法改正2024! 人事・労務担当者が把握するべき9つの変更・改正一覧

法改正2024! 人事・労務担当者が把握するべき9つの変更・改正一覧
目次

2024年は多くの法改正が予定されています。
人事・採用・労務担当者など、多くの現場に影響が想定されるでしょう。 

2024年、どのような法改正が施行されるのか、事前にチェックして、対応できる環境を整えておきましょう。


2024年に施行される主な法改正9つを一覧で解説

2024年には、人事や採用、労務担当者への影響が考えられる法改正が9つあります。それぞれの内容を、詳しくチェックしてみましょう。


1.2024年1月1日~電子帳簿保存法が完全スタート!

2022年1月に法改正された電子帳簿保存法。
そのため、2024年の法改正と聞いて、意外に思う方もいるかもしれません。 

電子帳簿保存法自体は、2022年に施行されましたが、移行するまでの猶予として2年間の宥恕(ゆうじょ)期間がありました。この宥恕期間が、2023年12月31日に終了となるため、2024年は電子帳簿保存法が本格スタートする年です。

「2024年に間に合わないかもしれない」

という場合、“保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じられる場合”という条件付きで、引き続き紙での保管が可能です。

まだ電子帳簿に移行できていない場合は、判定期間の売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)、指定の様式で電磁的記録の提示又は提出に応じられる、などの条件をクリアしているかどうか、たしかめておきましょう。

詳細は、以下より確認できます。

※国税庁|電子帳簿等保存法の内容が改正されました


2.2024年2月1日~荷役業務のルール改正

2024年2月~、労働安全衛生規則が改定されます。自社の労働者が、トラックのテールゲートリフターを使って荷物の積み下ろしをしている場合、学科4時間、実技2時間の特別教育が必要になります。

荷役作業時の墜落、転落を防ぐ目的でのルール改正となり、テールゲートリフターのスイッチ操作だけでなく、キャスターストッパー、昇降板の操作などを行う人も、特別教育の対象です。

2024年2月1日以降は、特別教育を受けた者でなければテールゲートリフターによる荷役作業を行えなくなります。

現在テールゲートリフターによる作業を行っている人も含め、令和6年1月31日までに忘れずに特別教育を受講してください。(2024年1月31日までに、6ヶ月以上の実務経験がある場合は、特別教育4時間15分に免除されます)

テールゲートリフターの特別教育は、全国各地の団体が実施しています。2024年2月が迫るにつれ、駆け込みでの受講が多くなると予想されることから、業務に支障をきたさないために、早めに実施しておくと安心です。

学科をオンラインで受けられるサービスもあるため、上手に活用しながら、必要な人材の受講を済ませましょう。

労働安全衛生法をわかりやすく解説|2023年改正内容を踏まえたポイントとは


3.2024年4月1日~労働条件明示のルール改正

現在の労働条件ルールでは、有期労働契約が5年を超えた場合、労働者が申し込むことで無期契約に転換できます。ところが、企業が無期契約転換のルールを周知せず、有期契約労働者のまま雇用している、というトラブルが多くありました。

この問題を解決するため、2024年4月1日からは無期転換となるタイミング(無期転換申込権)が発生する際に、無期転換の申し込みができます、という明示が義務化になります。

ただ無期転換の案内をするだけでなく、無期転換を選んだ場合の労働条件も明示する必要があります。

すべての労働者への明示事項就業場所・業務の変更の範囲
有期契約労働者に対する明示事項等
更新上限の明示
無期転換申込機会の明示
無期転換後の労働条件の明示

これまでは、契約時の勤務地、契約時の業務のみでOKでしたが、

「本社で雇用するけれど、支社へ異動する可能性がある」
「一般事務職をお願いしているけれど、経理へ変えるかもしれない」 

など、労働条件が変更する可能性がある場合、予想される就業場所、業務の範囲をすべて含めて明示しましょう。

厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」


4.2024年4月1日~すべての業界で時間外労働の上限が適用

建築・物流・運送業界で「2024年問題」と呼ばれる時間外労働の上限適用が、間近に迫っています。

2019年4月から、「働き方改革」とも呼ばれる労働基準法改正で、36協定による残業時間の上限が適用され、残業上限規制が月45時間、年間360時間となりました。

【2023年最新版】残業時間の上限や法改正について詳しく解説

大企業では2019年4月、中小企業では2022年4月からすでにはじまっている労働法の変革制度ですが、長時間労働が当たり前になっている建設業、自動車運転業については、移行までに5年の猶予期間が設けられていました。

