご説明していきます。


裁量労働制とは?

裁量労働制とは、「みなし労働時間制」の働き方の一種です。実際に働いた労働時間とは関係なく、あらかじめ定められた時間を労働時間とみなして給与を支給します。

例えば、契約で労働時間を1日8時間と定めた場合、実際に働いた時間が5時間でも9時間でも『あらかじめ定められた8時間で働いた』として給料に反映されます。そのため、労働者は実際の労働時間に関係なく契約した労働時間分の仕事量を遂行しなければなりません。

つまり、時間ではなく成果によって仕事を評価するため、成果さえ出せれば労働者個々の裁量で始業・終業時刻を決定できます。自分の都合に合わせて働く時間を決められるので、とても自由度が高い働き方と言えるでしょう。


裁量労働制と他の制度との違いとは?

裁量労働制は似たような制度も多いため、取り入れる際には混同しないように注意する必要があります。特に労働時間については内容が似ている制度もありますので、下記の内容を確認し違いやそれぞれの特徴について把握しておきましょう。

制度概要裁量労働制との違い
事業場外みなし労働制使用者の指揮監督が及ばないため労働者の労働時間を算出することが困難である場合に、あらかじめ定めた特定の時間を勤務時間おtみなすことができる制度・対象が特定の職種に限定されない
・使用者の指揮監督が及ばない事業場外の業務が対象(テレワーク、直行直帰など)
フレックスタイム制あらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、始業する時間や就業する時間を労働者が自由に決定できる制度・対象となる職種と適用できる社員に制限がない
・所定の労働時間が決められている
・規定の総労働時間を超過した場合は残業代が支給される
高度プロフェッショナル制度コンサルタントなどの専門的知識を持っており、かつ、年収1,075万円以上の労働者が対象となる制度・対象となる労働者が限定されている
・深夜・休日労働の割増賃金が支払われない


事業場外みなし労働制との違い

社外における業務が多い場合には、労働時間の正確な算定が難しい場合があります。

そこで、使用者の指揮監督が及ばないため労働者の労働時間を算出することが困難である場合に、あらかじめ定めた特定の時間を勤務時間とみなすことができる制度が「事業場外みなし労働制」です。

なお、当該制度と裁量労働制はどちらも「みなし労働時間制」に該当しますが、対象となる職種が限定されるかどうかで違いがあります。

この2つの制度の相違点は、事業場外みなし労働制の対象者が特定の職種に限られない点です。テレワークなどを導入した場合、事業場外みなし労働制であれば全労働者に適用できます。


フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制も裁量労働制と混同されやすい制度です。

フレックスタイム制は、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、始業する時刻や終業する時刻を労働者が自由に決定できる制度です。


具体的には、1か月の総労働時間を満たせば、自らの裁量次第で柔軟に勤務時間を変更させることが可能となります。ただし、会社が事前に定めたコアタイム(所定労働日中に就業していなければならない時間帯)があります。コアタイムを含めた1日の労働時間を短くして6時間にする、またある時は1日の労働時間を長くして9時間とする日を設けても良いでしょう。

なお、フレックスタイム制は、対象となる職種と適用できる社員に制限がない
において裁量労働制と異なります。

また、フレックスタイム制は、所定の労働時間は決められています。そのため労働時間が規定の総労働時間を超過した場合は時間外割増手当を支給する必要があります。

ちなみに、裁量労働制では規定時間を超過して働いても基本的に時間外割増手当を支給する必要はありません(公休日や深夜に労働させた場合は、別途割増手当が必要です。)ので、その点も大きな違いでしょう。


高度プロフェッショナル制度との違い

この制度はコンサルタントなどの専門的知識を持っており、かつ、年収1,075万円以上の労働者が対象となる制度です。

労働者自身が勤務時間の調整及び決定をすることも可能です。したがって、裁量労働制と同様に、実労働時間ではなく仕事で残した結果によって評価する点が似ています。

なお、裁量労働制で深夜勤務や休日勤務などが発生した場合、時間外割増手当の支払い対象となります。しかし、高度プロフェッショナル制度では深夜・休日労働の時間外割増手当を支払う必要がありません。また、対象となる労働者も裁量労働制より限定されている特徴があります。

ちなみに高度プロフェッショナル制度では上記のような年収要件がありますが、裁量労働制の場合こうした年収要件は存在しません。


裁量労働制の種類に関して

裁量労働制には以下の2種類があります。


専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の進め方を労働者に委ねる必要がある仕事にのみ適用されます。具体的には研究や開発職などの専門性の高い仕事や弁護士・公認会計士などの士業、デザイナーやプログラマーなどのクリエイティブな職種が該当します。

厚生労働省のホームページによると、下記の業務のいずれかに該当する場合において、事業場の過半数労働組合もしくは過半数代表者と労使協定の締結で導入可能とされています。

