2024秋施行予定!フリーランス新法制定の理由や内容・罰則を解説

2024秋施行予定!フリーランス新法制定の理由や内容・罰則を解説
目次

2024年秋頃を目安に、フリーランス新法(フリーランス保護新法)の施行が予定されています。

企業や組織に所属しない、自由な働き方を選ぶ人が増えている一方で、契約をめぐるトラブルなどが多発していることから、フリーランスを守るために立案されました。

なぜフリーランス新法が制定されたのか、現在決まっている内容や罰則、企業がするべき対応について、詳しく解説いたします。


フリーランス新法とは

フリーランス新法は、2023年4月28日に可決・成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」を指します。2023年5月12日に公布され、2024年秋頃までにスタートする予定です。

※厚生労働省|「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」

新法では、従業員を持たないフリーランスを特定受託事業者、フリーランスと契約する事業者を、特定業務委託事業者と呼び、契約や取引をする際の義務項目が盛り込まれています。

正式名称ではありませんが、一般的にはフリーランス新法、フリーランス保護新法と呼ばれています。

企業や組織に所属しない、自由な働き方を選ぶ人が増えている一方で、契約をめぐるトラブルなどが多発していることから、フリーランスを守るために立案されました。

当初は2022年秋の法案提出を予定していましたが、当初はフリーランスの定義などで意見がまとまらず、2023年春に閣議決定されました。

新しい法律では、フリーランスが安心して働けるように、2つの目的が掲げられています。

  1. フリーランスの方と企業などの発注事業者の間の取引の適正化
  2. フリーランスの方の就業環境の整備

 2024年秋の施行後は、フリーランスの条件を満たす個人にフリーランス新法が適用され、フリーランスに業務委託する事業者には、法律に準じた義務や罰則が発生します。


フリーランス新法の適用対象

フリーランス新法には、フリーランス側、発注事業者側にそれぞれ、適用対象が定められています。

フリーランスの対象:業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの

発注事業者の対象:フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの

 フリーランスの定義は広く、個人で開業し従業員を雇用している人、個人を相手に商品やサービスを提供している人も、一般的にフリーランスと呼ばれます。

ですが、フリーランス新法では、従業員を雇用している法人が、従業員を雇用していない個人事業者へ業務委託する場合のみ、法律が適用されます。

発注事業者には、従業員を雇用している個人事業主も含まれます。また委託事業者の従業員に、短時間・短期間の一時的雇用者は含まれません。従業員とされるのは、週所定労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者、という点も覚えておきましょう。

業務委託についても、フリーランスが労働者として業務に就いている場合は、フリーランス新法ではなく、労働基準法等の労働関係法令の対象となります。

フリーランス新法適用後にフリーランスと取引をする場合は、自社が発注事業者の対象であるかどうか、業務委託している相手がフリーランス新法の適用者かどうかを確認の上、必要な対応を取り入れましょう。


フリーランス新法が誕生した理由

フリーランスとして働く人材が増加する中、取引先とのトラブルが増えていることが、フリーランス新法誕生の背景です。

「発注時に報酬や内容を教えて貰えなかった」

「報酬の支払いが予定よりも遅れた」

「報酬の減額、未払いが生じた」

「納品後に連絡がつかなくなった」

「納期や作業時間、作業内容を勝手に変更された」

「契約書がなく業務内容の範囲で行き違いがあった」

「他社を引き合いに値引きなど、不利な条件を求められた」

 など、さまざまなトラブルが報告されています。

個人で仕事をするフリーランスは、トラブル時にサポートしてくれる親元の会社、フリーランスを守る組織や団体が少ない現状にあります。

このような背景から、不当な扱いを受けた場合も、フリーランスは泣き寝入りするしかない、という状態が続いていました。

さらに、フリーランスの多くが、少ない発注業者に依存しています。対象の業者から報酬が支払われない、仕事が来ない、と言う場合、生活面・金銭面で不安を抱えるケースもありました。

令和2年に内閣官房が行ったフリーランス実態調査では、業務委託で事業をしているフリーランスの4割が1社のみの取引、というデータがあり、取引の適正化を目的とした法整備が進められています。

この調査では、462万人がフリーランスとして働いていると試算されており、この人数は今後も増える可能性があります。これらのフリーランス人材をきちんと保護するため、2024年秋までの新法施行が進められています。

内閣官房日本経済再生総合事務局/フリーランス実態調査


フリーランス新法で何が変わる?

