試用期間とは|設定期間(半年・3ヶ月等)や解雇要件など幅広く解説

試用期間とは|設定期間(半年・3ヶ月等)や解雇要件など幅広く解説
目次

就業規則・雇用契約書等で、新入社員の試用期間を定めている企業も多いでしょう。

しかし、試用期間やそれにまつわるルールを見直そうと考えた際、一から就業規則を作成した経験がないため、具体的な設定方法が分からず悩んでしまう人事担当者の方も多いはずです。

この記事では、試用期間の設定・見直しを検討している人事担当者の方向けに、試用期間の意味合いや設定するメリット・デメリット、設定方法、ポイント、試用期間終了後の対応(解雇・延長・本採用)について解説します。


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試用期間とは

試用期間とは、本採用を決定するにあたり、新入社員が「自社の戦力になれるかどうか」企業が判断するための期間のことをいいます。

具体的には、配属先で問題なく業務をこなせるかどうか、職場の雰囲気に馴染めるかどうかなど、実際に働いてもらわないと分からないポイントについて吟味するための期間が該当します。

試用期間の上限・下限については、労働基準法の中で詳しく定められているわけではありませんが、1ヶ月~半年の間で定められるケースが一般的です。

無事、試用期間が終了した労働者について、企業・労働者の双方が問題ないと判断すれば、そこで本採用となります。


試用期間の意味合いについて


試用期間には、いわゆる「選考中」の意味合いは含まれておらず、雇用契約そのものは結ばれている状況です。

締結した雇用契約につき、継続しても問題ないかどうかを判断するための期間が、試用期間と言えます。

企業側は、労働者が試用期間の間に問題なく働けるかどうかチェックするため、一定の期間を設けています。

これに対して労働者側は、新しい職場で「自分が将来にわたり働き続けられるかどうか」判断するため、試用期間を活用します。

このように、試用期間は企業・労働者それぞれにとって利用価値があるもので、労働者側が将来に不安を感じて退職するケースも珍しくありません。

ただ、詳しくは後述しますが、試用期間なら企業が自由に労働者を解雇できるわけではないため、採用そのものは慎重に行う必要があるでしょう。


試用期間と似ている言葉


試用期間という言葉を使う上で注意したいのが、似たような言い回しについてです。

下表にまとめたように、厳密には意味合いが異なります。

試用期間と似ている言葉概要
テスト期間(見習い期間)シチュエーション次第で聞き手の解釈が異なるため、試用期間と同義で使用しない。
研修期間現場で独り立ちするまでの期間。場合によっては、試用期間の後に研修期間があるケースもある。
インターン高校生・大学生などが実際に企業でおこなう職場体験のこと。継続して勤務することは想定していない。
仮採用本採用の対義語的な意味合い。雇用契約を結んでいないケースもある。

以下、それぞれの表現が持つ意味合いについて、簡単にご紹介します。


テスト期間(見習い期間)

テスト期間・見習い期間という表現は、概ね試用期間と同義と理解できますが、業種・業界によって意味合いが変わってくることがあります。

雇用契約を結んでいなかったとしても、それなりに実務経験があったとしても、諸先輩と比較すればまだまだ「見習い」ということで、労働者・企業が見習い期間中であると称する状況が想定されます。

また、学生実習の場面で、社員が顧客に対して実習生のことを「見習いのため失礼いたします」などと断るケースもあるでしょう。

このように、シチュエーション次第で聞き手の解釈が異なるため、テスト期間・見習い期間という表現は、一概に試用期間と同じ意味合いで使用すべきではありません。


研修期間

研修期間は、試用期間と紛らわしい表現ですが、試用期間に比べると短い傾向にあります。

多くの企業では、現場で独り立ちするまでの期間を研修期間と呼ぶため、一般的には「試用期間に比べて短い期間」が研修期間として労働者にあてがわれます。

一例としては、飲食店の接客業務に従事するアルバイト・パートスタッフに対して、先輩スタッフが現場を離れて指導を行う期間などが該当します。

逆に考えれば、すでに試用期間を終えた社員が、別の部署へ異動後に研修期間を割り当てられることも考えられるため、ある意味では試用期間以上に社内で用いられる機会が多い表現かもしれません。


