就活生の9割がインターンシップ参加。「とりあえずやる」は失敗する!専門家に聞く、中小企業で失敗しないためのポイントは?

就活生の9割がインターンシップ参加。「とりあえずやる」は失敗する!専門家に聞く、中小企業で失敗しないためのポイントは?
目次

近年、インターンシップは新卒採用戦略におけるキーワードとなりつつあります。

インターンシップへの早期の取り組みは、優秀な新卒人材を獲得したい企業にとって重要な課題です。

特に大手企業に比べて知名度の低い中小企業にとっては、いかに学生の心を掴むコンテンツを設計し、自社の魅力を効果的に伝えていくかが、採用競争を勝ち抜くための鍵となります。

そこで、新卒採用のコンサルティング事業を展開する株式会社Human Creationの山川氏に、中小企業がインターンシップに取り組むためのポイントをお聞きしました。


株式会社Human Creation
山川 勇之丈

2014年新卒でアイケイケイホールディングス株式会社東証一部上場企業に入社。
ウェディング事業のプロデューサーとしてBtoC向けの営業経験後、最速で管理職にあたる支配人へ24歳で昇格。
28歳で人事戦略イノベーション室室長として人事責任者を経験。2022年新卒のマイナビ人気企業ランキング九州沖縄部門で1位を獲得。
2022年2月より出身地沖縄にて地方創生を人の創生からというビジョンでHuman Creationを立ち上げ。
新卒採用特化コンサルティング事業、新卒採用インターン企画事業などを行う。 https://www.human-creation.com/

 

どれだけ早く学生と接点持つかが、企業の努力ポイント

Q. 2025年卒からインターンシップのあり方が見直されて、より重要度が増しています。実際、そう感じることは多いでしょうか?

そうですね、インターンシップに関する問い合わせは昨年の2倍に増えています。

リクルート「就職未来研究所」の調査では、就活生の約9割がインターンシップに参加しており、現在就活中の学生の参加率は2024年卒の学生と比べて約10%上昇しているというデータもあります。

これらの状況を踏まえても、インターンシップへの導線を早期に確保しておくことが、学生との接触機会を逃さないために重要だといえるでしょう。

マイナビの調査によると、3月1日時点で内々定を獲得している学生の割合は、前年比16.2ポイント増の34.3%に達しており、就職活動の早期化が進んでいることが分かります。

九州・沖縄地域では、前年から約4倍増の45.3%が内々定をもらっている状況です。
これらのデータからも、どれだけ早く学生との接触点持つかが、企業側の重要な努力ポイントであることは明らかです。 

マイナビ 「2025年卒 大学生 活動実態調査 (3月1日)」

一方で、就活生がインターンシップに参加する企業の数は、平均4~5社というデータもあります。

知名度の高い大手企業が選ばれる傾向にあるため、中小企業にとっては集客の方法に工夫が必要です。

学生が参加したくなるようなコンテンツ作りや、企業の見せ方によるブランディング化など、認知度が低くても集客できるマーケティングの仕方が重要になるでしょう。


就活の第一歩が、説明会からインターンシップへ。

Q.  なぜここまでインターンシップが浸透したのか?

3つの理由

  • 企業側が優秀な学生層に対する特別選考を用意していること
  • コロナ禍を経てインターンシップのオンライン化が進んだこと
  • 新卒市場全体でインターンシップが当たり前になってきたこと

理由は3つあります。

1つ目は、企業側が優秀な学生層に対する特別選考を用意していることです。

例えば、夏に参加した学生のうち、企業が優秀だと判断した人に対して、3月を待たずに特別選考への参加を呼びかけるケースもあります。

内定を取り、就活を早く終わらせたい学生にとって、自分が志望する企業に特別選考や早期選考ルートがあることは大きな魅力です。

 2つ目の理由は、コロナ禍を経てインターンシップのオンライン化が進んだことです。

実際に企業の8〜9割が、オンラインでインターンシップを受け入れる体制を整えています。
オンライン化により、企業側は今まで接触が難しかった地域の学生にもリーチできるようになりました。

