承認欲求が強い人が増えている? 付き合い方と組織活性化のコツを解説
「Z世代」と呼ばれる若い世代を中心に、承認欲求が強い人が増えています。その一方で、Z世代以前に生まれたミレニアル世代(Y世代)、X世代の上司や経営者は、
「なぜ承認欲求を求めるのかよく分からない」
「若者の承認欲求を満たす方法で悩んでいる」
という悩みを抱えがちです。
40代以上の人間でも、強い承認欲求を持っているケースがあり、組織を活性化するための施策が急務です。
承認欲求を満たすとどんなメリット・デメリットがあるのか。
承認欲求が強い人向けに取り入れるべき、社内制度などについて解説いたします。
※Z世代とは?採用や育成をスムーズに進めるポイントを解説!
承認欲求が強い人とは
承認欲求の満たし方を知る前に、まずは承認欲求とは何か。
自己顕示欲との違いを覚えておきましょう。
承認欲求は誰にでもある欲求
「Z世代は承認欲求が強い」
「昔はそんなことをいちいち言わなかったのに」
そんな風に思いがちですが、そもそも承認欲求とは、
「他人から認めてもらいたい」
「自分自身が価値ある人間だと認めたい」
という気持ちを指します。そのため、年代を問わず承認欲求は誰もが持っている気持ちです。
学生時代や社会人として働く中、周囲から認められたい、自分自身の価値を感じたい、そう思った経験があると思います。
幼い頃に、親や先生に自己アピールして褒めてもらったり、褒められたことを周りに自慢して賞賛を得ようとしたり、というのも承認欲求の一つです。
承認欲求には2つの種類がある
承認欲求には、他者承認欲求と自己承認欲求という2つの種類があります。
それぞれの違いをみてみましょう。
種類 | 概要 |
---|---|
他者承認欲求 | 他人から認められたい、という欲求のこと 他人からの評価や注目を求め、尊敬される人間でありたいと考えます。 |
自己承認欲求 | 自分の価値を自分自身で認めたい、という欲求のこと 自ら資格を取得したり、スキルを磨いたり、仕事で成果を出して、自分の価値を高めたいと考えます。 |
他者承認欲求
他者承認欲求は、文字通り他人から認められたい、という欲求です。
ビジネスの場面では、自分の仕事を認めてもらうために、目の前の業務へ熱心に取り組んだり、人と違う行動を取ったり、という様子がみられるでしょう。
他人からの評価や注目を求め、尊敬される人間でありたいと考えます。
自己承認欲求
自己承認欲求は、自分の価値を自分自身で認めたい、という欲求です。
他者承認よりも、欲求を満たすのが難しく、自ら資格を取得したり、スキルを磨いたり、仕事で成果を出したり、といった行動が求められます。
周囲から信頼される、仕事で頼りにされる、といった状況も、自分に価値を感じられるため自己承認につながります。
承認欲求と自己顕示欲の違いは?
承認欲求と自己顕示欲は、よく似た言葉のため混同されがちです。
大きな違いとして、自己顕示欲が強い人は、「他者から注目を浴びたい」「人前に立ってアピールしたい」という気持ちで自ら動きます。
芸能人や政治家など表舞台が好きな人は、自己顕示欲が強い傾向があります。
一方の承認欲求は、自分の価値を他人や自分に認めてもらいたい、という気持ちのため、自己顕示欲と違い受け身です。
承認欲求は強いものの、口に出せずその時を静かに待っている、という例もみられます。
承認欲求が強い人=活発に発言したり、目立とうとしたりする人ばかりではない、という点を覚えておきましょう。
若い世代の承認欲求が強いのはなぜ?
