【離職率とは】算出方法や業種別の傾向・下げるための対策について解説

【離職率とは】算出方法や業種別の傾向・下げるための対策について解説
目次

たくさんの求職者の中から、検討を重ねて採用に至った人材が離職してしまうと、企業が採用・教育にかけたコストが水の泡となってしまいます。

この記事では、離職率の高さに悩んでいる人事担当者を想定して、離職率の概要や算出方法、最新の業種別離職率の傾向(令和4年)、離職率を下げるための対策などについて解説します。

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離職率について

離職率は、法律等で厳密に計算式が規定されていないため、目的に応じて算出方法が異なる場合があります。
しかし、基本的な考え方は難しくありませんから、まずは概要を押さえていきましょう。


離職率の定義

離職率は、ある特定の時点で働いていた社員のうち「一定期間後に退職した社員の割合」として定義されます。

特定の時点・期間に関しては、算出の目的に応じて変動するため、対象となる社員をどこまで絞るかによって数値も変わってきます。

一般的には、離職率が極端に高いと、社員が企業または仕事に定着しにくい状況が常態化しているものと捉えられます。

逆に、離職率の低さは多くの社員が定着していることを示すため、求職者がポジティブにとらえることが多いでしょう。


離職率はどう計算するのか

離職率を計算する際の公式は、公的機関・企業・組織によって異なります。
例えば、厚生労働省が雇用動向調査で使用している公式は、以下の通りとなります。

離職率 = 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数) × 100

※参照元:厚生労働省|雇用動向調査・用語の解説

しかし、企業の基準では必ずしも1月1日が期首になるとは限らず、事業年度が4月1日の場合はその日が起算日となります。

また、1年単位で離職率を計算することも、必ずしもすべての企業・組織でスタンダードとは言えず、離職率の利用目的によっては3年・5年といったスパンで計算することも問題ありません。

基準となる年数が変わると、特定の年数における退職者数も変わることから、やり方次第では意図的に離職率を減らすことも可能です。

よって、基準次第では求職者に対して離職率が低い印象を与えることもできますが、逆にそれが新入社員の不満を助長したり、自社とのミスマッチを誘発することにもつながるため、情報公開時には注意が必要です。


離職率と定着率の違い

離職率とは逆の視点から算出する指標の一つに、定着率があげられます。

定着率は、過去に入社した社員が「一定期間においてどのくらい退職せず定着しているのか」を示すものです。

仮に、期首が4月1日の会社において、同日に20人が中途入社した後、翌年の3月31日に15人が退職せず勤務していたとしたら、以下の計算式で1年間の定着率を計算します。

15人(1年後も勤務している社員の数) ÷ 20人(4月1日に中途入社した人数)× 100 = 75%

こちらも、数字の提示の仕方によっては、求職者に期待を持たせるような情報公開が可能ですが、過度なアピールは採用後の離職につながるリスクがあります。

しかし、社員定着率を意識することも、安定した経営のためには不可欠です。


離職率が高い業界・企業の傾向

離職率の高さは、業界全体にまん延する問題だけでなく、企業や組織の雰囲気・社内制度の整備状況・忙しさなどにも左右されるため、明確な理由を定義することは難しい部分があります。

しかしながら、離職率が高い業種・企業には、一定の傾向・離職理由があることも事実で、以下のような特徴を持つ業種・企業は社員定着を妨げるものと推察されます。


残業時間が長く社員の負担が大きい

ワークライフバランスの充実に向けた施策は、日本企業でも取り組みが進んでいるところですが、自社のリソースでは十分な施策ができないというケースも少なくありません。

リソース不足から社員に負担を強いることで、残業時間もどんどん長くなっていきますから、プライベートに支障をきたし退職してしまう社員も増えていきます。

社員のモチベーションを下げてしまうような状況が続くと、長い目で見て自社のパフォーマンスを下げてしまうリスクがあります。

社員の残業時間の長さが目立つ企業は、派遣スタッフなどの活用も検討しつつ、社員の負担を少しでも下げるような施策が求められます。


給与・待遇が魅力的でない

自社の給与や待遇が、他の同業種の企業に比べて低い場合、残念ながら求職者にとって魅力が低い企業に見えてしまいます。
求職者の将来が給与によって決まる面は否定できません。その上、人事面でも平等な評価がなされていない状況であれば、社員が魅力を感じないのは当然です。