学生にとっては、インターンシップのために地方から移動する必要がなくなっただけでなく、Uターン就職のハードルの解消にもなっています。

また、オンラインインターンシップで多くの学生を集めつつ、対面のインターンシップも用意する2段階の設計によって、さらに学生をグリップし、自社の魅力を伝えようとする企業も増えています。

 3つ目の理由は、新卒市場全体でインターンシップが当たり前になってきたことです。

学生の間では、「インターンシップにはとりあえず参加しておくべき」といった考えが広まっています。

もはや、就活の第一歩は会社説明会や合同説明会ではなく、インターンシップに参加するという文化や風土が定着したといえるでしょう。

10年ほど前まで首都圏でしか行われていなかったインターンシップが、オンライン化によって開催のハードルが下がりました。

加えて、企業側が早期選考や内定などの特典を用意するようになったことも、学生の間にインターシップへの参加が浸透した理由と見てよいでしょう。


知名度が低くても、コンテンツの面白さで勝負できる

Q. 今後のインターンシップのあり方、中小企業が取り組むためのポイントは?

インターンシップを「どこに組み込むか」「誰に向けて発信するか」「どのタイミングで開催するか」といったマーケティング志向が重要です。

一方で、単に職場体験ができるような内容では、学生の目には留まりません。

特に学生との接点が少ないBtoBの企業こそ、体験や実利、内定までのチケットなど、学生にとって魅力的なコンテンツを盛り込む工夫が必要です。

知名度が低くても、コンテンツとしての面白さがあれば、学生を集めるのは不可能ではありません。

弊社がサポートした企業の中にも、体験してフィードバックがもらえる・対面ワークショップで成果物を作る・懇親会で社長と対談できるなど、多くのベネフィットを盛り込んだ超成長特化型のコンテンツを設計した例もあります。

いずれにしても、「とりあえずやってみる」というスタンスは、ほとんどが失敗につながるので避けましょう。

自社の強みや訴求ポイントを明確にしたインターンシップを設計することが大事です。

具体的には、以下の6つのステップで設計することを意識してみてください。

  1. 4つのPをもとに、自社の強みや訴求したいポイントを明確にし、採用コンセプトを固める。
  2. 固めたコンセプトが学生に伝わり、体験してもらえるようなコンテンツを考える。
  3. その内容と、学生にとってのベネフィットを組み合わせる。
  4. 学生を惹きつけるような、魅力的なメッセージや打ち出し方を検討する。
  5. Web広告のバナーデザインやスカウトメールの文面などにおいて、効果的な見せ方を工夫する。
  6. 効果検証をしながら、ひたすらPDCAを回していく。

※人が組織に共感する4つのP

 


成長意欲のある学生は、本気のフィードバックを求めている

Q.いつ開催するのがよいか?

大学3年の夏には、学生が参加できる土台を作っておきましょう。

一般的に学生たちは、大学3年の4~6月にかけて情報収集を始めます。
理系の学生に関しては、大学3年の4~6月の時点で約50%がある程度の方向性を決めているようです。

そのため、7~9月までにインターンシップを構築し、媒体から流入するような導線を作っておく必要があります。


Q.どんな訴求が学生に響いているか?

大学3年で内定を取っているような学生には、役員にまでプレゼンができて、しっかりフィードバックをもらえるようなコンテンツが人気です。

こういったタイプの学生は、主体性があって成長意欲も高く、自分のアウトプットがどこまで通用するかを知りたい人が多い傾向にあります。

一方で、イベントなどで多くの学生を集めるには、一般的なマーケティングと同様に、Amazonギフト券などの目に見えるプラスがあるだけでも十分効果があるでしょう。

また、就活という側面では「内定」という一番学生が求めるポイントをどのように活用するかもポイントです。

そのため、内定まで直結している、あるいは早期選考があるといったことも学生を惹きつける要因になります。


リーチ方法は、ナビサイト、DR、WEB広告

Q.インターンシップの情報を学生にどうリーチさせるか?

