1on1とは?注目される背景や実施方法導入事例について解説

1on1とは?注目される背景や実施方法導入事例について解説
目次

社員の進捗状況を把握し、より強い組織を築くための方法を探している企業は多いでしょう。1on1ミーティングは、そのための最適なツールです。

この記事では、1on1ミーティングの利点、目的、そして実施する方法について書きます。1on1ミーティングを実際に職場に導入した企業の事例も書いていきます。1on1で組織力を高めるためにぜひ参考にしてください。

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1on1とは?

1on1とは「1対1」のことを意味する言葉です。ビジネスにおいては2人が対面でミーティングをすることを意味します。

1on1では、部下に報告を求めたり、指導したり、評価したりといったことは目的とせず、部下の日々思っている悩みや課題について上司が良く聞き、自発的な成長をサポートするのが目的となります。

1on1ミーティングの特徴は「短いサイクルで定期的に繰り返すこと」です。日本企業において上司と部下の面談は半年か1年ごとである場合が多いですが、1on1ミーティングの場合は通常1週間程度、長くても1ヶ月程度のサイクルで実施します。

新型コロナにより従来の手法では部下のモチベーションが低下したり、育成の機会が減少したことで、1on1が注目されるようになりました。

人事白書が2020年に実施した調査では導入している企業は4割でしたが、リクルートマネジメントソリューションズが2022年に実施した調査では、7割まで上昇しています。

【参考】
人事白書2020/株式会社HRビジョン
1on1ミーティング導入の実態調査/リクルートマネジメントソリューションズ


なぜ1on1が注目されるようになったのか

ビジネスでの1on1は、1対1で対話できるため、より本質的で深い話ができます。クローズな形式で対話ができるため、個人的な仕事上の悩みや課題などセンシティブな相談もしやすいです。



新型コロナウイルスの感染拡大

1on1の導入が進んだ背景には、コロナ禍によるリモートワークの普及があります。2020年以降、新型コロナウイルスへの感染を防止するため、ソーシャルディスタンスという概念ができました。それに伴い、できるだけ出社せずリモートワークで仕事をするのが望ましいという社会的な風潮が生まれました。

しかし、リモートワークが普及するにつれ、社員が孤独感を得てモチベーションが下がったり、社員の働きぶりを管理職が把握できずに適切な評価ができなかったりといった問題が頻発することになります。

そこで社員のメンタル面のケアや、働きぶりを密に把握するための対策として、1on1が注目されるようになったのです。

ビジネスでは、個人的な成長やキャリアアップを目指すことも社員のモチベーションに大きく関わります。1on1は、社員の個人的なキャリア形成の面でも注目されるようになっています。


VUCAの時代

VUCAの時代とは現代に特有の時代の性質を指します。これはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまい性)の4つの頭文字をとったものです。

現代の社会は急激に変化し、将来を予測するのが難しく、複雑で、曖昧であるという意味を示しています。

VUCAの時代では多くの人が不安を感じますが、変化を楽しむことができる人は新しいチャンスを掴めます。ビジネスにおいてもVUCAの時代に上手く対応していくことが必要となっているのです。

1on1ミーティングはVUCAの時代に対応するための手段として注目されています。なぜなら1on1ミーティングには以下のような効果があるからです。

● 部下の自律性を養い、自分で考えて行動できるようなスキルを身につけさせる 

● 上司と部下の信頼関係を強化し、コミュニケーションのすれ違いを無くし、優秀な人材の離職を防止する


ヤフーの1on1ミーティング

1on1ミーティングを最初に導入した日本企業はヤフーであるとされています。ヤフーは2012年から1on1ミーティングを導入しました。

その目的は、上司と部下の信頼関係を強化し、部下のモチベーションを高め、自発的な成長を促すことです。ヤフーの試みは成功し、人材育成について大きな成果を上げました。

さらにヤフーの1on1ミーティングでは、上司と部下のコミュニケーションが密になり、業務上のコミュニケーションエラーが減少したそうです。

このような目覚ましい成果が他の企業からも注目を集め、多くの企業が1on1を導入するようになりました。1on1ミーティングはこのように実績のある手法なのです。


1on1の目的

1on1の実施目的は、部下の自発的な成長を促すことです。部下を指導したり、評価したりすることではありません。

日本企業において上司と部下が面談するときは、人事評価のための面談や、個別に部下の仕事上の課題について指導を行うのが普通でした。

しかし、そのことにより、部下は上司との1対1の面談にネガティブなイメージを抱き、あまり積極的に自己を開示したがらない風潮があるでしょう。それは上司が部下に指示・指導をするという一方向の関係だったからです。

