定年退職の現状とこれから|年齢引き上げや継続雇用制度についても解説

定年退職の現状とこれから|年齢引き上げや継続雇用制度についても解説
目次

平均寿命上昇や出生数減少に伴い、定年退職の対象年齢が55歳から60歳、60歳から65歳へ引き上げられています。

 2021年4月からは、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務になるなど、定年制度の存続そのものが危ぶまれる時代になりました。

 日本の定年制度が大きく見直される中、定年制の新たな導入・制度の再構築などを予定している人事担当者様が多いと思います。

 今回は、定年退職に関連する法律や制度、引き上げるメリット・デメリットについて解説します

2023年2024年 法改正まとめ

採用・人事担当者が把握しておくべき2022年の法改正、そして2023年・2024年の法改正についてまとめた資料です。


定年退職とは?

定年退職は、企業が定めた年齢に達した従業員が、企業との雇用契約を終了し、退職する制度です。

 どの会社にも導入されている、当たり前の制度だと思われがちですが、定年退職制度を採用するかどうかは、各企業が自由に選択できます。

 定年制を採用する場合、企業に勤める従業員すべてが定年退職制度の対象になります。

 該当の人材が退職年齢を迎えたら、人事・労務担当者は企業ごとに定められたルールに則り、退職金や住民税の計算や保険の脱退、支給品の返却など、必要な手続きを進めましょう。


定年退職の退職日はいつ?

定年退職者が退職する日は、企業によって変わります。

  • 従業員の誕生日の当日 
  • 従業員が誕生日に達した月の月末 
  • 従業員の誕生月の、賃金の締日 
  • 定年を迎える年度末の日

など、さまざまなケースがあります。就業規則へ定年退職に関連する内容を加える場合は、いつを定年退職日にするのか、事前に定めておきましょう。合わせて再雇用のルールなども決定しておくと、スムーズに移行できます。


定年制度の歴史と変化

少し前までの日本企業は、年功序列制度・終身雇用制度が当たり前でした。採用後は年齢とともに給与も上がると約束され、安心して定年まで勤められる収入・勤務環境が整えられていました。

 定年制度ははじまったのは、明治20年です。当時は部の大企業のみが導入していましたが、昭和初期に入ると民間企業にも制度が浸透していきます。

この頃は、日本人の平均寿命が現代より短かったこともあり、定年年齢は55歳でした。

 1970年代に入り男女ともに平均寿命が10年以上延びたこと、労働の担い手である団塊世代の引退が迫る中、出生数も減少傾向にあったことから、政府は労働人口を確保するため、企業に対して「60歳定年」を努力義務としました。

 その後、努力義務は「義務」となり、60歳が定年年齢になりました。さらに2013年、「高年齢者雇用安定法」が改正され、2025年4月以降、すべての企業で「65歳定年制」の義務化が決定しています。


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高年齢者雇用安定法とは?

日本の定年制度・定年年齢と深い関わりがある法律に、高年齢者雇用安定法があります。

 正式には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」という名称で、以下のような目的で公布・施行されています。

○定年の引き上げ 
○継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進 
○高年齢者等の再就職の促進 
○定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等 


上記の措置を総合的に講じることで、高年齢者等の職業の安定、その他福祉の増進をはかるとともに、経済および社会の発展に寄与すること 

※参照元:e-Gov|高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

以前は受給開始年齢が55歳だった年金制度も、段階的に引き上げられ、現在は原則65歳からしか受け取れません。

 公的年金制度の支給開始年齢の引き上げにともなう溝を埋めるため、高年齢者雇用安定法が都度改正されています。

法改正年公的年金制度高年齢者雇用安定法
昭和60年
(1985年)
○女性に係る老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げ(昭和62(1987)年度から平成11(1999)年度までに55歳→60歳)
昭和61年
(1986年