インターン

インターンとは、高校生・大学生などが実際に企業で行う職場体験のことで、社会経験を積む・業界研究を行うなどの目的から行われます。

また、社会人であっても、未経験の業界を知るためにインターンを行うこともあります。

基本的に、インターンに関しては、労働者に継続して勤務してもらうことを想定していません。

よって、仮に雇用契約を結ぶとしても、継続雇用を前提としないため、試用期間と同義ではありません。


仮採用

仮採用は、本採用の対義語的な意味合いを持つため、企業によっては試用期間と同じ意味で用いているケースもあります。

しかし、採用そのものを「仮」として決定するという意味合いでも用いられるため、企業によってニュアンスが異なる点に注意が必要です。

判断の基準としては、雇用契約を結んでいるかどうかが焦点となります。

就活の結果を通知した状態、つまり内定・内々定のタイミングを仮採用と呼ぶのであれば、それは試用期間に該当しません。


試用期間を設定・適用可能な雇用形態について

試用期間を設定・適用できる雇用形態は、特に法的な決まりは設けられていません。

一般的に長期雇用を前提に契約期間の定めのない正社員には、試用期間を設けます。アルバイト・パート・契約社員でも、契約期間の定めのない場合は、試用期間を設けることができ、試用期間後に雇用形態が変更されることもありません。

ただし、有期契約(契約期間が3か月とか1年など)のアルバイト・パート・契約社員等については、試用期間を設定することはお薦めできません。

労働契約法17条では、以下のように規定しています。

【 労働契約法17条(契約期間中の解雇等)】 
1 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


第1項では「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」としていますので、例えば、1年の雇用契約期間を設定したうえで、最初の3カ月間の試用期間を設定したとしても、「思っていたような能力が無い、ミスが多い、協調性が無い」といった理由で本採用拒否(中途解約すなわち解雇)してしまうと、トラブルに発展します。

有期雇用者に対し試用期間を設定することが直ちに法違反になる訳ではありません。

しかし、やむを得ない事由がない限り中途解約することは困難ですので、初回の契約については、試用期間的に2ヵ月~3ヵ月といった短めの期間を設定し、更新の有無について判断されることをお勧めします。

どうしても試用期間中は契約社員として雇用したい場合は、当該労働者の最初の雇用契約が終了してから、改めて正社員の雇用契約を結ぶというステップを踏む必要がある点に注意しましょう。

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試用期間を設けるメリット・デメリット

企業にとっての試用期間を設けるメリットは、主にマッチングや適性の把握に関することです。

書類選考・面接を通して、採用担当者や面接官は欲しい人材を見極める努力をしていますが、実際に働いてもらわなければ、会社に有用な人材かどうかを判断するのは難しい部分があります。

比較的大きな解約権を保持できる試用期間を設けておけば、当該労働者が業務に従事している様子や成果物などをチェックした上で、企業は本採用するかどうかを判断することができます。

逆に、試用期間を設けるデメリットも企業には存在しており、その点についても無視はできません。

新入社員の側では、試用期間を「会社に馴染めるかどうか判断する期間」として考えていることが多いため、試用期間満了後に企業側が本採用を希望しても、辞退されてしまう可能性があるのです。

また、求職者が複数の内定をもらった際、試用期間を設けている企業を敬遠し、設けていない企業(すぐに本採用となる企業)を選ぶことも考えられます。

試用期間を設けることが、採用活動における競争力低下につながってしまうリスクがあるため、企業としては職種や事情に応じて柔軟な対応を検討したいところです。


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試用期間の設定方法と押さえておきたいポイント

企業が労働者と雇用契約書を取り交わすにあたり、試用期間について記載するには、就業規則の内容がベースになります。

よって、基本的には就業規則の内容に従って、以下のポイントを押さえつつ、期間・給与等を設定する必要があります。


期間は「労働者の立場」を考えて設定する

試用期間の長さについては、就業規則で定めている長さが上限となります。

仮に、就業規則において試用期間を3ヶ月と定めている場合は、それを超える試用期間の設定は行えず、原則として延長も認められません。

また試用期間を設定すること自体が、労働者に不安を与えることにつながるものと理解して、いたずらに長い試用期間を設けることは避けましょう。一つの目安として3ヶ月~半年を想定しておくことをおすすめします。

また、雇用形態によって試用期間の長さを変えることは問題ありませんから、就業規則の中で定められている範囲で試用期間を調整することも、採用活動を効率的に進める上では重要です。


給与を「本採用時より低くする」のは控えたい

試用期間中の給与については、本採用時よりも低い給与を設定しても、法的には問題ありません。

都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額が認められており、減額できる上限は最大で20%となっています。

