試用期間中でも従業員は解雇できる?|不当解雇とならないケースや注意点も解説!

試用期間中でも従業員は解雇できる?|不当解雇とならないケースや注意点も解説!
目次

自社との適性や能力をチェックするための施策として、試用期間を設けた従業員採用があります。しかし、仮に能力不足や問題があると判断した場合、試用期間中でも従業員を解雇できるのでしょうか。

本記事では試用期間中の従業員の解雇が認められるケースをご紹介します。また、解雇が無効とされる事例や注意点も説明しますので、試用期間を設けて採用活動を行っている方は、ぜひ確認してみてください。

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試用期間とは|設定期間(半年・3ヶ月等)や解雇要件など幅広く解説


試用期間の概要と目的

試用期間は、会社で労働者を本採用するか判断するための期間です。多くは1~6カ月程度の期間を設けて労働者に働いてもらい、人柄や能力などを確認して業務適性などがあるかをチェックします。短い面接や選考期間では、応募者の適性を把握できないためこうした制度を設けます。

なお、試用期間を導入するには、労働契約書もしくは就業規則へ当該内容について記載しておく必要があります。必ず労働者に対して、試用期間中の就業条件を明示しましょう。


試用期間中の雇用条件は?

試用期間中には、本採用時の雇用条件と比べて給与や待遇に差をつける場合があります。給与は正規の場合よりも低い金額にして、試用期間を設けるケースもあります。その場合、最低賃金を下回る給与の設定は原則禁止となります。

ただし、都道府県労働局長から『最低賃金の減額特例』の許可を受ければ、試用期間中の給与に関して最低賃金を下回る金額に設定することも可能です。減額率は最大で最低賃金から20%減額となります。

また、試用期間中であっても残業や休日出勤等が発生した場合には、割増賃金の支払いが必要となります。「見習いだから」「まだ一人前ではないから」などの理由で、残業代や休日労働分の給与を支払わない行為は認められませんので注意しましょう。


試用期間における労働契約について

試用期間中においても労働契約は締結されます。この時、企業は「解約権留保付労働契約」を保有している状態となっています。そのため、もし労働者の勤務状況や勤務態度が非常に悪く、社会通念上妥当な理由があり、社員としての見込みがないと示せれば解雇も可能です。

しかしながら、解雇の際は注意しないと解雇権濫用と見なされるケースもあるため、慎重に判断は行いましょう。「当社には合わない」「単純なミスをする」「能力不足である」といった漠然とした理由のみでは認められません。

解雇権が認可されるには、事業主として適切な指導や措置を行っている必要があります。具体的には、労働者の問題解決のための指導や注意喚起などを行い、改善に努め認められなければいけません。


不当解雇とならない試用期間中の解雇とは?

企業が試用期間で働いている従業員などを解雇する場合には、不当解雇とされないためにも十分に注意しなければいけません。解雇を検討する場合は、以下の不当解雇とならない事例を参考にしましょう。

事例概要/ポイント
大きなケガ・病気で復職後も就業が困難・就業規則の作成時に、健康上の理由での解雇に関する内容を盛り込む
理由のない遅刻や欠勤を繰り返す(勤怠不良)・改善のための指導が必要
・他従業員と処分の重さが異なる場合、不当解雇と判断される可能性がある
履歴書や職務経歴書の重大な経歴詐称・学歴詐称、転職回数や保有資格の詐称など
・業務遂行に不可欠な資格を持っていない場合は、認められやすい
勤務態度の悪さや協調性の欠如・就業時間中の居眠りや、業務の手抜き、上司の指示に従わない、同僚とのトラブル
・会社側から指導や措置を繰り返し行っても、改善がまったく見られない場合は解雇が認められる
能力不足による著しい成績不良・十分な研修期間があったのにもかかわらず、業務に必要な課題や資格試験をクリアできなかった場合
・明確な基準に達していないことを示す必要がある


事例① 大きなケガ・病気で復職後も就業が困難


まずは大きなケガや病気で、欠勤後から業務に復帰しても就業が難しい場合です。なお、当該ケースでは、就業規則に解雇できる旨の記載をしておく必要があります。就業規則の作成時に、健康上の理由での解雇に関する内容を入れておきましょう。