60歳定年の努力義務化
(昭和61年10月1日施行)
平成6年
(1994年)
老齢厚生年金の定額部分支給開始年齢の引き上げ
(平成13(2001)年度から平成25(2013)までに60歳→65歳)
60歳定年の義務化
(平成10(1998)年4月1日施行)
平成12年
(2000年)
老齢厚生年金の報酬比例部分支給開始年齢の引き上げ
(平成25(2013)年度から平成37(2025)年度までに60歳→65歳)
定年の引き上げ等による65歳までの高年齢者雇用確保措置の努力義務化
(平成12年10月1日施行)
平成16年
(2004年)

高年齢者雇用確保措置の法的義務化(平成18年4月1日施行)
<義務化年齢を平成25(2013)年度までに62歳→65歳>
平成24年
(2012年)

希望者全員の65歳までの雇用確保措置の法的義務化
(平成25(2013)年4月1日施行)<継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
(平成37(2025)年度までの12年間の経過措置)>


※参照元:高年齢者雇用の状況と制度概要|高年齢者雇用安定法のこれまでの主な改正内容


高年齢者雇用確保措置について

高年齢者雇用安定法において重要な条文の一つが、雇用確保措置について定めている第9条です。

定年退職の年齢を65歳未満としている事業主は、雇用している高年齢者が65歳になるまで、安定した雇用を確保するために、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 定年の引き上げ 
  • 継続雇用制度の導入 
  • 定年制の廃止

定年年齢は、高年齢者雇用安定法第8条において、原則として「60歳を下回ることはできない」と定められています。

さらに、雇用している高年齢者が希望するときは、その高年齢者を定年後も引き続き雇用する制度(継続雇用制度)の導入が求められます。

制度を導入しない場合は、定年を引き上げるか、定年制そのものを廃止するかを選ぶことになります。

企業によって、導入する措置は変わりますが、すべての企業で65歳までの雇用確保が必要です。

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継続雇用制度とは?

継続雇用制度とは、定年後も高年齢者の希望に応じて雇用を延長する制度です。

  • 再雇用制度  
  • 勤務延長制度

この2つの制度に分かれています。どちらも同じ継続雇用制度の枠組みですが、それぞれ制度の仕組みが異なります。混同しないように、違いを知っておきましょう。


再雇用制度とは

再雇用制度は、対象となる高年齢者につき、いったん定年年齢で退職扱いとした後、再度雇用して雇用を延長する制度のことです。

再雇用された従業員は、これまで就いていた役職を失います。定年後は、契約社員・嘱託社員といった、新たな雇用形態で契約を交わすのが一般的です。

契約期間が設けられている嘱託社員の場合、再雇用後も65歳までは原則として更新が義務付けられます。
高年齢者の体調や事情に合わせて、勤務時間や勤務日数など、労働条件の変更も可能です。

再雇用制度を採用する場合の注意点として、制度における仕事内容や給与に関しては、定年前のものと一定の連続性が求められます。

正社員と比較して、明らかに不合理な給与は認められませんし、再雇用という理由だけで手当等を不支給とするのもNGです。

また、これまでデスクワークの事務職として働いてきた従業員を、再雇用後に清掃業務に従事させるなど、定年前の業務内容と大きく異なる業務内容に従事させるのも認められません。

再雇用する人材にたいして、これまでの実績を活かした采配が求められます。従業員の適性に合った業務を検討しましょう。


勤務延長制度とは

勤務延長制度は、定年を迎えた高年齢者の退職手続きを行わず、現在の雇用形態を維持して雇用延長する制度です。

業務の特殊性・業務遂行上の特別な事情により、後任が見つからない状況が続くなど、従業員の定年退職が「事業運営に支障をきたすおそれがある」ケースを想定して設けられた制度です。