 【1】新商品・新技術の研究開発または人文科学・自然科学に関する研究の業務 

【2】情報処理システムの分析または設計の業務 

【3】新聞・出版・放送おける取材・編集の業務 

【4】衣服・室内装飾・工業製品・広告等の新たなデザインの考案の業務 

【5】放送番組・映画などの制作におけるプロデューサーまたはディレクターの業務 

【6】広告、宣伝等における商品などの内容や特長に係る文章案の考案業務(いわゆるコピーライターの業務) 

【8】建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案・表現・助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務) 

【9】ゲーム用ソフトウェアの制作の業務 

【10】有価証券市場における相場等の動向や有価証券の価値などの分析・評価・投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務) 

【11】金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務 

【12】学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る) 

【13】公認会計士の業務 

【14】弁護士の業務 

【15】建築士の業務 

【16】不動産鑑定士の業務 

【17】弁理士の業務 

【18】税理士の業務 

【19】中小企業診断士の業務 


引用サイト:厚生労働省ホームページ


企画業務型裁量労働制

当該制度は、下記要件を全て満たす業務が対象となる制度です。

専門業務型裁量労働制のように対象業務が限定されてはいませんが、どの事業所でも導入できる訳ではありません。導入には厳しい要件があるため、取り入れている企業は多くありません。

①事業を行う上で主軸となっている業務である 

②調査や立案、企画や分析といった業務である 

③業務の性質上、これを適切に遂行するには大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること 

④業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者(会社)が具体的な指示をしないこととする業務であること 


裁量労働制の導入で必要となる手順とは?

次は、導入のための具体的な手順について説明していきます。
裁量労働制には前述したように2つの種類がありますが、導入ステップが異なるため注意が必要です。下記の内容を確認して、違いを把握しておきましょう。


専門業務型裁量労働制の導入方法


①労使協定の締結を行う
当該制度は導入する事業場ごとに労使協定を締結する必要があります。労使協定において定めるのは以下の事項です。

 1. 専門業務型裁量労働制の対象となる業務 

2. みなし労働時間 

3. 労働者に対して対象業務を遂行する手段等の具体的な指示をしないこと 

4. 対象労働者の就業時間などに応じて実施する健康確保のための措置内容 

5. 苦情があった場合の措置の具体的な内容(対象労働者から苦情があった場合に対応する窓口担当者や、対応を行う苦情の範囲など) 

6. 協定が有効とされる期間(3年以内が良い) 

7. 実施状況に関する記録の保存を行うこと(協定の有効期間中および満了後3年間)


②労働基準監督署長へ届出をする
作成した労使協定届と変更後の就業規則を労働基準監督署長へ届け出ます。労働者には締結された労使協定の内容を十分に周知させる必要があります。

③雇用契約の更新作業
労使協定の締結により、専門業務型裁量労働制を導入する場合、対象となる労働者と新たな条件で雇用契約を締結する必要があります。①の手順で決めた内容に沿って更新しておきましょう。


企画業務型裁量労働制の導入方法



①労使委員会を設置する
まず事業内に労使委員会の設置を行います。当該委員会では労働条件に関する事項について調査及び審議を行います。その上で事業主に対して意見の提言を行う役割があります。なお、調査及び審議する内容については、賃金や労働時間などの項目となります。

②労使委員会で決議を行う
労使委員会では業務の範囲や労働者の範囲、みなし労働時間などを決議していきます。決議要件については出席した労使委員の人数により決まります。具体的には出席委員の5分の4以上の多数での決議が必要です。なお、決議及び議事録は保存し労働者に周知をしていきましょう。

労使委員会では以下の事項を決議します。

1. 対象となる業務の範囲 

2. 対象となる労働者の範囲 

3. みなし労働時間 

4. 対象労働者の就業時間などに応じて実施する健康確保のための措置内容 

5. 苦情の処理のための措置の具体的な内容 

6. 対象労働者個人からの同意を得なければならないこと・同意しなかった労働者に対して不利益な扱いはしないこと 

7. 協定が有効とされる期間(3年以内が良い) 

8. 企画業務型裁量労働制を実施した際における状況を記録・保存すること(決議の有効期間中および満了後3年間)


③労働基準監督署長への決議の届出
続いては労働基準監督署への届け出を行います。使用者が届け出をしなければ、制度の効果が生じないため必ず届出をしましょう。

④対象となる労働者から同意を得る
最後に制度の適用のため、対象労働者から同意を得るようにします。ちなみに、同意を得られなかった労働者に対して、使用者は解雇やその他不利益な取り扱いをしてはいけません。


裁量労働制導入のメリットとデメリット

次に、企業側と労働者側に分けて裁量労働制のメリットとデメリットを解説していきます。


メリット(企業側)

まずは企業側からのメリットを解説していきます。

①会社の業績アップが期待できる
裁量労働制では、労働者が自分のペースで働けるため、モチベーションのアップがしやすい傾向にあります。労働者が業務の遂行に集中できる環境を作りやすいので、業務の生産性が上がり企業の業績アップが期待できます。