すぐに昇給が難しかったとしても、社員に希望を与えるような施策を行うことが、求職者を確保するポイントです。
自社の待遇が他社と比べて良くないことが分かっているなら、同じレベルまで引き上げるか、自社独自のメリットを打ち出すことが、離職率を減少させる一手となるでしょう。


対人コミュニケーションが求められる

社員が業務においてストレスを感じる理由は人それぞれですが、職場の人間関係・顧客とのコミュニケーションによって疲弊する例は少なくありません。

厚生労働省が2020年に行った労働安全衛生調査の結果を見ると、仕事や職業生活にストレスを感じている事柄があると回答した人の27%が、対人関係にストレスを感じていると回答しています。

労働安全衛生調査

メンタルヘルスに関する対策は、ストレスを感じている当人のセルフケアだけでなく、周囲のケアも必要になってきます。

業務における作業・対応の工程を明確にし、その精度を評価する仕組みを設けるなどして、社員がやりがい・能力向上を実感できるよう取り計らう努力が求められます。


雇用動向調査における産業別 離職率(2022年)

厚生労働省の雇用動向調査結果(2022年)によると、産業別の離職率は以下のようになっており、平均離職率は15.0%です。

業種
離職率|2022年(%)
離職率|2021年(%)
宿泊業、飲食サービス業26.8%25.6%
サービス業(他に分類されないもの)19.4%
18.7%
生活関連サービス業、娯楽業18.7%
22.3%
医療、福祉15.3%
13.5%
教育,学習支援業
15.2%
15.4%
卸売行、小売業14.6%12.3%
不動産業,物品賃貸業
13.8%
11.4%
運輸業、郵便業12.3%
11.5%
情報通信業
11.9%
9.1%
複合サービス事業
11.0%
8.1%
電気・ガス・熱供給・水道業10.7%
8.7%
建設業10.5%
9.3%
製造業10.2%
9.7%
学術研究,専門・技術サービス業
10.0%
11.9%
金融業、保険業8.3%
9.3%
鉱業、採石業、砂利採取業6.3%
10.0%

※厚生労働省:令和4年度 雇用動向調査結果

2022年は新型コロナが少し落ち着いてきた時期ですが、宿泊業、飲食サービス業の離職率は非常に高く、サービス業全般としても高い水準にあります。

各種サービス業に次いで高いのが医療・福祉、教育・学習支援業で、数値だけを見る限り「顧客とのコミュニケーションを求められる業種はストレスを感じやすい」ことを裏付けるような結果となっています。

また、顧客から受けたストレスを社員が上手く受け流せなかった場合、そのストレスは仲間であるはずの社員に対してぶつけられるリスクがあります。

職場で信頼できる人がいなくなってしまい、離職が続くような状況となれば、企業は永遠に採用活動へのコストを支払い続けることになるでしょう。


離職率が高いことによるデメリット

かつて、新規学卒就職者の3年以内の離職率は、いわゆる「七五三」と呼ばれていました。
すなわち、中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割が離職していた計算です。

最近では数値が改善を見せているものの、依然として一定数の新入社員が3年以内に離職している現実は変わりなく、円滑な企業活動を阻害する一因となっています。
以下、離職率が高いことによるデメリットについて、主なものをご紹介します。


新しい社員を雇えない

企業が人材採用にいくらコストをかけるのかは、企業の事情により異なるものの、総じて将来の利益を見越して人材採用への投資を行っています。
しかし、無事新入社員を採用できても、すぐに社員が辞めてしまったら、それまでに投資してきた費用が無駄になってしまいます。

企業の懐事情によって、追加の採用活動に対していくら支払えるのかは変わってきますから、場合によっては今年度の採用を見送る決断を求められるかもしれません。
こうして、新しい社員を雇えないまま時間が過ぎてしまうと、ボディブローのようにじわじわと企業の体力がそがれてしまうのです。


社員教育にかけた時間・労力が報われない

新入社員に対して実務を教育するのは、基本的に現職の社員です。
できるだけ早く戦力になって欲しいと考え、懇切丁寧に教えた結果が早期退職だと、教える社員も教えられる社員も報われません。