勤務期間のみ延長する形のため、役職や賃金、仕事内容に大きな変化はありません。

ただし、細かい労働条件は企業側で決定できます。雇用形態や勤務期間など、定年前とまったく同じ条件を整える必要はありません。

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定年年齢を引き上げるメリット・デメリット

高年齢者の雇用につき、継続雇用制度を導入する予定がない場合、企業は定年年齢を引き上げるか、定年制の廃止を検討することになります。

定年年齢の引き上げには、メリット・デメリットがあります。どのような点に注意して導入するべきか、チェックしてみましょう。

立場引き上げのメリット引き上げのデメリット
企業
  • これまで自社で働いてくれていた人材が、引き続き戦力になってくれる
  • 組織の精神的支柱が抜けることのダメージを減らし、企業として安定性を保つことができる
  • 新入社員の育成を任せられる人材をストックできる
  • 雇用を継続すべきか迷う人材であっても、本人が継続して働くことを希望した場合、基本的に断ることができない
  • 新入社員が増えず、再雇用人材の数が増えていくと、企業としての新陳代謝が損なわれてしまう
  • 任せる仕事内容によっては、想定外の人件費が発生するおそれがある
従業
  • 定年退職後の人間関係が大きく変動することがなく、社会とのつながりが保てるため、安心して生活ができる
  • 年金支給までの期間、働き続けて安定収入を得られる
  • 長く働きたいと考えている場合、定年退職後の転職活動が不要になるので、仕事を探す負担がなくなる
  • 定年年齢引き上げによって、年金受給タイミングが遅くなる
  • 業務内容や役職に変更が生じ、収入が減る可能性がある
  • 継続雇用にともない、全体的に昇進のペースが遅くなり、若年者などのモチベーションダウンにつながるおそれがある

定年制を廃止したり、定年年齢を引き上げたりすると、自社の戦力人材に引き続き活躍してもらえます。メリットがある一方で、定年年齢を引き上げても、いずれ定年がやってきます。

その日に備えて、ベテランに頼り切った経営ではなく、退職以降に次世代へ業務を引き継げる経営へのシフトが急務です。

人材からの継続雇用希望を企業側が基本断れない、という点にも注意が必要です。

高年齢者に該当する人材をどこに配置するのか、継続雇用の人材が増え続けた場合にどう対処するべきか、事前に検討しておきましょう。

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定年年齢の現状と推移は?

企業の定年年齢に関する事項は、基本的に各企業が就業規則で定めており、企業によって雇用確保措置の種類にも違いがあります。

すべての企業が継続雇用制度を導入するとは限らず、定年制を廃止した企業もあります。

厚生労働省が2020年(令和2年)に行った「高年齢者の雇用状況」によると、以下のような集計結果が出ています。

“Ⅰ 65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況 
① 65歳までの雇用確保措置のある企業は99.9%(対前年0.1ポイント増) 
② 65歳定年企業は18.4%(対前年1.2ポイント増) 


Ⅱ 66歳以上働ける企業の状況 
① 66歳以上働ける制度のある企業は33.4%(対前年2.6ポイント増) 
② 70歳以上働ける制度のある企業は31.5%(対前年2.6ポイント増) 
③ 定年制廃止企業は2.7%(変動なし)” 


※出典元:厚生労働省|令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果を公表します

方針の違いはありますが、2020年の時点で100%に近い企業が、65歳まで労働者が働き続けられる仕組みを整えています。


雇用確保措置の内訳について

次に、「高年齢者の雇用状況」に記載されている、雇用確保措置の内訳をみてみましょう。

雇用確保制度の内訳継続雇用制度の導入定年の引き上げ定年制の廃止
全企業76.4%20.9%2.7%
301人以上86.9%12.5%0.6%
31~300人75.2%21.8%%3.0%


※参照元:厚生労働省|令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果を公表します

この表から分かる通り、継続雇用制度を導入している企業が大半です。定年年齢の引き上げに踏み切った企業もありますが、定年制廃止を実施する企業は少数派となっています。

定年制は、従業員のモチベーションにも関わってくる部分のため、従業員に長期にわたり働いてもらうためには、なかなか定年制の廃止に踏み切るのは難しいものと推察されます。

また、60歳定年企業における定年到達者のうち、85.5%の人材が継続雇用を希望しています。

継続雇用を希望しない定年退職者は14.4%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった人は0.2%でした。

この結果から、慣れ親しんだ企業で働き続けたい、と考える従業員が多いことが分かります。人材を確保するために、従業員の希望に応えるために、継続雇用できる土壌を整えておきましょう。


海外の動向は?

