【トラブル防止】アルバイト・パート社員の解雇方法や注意点、不当解雇の事例を解説!
コロナウイルスによる業績悪化を理由に、雇止めや解雇を行う企業が増え、大きなニュースとなりました。本来であれば正当な理由がない解雇や雇止めは不当解雇となるため認められません。
正社員だけでなく、アルバイトやパート社員に対しても例外ではないため注意が必要です。
そこで、本記事ではアルバイトやパート社員の解雇を行う方法や注意点、有期雇用契約の従業員の解雇のケースや、不当解雇とされる事例も紹介します。従業員の解雇や雇止めを検討している方は、ぜひ確認してみてください。
※アルバイトにも必要?解雇予告手当の計算方法や注意点、知っておくべきルールを解説!
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アルバイト・パート社員の解雇を行う方法とは?
アルバイトやパート社員の解雇は条件を満たすことで可能になります。しかし、いずれも正当な理由のない解雇は無効となるので注意しましょう。
解雇の手続き方法(手続きが適正であっても、正当な理由のない解雇は無効となるので注意)としては、下記の通りです。
① 30日以上前に予告を行って解雇
雇用主が従業員を解雇する場合には、原則として30日以上前に「解雇予告」と呼ばれる通告を行う必要があります。解雇予告は口頭でも有効ですが、基本的にはトラブル防止の観点から解雇予告通知書などの書面で通告するのが一般的です。
なお、解雇予告通知書の記載事項として、以下のような項目があります。
・従業員氏名
・社名、代表者名
・解雇予告通知書の作成日
・解雇日
・解雇する旨の文言
・解雇理由
・該当する解雇理由が記載された就業規則の文章
② 解雇予告手当を支給しての解雇
解雇予定日から30日未満で解雇予告を行ったとしても、解雇予告手当を支給すれば労働者を解雇できます。この場合、30日に不足する日数分の手当を支払う必要があるため注意しましょう。
例)3月1日に解雇予告、3月25日に解雇予定の場合
→ 5日分の解雇予告手当の支払が必要
ちなみに、解雇予告を行わなくても、30日分の解雇予告手当を支払えば即日解雇が可能となります。
③ 雇止めによる終了
上記①、②以外にも、契約期間のある雇用形態の場合は、契約満了時に更新を行わずに「雇止め」をする方法があります。この方法は解雇ではなく、自然に辞めてもらう流れになります。
ただし、契約期間満了による雇止めも無効になるケースもあるため注意が必要です。主に下記のような場合は、正当な理由がない雇止めと判断されるため覚えておきましょう。
● これまでに有期雇用契約が反復して更新され続けている場合
● 従業員が、契約更新がされるものと期待させる合理的な理由(例えば、契約更新を約束する言動があったなど)がある場合
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アルバイト・パート社員の解雇が可能な「正当な理由」について
では、アルバイトやパート社員の解雇が可能な「正当な理由」とは、どのようなケースを指すのでしょうか。不当解雇とされないためにも、以下の内容を確認して慎重に解雇の判断は行いましょう。
就業規則に記載されている解雇事由に該当
まずは就業規則に記載されている解雇事由に該当した場合です。アルバイトやパート社員の行動が、就業規則に重大な違反をした場合、正当な理由として懲戒解雇できる可能性があります。ただし、懲戒解雇は非常に厳しい処分であるため、社会通念上妥当ではない場合は懲戒解雇は無効となります。
労働契約法第16条によって、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当ではないとされる解雇については無効となります。軽い問題行動や失敗などでは解雇にできませんので注意しましょう。
横領や窃盗、器物損壊などの不正があった場合
横領や窃盗、器物損壊などの刑事罰が科される事案や、法律・法令違反となる行為があった場合は正当な理由のある解雇となる可能性があります。
その他には、悪質なパワハラやセクハラ、暴力などで暴行罪や傷害罪などに該当する場合にも解雇が認められるケースがあります。
ただし、従業員同士のトラブルによって暴行などが起きた場合などは、事件の背景や内容、原因などから総合的に解雇が妥当か判断されます。軽いケンカや悪質性のないトラブルの場合には、懲戒解雇が有効となる可能性は低いでしょう。
会社に著しい損害を与えた場合
前述のような法令違反や不正行為に該当していなくても、会社に著しい損害を与えた場合には解雇できる場合があります。
例えば、会社の信用を失墜させる不適切な投稿などをSNS上に拡散する、無断欠勤を続ける、重大な経歴詐称を行うといったケースの場合です。
なお、軽いパワハラやセクハラ、業務違反などの場合には、減給や訓告といった軽微な処分が一般的です。しかし、度重なる注意や是正の指示に応じず違反行為を繰り返す場合、悪質性があるとされ懲戒解雇や普通解雇が認められる場合があります。
経営悪化によるリストラでの解雇
会社側の経営不振や業績悪化での人員整理による解雇も、一定の判断基準を満たせば認められるケースがあります。こうしたリストラによる解雇は「整理解雇」と言います。
整理解雇に当てはまるかは、下記の基準から総合的に検討し判断されます。
- 人員整理を行う必要性がある
- 解雇を避けるための努力がなされた
- 解雇対象者の選定及び基準が客観的合理的である
- 解雇対象者や労働組合との十分な協議や説明を行った
整理解雇が認められるためには、事前に給与削減や人材採用を止める、退職希望を募るといった「解雇を避けるための努力」を行っている必要があります。
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アルバイト・パート社員の解雇で注意すべき点とは?