誰もがもつ承認欲求ですが、Z世代は特に価値を認めたい、認めて欲しいと感じる傾向にあります。生まれ育った環境や時代背景から、若い世代の考え方に触れてみましょう。
SNSと一緒に育ってきたZ世代
Z世代の多くが、SNSを通じて情報を発信しています。
そのため、自分が投稿した文章や動画にどのような反応があるのか、たくさんのいいね! がもらえるのか、といった不安や緊張をいつも抱えています。
他社からのリアクション=自分の価値だと考えてしまう傾向があり、承認欲求の高まりに歯止めがかかりません。
会社での発言に反応がない、自分の意見がスルーされてしまった、といった状況に陥ると、自分は無価値だと感じ、落ち込んでしまうケースがあります。
近年はSNSを活用する40代以上が増えていることから、年齢を重ねてから承認欲求が強くなる場合もあります。
個人に注目が集まる機会が多い
ミレニアル世代やX世代が働いていた環境は、個人の活動にそれほど注目が集まっていませんでした。
景気が良かった時代は、人気の業界にいれば安定した生活が送れます。
バブルがはじけたあとも、個人が活動できるかどうかより、企業が持つブランドに注目が集まっていました。
しかし現在は、少子化で働き手が少ないこと。
経済的に不安定な状態が続いていることから、若い世代の柔軟な考え方が求められています。
個人が持つ能力が必要とされる時代だからこそ、Z世代の人間は、自分にどのくらいの価値があるのか、常に気にしています。
時には他人と比較しながら、より高い承認欲求を求めているのが若い世代の特徴です。
マズローの欲求5段階説を知る
承認欲求だけでなく、人間にはさまざまな欲求があります。
マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズロー氏が欲求を種類別にピラミッド化したものです。
食べる、寝るといった生理的欲求はもっとも低い部分にあり、もっとも高いの欲求が自己実現欲求です。順に欲求を満たすことで、自己実現というゴールにつながると言われています。
現在の日本では生理的欲求や安全欲求(安心して暮らせる住まい)などは、満たされている人がほとんどです。
すると次に、家族を持ちたい、仲間が欲しい、といった社会的欲求が表れます。
社会的欲求を満たし、人とのつながりがもてるようになると、今度は周りから認められたい、自分自身に価値を感じたい、といった承認欲求が芽生えるでしょう。
承認欲求が満たされれば、自己実現につながり企業の価値を高められます。
生き生きと働いてもらうために、企業として良い人材を確保するために、マズローの欲求5段階をふまえて、社員の欲求が満たされているかどうか、目を向けてみましょう。
承認欲求が強い社員が会社にもたらすメリット・デメリット
承認欲求が強い社員がいると、会社にとってメリット・デメリットがあります。
良い点と悪い点を知り、上手な付き合い方を検討しましょう。
承認欲求が強い社員を雇用するメリット3つ
承認欲求が強い社員が職場にいると、3つの嬉しいメリットが待っています。
採用する前に、傾向をチェックしておきましょう。
メリット1:やる気がありフットワークが軽い
承認欲求が強い人は、認めてもらいたい、価値ある人間だと知ってもらいたい、という思いを常に抱えています。そのため仕事に対して真面目に向き合ってくれたり、すぐにアクションを起こしてくれたり、という点がメリットです。
他者よりもモチベーションが高く、評価のためなら努力を惜しみません。
このような人材がいれば、企業全体の雰囲気が良くなり、全体の志気を高めてくれるでしょう。
メリット2:結果につながりやすい
承認欲求が強い社員は、結果にこだわります。
自分の意見が会議で有意義にはたらくかどうか、より効率よく営業活動して売上げにつなげるにはどうすればよいのか、といった工夫を欠かしません。
他者承認欲求が強い人ほど、結果を求める傾向にあります。
目標達成までスピード感を持って進めたい場合は、承認欲求が強い社員の働きぶりに期待してみてください。
メリット3:自己肯定感が高まる
自己肯定感が高まると、仕事に対してより前向きな気持ちで向き合えます。
承認欲求が強い社員であれば、業務を通じて自己承認欲求を満たし、さらなる大きな目標にチャレンジできるでしょう。
自己承認欲求を満たすために、目に見える形でサポートしてあげると、社員の成長につながります。
企業としてどのようなアシストができるのか、取り入れるべき社内制度についてはこの記事の最後に紹介いたします。
承認欲求が強い社員を雇用するデメリット3つ
承認欲求がよい形で満たされれば、企業成長の大きなきっかけとなります。
一方で、デメリットが起きる可能性もあります。
できるだけデメリットを排除するために、するべき対策も合わせて覚えておきましょう。
デメリット1:人間関係がこじれる場合がある
承認欲求が強い社員は、他人よりも認められたい、という思いを持っています。
周りに同じような人間が複数いる場合、ライバルとなってしまう恐れがあるでしょう。
承認欲求が強い場合、自己アピールが過ぎる様子を周囲がよく思わない、というケースも考えられます。
風通しの良い職場にするために、
・社員全体の働きを褒めたり認めたりする
・承認欲求が強い社員考え方や育成について、社内で情報を共有しておく
といった配慮が必要です。
デメリット2:失敗した場合に落ち込みやすい
承認欲求が強い社員は、日ごろから結果を出そうと努力します。
その一方で、認められない結果や失敗をしてしまった場合、自信を失い落ち込んでしまう場合があるでしょう。
前向きな気持ちを早く取り戻してもらうために、周囲のフォローが欠かせません。
頑張っていた部分を褒める、次につながるアドバイスをする、といった方法で、落ち込んだ気持ちを引き上げましょう。
デメリット3:仕事が承認欲求を満たす手段になってしまう
承認欲求が強い社員は、仕事を通じて承認欲求を満たしたい、と考えます。
一方で、自分の行動や頑張りで売上げがアップし認められた場合、今度も売上げだけを追い求めて、仕事に向き合ってしまうでしょう。
ですが、売上げだけを重視してしまうと、アフターフォローの配慮に欠けたり、売上げのためなら手段を選ばなくなったり、といった恐れがあります。
このような状況では、顧客満足度が下がり、商品やサービスの価値が損なわれてしまいます。
企業の目的は、商品やサービスを必要な人に届けること、その人に喜んでもらうことだと指導して、そのゴールへ進めたときに認めることで、Win-Winにつながります。
承認欲求はどうやって満たす? 3つの方法を解説!
