「完ぺきは目指さない。できることを一つずつ」男性育休取得推進の背景にある思いとは?

「完ぺきは目指さない。できることを一つずつ」男性育休取得推進の背景にある思いとは?
目次

株式会社スエヒロ工業
取締役経理部長 大野友美さま

建設業

静岡県沼津市で建設業を営む株式会社スエヒロ工業では、2022年9月に初めて男性社員が育休を取得しました。

従業員数23名の少数精鋭の建設会社で、どのように男性育休取得を推進していったのか、同社取締役 経理部長の大野友美さまへお話を伺いました。


法改正を機に情報収集する中で、出産3カ月前に対象者が出る

・男性育休に取り組んだきっかけを教えてください。
2022年4月に育児・介護休業法が施行されました。まだ中小企業ではそれほど重要視されないのかもしれませんが、当社として必要なものだと感じました。

私自身、働きながら4人の子供を出産して、実母に助けてもらいながら子育てと両立をしてきました。

女性社員とも「育児との両立の大変さ」について話をする中で一緒に働く従業員の家族に、少しでも寄り添えたらという気持ちでした。

ただ、全く知識がなかったため、セミナーや座談会、勉強会に参加して情報を収集していきました。

社内でも対象となり得る社員や管理職に対して勉強会を実施しましたが、その時点では子供が生まれるという社員はいませんでした。

そんな折に東京支店の社員に「子供が生まれる」という話を別の社員から聞きました。しかも3か月後。まだ着手し始めたばかりで、何ができるか分かりません。

でも、どうにかして取ってもらいたいと思い、社長へ相談したところ「じゃあ、当社でも進めてみよう」と動き出したのです。


いつ誰が休むかは分からないリスクに備えるのが大事

・まずは、何から取り組みましたか?
建設業あるあるなのですが、基本的に当社の施工管理(営業)の社員は、複数と取引先を受け持ち、取引先1社に対して1人で担当しています。そのため、育休を取るためには、他の社員への負担や引継ぎを考えなくてはなりません。

そこで、今までなかった業務の棚卸表を作成しました。

育休に限らず、介護や病気などで急に人が休むことは、いつだってあり得ます。そういった可能性を考えて、業務の棚卸は絶対必要だと思いました。

・育休希望の社員と奥様にZOOMでMTGをしたと聞きました。
はい、初めての子供が生まれる社員なので、どの時期に休んだらよいか、何をしたらよいのか、本人も不安があると思ったのです。

私たちもせっかく育休をとるなら、意味のあるものにしてほしかった。だから、直接奥様ともお話をして、実家から戻ってきたときに取るのがよいということになりました。

・「男性育休 虎の巻」という資料を作成して、お渡ししたんですよね?
情報収集で参加したセミナーで、女性の出産後の状態を教えるセミナーがあり、とても感銘を受けました。なぜ、男性育休が必要で、どんな支援が必要なのか、実は分かっていない人も多いです。

虎の巻の作成では、男性育休のセミナーの担当者の方にお願いをしたところ、セミナーで投影された資料の一部からアイディアをお借りすることを快諾してくださいました。



虎の巻を渡したことで、育休を取得した社員も「なるべく妻が体を休めるようにした」「妻に優しい言葉をかけることができた」と喜んでくれました。


「男性育休を取得された社員の土屋さん」


完ぺきを目指して何もやらないよりも、できることを一つやった方がよい。

・取得を進めるうえで大変だったこと、どう解消していったかについて教えてください。
業務の棚卸しを進めましたが、出産までの期間がない中で、他の社員への負担が一番の課題でした。そこで、休暇前後で業務を振り分け、他の社員になるべく負担がかからないように、10日間の取得としました。

十分な準備期間があったら、もしかしてもっと長い期間の取得ができたかもしれません。
でも、短期間で完璧にできるわけはないんです。

何もやらないよりも、一つやった方がよいし、一つやったら次は二つできる。
ゆっくり完璧に近づいていこう、という気持ちで取り組んでいます。

・取り組むにあたって最も大事だと思うことはありますか?
普段からコミュニケーションをとっておくことです。

今回残念だったのは、社員が直前まで育休を取りたいと言えなかったこと。女性社員とは社内にいるのでよく話をしているのですが、外に出ている営業社員とはできていなかったと反省しています。

何かあったときに、気軽に相談してもらえるように業務以外の会話をするように心がけています。


実態を把握し、自分の会社にあった取り組みをすることが大事。

・今回の取組みで求職者や社外の方から反響があったそうですね。
男性の応募があったわけではないのですが、総務の求人募集をかけていて、ホームページを見た小さいお子さんがいる女性から「こういう会社で働いてみたい」というお声をいただきました。

また、「男性育休 虎の巻」はホームページで誰でもダウンロードできるようにしています。まったく知らない遠くの会社の方々から、思いがけずお礼のメールが届いたりしています。

私が困ったように、何から始めたらよいか分からない中小企業の担当者に少しでも役に立てたらと思っていたので、嬉しい驚きですね

 「スエヒロ工業・男性育休虎の巻2022夏版」(PDF)

・最後にこれから取り組む中小企業へアドバイスをお願いします
私たちも、まだこれからなのでアドバイスをできる立場ではないのですが、一つ言えることとしては「無理をしないこと」です。

まずは、自分の会社の実態を把握すること、そして自分の会社にあった取り組みをしていくことが重要だと考えています。できることを一つずつ、です!

(取材日/2023年4月5日)

【取材ご協力】
株式会社スエヒロ工業 
静岡県沼津市足高287-29 
TEL 055-923-4721
https://www.suehiro-kogyou.co.jp/profile/corporate/

ヒトクル編集部
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