給与改定での注意点とは?トラブルを避けるための確認事項や最適な時期も解説!

給与改定での注意点とは?トラブルを避けるための確認事項や最適な時期も解説!
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社員のモチベーション向上や物価高騰による影響を和らげるため、給与制度の改革や給与改定を行う企業が増えています。

しかし、給与制度や給与の変更は、社員の生活にも大きく影響するため注意する必要があります。

そこで、今回は給与改定が行われるケースやタイミング、取り組む前の確認事項などをご紹介します。

実際に給与改定を行う際の注意点も解説しますので、給与制度の改革や給与変更を検討している方は、ぜひ確認してみてください。

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給与改定の定義について

給与改定は、常用の社員を対象とした給与の改定を指します。具体的には「ベースアップ」や「定期昇給」、「諸手当」などの変更が該当します。給与上昇以外に「ベースダウン」や「給与カット」で、給与が低下するケースも改定に含まれます。

なお、民間給与では以下のような改定が代表的です。

・ベースアップ:会社業績に応じて社員全体の給与が一律に上昇する 

・定期昇給:個人の年齢や勤続年数、仕事の成果等に応じて昇給する 

・諸手当:職務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当等の各種手当 

・ベースダウン:会社業績の低下で社員全体の給与を一律に下げる ・給与カット:給与改定をせずに、一時期の給与減額をする 

ちなみに、給与カットは合理的な理由がない限り違法となるため注意が必要です。


会社内での給与改定のケースやタイミングとは?

企業が給与改定を行う場面として、どのようなケースやタイミングが考えられるのでしょうか。実際にある場面を参考に考えてみましょう。


給与改定のケース

給与改定のケースとして以下のような場面があります。

・基本給以外の通勤手当や職務手当などの各種手当を整える場合 

・日頃の勤務態度や業務実績、会社への貢献度等を給与に反映させる場合 

・管理職への残業代支払いを適正に行う場合 

・支給金額や支給条件の曖昧な給与規定を見直す場合

 ・企業業績の悪化により給与カットを検討する場合

なお、管理職の給与を成果に応じて支給し、残業代の支払いを行わない会社もあります。しかし、残業代の支払対象外となる「管理監督者」は、社員数が20~30人の中小企業の場合だと兼務役員(社員と役員の両方を兼ねる者)のみのケースがほとんどです。

中小企業の場合、管理監督者でない管理職の時間外労働に対する残業代は、基本的に支払う必要があるため注意しましょう。


給与改定を行いやすいタイミング

企業が給与改定を行いやすいタイミングとして、以下のような時期があります。

・法律の改正時

 ・組織体制が変更となった際 

・企業内の資金が潤沢で、時間にも余裕がある時 

・代表者の変更があった時 

・創業年などの会社にとってキリの良い時期 

代表的な時期としては、最低賃金の見直しなどが行われたタイミングがあるでしょう。既存の給与額が地域別の最低賃金を下回ってしまうケースもあるためです。その他、代表者が変わった時や事業の再編時、企業内に余裕資金がある場合も改定を検討しやすいタイミングです。

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ちなみに、給与改定には既存の制度見直し、新しい給与制度のシミュレーション、影響のある部署や人員からの合意を得るなどの手間が掛かります。資金だけでなく、時間にも余裕をもって給与改定は行いましょう。


給与改定の前に確認すべき5つのポイント

給与改定を行う前には、下記の5つのポイントを確認しておく必要があります。


① 給与の決定方法は納得できるものか?

給与の決定は、社員にとって納得できるものでなければいけません。逆に整合性がなく矛盾のある給与体系ですと、働く社員のモチベーションが低下してしまいます。したがって、給与改定の前には合理性のある給与制度であるかを入念にチェックしましょう。

特に、中小企業で多い誤った給与改定の決定方法として、以下の3つが挙げられます。

(1) 社長が独自に社員それぞれの昇給・賞与の金額等を決定する
→ 判断の根拠や物差しが曖昧であるため、不満が溜まりやすい。

(2) 中途社員の給与や賞与を、前職の金額に基づき決めている
→ 社員間の整合性がなく、格差が発生しやすい。

(3) 過去の昇給や賞与の金額を基準に決めている
→ 会社への貢献度が勘案されず、給与の高い人との差が埋まりにくい。

上記の方法での給与改定は、不満が生まれやすいため注意しましょう。


② 給与制度の目的を適切に理解しているか?

給与制度は、社員のモチベーションを高めるためにあるのではありません。一番の目的は、社員の会社への貢献度や、成長の度合いを測るためにあります。そのため、ただ給与水準を根拠なく上げるだけでは、個々の社員の能力や貢献度を正しく評価できないのです。

正しい評価に基づいた給与制度を設計するには、経営計画の明確な策定と分かりやすい評価制度の構築・運用なども欠かせません。

安易にベースアップするだけでなく、社員それぞれのレベルや貢献度が分かるような給与規定の設計を心掛けましょう。


③ 給与査定のルールは分かりやすいか?

