働き方改革の第一歩は、経営者や管理職の意識改革から
こんにちは、ヒトクル事務局です。
年々加速する生産年齢人口の減少。働き手の減少はそのまま企業の生産力、供給力の低下につながります。
そこで国を挙げて性別や年齢、価値観や考え方、働き方などの多様性を受け入れていく『働き方改革・ダイバーシティ』への取り組みが進んでいますが、中小企業の実態はどうなのでしょう。
静岡県&静岡市主催の『働き方改革・ダイバーシティ』推進をサポートされている株式会社るるキャリア 代表取締役の内田美紀子さんに、成功事例や取り組みのための注意点についてお話を伺いました。
【プロフィール】
株式会社るるキャリア 代表取締役 内田美紀子氏
求人情報誌会社・人材派遣会社にてマネジメントを経験、取締役に就任。15年の人材ビジネスの経験を活かし2003年に独立、キャリアサポート オフィス・アイを開業。2006年、公益財団法人 就職支援財団の事務局長に就任。2012年、人材開発会社 株式会社るるキャリアを設立。翌年「働く女子大学 うるおいプラス」を開講。「女性活躍等のダイバーシティ推進」や「働き方改革」のための研修・コンサルティングや階層別研修(管理職、若手社員等)を行っている。
~事業成長に危機感を持っている経営者ほど『働き方改革』に取り組んでいる~
●静岡県内中小企業の『働き方改革』への取り組みの実態を教えてください。
来年から法案化されることもあり、どこの企業でも関心はあるのですが、どこから手をつけたら良いのか、手探り状態の企業が多いようです。
『働き方改革』が進まない一番の理由は、経営者や管理職の価値観や意識の問題です。バブルの頃の価値観を引きずって長時間働くこと、休まずに働くことを美徳とする。こういう方がトップや上司にいると社員たちは定時に帰りづらいし、有給休暇も使いづらい。結果として離職者が増え生産効率が下がって残された社員の負担がますます増えてしまうという悪循環になります。
半面、そういう古い価値観を手放し、経営者や管理職が社員とともに『働き方改革』を推進し、人材確保や業績アップにつなげている企業も徐々に増えています。
一概には言えませんが、歴史が長く知名度も高い企業のほうが「まだそこまで変えなくてもいいでしょう」という保守的な考えが強く、『働き方改革』に及び腰です。
一方、人材不足や中長期的視点で事業成長を考えたときに「このままではまずい、なんとかしなくては」という危機感を持っている企業のほうが、本気で『働き方改革』に取り組んでおり、その成果が出始めています。
~女性が働きやすい職場は男性にも働きやすい~
●『働き方改革』推進の好事例を教えて頂けますか。
食品のパッケージ製造をしている焼津市の株式会社吉村様は、市場の縮小と人材不足が大きな課題になっていました。
そこで主な消費者である主婦のニーズをつかむため、商品開発・顧客のマーケティング支援に女性社員を積極的に登用、女性社員が売り方提案をしたガラス製ワインボトル型茶器は、2014年度に約1億円の売上を達成するなどの成果もでています。これは女性活用の好事例です。
また、工業用の螺子メーカー、静岡市の興津螺旋株式会社様では、総合職で採用した大卒の女性が、たまたまネジ製造の現場に配属を希望したため、女性社員が働きやすいよう重い部品の搬送が女性でも簡単にできるようにラインに工夫を施しました。
すると現場にだんだん女性社員が増えるとともに、業務改善がすすみ、工場全体の生産性も上がりました。女性が働きやすい職場は男性も働きやすいという好事例です。
製造業は3Kで男性の仕事というイメージが強いのですが、やり方次第でそれを払拭でき、誰もがイキイキと働ける職場に変えることができると思います。
~経営者や管理職が先頭に立ち、古い価値観や成功体験を捨てられるか~
●これから『働き方改革』に取り組む上での心得、注意点を教えてください。
まず、経営者や管理職が率先して先頭に立つこと。そして自分の古い価値観や過去の成功体験をいったん切り離してください。長年慣れ親しんでいるものを手放すのはなかなか難しいですが、これができないと前に進めません。