インターンシップの情報を学生にリーチさせる方法は主に3つあります。

  1. 就活生が頻繁に利用する大手の就職情報サイト(マイナビ、リクナビ、ワンキャリアなど)に情報を掲載する。
    ただし、媒体ごとの特性(選考解禁時期の違いなど)に注意が必要。
  2. ダイレクトリクルーティングツール(オファーボックスなど)を利用し、企業側から学生にスカウトを送る。
    理系・広告・IT系など、ターゲットに合った媒体を選ぶことが重要。
  3. インスタやXなどのWeb広告を活用する。企業側から能動的にマーケティングができる点が強み。
    ただし、効果を出すには魅力的なコンテンツや訴求点が必要。

なお、SNSの活用は中長期的には有効ですが、即効性のなさやコンテンツ制作の負担から、中小企業には難しいかもしれません。


学生人気の高い「SDGS」×「商品企画」で集客

Q.中小企業の新卒採用のインターンシップの好事例を教えてください。

学生から関心が高いSDGsに関連する商社のインターンシップを、前述の6つのステップに落とし込んで作った例を紹介します。

まず、企業の強みや魅力として、学生の関心が高いSDGs関連の事業をしている商社であることや、2兆円規模のグループ会社の看板があることなどを洗い出しました。

その上で、SDGs関連に合わせた商品の企画というコンテンツを考え、商品の企画体験を通じてSDGsへの理解や企業の情報に触れてもらえるよう設計しました。 


学生が得られるベネフィットとして設定したのは、「自身のアウトプットに対する社長や現場社員からのフィードバック」という成果物と、マーケティング・商品企画・SDGs理解などの幅広い内容を体験ワークで実践として学べることです。

「SDGs」「商品開発」「フィードバック、社長へのプレゼン」「内定直結」「懇親会付き」など、学生が求める内容と自社で対応可能な範囲で、インターンシップの魅力を最大化しました。

集客は、学校訪問や学生団体への声掛けなどの地道な地上戦でコストをかけずに行いました。媒体には掲載しておりません。

しかし、結果として、初開催ながら10名ほどの学生が集まりました。

 

企業の強み・魅力

学生の関心が高いSDGs

コンテンツ

商品の企画体験を通じてSDGsへの理解や企業の情報に触れてもらえる設計

学生のベネフィット

社長・現場社員からのフィードバック
社長へのプレゼン、内定直結、懇親会

また、企業の見せ方を考えた例としては、創業120年の老舗企業を「ベンチャー企業」と位置づけて、インターンシップを実施した事例があります。

なぜ、ベンチャー企業と位置付けたかといえば、長い歴史の中で、常に変化しながら成長している老舗企業こそが「ベンチャー」だと考えたためです。


この企業では、ベンチャーと老舗の両方を体験してもらうコンテンツを作り、ケーススタディを通じて自社のミッション・ビジョン・バリューを伝えるというインターンシップを設計しました。

2時間半ほどの内容でしたが、参加学生も5段階の満足度評価も5の大変満足をいただき、そのままエントリーシートを全員提出するという形で選考にもつながりました。

老舗という「古い」イメージのある企業も、見せ方次第でそれがブランディングにつながるという良い事例になったと思います。

このように、企業の魅力を改めて言語化し、現代の学生に伝わるように再構成することで成功している企業もあります。


まとめ

インターンシップは、今後新卒採用を検討している企業の採用戦略に欠かせないコンテンツの1つとして、採用プロセスに組み込むことが必須となるでしょう。

一方で、1人の就活生が参加できるインターンシップは4~5社と限りがあります。

「毎年同じコンテンツ」「周りがやっているからとりあえず始める」といったコンテンツでは、学生から選ばれることは難しいでしょう。

これから始める企業は、本日ご紹介したステップをぜひ社内で議論してみてください。
特に、自社の強いや魅力が言語化されていない企業は、しっかりと社内で共通認識なるようにすることをお勧めします。

本記事を参考に、自社のインターンシップを再検討する機会にしていただければ幸いです。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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