承認欲求は3つの方法で満たせます。
承認欲求が強い社員とどう付き合うべきなのか、3つの方法をみてみましょう。
存在承認
承認欲求を満たすなら、まずは存在を承認しましょう。
会社の中の一員、というだけでは承認欲求は満たされません。
業務にあたりチーム、新規プロジェクトのメンバー、イベント運営のサポーターなど、社員一人一人の居場所を意識すると、
「他者から必要とされている」という気持ちが高まり、自分に自信が持てるようになります。
存在承認の良い点は、結果に左右されない部分です。
たとえ施策が失敗してしまったとしても、チームやメンバーに選ばれた、頼ってもらえた、という満足感で承認欲求が満たされます
行動承認
存在承認から一歩踏み込むなら、行動を承認してみましょう。
行動承認も、結果を問わず社員の承認欲求を満たせる方法です。
具体的には、該当社員へ何らかの仕事やミッション、社会貢献活動などのアクションを求め、その行動を認める、褒める方法です。
この時大切なのか、一人一人を具体的に認める、という点です。
全体朝礼などで
「○○さんが、率先して動いてくれたから助かった」
「このイベントを開催できたのは、○○さんが尽力してくれたおかげです」
「○○さんの行動が、以前よりも積極的になっていて会社へ良い影響を与えている」
といった行動によって変わった事実を、言葉に出して伝えましょう。
承認欲求が満たされれば、前向きな気持ちで、次々に新しいチャレンジをしてくれるはずです。
結果承認
結果承認は、社員の実績を認める方法です。
実際に成果が出ている部分を褒めるため、取り入れやすい一方で、できなかった場合のフォローが求められます。
結果承認だけを重視してしまうと、「結果を出さなければ認められない、価値がない」といった焦りが生まれます。
大きな結果を出したタイミングではなく、小さな目標を立てて都度認めていく、といった方法を選ぶと、認められる機会が増え、承認欲求が満たされやすくなります。
結果を出せるように、上司が適したアドバイスをするのも良い方法です。
できていない部分を叱るのでなくどうしたらできるのか、一緒に考え寄り添うと、存在承認にもつながります。
結果に向かってまっすぐ進んでいけるように、良い人間関係を意識して、コミュニケーションを取りながら、一つ一つ進めていきましょう。
承認欲求が満たされる社内制度の導入
社員承認欲求を満たすなら、新しい社内制度を取り入れてみましょう。
中小企業におすすめの3つの社内制度について、解説いたします。
目標管理制度
目標管理制度は、期間ごとの実績で評価が決まる社内制度です。
頑張れば頑張った分だけ、目にみえる形で評価されるため、モチベーションをアップできます。
無理な目標設定にならないように、社員のスキルや希望、企業の考え方を考慮の上、成長につなげましょう。
人材育成制度
目標管理制度と合わせて取り入れたいのが、人材育成制度です。
将来に向けて、必要な資格取得や研修が受けられる体制が整えられていれば、自己承認欲求を高められます。
人材育成制度の対象になることで、存在承認にもつながります。
社員の良い部分を伸ばせる人材育成制度で、承認欲求を満たしてください。
ピアボーナス制度
ピアボーナス制度は、社員同士で報酬を送り合う制度です。
社内ツールやスマホアプリなどから、ちょっとしたサポートや心遣いへ感謝の気持ちとして、ピアボーナスを届けられます。
貯まったピアボーナスは、企業が用意した商品や特典と交換できます。
社員数が多かったり、同じような仕事をしていたり、という職場の場合、一人一人へ目を向けるのが難しくなります。このような場合もピアボーナス制度を導入すれば、社員通しで認め合えるため、承認欲求を高められます。
ピアボーナスを気軽に送れる雰囲気作りも大切です。新たなコミュニケーションにつながったり、離職率を下げたり、といった嬉しいメリットにつながる場合もあります。
【監修者より】
承認欲求とはZ世代特有のものではなく、人が行動するにあたり自然に求めるものになります。
企業内では、昔から形を変えて様々な方法で働く人の承認欲求を満たす取り組みをしてきました。
人は誰かから認められたい生き物である以上、従業員の承認欲求を満たす取り組みをしながら組織活性化につなげていく時代です。
職場内において、自然に他者を承認しあう文化があるところでは、離職やハラスメントが起きにくい傾向にもあります。
今後、今までにも増して相手を尊重し認め合う雰囲気のある会社は企業業績に大きな影響を与えていくでしょう。
まとめ
Z世代に続くアルファ世代も、引き続きSNSを活用している世代であることから、承認欲求の強い世代が続くと予測されます。
企業運営や採用の際は、どうしたら社員の承認欲求を満たせるのかを考え、適した施策で迎え入れましょう。
承認欲求を満たせる会社になれば、モチベーションの高い人材の力を存分に生かせます。
承認欲求が強い社員が頑張りたくなる制度や接し方を取り入れて、質の高い企業活動を目指しましょう。
「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。
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