尚、病気が原因の場合の解雇については、業務を要因とする病気か、それとも業務以外の要因での病気(私傷病)かによってルールが異なります。具体的には下記のとおりです。

<業務が要因の病気>
治療のための休業期間と、治療のための休業期間の終了後30日の間の解雇は違法となります。「解雇制限」と呼ばれる規定であり、労働基準法第19条に定められています。

<私傷病の病気>

就業規則に試用期間中であっても休職を認める規定があれば、治療のための休職を認める必要があります。試用期間中は休職を認めない場合には、休職を認める必要はありません。私傷病による休業(欠勤)により、雇用契約締結時には知ることができなかった健康状態に対する不安が顕在化していること、試用期間中に消化すべきプログラム等を消化できず、本採用を決断するだけの資料も十分に収集できていない等を理由に、本採用拒否(解雇)が有効となる可能性があります。


事例② 理由のない遅刻や欠勤を繰り返す(勤怠不良)

正当な理由のない遅刻や欠勤を繰り返し、会社側が注意や指導を行っても改善されない場合には、解雇が認められる可能性があります。そのため、遅刻や欠勤が多い従業員には、まず改善のための指導や措置を取りましょう。

ちなみに、勤怠不良での解雇で不当解雇となる事例については、遅刻や欠勤が軽微であるケースや、会社からの改善措置や指導がないケースなどがあります。

また、他の遅刻・欠勤の多い従業員と処分の重さが違う場合なども、不当解雇と判断される傾向が高くなっています。

従業員の処分を行う際には、不当に重い処分とならないように注意しましょう。


事例③ 履歴書や職務経歴書の重大な経歴詐称

選考の際に企業に提出した履歴書や職務経歴書に、重大な経歴詐称があった場合も正当な理由での解雇となります。

尚、経歴詐称には実際の学歴とは異なる「学歴詐称」、転職回数や保有資格、職務内容などを詐称する「職歴詐称」があります。

特に重大な経歴詐称として認められやすいのは、業務遂行に不可欠な資格を持っていないのに、保有していると申告した場合です。また、企業秩序を損なう可能性があるかといった点でも、解雇が認められるか判断されるポイントとなります。

ちなみに学歴詐称による解雇では、短大卒であるにも関わらず、中卒及び高卒のみの求人に応募して採用されたケースなどあります。


事例④ 勤務態度の悪さや協調性の欠如

勤務態度の悪さや協調性がない場合も解雇が認められる場合があります。ただし、こちらも軽微な問題であれば解雇とは認められませんので注意しましょう。

前述したように、会社側から指導や措置を繰り返し行っても、改善がまったく見られない場合に解雇できます。

勤務態度の悪さとしては、繰り返しの無断欠勤や遅刻、就業時間中の居眠りや業務の手抜きなどがあります。また、協調性の欠如では、上司の指示に従わない、他の同僚や社員と揉めてトラブルを引き起こすなどの事例が多くなっています。

人間関係でのトラブルは、問題となる行動・言動があったという証拠や、その影響により会社の業務に支障が出ているかなどの点も考慮されます。問題が発生した場合は、客観的な状況確認や指導・改善は必ず行うようにしましょう。


事例⑤ 能力不足による著しい成績不良

業務を遂行する上で必要な能力が、著しく不足している場合は解雇とできる可能性があります。

試用期間中で言えば、十分な研修期間や学習時間を与えたにも関わらず、業務に必要な課題や資格試験などをクリアできなかった場合などが該当します。

尚、こちらも解雇と認められるためには、客観的に合理的な理由が必要です。他の社員と比較して「営業成績が悪いから」「作業スピード遅く効率が悪いから」といった抽象的な理由は、認められないため注意しましょう。

能力不足を理由にする場合は、明確な基準に達していない旨を示す必要があります。「3カ月の試用期間中に最低でも1件の新規開拓をすること」「1ヵ月以内に〇〇の資格に合格すること」などの基準を設けておきましょう。


試用期間で解雇する場合に注意すべき点

従業員の解雇では、不当解雇とされないように十分に注意する必要があります。そこで、試用期間中の従業員の解雇で気をつけなければいけない点について、より詳しく解説していきます。

