飲食業界で異例の社員定着率90%以上!その秘訣は、経営理念を実践できる「仕組みづくり」にありました。

飲食業界で異例の社員定着率90%以上!その秘訣は、経営理念を実践できる「仕組みづくり」にありました。
目次

株式会社なすび
専務取締役 藤田尚徳さま

こんにちは、ヒトクル事務局です。

創業から42周年を迎える飲食店のなすびグループ。「静岡の食文化の創造と発信」をテーマに、全17店舗が独自のコンセプトを掲げるユニークなマルチブランド展開で、長期にわたって好調な業績を維持しています。

また、ひときわ目立つ社員定着率の高さは、人の絆とチームワークを何よりの財産とする同社の企業姿勢を体現しており、それが商品やサービスの品質向上、地域からの信頼につながる好循環を生み出しています。

同社専務取締役の藤田尚徳さんに、独自の経営戦略や人材観についてお話を伺いました。


企業の原動力は「人」 社員定着率の高さが誇り

―優れた人材の育成、確保の秘訣は?



飲食業界には未だ低賃金、長時間労働のイメージが強く、他業種に比べて離職率が高いのが現実です。しかし、企業の原動力は「人」であり、地域のお客様に愛され、信頼される企業になるためには優秀な人材の育成と確保が最重要課題です。

当社では待遇、教育ともに独自の手法を実践し、2016年度の当社の離職率を8.2%にまで下げ、飲食業界の平均離職率31.4%を大きく引き離しています。

※出典元/株式会社なすびHP
待遇面では、雇用者目線ではなく、社員目線から就業形態を見直しました。

幹部候補やマネージャー、店長を目指す「スキルアップ社員」、自分の時間も大切にしたい人向けの「ゆとりライフバランス社員」、家事育児と両立しやすい完全週休2日制の「時短社員」など、社員の希望に応じて勤務形態を選べるようにしています。
この形態にしてから離職者がぐっと減りました。

しかし、誰かが休んだ分、他の人が忙しくなっては何も改善されません。そこで人材を多めに配置し、フレキシブルに各店のサポートに入る社員も確保しています。

また、正社員比率は約30%と、この数字も飲食業界の平均をかなり上回っています。店長以外は全員パートやアルバイトという店も少なくないのですが、当社では店によっては数名の正社員を配置しています。

そうすることによって社員が安心して働き休める環境を作ったことで、不満が減りそれが社員の定着、さらには生産性の向上につながっています。

また、国内外で一流の店を訪ねる研修や社員旅行、統括部長と社員の定期的な個人面談、ストレスチェック、社員の家族に職場を見てもらうための家族参観日など、社員が「なすびファミリー」の一員として誇りをもって末永く働いてもらえるように、さまざまな工夫をしています。


経営理念を、社員一人ひとりが実践できるしくみを作る

―社員の高いモチベーションを維持するために心がけていることは?



どこの企業も経営理念やスローガンを掲げていますが、それが社員一人ひとりの行動に反映されなければ理想は実現できません。例えば店内をもっと綺麗にして、言葉遣いをていねいに…とその場で注意するだけでは、肝心な部分は何も変わりません。

何のためにそうするのか。それがどこにつながっていくのか。それを社員にどう伝えようかと考え抜いて、独自のしくみを作りました。

「なすびのフィロソフィー(哲学)」カードというものを社員全員に配り、ここに書いてある理念について朝礼で発表してもらい、その様子をSNSの動画にアップしています

なすびフィロソフィーのカード

内容は、例えば「五感に訴える演出について、私は職場でこんな工夫をしてみます…」と、社員が理念を自分なりに咀嚼して、それを実現するための行動を自分の言葉で伝えます。

全社員が動画を見ることで、他店で働いているスタッフの間にも自然と会話が生まれ、企業理念が各々の意識の中に定着していきます。

まず、理解があって、行動が変わる。上から言われてやるのではなく、自分で考える。この積み重ねが大切です。おかげさまで、なすびの社員はしっかりしている、いい人が多いねと褒めて頂くことが増え、私たちも素晴らしい「社員」という財産を誇りに思っています。


ライバルは時代の流れ

―今後はどんな事業展開を?




常々言っているのですが、我々のライバルは同業者ではなく時代の流れです。今繁盛している店が数年後も繁盛しているとは限りません。だからこそ、企業として繁盛が長く継続するように、常に先を見て経営改善を続けていくことが大切です。

当面は、店舗数は変えず、各店舗の魅力をより深め、磨いていこうと考えています。拡大成長の時期を経て、しばらくは現状維持と見直しの時期と捉えています。今ある店を、百年後も続いているような老舗に育てていくのが夢です。

県外からのお客様も増えており、静岡以外、東京や名古屋への出店を打診されることが多いのですが、当社は今後も静岡の街と共に発展し、静岡のお客様に愛される企業でありたいと考えています。

逆に、首都圏のお客様が静岡にもっと来て下さるように、街全体の観光を盛り上げていくのも我々の役目です。

(取材日/2017年9月15日)

いかがでしたでしょうか?

「企業は人なり」と言葉でいうのは簡単ですが、なすびグルーブでは、それが就業形態の見直しや手厚い社員研修を通して、見事に実践されています。

また、企業理念を社員の意識や行動に浸透させていくための独自の仕組みづくりにも、かなりの労力を費やしたとのこと。

企業の財産となる社員を育てできるだけ長く働いてもらうために、じっくりと腰を据えて人材育成に取り組む同社の姿勢から、学ぶことは多いのではないでしょうか。

藤田さん、このたびは取材にご協力をいただきありがとうございました。


取材協力
株式会社 なすび
静岡県静岡市清水区港町2-1-1
事業内容/飲食店
HP/http://www.nasubi-ltd.co.jp/

ヒトクル編集部
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ヒトクル編集部

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