②成果を出せる優秀な人材が集まる
裁量労働制は、時間ではなく業務で出した成果によって評価がされる働き方です。そのため、自身の裁量で業務に力を発揮できる優秀な人材を集めやすいでしょう。また、裁量労働制は離職率も低い傾向にあるため、労働力の確保にも効果的です。

③人件費を管理する手間が省ける
実際に働いた時間と関係なく、事前に契約した労働時間分の給与が支払われるのが裁量労働制です。したがって、基本的には残業代が発生することのない働き方であるため、他の制度と比べて人件費を管理しやすいでしょう。あらかじめ労働者に支払う給与を把握できるのは、企業側としては大きなメリットです。


デメリット(企業側)

次に企業側からのデメリットを解説します。

制度を導入するのに手間がかかる
裁量労働制を導入する際には、労働基準法に則った手続きが必要であるため手間が掛かる点がデメリットです。就業規則の規定変更や雇用契約の再締結などしなければならない業務が多いため、かなりの時間と労力がかかってしまいます。

導入を検討している場合は、一定の工数が掛かることをあらかじめ認識しておきましょう。

②チーム単位での予定調整が難しい
個人の裁量で働くことが主体の裁量労働制は、集団での仕事調整が難しい傾向にあります。チームでの業務をする際のスケジュール調整は、他の働き方と比べて手間がかかってしまいます。


メリット(労働者側)

続いて、労働者側のメリットを解説します。

①働き方の自由度が高い
裁量労働制はとても自由度が高い働き方です。割り当てられた業務さえ遂行できれば、自らの判断で労働時間や業務の進め方を決定できます。

②労働時間を短くできる
上記でも説明した通り、裁量労働制は実労働時間ではなく、仕事で出した成果によって評価される制度です。そのため、業務が早期に終了すれば労働時間を短くすることができます。時間の使い方を自分で決められるので、業務の効率もアップするでしょう。


デメリット(労働者側)

最後に、労働者側のデメリットを解説していきます。

①「みなし労働時間」を超過した分の残業代が出ない
業務を遂行できれば労働時間を短くできる裁量労働制ですが、逆に言えば業務が終わらないと、みなし労働時間を超過した分の残業代がもらえないこともあり得るのです。

そのため、労働者は裁量労働制の契約の際に「業務を完遂できる時間として妥当か?」をしっかりと確認する必要があります。

②高い自己管理能力が求められる
裁量労働制では個々の裁量に任せた働き方をするため、自分で仕事を管理し遂行できる高い自己管理能力が求められます。企業側が求める成果を上げなければ、その分の長時間労働が必要となってしまいます。自己管理能力が低い方には、あまり向いていない働き方だと言えるでしょう。


裁量労働制で残業代が発生するケース

裁量労働制では例外的に残業代が発生するケースも存在します。具体的には下記のような場合に発生しますので、確認しておきましょう。


①法定労働時間を超えるみなし労働時間の場合

法定労働時間とは、労働基準法に定められた労働時間の上限のことで、1日8時間、1週間に40時間と決まっています。この時間を超過した場合は時間外労働となり、残業代が発生します。

なお、基本給から割り出した時給の1.25倍の割増賃金分が残業代となります。この残業代は、みなし残業代を10時間として契約した時点で給与の中に含んでおかなければなりません。


②22時〜翌日5時の深夜労働を行った場合

裁量労働制も他の制度と同じように、深夜労働に対する割増手当は発生します。労働者が深夜22時から朝の5時の間に働いた場合、会社は基本賃金の0.25倍を追加で支払う必要があります。


③休日労働を行った場合

裁量労働制にも休日労働の規定は適用されます。法定休日か所定休日かによって規定は異なりますので、それぞれ確認しておきましょう。

まずは法定休日の場合についてです。労働基準法で規定されており、使用者が労働者に必ず与えなければならない休日が「法定休日」です。週に1日もしくは4週に4日必要だと定められています。なお、法定休日に勤務した際には割増賃金が発生します。金額は1.35倍となりますので覚えておきましょう。

次に所定休日の場合です。会社が自由に決めることができるのが「所定休日」です。所定休日の労働時間と所定労働日のみなし労働時間を合計して、週40時間の法定労働時間を超えてしまいますと、1.25倍の残業代が発生することがあるため、超過していないかチェックするようにしましょう。


裁量労働制を導入する場合は慎重に検討を重ねましょう

裁量労働制は、労働時間や業務の進め方を自由に決められますので、労働者にとって働くモチベーションが高まる働き方です。また、企業側にもメリットのある制度ですが、注意しなければいけない点もありますので気を付けましょう。自社に導入する際には、既存の業務や労働者の意見なども踏まえた上で慎重に検討することが大切です。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長
監修した人
杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。