主に留意しておきたいケースとしては、以下のようなものがあります。


未経験者や新卒社員を能力不足で解雇する

まずは、未経験者や新卒社員の能力不足で解雇するケースです。入社1年目である新卒社員は、基本的なスキルや経験・能力等はなくて当然です。

したがって、十分な指導や研修などを行わずに「成績や実績が出せていないから」「能力が低いから」などの理由で解雇するのは、不当解雇とみなされる可能性が高いでしょう。

また、業界未経験者である中途社員に対しても、「試用期間中に特定の基準まで能力が達しなかった」という理由での解雇は認められる可能性が低いです。

両ケースとも、従業員に酷い職務怠慢がある、もしくは悪質なトラブルばかり起こすなどの問題がない限り、解雇は認められないため気をつけましょう。


経験者を結果だけで解雇としてしまう

経験者採用でよくあるケースとして、試用期間における従業員の業務に対しても、高い期待値をもって評価してしまう事例があります。

その結果、従業員が上司の指示や業務プロセスを正しく遂行していても、成果が出ていないため採用拒否をするケースがあります。

しかし「結果が目標に対して未達であった」という解雇理由は、認められる可能性が低いでしょう。企業に対して大きな損害やトラブルを与えた訳ではありませんので、正当な理由での解雇とは認められないと考えられます。

経験者については、成果への期待が高くなってしまう傾向にあります。しかし、適切な指導や教育をせず、解雇とするのは不当とされるおそれがあるため気をつけましょう。


試用期間の途中で従業員を解雇する

さらに、試用期間の途中で従業員を解雇してしまうケースにも注意しなければいけません。試用期間は、新しく入社した社員の能力やスキルを見定める期間であり、また会社業務や環境に慣れてもらうという目的があります。

したがって、試用期間途中で従業員を解雇すると、企業として「従業員に会社環境や業務に慣れるまでの教育期間を与えなかった」とみなされてしまいます。そうなれば、従業員を教育する企業努力を怠ったと判断されますので、不当解雇となるでしょう。

解雇の判断は必ず試用期間を終えてから検討するのが基本です。試用期間途中での一方的な解雇は行わないようにしましょう。


十分な指導を行わずに能力不足と判断する

能力不足という判断が認められるためには、企業努力として従業員の教育を十分に行っている必要があります。必要な指導を行っていないにも関わらず、能力不足と判断して解雇をしないようにしましょう。

尚、労働契約法では「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合」については、解雇は無効であると示されています。そのため「他の社員と比較して能力が低い」といった程度の理由では、解雇とするのは難しいでしょう。


試用期間中の解雇事由についての記載がない

解雇をする場合には、就業規則や雇用契約書に該当する解雇事由の項目がある点が重要です。記載がないと、例え従業員が問題を起こしても解雇が認められない可能性があります。

したがって、能力不足を理由とする場合には、必ず明確な基準について記載をしておきましょう。ただし、いかに明確で分かりやすい基準であっても、客観的でない場合や合理性がない場合は認められません。

よほど大きな業務の支障などがない限りは、解雇と認められないため気をつけましょう。


試用期間中でも解雇予告が必要

社の社員を解雇する際には、解雇予告を行い解雇予告手当も必要に応じて支払います。この規定は試用期間で働いている従業員にも該当するため、事前準備を行うようにしましょう。

尚、解雇予告手当を支払う必要があるのは、入社日から14日を超えている試用期間中の従業員となります。解雇予告は30日以上前に行う必要があり、足りない日数分は解雇予告手当を計算し支払います。

ちなみに、解雇予告手当は解雇を行い従業員が退職する前に支払う必要がありますので、覚えておきましょう。

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試用期間であっても従業員の解雇は慎重に検討しましょう!

試用期間中の従業員の解雇について、また注意点も解説しました。概要の解説でも確認しましたが、試用期間であっても支払うべき給与は支払い、また解雇についても正社員と同様に慎重に検討すべきであると分かりました。

試用期間中の従業員の解雇を検討している場合には、本記事をチェックしながら不当解雇とならないように対策を進めてみてください。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長
監修した人
杉本雄二 社会保険労務士法人ローム静岡 所長

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。