面接で自社を盛る?面接のスタンスで早期離職を防ぐ、その方法とは?
なぜ早期離職をしてしまうのか?
最近、「採用したスタッフが一週間で来なくなった」「初日だけ来て、その後は電話にも出ず、音信不通になってしまった」など、“超”早期とも言える離職に悩む声を聞くようになりました。
そこまで行かずとも、3カ月や半年など自社戦力としてまさに「これから」というときに、退職を申し出てくる人も少なくありません。
会社にとっては、お金をかけて募集広告を出し、面接を重ね、ようやく採用した人材です。1週間でいなくなってしまうなどはもとより、「ようやく仕事に慣れてきた」「少しは任せられるようになった」という段階まで育てた人に辞められるのは、相当につらいものがあります。
でも、いったい、なぜ、彼らはやめてしまうのでしょうか。
もちろん夫の転勤や、親が急に要介護状態になってしまうなど、やむにやまれぬ事情があり、きちんと伝えてくれる人も多くいます。半面、職場に何か問題があって辞めたいと思った場合、私がパート・アルバイトさん個人に取材した経験からは、多くの場合、彼らは本当の退職理由を語りません。
そうではなく、「家の事情で・・」「急に忙しくなって・・」など、当たり障りのない理由が語られることがほとんどです。なぜなら、かれらの希望は「あとくされなく」「すっきり」と辞めること。本当の理由を伝えることで、禍根を残したくないのです。
早期離職の真因は「予想」と「現実」のギャップ
いずれにしても退職は、理由があって発生します。そう思わせる何かが職場にあったのです。なぜなら、1カ月や3カ月など最初から短期希望の場合を除き、そもそも1週間や1か月で辞めるつもりで、応募などしてこないからです。まして交通費や時間をかけ、労力を使って、わざわざ面接に来はしません。
では、何がいけなかったのでしょうか。真の理由は、当人にしかわかりません。
でも、一つだけ言えることがあります。「想像していた」「期待していた」職場と違った、ということです。結果として「その職場で働き続ける意味や意義、あるいは自信がなくなってしまった」のです。
こうした事態を避けるには、本人の「予想」と、「実際」とのギャップを埋めることが必要です。埋める方向性は二つあります。
第一に、期待値を上げすぎないことです。つまり、「どんな職場なのか」「どんな仕事をしてほしいのか」など、飾らない事実を、募集広告や面接などで、きちんと伝えておくことです。
採用が難しくなればなるほど、これを躊躇する気持ちもわかります。でも多くの場合、きれいごとだけ伝えて採用しても、良い結果は生まれません。定着せず、あっと言う間に辞めてしまえば、採用した意味がないのです。
第二に、新人のケアをきちんとすることです。ギャップに戸惑う新人を、きちんとフォローする体制を作るのです。
大切なのは、「ここで働きたい」と思ってもらうこと
まずは、第一の方法、期待値を上げすぎない面接方法について解説しましょう。
ただし、期待値を上げすぎないことが大事とはいえ、自社で働く意欲を失わせてしまってもいけません。要はそのバランスです。
ここで思い出してほしいのが「相思相愛」の考え方。面接は、一緒に働き「相思相愛」になれる相手かどうか、互いに見定める場だということです。
※「相思相愛」についての記事はパートさんが長く頑張っている会社がしている「たった一つ」のこと~相思相愛マネジメント①~
一般的に面接は、応募者が自社の「欲しい人材像」に合っているかどうかを確認するために行うとされてきました。どちらかといえば「チェック」「ジャッジ」の視点です。もちろんその観点も重要ですが、採用できない今、より大事なのは応募者に「ここで働きたい」と思ってもらうこと。
その際、自社を「盛り」過ぎず、できるだけ事実を飾らず伝えていくことが、早期離職を防ぐためには重要だということです。
やりがいは現場から生まれます。その現場を飾らずリアルに、でも魅力的に伝えることが大事です。その現場で、「あなたと共に頑張り、お客さまからのご支持を得ていきたい」想いを、すでに面接のときから伝えていくのです。
「魅力」と「現場・現実」を共に伝える
具体的に説明しましょう。
まずは「入社したら、何が得られるのか」つまり、求職者にとってのメリットを伝えます。高賃金を用意できる場合はそれも大きなメリットですが、「自己成長」や「やりがい」「参加・参画できること」も、意欲ある応募者には魅力的に響きます。
同時に自社の仕事の「価値」や「意義」もぜひ伝えてあげてください。つまり、自社で働くことで、社会のどんな役に立ち、誰に喜んでもらえるのか?ということです。これは、多くの場合説明しなければわかりません。採用担当者が、自らの実感や実体験をもとに、熱く語ってあげることが大事です。
なお、仕事の内容については、できるだけ具体的に伝えることが大切です。応募者が「自分が働いている姿を想像できるくらい」リアルに話してあげましょう。それが、入社後のミスマッチを防ぎます。
実際、ある工場では、それまで面接を会議室で行っていたところ、面接時間の半分を工場見学に変えました。つまり、入社後働くことになる工場に応募者を連れていき、そこで仕事の説明をするようにしたのです
いわゆる「3K」職場だったため、見学により辞退者も増えましたが、半面、早期離職も激減したといいます。
今回は早期離職を防ぐ第一の方法についてご紹介しました。次回は、第二の方法「新人ケアをきちんとする(入社時フォローで早期離職を防ぐ方法~チェックリストを活用しよう。)」についてご紹介いたします。
早稲田大学卒業。1996 年に求人広告企業アイデムに入社。同社人と仕事研究所にて、「人とマネジメント情報誌」の記者・編集者を担当後、編集長を経て、2009 年よりアイデム人と仕事研究所所長。
この間、パート・アルバイト、女性社員の採用・戦力化、CS、ES、評価・賃金・教育制度、モチベーションアップ、マネジメントなどをテーマに、数多くの企業と働く人を取材する。また『パートタイマー白書』の企画・調査等に携わり、現場情報に詳しい。
2013年に独立し株式会社働きかた研究所を設立。企業に向けて「パート・アルバイトの採用・定着・戦力化」「女性社員の活躍 」等、コンサルティング活動を行う。他に、厚生労働省等各種公的委員会の委員、専門誌への執筆、講演も多数。米国CCE,Inc.認定GCGF-Japanキャリアカウンセラー。一般社団法人エチケット・サービス向上協会理事。著書に『パート・アルバイトの活かし方・育て方~「相思相愛」を実現する10ステップマネジメント~』『なぜあの会社には使える人材が集まるのか~失敗しない採用の法則~』(共にPHP研究所)などがある。
働きかた研究所
http://hatarakikata.co.jp