そのような関係性では部下の自発的な成長を促すことは難しいと考えられます。部下は上司の顔色を窺い、指示を忠実にこなすだけになってしまうからです。

したがって、1on1では、部下に報告を求めたり、指導したり、評価したりといったことは目的とせず、部下の日々思っている悩みや課題について上司が良く聞き、自発的な成長をサポートするのが目的となります。


具体的な1on1の実施方法

1on1を実施するには一定のプロセスを踏む必要があります。以下のように段取りを決めて計画的に実施しましょう。

ステップ①目的とテーマを決め、共有する
ステップ②スケジュールを決める
ステップ③実施と記録
ステップ④継続的かつ日常的な実施

それでは各ステップについて、解説していきます。


目的とテーマを決め、共有する

1on1をやることが決まったら、まず参加者となる2人がミーティングの目的とテーマを決めて共有しましょう。

この際、上司から1on1ミーティングについて説明することが大事です。とくに「部下の自発的な成長のために相談に乗る場であって、評価や指導のためではないこと」は必ず説明し理解させるようにします。そうしなければ部下が萎縮してしまって本音を話してくれないからです。

ミーティングの目的とテーマは事前にエクセルなどに一覧表の形式でまとめて共有しておくとよいでしょう。


スケジュールを決める

目的とテーマが決まったらスケジュールを決めましょう。上司が決めても部下が決めてもかまいません。お互いの都合が付く日であればいつでも良いです。

ただ、1on1は短いサイクルで定期的に実施するものであるので、毎回のように日程調整をしていると手間がかかります。実施のサイクルに合わせて特定の曜日の特定の時間は1on1に充てるなど、定例スケジュールにしてしまうと良いでしょう。


実施と記録

準備が整い、実施日が来たら1on1ミーティングを実施します。

1on1ミーティングは部下の成長を促すためのものなので、部下の現状の課題や悩みを上司がよく傾聴することが大事です。一方的なアドバイスにならないように気をつけましょう。

また、ただ話すだけではなく、話した内容は記録し、後から読み返せるようにしましょう。


継続的かつ日常的な実施

1on1ミーティングの最後には必ず振り返りを行い、改善したほうが良い部分があれば次回に改善するようにしましょう。

また、1on1ミーティングとは関係なく上司が普段から日常的に部下に声をかける姿勢が大事です。上司は複数人の部下を管理しながら自分の仕事もしているので、部下の目から見ると気軽に声をかけにくい場合が多いからです。

日常的に気に掛けている姿勢を示すことによって、部下との間に信頼関係が生まれ、1on1ミーティングにおいても深い話ができるようになります。


1on1で何を話す?会話例

1on1を実施するにあたって、慣れないうちは何を話したら良いのかわからないかもしれません。ここからは上司の質問例とを紹介しますので参考にしてください。


タスクの進捗確認についての上司の質問例

1on1では、個別にタスクの進捗状況や課題について話せるため、プロジェクトを進める上でよく使われます。仕事を進める上で困っていることや、改善したほうが良いと思うことなどを聞くことによって、プロジェクトが頓挫するリスクを未然に低減することができます。

● ○○の進捗はどうですか? 

● 仕事上で困っていることはありますか?

● 今後の進め方で不安に思っていることはありますか? 

● どんな点で仕事がやりにくいですか? 

● 他に何があれば仕事が捗ると思いますか? 

● もっとこうしたいなどの希望はありますか?

● もっとこうしてほしいなどの要望はありますか?


キャリアの相談についての上司の質問例

1on1では、社員個人のキャリアや目標についての相談もできます。一般的に社員個人が仕事を努力するインセンティブとしてキャリア形成があります。ゆえに将来のキャリアの方向性は社員が悩みやすいポイントでもあるのです。

これを放置してしまうと離職の原因となり得るので、適時相談に乗ってあげることは会社にとってもメリットがあります。

1on1でキャリアの相談をすることで、社員自身がどのようなキャリアを目指すべきなのか、現在の状況を話し合い、本人の希望を踏まえて、上司から客観的なアドバイスができます。

スキルや経験についてのアドバイスをもらうこともできます。リスキリングは社員のスキルの適正化を促し、人材育成の効率性を高めるので、会社にとってもメリットがあります。

● 将来、どんなふうになりたいですか? 

● 今後携わりたい仕事は何ですか? 

● 今の自分の強みは何だと思いますか? 

● 今の自分の弱みはなんだと思いますか? 

● 今の部署の他に働いてみたい部署はありますか?

● どの業務をやっているときがいちばん楽しいですか?