そもそも、実務の中で社員教育を行うことは、教育担当者に大きな負担をかけます。
新入社員の早期退職は、実際に教育に携わった社員の意欲にも少なからず影響を及ぼすことが予想されるため、早急な対策が求められます。


現在働いている社員に悪影響を及ぼす

新入社員の退職は、実際に新入社員の教育に携わった社員以外にも悪影響を及ぼします。
特に、かねてから新入社員が退職する原因に心当たりがある社員は、新たな退職者となる可能性があります。

企業としては、現在働いている社員が「どのようなことで悩んでいるのか」「どのようなことに不満を持っているのか」を知り、社員が企業に持つ不信感を取り払う努力が必要です。

新入社員が思っていたような形で集まらなかったとしても、現在の戦力を失ってしまうことは何としても避けなければなりません。


どうすれば離職率を下げられるのか

離職率の高さは、経営陣・人事担当者にとって放置できない問題です。
以下のようなアプローチによって、優秀な人材を自社に留めることが必要です。


社内の現状について理解を深める

数値として離職率の高さが浮き彫りになったとしても、それだけでは問題は解決しません。
まずは、どうして離職率が高くなってしまっているのか、社内の現状を把握するところから始めます。

社員に負担なく回答を促す方法としては、特定の質問を短期的かつ繰り返し行う「パルスサーベイ」という手法があります。
他には、上司・部下との間で1対1の定期的な面談を行う「1on1ミーティング」も、社員の本音を引き出すことにつながります。

注意点として、ヒアリングの段階では解決策を検討せず、問題を把握することに努めましょう。
対策は、十分に現状を理解してから講じなければ、付け焼き刃になってしまうおそれがあるからです。


労働環境・評価制度の見直しをかける

社員からのヒアリングを終えた段階で、問題となるファクターが見えてきたら、労働環境・評価制度の見直しに入ります。

具体的な例としては、労働時間・休日の取りやすさ・給与体系の改善があげられます。

一概には言えませんが、これらの問題は単独で発生しているとは限らず、複合的に企業をむしばんでいるケースも少なくありません。

残業を減らそうと考えるなら、業務ツールのDX化など、既存の勤務スタイルを変革する試みが求められます。
休みを増やしたいなら、まず管理職から休む習慣を作り、職場全体で引継ぎがスムーズに進む仕組み作りが重要です。

社員にとって納得度の高い給与体系を構築するには、社員の目線から見ても分かりやすい「会社への貢献度を図る指標」が必要になってきます。

一つひとつ改善するにせよ、一気に改善するにせよ、これまで自社で考えてこなかったアプローチが求められます。


社員同士が「腹を割って話せる」環境を構築する

子供の頃から一緒に過ごす家族や友人とは、わだかまりなく話ができる関係性が出来上がっているかもしれません。

しかし、ある程度自分の価値観が出来上がってから出会う会社の人間関係では、なかなか腹を割って話せる関係性を築くのは難しいものです。

だからといって、言うべきことを言わずに放置していると、状況は悪くなるばかりです。
言いたいことを腹に溜めることなく、相手を認めつつ本音を伝えられる環境作りが大切です。

デスクの位置やレイアウトを変更するだけでも、新しい刺激が生まれ、隣に座る人とこれまでになかった新しい関係性に発展する可能性があります。

コミュニケーションスキル向上のため、社員研修を充実させるのも良い方法です。


採用段階で自社にマッチする人材を厳選して募集する

採用した社員の離職をとどめるアプローチも大切ですが、それ以前に採用段階で自社の社風や求めている業務にマッチする人材を厳選して募集することも、離職率を低くするためには重要なポイントです。

「求人募集」の段階から、自社で活躍している人材にしっかりとターゲットを絞り求人票を作成することで、求めている人材からの応募を増やすことが可能です。

費用を抑えつつ理想の人材にアプローチをするなら、プロの視点から求人記事を見直すのが効果的です。

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まとめ

自社が継続して成長を実現するためには、安定した採用と優秀な人材の確保が欠かせません。
ただでさえ人材不足が深刻化している状況の中、経験豊富な社員が職場を離れてしまうのは、非常に大きな損失です。

離職率を下げ、社員が自社に魅力を感じられる環境にするためには、多面的な視点から解決策を模索する必要があります。
経営陣・人事担当者には、採用活動の充実も含め、打てる手はすべて打つ意識が求められます。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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