しかし、他の社員の給与の8割で就労させるという条件は、採用難が続く日本の就転職市場において、人材を確保する上では厳しいものです。

求職者側の心理として、同条件で試用期間中の給与が下がらない職場があれば、そちらを選ぶのが自然でしょう。

よって、試用期間においては、原則として本採用時よりも低い給与を設定することは避けたいところです。

ちなみに、試用期間中の時間外労働・深夜勤務については、雇用契約を結んでいる以上は割増手当を支払う必要があります。

ただし、賞与の支払い義務はないため、賞与支給はない旨を就業規則等に記載しておくと安心です。


雇用形態については注意が必要

試用期間を定めての雇用を検討している場合、試用期間中は有期雇用契約を結びたいと考えている企業も少なくありません。

この方法は、試用期間満了時の本採用取り消しに比べて、有期契約の満了終了の方が労務トラブルになる確率が低いため得策であるとも言えます。

この方法の注意点は、正社員での採用を希望する者に対し、有期契約でスタートすることに合意いただく必要があることです。採用難の現在、有期契約でのスタートを忌避して入社辞退を招くリスクがあります。

また、雇用形態が変わる際(本採用が決まった際)に新たな雇用契約を結ぶ必要もあり、手続きが増えます。

また、将来的に有期契約社員として継続雇用を検討している人材に関しては、無期転換ルールにも注意しましょう。

無期転換ルールとは、同一の企業との間で「有期雇用契約が5年を超えて更新された場合」に、契約社員等からの申し込みにより、無期労働契約に転換されるルールのことです。

試用期間は、雇用契約期間中に設けられているものなので、試用期間も有期雇用契約の上限計算に含むことを忘れないようにしましょう。


待遇面の設定では法律違反を防ぐこと

先ほど、試用期間中に「本採用時よりも賃金が低いケース」を法律で禁じていない旨をご紹介しました。

しかし、社会保険・年金などの手続きに関しては、雇用契約を結んだのであれば、試用期間があろうとなかろうと所定の手続きが必要です。

雇用保険・健康保険・厚生年金は、それぞれの労働条件に応じて加入義務が発生しますから、法律違反という事態を招かないためにも、加入手続きは適切に行いましょう。

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試用期間が終了したあとの解雇・延長・本採用

試用期間が終了した際の次のステップは、解雇・延長・本採用の3つに分かれます。

多くの場合、企業は試用期間中の解雇事由を就業規則に定めているため、条件に該当すれば解雇は認められますが、極端に労働者に不利な条件での解雇は認められないものと考えてよいでしょう。

以下、それぞれのケースについて解説します。


解雇のキーポイントは「客観的合理性」

労働契約法第16条では、解雇について以下の通り定めています。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

※出典元:労働契約法 | e-Gov法令検索

また、試用期間中の労働者につき解雇を決断した場合、試用期間から14日(暦日で)を超えて使用されている労働者に対して、使用者は少なくとも30日前にその予告(解雇予告)をしなければなりません(労働基準法第20条第1項/第21条4号)。

試用期間といえども、いざ解雇するとなれば、客観的に見て合理的な理由があるかどうか、すなわち客観的合理性が求められます。

具体的な理由としては、次の4つが考えられます。

○成績不良または能力不足 
○欠勤・遅刻など勤怠に関する問題
○協調性のなさ 
○経歴を詐称している

客観的合理性について理解を深めるため、それぞれの理由について掘り下げてみましょう。

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成績不良または能力不足

試用期間中の社員の能力は、本採用を検討する上で重要なポイントです。

ただ、単純に期待しているレベルの能力に満たないからといって、すぐさま解雇というわけにはいきません。

数ヶ月の試用期間において、長期のキャリアを持つ他の社員と同様に仕事をこなせる人材は、決して多くないでしょう。

また、試用期間中の社員が十分に成長していないことの理由は、企業側に存在している可能性もあるため、教育や指導を強化するのは当然のことです。

本採用を認めない理由・基準が不明確であったり、戦力となるために必要な教育・指導が不十分だったりする場合、訴訟になると解雇無効となるリスクがあります。

他の社員と遜色ないレベルでの指導・教育がなされていることを証明できなければ、試用期間中の解雇は不当解雇と判断される可能性が高いため、企業として解雇を決断する場合は注意が必要です。