職場の悩み相談についての上司の質問例

1on1では、個別にアドバイスやサポートができるため、仕事上の悩みの相談にも乗りやすいです。

たとえば会社での人間関係の悩みや、会社での過ごし方、周りからの評価が気になるといった悩みです。

個人的な悩みとはいえ、社員が1人で悩みを抱え込んでしまうとストレスが溜まり、メンタル疾患などの原因となるため、これを適時解消してあげることは会社にとってもメリットがあります。

● 今の職場で過ごしにくいと感じていることは何ですか?

● 先輩社員や同僚と上手くいっていますか? 

● 先輩社員や同僚の良い点は何だと思いますか?

● 今の職場を改善するとしたらどこを改善したほうが良いと思いますか?


完全にプライベートな話題や雑談の質問例

アイスブレイクのようなただの雑談も1on1ではあって良いです。雑談は上司と部下を打ち解けさせ、信頼関係を高めるからです。

たとえば休日の過ごし方や趣味の話題、スポーツイベントの話題、ニュースや時事ネタなどが例として挙げられます。完全に業務とは離れた雑談をすることで部下もリラックスできるでしょう。

ただし、部下が話すのを嫌がっているのに無理にプライベートなことを聞き出そうとしないように注意が必要です。

● この前の長期連休はどのように過ごしましたか? 

● 最近話題になっている○○のニュースどう思いますか?

● 最近は寒くなってきましたが、体調を崩したりしていないですか? 


1on1で陥りがちな失敗例

ビジネスの1on1で陥りがちな失敗例として以下があります。

会話が一方的である

上司ばかりが持論を懇々と語り、部下は神妙にそれを聞いているだけという状態は成功とは言いがたいです。1on1では、会話のキャッチボールが行われることが重要です。

一方的な会話は、相手が興味を持たなくなり、エンゲージメントが低下してしまいます。

どうしても主導権を持つ上司の発言量が多くなりがちなので、部下の話を聞くことに重点を置くぐらいがちょうど良いでしょう。


会話が盛り上がらない、続かない

上司が質問をし、部下がそれに一言二言で返すだけといった状態もよくある失敗事例です。これは心理的安全性が低いのが原因です。

部下が上司からの指摘や叱責を恐れて悩みや思っていることを発露できないとこのような状態になります。

センシティブな話題が他の社員に漏れてしまうのではないかという不安も心理的安全性を低下させます。

1on1は人事評価面談とは異なり、人事異動などには影響しないこと、部下の悪いところを叱責するのが目的ではないこと、1on1で言ったことは機密情報として守られ、他の社員には伝わらないことなどを事前に内容を十分に説明しておくと良いでしょう。


1on1 MTGシート

1on1は事前の準備が大事です。話すべき話題や聞きたいことなどを事前にまとめておくと良いでしょう。

エクセルやスプレッドシートなどでミーティングシートを作り、事前に部下に記入してもらい、1on1はそのシートを見ながら進行します。
終了後に上司がコメントを書いて返却すると議事録を書く手間も省けます。

シートに1on1の記録を残すと、以下のようなメリットが得られます。

●部下の成長の軌跡が記録される 

●次回の1on1で続きから話しやすくなる 

●1on1の進め方の評価や改善に使える


導入企業事例


ヤフーの事例

ヤフーは、2012年から1on1ミーティングを導入しています。1on1ミーティングの導入企業としてはパイオニアと言えるでしょう。

ヤフーには約7000人の社員がいますが、その大部分が1on1ミーティングに参加しています。頻度は隔週で1回以上、1回の時間は30分程度だそうです。

当時のヤフーには社員間のコミュニケーションが不十分であるという課題がありました。

最初は ITツールなどでのコミュニケーション強化に取り組みましたが、ITツールばかり使ってコミュニケーションを取るようになってしまうなど、さまざまな問題も発生しました。

そこで1on1を取り入れたところ、社内コミュニケーションの強化、業務効率の改善、チーム力の強化などの成果が得られたとのことです。


楽天の事例

楽天では2017年から1on1ミーティングを導入しました。 IT業界は変化が激しいので、全社員の主体生を養うのが課題でした。

楽天の1on1で特徴的なのが、上司から部下への「指導」を禁じたことです。

あくまでも1on1は「相手の成長のみを考えてするプレゼント」と割り切って、上司と部下がお互いに学び合うための組織を目指しています。

よって、1on1は人事評価システムにも結びつけられていません。その結果、心理的安全性が高まり、組織力が強化されるなどの成果が上がっています。


まとめ

1on1ミーティングは現代のビジネスにおいてさまざまな効果のある施策であり、コミュニケーションの手段としてますます普及しつつあります。

コロナ禍によるリモートワークの普及により、あらゆるタイプのビジネスにとって重要なものとなってきているのです。このような新しいコミュニケーションの手段を通じて、社員は自らの成長の機会を得ます。そして企業は離職率の低下や組織力の強化というメリットを得られるのです。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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