優秀な社員に注目したら「働き方改革」になった~お仏壇のやまき インタビュー【前編】~
株式会社お仏壇のやまき
代表取締役社長 浅野秀浩さま
こんにちは、ヒトクル事務局です。
近年、現政府が目玉政策として取り組んでいる「働き方改革」。日本の労働力不足の解消のために、「女性やシニアの活躍」「労働生産性の向上」の施策が打ち出されています。
2017年には、長時間労働による過労死やプレミアムフライデーなど、ニュースでも話題に挙がりました。
その中で、まだ「働き方改革」という概念すらない10年前から社員の「長時間労働の是正」「生産性向上」の取り組みをしながら、売上を伸ばしている会社がありました。
静岡県内に6店舗展開する仏壇・仏具・墓石販売をしている株式会社お仏壇のやまきです。
同社の代表取締役社長・浅野秀浩さんに、取り組みの背景や実施のプロセス、苦労した点についてお話しを伺いました。
優秀な社員は「家族との時間を大切にしていた」
取り組みを始めたのは、どういうきっかけだったのでしょうか。出発点は「どうしたら顧客満足度を上げ、売上をもっと上げられるか?」です。
私たちは、仏壇や仏具を社員が店頭で販売することで売上を上げていますが、当時は販売マニュアルを作成していました。でも実績に個人差がどうしても出てきてしまいます。
そこで、藤枝店にいる、ある優秀な社員を観察することにしました。
みんながその優秀な社員のようになってくれれば、売上が伸びるはずです。
始めは何が他の社員と異なるのか、分かりませんでした。分かったのは、その社員が残業はほとんどせず、しかも有給取得率が100%ということです。
そこで、24時間張り付いて観察することにしました。そうしたら、あることが分かったのです。
それは、その社員(女性だったのですが)が非常に家族と過ごす時間を大切にしている、ということでした。
私はこう考えました。
私たちのお客様であるお仏壇を購入される方は、家族を大事にしている方です。
そういう方に共感でき、よい提案ができるのは、自らが「家族を大事にすること」が重要です。
つまり、「家族を大事にする=社員が残業をせず、家族との時間を大切にすること」が売上を上げるために必要だと考えました。
「付加価値の源泉は外にあり」が合言葉
また、「顧客満足度を上げる」ことも同じように突き詰めて考えました。
顧客満足度を上げようとすると、どうしても時間がかかりますよね。時間をかけずにどうしたら顧客満足度を上げることができるでしょうか。
例えば、販売員が商品について全て説明をしようとすると非常に時間がかかります。商品にPOPが付いていれば、どうでしょう?
POPでお客様が商品を理解してくだされば、社員が説明する時間を省けるでしょう。
では、どんなPOPだったらお客様が理解して、商品を購入したくなるでしょうか。
机の上で、悩んでもなかなかいいアイデアは生まれません。そこで社員が旅行に行けるように旅行手当を出し、連続休暇をとることを奨励しました。そして旅行先でみた面白いPOPの写真を撮影してきてもらったのです。社員は家族との時間を大切にしながら、新しいアイデアも吸収することができます。
こういったことから弊社では、社内にいる時間はなるべく短く、外に出てアイデアを吸収することを勧めています。「付加価値の源泉は外にあり」が合言葉です。
なるほど。「長時間労働の是正」をしようとして始めたのではなく、そもそも「売上を上げよう」「顧客満足度を上げよう」としたのがきっかけだったのですね。
トップダウンで制度を変えた
取り組みは、2段階のステップに分けて行いました。
まず導入時期は、私のトップダウンで制度を変えました。その理由は、従来あった企業文化を否定するという大きな改革を成し遂げるためには、トップダウンで「会社の本気度」を示すことが必要だと思ったからです。
・1か月の残業時間を10時間以内に制限した
・有給休暇の90%以上の取得を義務付けた
上記のルールに伴い、就業規則、人事考課の基準、報酬制度も改正しました。
社内からの反発はありませんでしたか?
もちろん、ありましたよ。
実は、この取り組みを始めてから10年がたちますが、最初の2年が一番苦労しました。
世間では、まだまだ長時間労働が美徳だと考えられていた時代です。今まで長く働くことが善しとされてきたのに、いきなり「短く働くのが善し」となったわけです。社員からしてみたらカルチャーショックですよね。
もちろん退職した社員もいました。それでも私は、優秀な社員は「家族との時間を大切にしている」ということを実際に知っていたので、トップダウンで推し進めました。
そうしましたら、半年ほどで少しずつ成果が見え始めました。結果的に2年ほどで全店にこの取り組みが浸透していきました。
大事なのは、経営者がぶれずに信じることです。私の場合は、実証している社員がいましたので、そこはぶれずに進めることができました。
10年前といったら、リーマンショック後の不景気がまだ続いていた時代です。
会社の売上が落ち込んでいるのに「残業をせずに帰る」のは、真面目な日本人にとってはかなりのカルチャーショックだったことが予想できますね。
早い段階で成果が出てきたことも浸透が早かった要因ではないでしょうか。
後編では、次に行った「生産性向上に向けた業務改善」のステップについて具体的に伺います。
働き方改革「社員が自分で決めて取り組む」だから社内に浸透する ~お仏壇のやまきインタビュー【後編】~
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