これは個人的な意見ですが、働き方改革を「当事者意識=自分ゴト」として考えられるかどうかで、意識が異なるように感じます。例えば、経営者や管理職の奥様が専業主婦の場合と働いている場合では経営者の価値観が異なることが多いです。
また、改革すると決めたら、継続することが重要です。風土を変えるのにはある程度時間がかかります。短期的にすべてを改善しようとするのではなく、短期・中期でのKPIを定めてステップを踏むことで成果を実感しやすくすると、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
昨今は団塊世代の創業者から息子娘世代へと事業承継をする企業が増えています。
経営者の交代は、『働き方改革』を実践するチャンスです。ここで経営者が本気を出せば、大概のことは改革できるのではないでしょうか。
そして、「やらないことを決める」のも経営者や管理職の役割です。時代の変化とともに新しい仕事が増え、その代わりに不要になる仕事があります。
例えば長時間の会議やりん議書や膨大なペーパーの資料。こういうものはもう不要だと思っても社員はなかなか言い出せません。ですから、経営者や管理職がそれに気づいて「やめる」決断をすることが大切です。
不要な仕事がなくなればやるべき仕事へと時間をまわすことができ、残業も減らせます。ある会社では半年に一度すべての業務を見直し、必要な仕事と不要な仕事を振り分けているそうです。変化のスピードが激しい現代社会では、それくらいの頻度で見直しをしていくと良いのかもしれません。
また、注意点としては「できない理由」を作らないこと。よくあるケースですが、例えばノー残業デーを作ったものの、いつのまにかなし崩しになっている企業では、「やっぱり、お客様の急な要望に応えるために残業しなくては」と言い訳をします。
そうではなく、「うちはノー残業デーを決めたので対応は明日になります」としっかり説明できるようにする。『働き方改革』を実践している企業にはいい人材が集まり、付加価値サービスを提供できる企業となり、お客様もそれを評価してくれるようになるでしょう。
~最も重要なのは、全社員に『働き方改革』を宣言し理解を求めること~
そして、「働き方改革」に取り組むと決めたら、全社員の前でメリットを説明してください。
なぜ改革をするのか、それによって社員にどんなメリットがあるのか。「残業が減れば給料が減って困る」という人もいるだろうし、「有給や短時間勤務を使う人が増えれば、他の人のフォローが大変になる」という人もいるでしょう。
そういう意見も聞いたうえで、それでも改革が必要であること。そして改革によって業績アップを目指し、社員全員に利益を分配していくということを、きちんと理解してもらいましょう。
『働き方改革』は性別や年齢、雇用形態を問わず、すべての社員にとってメリットがあるものです。経営者、社員が常にこれを忘れずに行動していけば、どんな企業でも実践できると思います。
また、経営者の意識改革がなかなか難しいと思われる場合は、まず、人事担当者や管理職方が『働き方改革』の必要性とメリットを把握し、それを経営者に折にふれてアピールしていくことも、長期的な視点での『働き方改革』につながっていきます。興味のある方は、ぜひ当社までお問い合わせください。
(取材日:2018年8月27日)
いかがでしたでしょうか。
今回、多数の企業で働き方改革のサポートをされている株式会社るるキャリアの内田さまに中小企業の実態や成功事例、取り組みのための注意点についてお話を伺いました。
同社では『働き方改革』の実例を講演会やセミナー形式で多数紹介しています。興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
取材協力
株式会社るるキャリア
静岡市葵区紺屋町11-1 浮月ビル5階
事業内容/働く女性の大学「うるおいプラス」の運営
女性活躍・ダイバーシティ・働き方改革の推進支援
モチベーションアップ・キャリアデザイン等の研修企画運営
人材育成・キャリア開発支援に関するコンサルティング
行政・経済団体・学校向けの講演会、セミナ―の企画運営
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