フリーランス新法が施行されると、特定業務委託事業者に7つの義務項目が課せられます。どのような内容が含まれているのか、2024年2月15日現在で決まっている項目を、詳しくみてみましょう。

  1. 書面等による取引条件の明示
  2. 報酬支払期日の設定・期日内の支払
  3. 禁止事項(受領拒否、返品、不当なやり直し等)
  4. 募集情報の的確表示
  5. 育児介護等と業務の両立に対する配慮
  6. ハラスメント対策に係る体制整備
  7. 中途解除等の事前予告・理由開示


1.書面等による取引条件の明示

発注事業者がフリーランスと取引する際、書面等で取引条件を明示する必要があります。
「委託する業務内容」「納品日」「報酬額」「支払期日」などの取引条件が記載された書面を事前に作成し、契約するフリーランスへ明示しましょう。

受託者であるフリーランスや業務委託者の名前、契約を交わした日、報酬の支払い方法、なども記しておくと、より安心です。


2.報酬支払期日の設定・期日内の支払

フリーランス新法では、報酬支払期日を商品やサービスを受け取った日から60日以内に設定するルールがあります。また報酬支払期日内に必ず支払う義務が生じます。

報酬支払期日が「月末締め、翌々月15日払い」などの契約は、最大75日となるため、新法施行後は違法になります。報酬支払い日が60日を超える契約になっている場合は、早めに変更しておくと安心です。


3.禁止事項

発注事業者が継続的業務委託をする場合、法律に定める行為が禁止されます。一例として、商品やサービスを受け取らない、報酬額を後から減額する、発注した品を返品する、といった行為が対象です。


4.募集情報の的確表示

フリーランス人材を募集する際、業務委託事業者は情報を的確に表示する義務が生じます。募集内容が虚偽、または誤解を招くような内容になっている、古い情報がそのまま反映されている、といった問題がないか確認しながら、フリーランス求人を進めましょう。


5.育児介護等と業務の両立に対する配慮

発注事業者がフリーランスに対して継続的に業務委託する場合、新法施行後は育児や介護に携わっているフリーランスへの配慮が必要になります。

フリーランスの申し出に応じて、育児や介護を両立できる就業時間、就業日数を決定しましょう。その他にも、必要に応じた仕事のオンライン化、納品スタイルの変更など、相談の上決定してください。


6.ハラスメント対策に係る体制整備

モラハラやパワハラ、セクハラなどのハラスメント行為が、契約しているフリーランスへ及ばないように、業務委託事業者側での体制整備が求められます。

フリーランス対応をする従業員にハラスメント研修を実施する、ハラスメントが発覚した場合の相談窓口を用意する、相談があった場合にすぐ対応できるマニュアルや対策を用意しておく、といったハラスメント整備を進めておきましょう。


7.中途解除等の事前予告・理由開示

フリーランスとの継続的業務委託を途中で解除する、更新を止める場合、原則として30日前までの予告が必要になります。

また、なぜ中途解除や更新停止にいたったのか、理由開示も義務化されます。

フリーランスはこちらの都合でいつでも打ち切って良い、という状態になっている場合は2024年秋までに改めておきましょう。


フリーランス新法違反で課せられる罰則

フリーランス新法施行後、義務項目に違反があった場合、業務委託事業者へ公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣から履行確保措置として、助言や指導、報告徴収、立ち入り検査などが実施されます。

履行確保措置に対して、命令違反や検査拒否があった場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、命令違反や検査拒否による罰金が科せられるのは、フリーランスと違反取引をしていた担当者、検査を拒否した社員だけではありません。両罰規定により、業務委託事業者にも罰金が発生するため、企業全体で新法順守の体制を整えておきましょう。


下請法とフリーランス新法は何が違う?

これまでも、立場の弱い事業者を守るために下請法(下請代金支払遅延等防止法)が施行されていました。

しかし、下請法は発注元となる親事業者の資本金が1,000万円以上という規定があり、フリーランスが対象外になるケースが多くみられました。

内閣官房のフリーランス実態調査では、「資本金1,000万円以下の事業者からの収入が、直近1年の売上の過半数を占めている」と応えた割合が、4割にのぼっています。この実態から、下請法が適用されない人材を保護するために、フリーランス新法が誕生しました。


下請法ではフリーランスをカバーできない理由

フリーランス新法を作らなくても、下請法の範囲を広げれば良いのでは、という意見がみられます。しかし下請法は、そもそも法人同士の取引に向けた法律であり、フリーランスを保護する目的は含まれていませんでした。

資本金1,000万円以上という垣根を撤廃しても、ハラスメントや育児・介護への配慮といった部分まではカバーできないことから、フリーランスのための新法が施行されました。


新法施行に向けて必要な対策をチェック

フリーランス新法施行が近づく中、中小企業がしておくべき準備があります。
これまで通りの契約では、法律違反になる可能性もあるため、フリーランス契約者への発注方法、新法に準じた対応を検討しておきましょう。

  • 新法に則った契約書や求人文章を新たに作成する
  • 契約解除の場合のルール・流れを明確にしておく
  • 育児や介護が必要なフリーランスへ速やかに対応する
  • ハラスメント防止マニュアルを作成する
  • 社員向けに研修やガイダンスを実施する
  • 社外へフリーランス新法の順守を周知する

 など、適正な取引ができるように社内体制を整えておくと、スムーズにフリーランス新法へ移行できます。


まとめ

フリーランス新法施行にあたり、企業が把握するべき法律や準備が多くあります。

またフリーランス新法に含まれる従業員の範囲、継続的業務委託の具体的な期間、発注事業者の義務に含まれる具体的な内容などは、施行までの間に、政省令・告示などで今後定められる予定です。

フリーランスと継続して業務委託契約を結んでいる、定期的にフリーランスと契約している、という場合は最新情報をチェックの上、法律違反にならないように準備を進めましょう。





ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。