欠勤・遅刻など勤怠に関する問題

能力に関する分野とは違い、規律に関する分野では、試用期間中の解雇理由として認められる可能性は十分あります。

いわゆる「勤務態度が悪い」社員に関するもので、欠勤・遅刻のような勤怠に関する問題は、正当な理由として認められやすいでしょう。

とはいえ勤務態度に問題があると考えられる人材であっても、必要な注意・指導を行った上で改善されない状況を見極めて、それから解雇に踏み切るのが妥当です。


協調性のなさ

会社の中でチームの一員として働く以上は、上司の命令に従ったり、周囲と強調しながら仕事を進めたりする必要があります。

いくら自身の能力が高くても、チームに溶け込む努力ができない人は、結果的に協調性がない(勤務態度が悪い)と判断される可能性が高いでしょう。

企業側としては、やはり解雇の原因としてとらえたいところですが、ここでも注意・指導をしたという実績が重要になります。

強く反発したり、指導を無視したりして、強い反抗のスタンスを見せた人材は、解雇事由として正当性が認められるでしょう。


経歴を詐称している

経歴詐称が試用期間中に発覚して、その内容が採用にあたって重大なものだった場合、解雇が認められる可能性があります。

具体的な例としては、学歴や職歴を詐称したり、業務遂行に必要な資格・免許を取得していなかったりするケースが該当します。

健康状態を偽っていて、今後の業務遂行が困難であると判断された場合も、解雇は妥当であると判断されやすいでしょう。

ただし、労働者と企業の間の認識が異なるレベル、例えばスキルや経歴について面接時に聞いていた内容と差があるような場合は、企業側のヒアリング不足と判断されるおそれもあります。


試用期間の延長は「労働者本人の合意」が必要


試用期間中の労働者につき、働いてもらう中で本採用に至るかどうか判断が難しい場合は、試用期間を延長することができます。

しかし、企業側が一方的に延長を決めることは認められておらず、以下のような条件がそろっていれば、企業は労働者の試用期間を延長することができます。

○試用期間の延長につき、労働者本人と合意が成立していること
○就業規則の中で「試用期間延長に関する規定」を明記していること 
○試用期間を延長する合理的な理由・事情があること

以下、それぞれの条件について解説します。


試用期間の延長につき、労働者本人と合意が成立していること

試用期間を延長する場合、原則として「労働者を採用した段階で、試用期間の延長の可能性がある旨を伝えていて、その点で労働者本人から合意を得ている」ことが条件となります。

もし、入社前に延長に関する説明を怠っていた場合は、基本的に延長が認められないため注意が必要です。

企業の側が延長を検討していても、従業員本人に事前にその旨を伝えていない場合は、そのまま本採用という扱いになります。


就業規則の中で「試用期間延長に関する規定」を明記していること

試用期間の延長については、就業規則の中で規定を明記していなければなりません。

具体的には、延長の可能性・延長期間の両方について記載が必要です。

試用期間の延長につき、労働者本人と口頭で了承を得ていたとしても、就業規則で規定されていなければ無効になるおそれがあります。


試用期間を延長する合理的な理由・事情があること

試用期間中の労働者につき、実際に試用期間を延長しようと考えている場合、以下のような「合理的な理由・事情」が求められます。

・病気、ケガのため勤務日数が少なかった 

・無断欠勤があった ・採用時に聞いていた経歴につき詐称があった

・周囲と連携をとって仕事ができず、現場の指導や注意によって状況が改善されていない など 

例えば、経歴詐称の程度がひどい場合、一発で本採用拒否に至るような問題となり得ます。

しかし、その後の働きぶりが良いので試用期間を延長してみようと考えるのは、労働者の利益になるので延長が認められる可能性があります。

あるいは、業務に不適格とは言えないものの、業務を任せるのに適格かどうか判断できかねる相当な理由がある場合は、選考の期間を延長する意味で試用期間延長が認められることもあります。

ただし、試用期間の延長後、延長前の非行を理由に解雇することは無効という判決も出ており、いたずらに試用期間を延長すべきではない点に注意しましょう。


本採用後は「労務管理」に注意


試用期間から本採用に至った従業員に関しては、就業規則と法令それぞれの取り決めに従って、労務管理を進める必要があります。

基本的に、試用期間前・終了後で労務管理に大きな違いはありませんが、福利厚生につき試用期間中の社員を除外する規定を設けている場合は、制度適用のタイミングに注意したいところです。

また、有給休暇に関しては、試用期間中の勤務日数も含んで雇入れ日から計算するため、間違えないよう注意しましょう。


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試用期間中は計画を立てて育成しよう

企業が試用期間を活用するためには、現場に負担をかけず新入社員を教育できるよう、計画を組み立てることが重要です。

本採用するかどうか判断するための情報や、試用期間中にチェックすべき項目をまとめることで、能力・適性に応じた配置を決めるのに役立ちます。


本採用を決定するにあたっての確認事項

人材が戦力になるかどうか判断するためには、確認事項を具体的に決めておくことが大切です。
その際、優先順位を決めて確認事項を設けておくと、解雇または試用期間の延長を判断する上で役立ちます。