次に、海外で働く高年齢者の動向をみてみましょう。

 アメリカやイギリスでは、定年制がほぼ廃止されています。ドイツなどイギリス以外を除く欧州の国々は、定年制度があり、日本と同じように段階的に定年年齢が引き上げられる予定です。

アジア諸国でも、定年年齢の見直しがはじまっています。成長著しい国の一つであるマレーシアでは、経済発展にともなう労働力不足から、定年年齢が引き上げられています。

 優秀な労働力を確保するために、定年制は重要な役割を担います。一方で、定年制を廃止すると、アメリカのように実力主義の傾向が強まる、というメリットもあります。

 社員の定着率を優先するのか、従業員の実力アップを優先するのか検討の上、慎重に判断しましょう。

 いずれの場合もゴールは自社の戦力確保です。その上で、どちらの選択肢がベターなのか、じっくり検討してみてください。

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高年齢者継続雇用を導入する際のポイント3つ

企業を立ち上げて間もない場合、高年齢者の継続雇用制度の導入について、手順が分からなかったり、具体的な導入のイメージが浮かばなかったりするケースは珍しくありません。

これから高年齢者継続雇用の導入を進めたり、過去の制度を見直したりする場合は、次の3つのポイントを意識して、導入を進めましょう。

  • 職歴やスキルにスポットを当てる 
  • 雇用形態・退職時期を選択できるようにする 
  • 他の社員のモチベーションに影響を及ぼさない

それぞれのポイントについて、くわしく解説いたします。


職歴やスキルにスポットを当てる

高年齢者を継続雇用する場合、これまでと同じ役職に就くのは難しいケースがほとんどです。

これからは役職ではなく、職歴やスキルにスポットを当てて、制度の構築・見直しを進めましょう。

 給与面は、特に配慮が必要です。再雇用後の賃金水準を一律にしてしまった場合、若い従業員から不満が出る恐れがあります。

全員が一律ではなく、職種や成果に応じた報酬制度を採用しましょう。

 この時、制度があまりにシビアな場合、再雇用後に給与を著しく下げる仕組みだと誤解されてしまいます。納得いく条件を検討の上、該当社員と個別面談の場を設けるなどして、同意を得ましょう。

 人材の意欲・能力を客観的に評価できる、評価制度も求められます。

具体的な項目を定めた評価制度を整備して、従業員の能力が足りている部分、足りていない部分を把握しながら、適材適所へ配置してください。


雇用形態・退職時期を選択可能にする

高年齢者は、若年者よりも体力面での不安を抱えがちです。また、定年者全員が、65歳まで働きたいと考えている訳ではありません。

 従業員の希望に応じたはたらき方ができるように、体力に応じた雇用形態を用意したり、退職時期を選択できるようにしたり、といった制度の整備が必要です。

 有期雇用で契約する場合は、無期転換ルール(5年ルール)にも注意しましょう。

 無期転換ルールとは、有期労働契約が更新されて5年が経過した場合、社員の申し込みによって無期労働契約に転換できる制度です。

 高齢者の無期転換契約を希望しない企業のために、有期雇用特別措置法があります。

 この特例が適用されれば、高齢者を5年間雇用しても無期転換が適用されません。事前に本社を管轄する都道府県労働局で、認定申請を済ませておきましょう。


他の従業員のモチベーションに影響を及ぼさない

継続雇用制度は、当事者だけでなくすべての従業員にとって興味関心が高い事由です。

 制度を設計する前に、他社員のモチベーションに影響を及ぼさないよう、配慮が欠かせません。継続雇用制度の導入に関連した取り組みを実施して、既存社員もシニア社員も安心して働ける環境を整えましょう。