この労働基準法施行規則の猶予期間が2024年3月31日で終わるため、建設業・物流、運送業界ではたらく人だけでなく、社会に大きな影響を与えると言われています。

これまで通りのスケジュールでは建物が立てられない、今よりも荷物が届くまでに時間がかかる、といった未来が予測されます。

すでに働き方を変えている建築・物流関連の事業者が増えていますが、2024年4月以降は、より建築・物流・運送業界に変化が訪れるでしょう。

【2024年問題】物流業界の働き方改革|企業やドライバーの課題・対策を解説


5.2024年4月1日~裁量労働制(みなし労働時間)制度の見直し

現在、特定の専門業務において、業務の進め方、時間配分を労働者の裁量にまかせた「みなし労働時間」での労働時間制度が取り入れられています。

弁護士や税理士、建築士、中小企業診断士、公認会計士、不動産鑑定士、といった士業や、ゲームソフトウェア創作、放送番組や映画などのプロデューサー、インテリアコーディネーター、証券アナリスト、システムコンサルタントなど、19の専門業務に裁量労働制が適用されています。

厚生労働省労働基準局監督課/専門業務型裁量労働制

2024年4月1日からは、この専門業務が拡充され、銀行または証券会社による顧客の合併および買収に関する調査、分析、助言業務(M&A業務)が追加されます。

また本来は、業種によって違う働き方に対応する制度でしたが、裁量労働制という名のもとに、過剰な長時間労働を強いられるケースが増えています。

この問題を解決するため、2024年4月以降、新規ルールが適用されます。

裁量労働制を適用する場合は本人に同意を取る。本人の同意が得られなかった場合も不当な扱いをしない、といった、労働者が望まない働き方を防ぐための変更です。

厚生労働省「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」

該当の業務に就いている人材がいる場合は、かならず本人の同意を得て、同意しなかった場合も不利益な取り扱いをしないと、労務協定に定める義務がある旨、覚えておきましょう。

裁量労働制とは?メリットやデメリット、導入方法を徹底解説!


6.2024年4月1日~化学物質の管理規則の見直し

製造・研究などの業務で、危険性や有害性のある化学物質を使用している企業が少なくありません。実際に、化学物質が原因の災害が年450件程度起きていることから、化学物質の規制制度が2024年4月1日から見直されます。

労働安全衛生法に基づいたラベル表示、安全データシートによる通知、リスクアセスメント実施の対象となる化学物質を順次追加。GHS分類で危険性、有害性が認められたすべての化学物質が対象となります。

さらに、リスクアセスメント対象物のうち、厚生労働大臣が定めた物質は、労働者がばく露吸い込んだり、手に付いたりして体内に化学物質が入ること)される程度を、濃度基準値以下にする義務が適用されます。新しいルールに基づいて、施行内容やばく露状況を労働者からヒアリングの上、記録を保存する、といった業務が追加されます。

健康障害を引き起こすことが明らかな場合は、適切な保護具を使用する、という努力義務も、2024年4月1日以降は義務化されます。

厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」


7.2024年4月1日~障害者雇用率の変更

2024年4月1日から、障害者雇用促進法に基づいて、障害者雇用率が引き上げられます
平成30年から採用されている、現行の雇用率2.3%が、2024年4月以降は2.5%、2026年7月には2.7%と、段階的に引き上げられる予定です。

新たな雇用率の設定について◼令和5年度からの障害者雇用率は、2.7%とする。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとする。 

厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」

割合が変わった結果、これまでは40名に1人の障害者雇用が必要でしたが、37.5名に1人あたりの雇用が法的に求められます。

この変更により、人数を増やすだけでなく、これまでに障害者を雇用していなかった企業も、障害者の採用が必要になる場合があります。

2024年4月を迎えて慌てないように、自社では何人の障害者雇用が必要なのか、人数を把握し、採用の準備を進めましょう。


8.2024年10月1日~社会保険加入対象企業の拡大

2020年の年金制度改正法で、パート・アルバイトの社会保険加入対象企業が引き下げられています。

すでに2022年10月以降、従業員数101~500人の中規模企業まで引き下げられていますが、2024年10月1日からは、従業員数(正確には公営年金の被保険者数)51~100人の中小企業も適用されます。

これまで対象に入っていなかった中小企業は、パート・アルバイト人材が10月以降社会保険へ加入できるように、準備が必要です。

現行の制度では、月額収入10万8333円まで扶養内で勤務できましたが、2024年10月からは、月額収入8万8000円以上の場合、扶養ではなく社会保険の対象になります。

企業の負担が増えるだけでなく、従業員にとっても社会保険の自己負担が増えるといったデメリットがあります。

このような背景から、社会保険加入を望まないパート・アルバイトが多く、時間調整や必要に応じた労働力の確保、といった業務が増える場合もあるでしょう。


9.2024年秋にマイナンバーカードと健康保険証が一体化

2024年秋を目処に、現行の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと健康保険証が一体化される予定です。

もっとも遅い場合でも2024年12月8日までに切り替えのスケジュールで、従来の健康保険証は有効期限で順次廃止され、マイナ保険証へ切り替わります。

「顔認証で受付できる」「限度額以上の一時支払いが不要になる」といったメリットがある一方で、先行して切り替えている医療機関では、「別人の情報が誤登録されていた」「システムがうまく作動しなかった」といったトラブルも報告されています。

これらの問題を解決できない場合、一体化が先送りされる可能性もありますが、2024年秋に切り替わる予定で従業員への周知、マイナンバーの取得支援などを進めておきましょう。

一体化切り替え以降もマイナンバーカードを取得していない場合は、資格確認書の発行で受診できる体制を整えています。当初は1年ごとに資格確認書を更新する予定でしたが、現在は5年を超えない範囲で調整中です。

資格確認書を使用する場合、有効期限内の保険証やマイナ保険証を使用した場合は、請求金額が高く設定される予定であることも、覚えておきましょう。

2022年から2024年の法改正については、以下の記事でまとめています。
合わせて参考にしてみてください。

あなたの会社は大丈夫?採用・人事担当者が知っておくべき2022~2024年の法改正まとめ


2025年施行の法改正も合わせてチェック

人事や労務に関連する、2025年以降の法改正がすでに決定しています。
2023年11月22日現在で、決まっている情報をみてみましょう。


2025年4月~高年齢雇用継続給付金の縮小

高年齢雇用継続給付は、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60~65歳の労働者を対象にした給付金です。雇用継続促進を目的に賃金の原則15%が給付されています。

ですが現在は、2021年4月に高年齢者就業確保措置が施行されるなど、高年齢者が働きやすい社会になっています。そのため、高年齢者雇用継続給付金を15%から10%へ縮小すると決定されました。

高年齢者雇用継続給付は、今後段階的に縮小し、廃止される予定です。
制度改正の予定がないか、定期的に情報をチェックしておきましょう。


まとめ

雇用に関連する法律は年々変化がありますが、2024年には特に多くの改正が待っています。

今回紹介した主な改正以外にも、健康保険法や厚生年金保険法、知的財産法など、細かい部分での変更がいくつかあるため、企業に関連する内容を広く集めておきましょう。

法改正を把握していない従業員に向けた、説明の機会も必要です。
スムーズに新しい制度へ移行できるように、労働条件や契約を管理の上、準備を整えておいてください。

※以下、ドキュサインのブログも参考になりますので、ぜひご覧ください。
 電子署名の仕組みを理解しよう!メリットや適法性、活用事例までわかりやすく解説


ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。

「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。

アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/

社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。