大まかには、以下の3つのランクに分けて、確認事項を設けることをおすすめします。

○解雇に関する事項 
○試用期間延長に関する事項
○本採用にあたり望ましいと判断される事項


解雇に関する事項

最優先で確認しておきたいのは、該当すれば解雇もあり得る、という事項についてです。

ここまでお伝えしてきた通り、勤怠が不安定なケース、詐称が疑われるケース、健康状態に問題があるケース、職場の規律に馴染めないケースなどをチェックしていきます。


試用期間延長に関する事項


解雇に関する事項が発覚してはいないものの、周囲と比較して成長が遅いと感じられる場合は、それが試用期間延長に該当する問題かどうか判断する必要があります。

具体的には、仕事に臨むスタンスを確認するため、以下の点についてチェックするのがよいでしょう。

・雇用契約締結時に予見できなかった事情が発生し、適性を正しく判断できなかったおそれはないか 

・労働者が問題を起こしたことが明らかになったが、その後反省が見られるか

・現状は不適格であるが、現在任せている業務以外の業務を任せることで、状況が改善される可能性はあるか

これらの条件に該当しているものの、仕事には真面目に取り組んでいるようなら、チャンスを与えるという選択肢も選べます。


自社で勤務する上で望ましいと判断される事項

試用期間の段階で、本採用につき問題ないと判断された人材であっても、今後のマッチングを想定した人事は重要です。

新入社員が部署・職場に定着できそうかどうか判断するため、一歩踏み込んで以下の点を確認しておきましょう。

・現在働いているスタッフとの相性は悪くないか

・社風に馴染めているかどうか

・積極的に提案を行っているか 

スキル・能力面では申し分ない人材であっても、社内で仕事をする以上、他のスタッフとのコミュニケーションが円滑に進められなければ、やがて自社から離れてしまう可能性があります。

また、周囲と見比べて“浮いている”と感じられる人材も、長期にわたる活躍は期待できないかもしれません。

与えられた仕事は淡々とこなすものの、会議などの場で沈黙を保つ人材は、将来性に期待が持てないはずです。

これらの問題点が見つかった際に、自社として適切な形で指導・注意を行いつつ、必要に応じて配置換えができるよう準備しておきましょう。


育成計画を立てる上でのポイント


試用期間中は、自社にとって望ましい人材かどうかを確認しつつ、将来の活躍が見込めるよう教育することが大切です。

そのためには、本採用を決定するにあたっての確認事項がチェックできるよう、育成計画を立てるとスムーズです。具体的には、次の3点を意識して、育成計画を立てましょう。

○試用期間中の人材と触れ合う時間を設ける

○できるだけ多くのスタッフと接触できるよう配慮する

○職場・環境の全容について分かりやすく説明する

以下、詳細について解説します。


試用期間中の人材と触れ合う時間を設ける

試用期間中の人材が、自分の能力を発揮しやすいようにすると、適正な形で能力・適性をチェックすることができます。

そのため、教育担当者の負担が大きくならない範囲で、可能な限りコミュニケーションの機会を設けたいところです。

例えば、入社してから1ヶ月間は各週の金曜日に面談を行うようにするなど、きめ細やかな対応が望ましいでしょう。

こまめなコミュニケーションを意識すると、フィードバックもスムーズに行えますから、育成計画の中で必ず時間を確保するようにしましょう。


できるだけ多くのスタッフと接触できるよう配慮する

部署や現場の人と接する機会は多くても、直接自分の業務に関係しない部署のスタッフと話す機会が少ないと、新入社員が行き詰まりを感じた際に苦労するはずです。

他の部署のスタッフと意見交換ができると、そこから新たな展開が見えてくることもありますから、教育担当者はできるだけ社内の多くのスタッフと接触できる機会を設けましょう。

可能であれば、他の部署の仕事を見学・体験したり、別部門の会議に参加したりして、どのような問題意識が社内で共有されているのかを知ってもらいましょう。


職場・環境の全容について分かりやすく説明する

試用期間を利用して、職場や社内環境につき、その全容を把握してもらえるよう説明することも重要です。

例えば、企業相関図を確認しながら職場を訪問するだけでも、新入社員の理解度が増します。

全容をある程度把握しておけば、本採用後の電話応対・部署訪問にも役立ちますから、成長度合いを見ながら時間を作っていきましょう。

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まとめ

試用期間は、企業と新入社員がお互いの理解を深めつつ、必要であれば雇用契約を見直す上で重要なものです。

しかし、企業の都合だけで試用期間を設定・運用すると、トラブルに発展するため注意が必要です。

また、現代の採用事情を鑑みると、試用期間を設けることで応募者が集まらないリスクも無視できません。

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ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。