 シニア社員向けの事前説明会を開催する、年下上司となる人材へのマネジメント研修など、現場のギャップやトラブルを未然に防ぐ工夫を取り入れてみてください。

 管理職から、シニア社員の働きぶりをヒアリングする、どのような人材が必要なのかニーズを調査する、といった行動も、円滑な制度運用につながります。

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定年延長で受け取れる助成金について

高年齢者の継続雇用推進を目的にした、厚生労働省の助成金制度があります。

高年齢者雇用のハードルを下げるために、定年延長時に給付される助成金を、上手に活用してみましょう。

厚生労働省は、65歳以上への定年引き上げや高年齢者の雇用管理制度の整備など、生涯現役社会の実現に向けて取り組む事業主への助成金として「65歳超雇用推進助成金」を設けました。

この助成金には、以下の3つのコースがあります。

  • 65歳超継続雇用促進コース
  • 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
  • 高年齢者無期雇用転換コース

それぞれどのようなコースなのか解説します。

※参照元:65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)


65歳超継続雇用促進コース


「65歳超継続雇用促進コース」は、65歳以上への定年引上げ等、継続雇用を促進するための特定の制度を導入した事業主が、助成金を受け取れるコースです。

具体的には、労働協約または就業規則によって以下の①〜④のいずれかを実施し、その他の要件を満たした事業主が対象となります。

  1. 65歳以上への定年引上げ
  2. 定年の定めの廃止
  3. 希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入
  4. 他社による継続雇用制度の導入

※出典元:65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)


高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」は、高年齢者の雇用改善制度の整備等を、労働協約または就業規則に定めて実施した事業所が対象となるコースです。

以下2点の取り組みを実施した場合に、助成金が支給されます。

  1. 雇用管理整備計画の認定
  2. 高年齢者雇用管理整備措置の実施

※参照元:65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)


高年齢者無期雇用転換コース


「高年齢者無期雇用転換コース」は、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた場合に、助成金を受け取れるコースです。

受給には、以下の2点を満たす必要があります。

  1. 無期雇用転換計画の認定
  2. 無期雇用転換計画の実施

※参照元:65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)

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従業員が定年退職する場合の手続きの基本

従業員の定年退職は、会社都合や自己都合といった退職の事由に分類されず、いわゆる「自然退職」に分類されます。

そのため、法的に退職届を提出する義務はありませんが、就業規則等で「定年退職届」を出すよう定めている場合は、該当従業員に定年退職届を提出してもらいます。

具体的な書式は企業によって異なりますが、概ね以下のような内容を記載してもらうことになります。

  • 提出日 
  • 提出先 
  • 所属部署 
  • 氏名 
  • 退職理由と退職日 
  • 従業員が満65歳となること 
  • 自社の規定によって退職すること

スムーズに提出できるように、見本を用意しておくと便利です。


従業員がそのまま退職する場合の手続き

定年退職のタイミングを迎え、そのまま従業員が会社を離れる場合は、定年退職届を受け取った後で退職手続きへと移行します。

人事側で想定しておく手続きとしては、主に以下のようなものがあげられます。


①健康保険・厚生年金保険の手続き 
・被保険者資格喪失届を、退職日の翌日から5日以内に年金事務所に提出 
・健康保険証(被保険者)証も必ず添付 

②雇用保険の手続き、 
・雇用保険被保険者資格喪失届を、退職日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出 