アルバイトやパート社員の解雇には、正当な理由かどうかの確認以外にも注意すべき点があります。主に下記のような事項についてはチェックしておきましょう。
解雇予告手当を支払う際の最低保証額に注意
解雇予告手当の基本となる平均賃金には、最低限支払うべき金額である「最低保証額」がある点に注意が必要です。通常、解雇予告手当の金額計算は、下記のように計算されます。
<解雇予告手当>
平均賃金 × 30日に不足する日数
※ 平均賃金は【直近3カ月の賃金総額】÷【総日数】で計算されます。
総日数は3カ月間の歴日数を指します。
そして、最低保証額は下記の計算方法で算出されます。
<平均賃金の最低保証額>
【直近3カ月の賃金総額】÷【労働日数】× 60%
特に直近3カ月の勤務日数が少ない労働者については、解雇予告手当の計算のベースとなる原則計算により平均賃金が低くなり、平均賃金の最低保証額を下回るケースがあります。手当が最低保証額を下回っていると、労働基準法違反となるため注意しましょう。
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有期雇用契約満了でやめさせる場合は無効の可能性もある
前述したように、有期雇用契約のアルバイトやパート社員の場合、契約更新をしなければ辞めさせることも可能です。
ただし、過去に繰り返し契約更新をしていた場合や、契約更新が形骸化し自動更新のようになっている場合は、正当な理由のない雇止めとして認められません。
ちなみに、契約期間中のアルバイトやパート社員の解雇も基本的にはできません。法令違反等の重大な問題やトラブルを起こした場合を除き、解雇させるのは難しいため覚えておきましょう。
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アルバイト・パート社員が有期雇用契約の場合について
有期雇用契約のアルバイトやパート社員の解雇や雇止めを行う際には、下記のような点についても留意しておく必要があります。あらかじめ確認しておきましょう。
従業員が契約期間中である場合は解雇が難しい
契約途中のアルバイトやパート社員の解雇は非常に難しくなります。そのため、試用期間中にしっかり勤務態度などを確認し、問題がない人物かをチェックしておきましょう。
従業員は基本的に契約期間中であれば雇用は続くものと考えています。このような期待を保護する意味で、労働法では解雇に関する厳しい要件が設けられているのです。
契約期間中の正当な理由のない解雇は、解雇権濫用で無効となるため注意しましょう。できれば、使用者と労働者間の話し合いの上での合意解約や、契約未更新を行った方が得策です。
雇止めでも予告は必要
アルバイトやパート社員の契約更新を行わない「雇止め」についても、事前に予告が必要なケースがあります。具体的には下記のような労働者に対して予告を行う必要があります。
- 有期雇用契約が3回以上更新されている
- 期間が1年以下の有期労働契約が更新もしくは反復更新されており、最初の労働契約締結時から通算で1年を超えている
- 有期労働契約が1年を超える期間である
こちらも契約期間満了の30日前までに、雇止めの予告を労働者に行わなければなりません。なお、有期労働契約の締結時に、契約更新を行わない旨が明示されていた場合は除きます。
雇止めが認められないケースや事例について
雇止めができるか判断するためには、認められなかったケースや事例について把握しておくことが有効です。認められない可能性が高い事例は、下記のような傾向があります。
● 労働契約締結時に契約更新が前提となっている
● 過去に反復して契約更新が行われている
● 従業員とのやり取りで契約更新を期待させる言動などがあった
ポイントとしては「期間の定めがない契約と同じような状態か」という点と、「契約更新を期待するのが合理的な状態か」という点です。あらかじめ該当していないか確認しておきましょう。
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アルバイト・パート社員の不当解雇の事例
最後に不当解雇とされたアルバイト・パート社員の事例も確認しておきましょう。
① 高知放送事件(最高裁 昭和52.1.31)
アナウンサーが定時ラジオの放送で寝過ごしてしまい、放送事故が発生して解雇された事例です。同アナウンサーは2週間内に2度同じトラブルを起こした責任を問われました。
しかし、最初の寝過ごしでのトラブルから会社側が何も対策しなかった点、本人も非を認めており普段の勤務も問題なかった点が考慮され、当該事例での解雇は不当解雇に相当するとされました。
② 高峰清掃事件(東京地裁 平成21.9.30)
高峰清掃株式会社は、雇用期間が1年であるアルバイト社員を部門廃止に伴い、解雇しました。
しかし、同社員は正社員と同程度の業務を遂行し、契約更新手続きも厳格にされていなかったため、実質的に「期間の定めのない契約と異ならない状態」に至っているとされました。
さらに、他のアルバイトで雇止めの対象となる人物が多数いたにも関わらず、同社員が雇止めとされた理由について合理性がないとされました。
上記の様に、企業側の解雇や雇止め回避の努力義務が見られないとして無効となるケースは多くなっています。解雇や雇止めを行う際には注意しましょう。
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アルバイト・パート社員でも解雇や雇止めの判断は慎重に!
アルバイトやパート社員を解雇する方法や正当な解雇理由、解雇時に注意すべき点を中心に解説しました。アルバイトやパートに対しても正社員と同じく、慎重に解雇の判断をする必要があります。
しかし、近年ではアルバイト先で問題行動や不正行為を行う事例も多発しています。また、パワハラやセクハラで企業に損害が発生する事例も増えています。そのような場合、解雇は避けられないでしょう。
ぜひ、本記事を参考にしつつ弁護士にも相談しながら、解雇時のトラブル防止に取り組んでみてください。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。