給与制度で企業の成長を促すには、分かりやすい給与査定のルールも必要です。特に不明瞭な評価方法や査定ルールがあると、社員の会社への信頼が損なわれます。そうなれば、モチベーションを高める以前に、離職や勤務意欲の低下を招きますので要注意です。

給与査定を分かりやすくするためには、複雑な評価制度やルールを設けるのではなく、シンプルな制度にして全社員にオープンにします。査定ルールが分かれば社員は安心できますので、モチベーションが高まるでしょう。

また、オープンにすることで成長の方向性や目標を定めやすくなり、人材育成の効果も期待できます。

なお、査定のルールは基本給や職能給だけでなく、賞与に関しても定めておく方が良いでしょう。


④ 昇給制度と評価制度は連動しているか?

社員のモチベーションを維持するためには、昇給制度と評価制度が適切に紐づいている必要があります。理由や根拠のない昇給では、社員も何が評価されて昇給したのか分かりませんので、持続的な成長を促す施策とはならないでしょう。

したがって、昇給制度を導入する場合には、評価制度との連動制も考慮して設計します。分かりやすく公平性のある評価基準であれば、社員も納得できるため成長意欲も向上するでしょう。なお、評価基準は評価者の主観とならないよう、客観性を重視して定めるのがポイントです。


⑤ 役職手当の金額を根拠なく決めてないか?

管理監督者である管理職は、時間外手当の支給がありません。そのため、役職手当が低いと残業を多くこなす部下の社員に比べ、給与が下回ってしまう可能性があります。こうした事態になると、管理職を目指す社員も減ってしまいますので気を付けましょう。

また、役職手当の金額を根拠なく決めている場合も注意が必要です。社員から金額の理由説明を求められても、根拠がなければ納得のいく回答ができません。給与改定時には、役職手当が低すぎないか、そして金額に正当な理由や根拠があるかもチェックしましょう。


給与改定を行う際の注意点とは?

それでは、実際に給与改定を行う際の注意点も確認しておきましょう。給与改定時には、主に下記の5つの事項について留意する必要があります。


① 社員への説明やヒアリングをしっかり行う

給与の改定は、企業と社員の合意に基づき実行されます。これは社員雇用の際に、業務内容や給与に関する労働契約を締結しており、その契約に反して一方的に給与を変えられないためです。

したがって、給与改定時には雇用契約書や就業規則の労働条件の変更のため、社員への説明やヒアリングはしっかり行いましょう。


② 給与を低下させる場合は同意書をもらう

給与の改定により給与を低下させる場合、社員とトラブルになる可能性があります。そのため、給与改定時には「給与改定通知書」の発行と一緒に、同意書をもらっておく方が良いでしょう。

なお、減給は条件を満たさないと違法となります。必ず労働基準法の規定なども確認して、合理性があるかチェックしておきましょう。


③ 給与改定の検討内容を議事録に記録する

給与改定では、社員と給与の変更に関して繰り返し協議を行います。したがって、協議し検討された内容は書面に記録し、議事録も残しておきましょう。

口頭だけでの取り決めでは、後々「言った」「言ってない」などのトラブルに発展するおそれもあります。必ず書類に契約事項を記載し、保管しておきましょう。


④ 就業規則や契約書類の記載変更を早期に行う

給与改定時には、関連する就業規則の規定や、契約書類の条件記載変更も忘れないようにしましょう。就業規則を変更する際は管轄内の労働基準監督署に届出します。

また、労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書も必要ですので、早めに準備しておきましょう。


給与改定に適した時期について

給与改定を行う時期は会社によって異なりますが、おすすめは決算期の翌月からです。

3月決算であれば、次事業年度の始まりである4月から給与改定を行うとキリも良くなります。半年ごとに給与を見直す場合には、事業年度の半期終了月の翌月からが良いでしょう。

なお、給与改定による金額変更がある場合、一定の移行期間を設けるようにしましょう。特に減額するケースでは、急に給与が少なくなると社員の生活にも影響します。

給与の減額を伴う改定は、「不利益変更」といって、労働契約法において、厳格な基準が定められています。社会保険労務士や弁護士などの専門家に事前に相談しながら進めることをお薦めします。

強引に「不利益変更」を行った場合は、社員から従前の労働条件との差額支給を請求されるといったトラブルに発展する可能性があります。

そのため、できれば給与改定を行う数カ月前には、社員に周知しておくと良いでしょう。社員が生活設計を見直せる十分な余裕を持たせてあげると、不満やトラブルの発生を抑えられます。


給与改定は慎重に検討した上で、話し合いながら進めましょう!

給与改定のケースやタイミング、取り組む前の確認事項や注意点も説明しました。給与改定には様々なパターンがあり、進め方にも注意すべき点が数多くありました。

改定の前には、十分な準備期間や社員との話し合いの機会を設け、不満やトラブルが出ないようにする点が大切です。

ぜひ、本記事を参考にしながら、自社にとって最適な給与改定に取り組んでみて下さい。



ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長
監修した人
杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。