③年金手帳・雇用保険被保険者証 
・自社で年金手帳や雇用保険被保険者証を預かっている場合、本人に返却 

④給与支給 
・月給制の場合、基準内賃金を退職日までの日割り計算によって支給する 
・健康保険、厚生年金保険等の保険料の徴収漏れがないかもチェック 

⑤退職金がある場合 
・就業規則(賃金規定・退職金規定)に従い、退職金の計算・支給を進める 

⑥社内預金・社内持株会がある場合 
・それぞれ存在する場合、処理ならびに譲渡手続きを進める 

⑦社宅・寮に入居している場合 
・退去日や退去手続きを進める 

⑧退職辞令の作成 
・退職辞令を作成した後、本人へ通知 

⑨自社で交付・貸与した物品等の回収 
・自社が交付した社員証や会社携帯、カードキーなどを、従業員から回収する

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再雇用における会社側の具体的手続き

定年退職後、再雇用となる従業員は、退職手続き後に新しい雇用契約を締結します。従業員の希望を確認の上、再雇用契約を結びましょう。

 企業側での手続きで、特に注意すべきなのは、社会保険に関する手続きです。

 同じ従業員でも、これまでとは条件が変わります。一般的な手続きと異なるケースもあるため、注意して進めましょう。


健康保険・厚生年金保険などの社会保険

定年を迎えた従業員を再雇用する場合、健康保険・厚生年金保険がいったん途切れます。

 定年退職日の翌日に資格をいったん喪失させた後、同時に再取得の手続きを行い、保険料を再雇用後の給与に課される額へ切り替えましょう。

 手続きを進めるために、年金事務所へ「被保険者資格喪失届」「被保険者資格取得届」二つの届けを同時に提出してください。

 合わせて、以下書類の提出が必要です。

  • 従業員が退職したことが分かる書類(就業規則・退職辞令の写し等)
  • 再雇用されたことが客観的に判断できる書類(雇用契約書、労働条件通知書等)

 事業主の証明を提出する形でも認められます。事業主の証明を提出する場合は、退職日・再雇用された日の記載が必要です。


労災保険や雇用保険などの労働保険

労災保険・雇用保険については、特別に手続きする必要はありません。

 労災保険は、事業主が従業員を1人以上雇っている場合、必ず加入が必要なため、引き続き継続加入しましょう。

 雇用保険も、週の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用見込みがある場合は、引き続き被保険者となります。

 再雇用後に1週間の勤務時間が20時間未満となった場合は、雇用保険へ加入できないため、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出してください。

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従業員の定年退職に備えた求人対策

定年年齢が引き上げられているのは、労働人口減少による労働力確保を担うためです。一方で、定年を迎える人員自体が、減少傾向にあります。

 定期的に人材確保できる仕組みを構築できていない場合、人材の流動が停滞し、やがて企業維持が厳しくなるでしょう。

採用担当者は、定年者の継続雇用による優秀人材の確保と、新しい人材を雇用する施策が同時に求められます。

 自社の未来を担う人材を確保するためには、新卒・中途を問わず、自社に魅力を感じてもらえるような求人広告の作成・運用が不可欠です。

株式会社アルバイトタイムスが運営する、中小企業向け採用サービス「ワガシャ de DOMO」を活用することで、自社のニーズと応募者のニーズをマッチさせる求人記事の作成が可能です。

ターゲットとする年齢層に刺さる表現で、御社の希望に沿う人材の確保につなげます。

Indeedをはじめとする各種求人サイトとの自動連携によって、自社求人の露出度を高め、応募者増に貢献します。

高年齢者の再雇用だけでなく、現役世代の雇用にも力を入れたいとお考えの人事担当者様は、資料請求からお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

従業員の定年退職にあたり、貴重な労働力を手放すのはもったいないと考えるのは、経営陣・人事にとって自然な発想と言えます。
再雇用するにせよ、勤務を延長するにせよ、従業員が働きやすい雇用形態で働いてもらうのが理想です。

そのためには、報酬面や評価制度の観点から、高年齢労働者も含む従業員のモチベーションを下げない仕組み作りが重要になるでしょう。
同時に、新しい人材を取り入れる活動も、継続して行うことが大切です。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。

「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。

アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/

社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。