有効求人倍率とは?計算方法や直近の推移傾向を解説

有効求人倍率とは?計算方法や直近の推移傾向を解説
目次

有効求人倍率とは、転職市場の実態を把握する上で重要な経済指標の1つです。

有効求人倍率の高低によって、採用計画の立案・採用方法などに違いが生じてくるため、数値の推移や求め方・見方などを簡単に理解しているだけでも、採用活動を有利に進められます。

この記事では、有効求人倍率の活用方法を知りたい経営者・人事担当者の方向けに、有効求人倍率とは何なのか、簡単に理解できるようかみ砕きながら解説します。

※都道府県別の有効求人倍率推移
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有効求人倍率とは?

有効求人倍率とは、全国のハローワーク(公共職業安定所)の「有効求職者数に対する有効求人数の割合」を算出したもので、雇用動向を示す重要な経済指標の1つです。

もう少し簡単にまとめると、求職者1人あたりにどのくらい仕事があるのかを表した指標と言い換えることができます。

有効求人倍率は、厚生労働省が「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で毎月公表しており、企業は採用活動時の人材の状況を、求職者は就転職の難易度を判断するために活用しています。

ちなみに、有効求人倍率の「有効」というのは、ハローワークが求人・求職に定める有効期間のことを指しています。

具体的には、求人・求職ともに2カ月間(申込み月の翌々月末日まで)が有効期間となります。


新規有効求人倍率とは

新規求職者1人あたりの新規求人数の比率は、新規有効求人倍率(新規求人倍率)として算出されます。

簡単に説明すると、ハローワークに新規登録された求職者数と求人数を用いて算出した統計の1つです。

2カ月分の求職者数・求人数をもとに算出している有効求人倍率と比べて、より直近の雇用状況・景気が反映されています。

例えば、新規有効求人倍率が1倍を上回っている場合、雇用情勢が好調であることを示すとされます。

【画像&事例付き】ハローワークでの求人の出し方は?手続きの流れや注意点を解説


企業における有効求人倍率の現状

有効求人倍率は、大企業を除き、総じて有効求人倍率が高い傾向にあります。

リクルートワークス研究所の「第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、全体の大卒求人倍率は「1.75倍」となっており、2022年実施時点での1.58倍よりも高くなっています。

このような状況が生じている主な理由の一つとして、多くの大卒者が大企業への就職を希望していること、中小企業への採用を目指す大卒者が少ないことなどがあげられます。

同調査における従業員規模別の求人倍率を比較すると、その傾向が顕著であることが分かります。

従業員数有効求人倍率
300人未満企業6.50倍
300~999人企業1.60倍
1,000~4,999人企業1.14倍
5,000人以上企業0.34倍

上記の通り、従業員数が少ない企業ほど有効求人倍率が高く、厳しい現状が見て取れます。なお、有効求人倍率についてより詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。

有効求人倍率とは何か簡単に解説|推移や求め方・見方についても紹介


有効求人倍率と関連する指標

有効求人倍率に関連する指標を知っておくと、より深く有効求人倍率を読み解くことができます。

以下、関連性の深い2つの指標について解説します。


完全失業率

完全失業率とは、労働力人口のうち「完全失業者が占める割合」を示したものです。

具体的には、15歳以上の働く意欲がある人のうち、職に就いておらず求職活動をしている人が占める割合のことをいいます。

完全失業率は、雇用情勢を示す重要指標の1つで、総務省の「労働力調査」で確認できます。

有効求人倍率と完全失業率は、次のような反比例の関係にあるのが特徴です。

○景気が悪いとき:完全失業率は上昇し、有効求人倍率は低下する

○景気が良いとき:完全失業率は低下し、有効求人倍率は上昇する


景気動向指数

景気動向指数とは、景気全体の現状を把握したり、将来の動向を予測したりする際に用いられる経済指標です。

生産・労働・消費等の分野から代表的な30指標を選定し、それらを下記3つの指数に大別します。

○先行指数:数カ月先の景気の動きを示す指数

○一致指数:景気の現状を示す指数

○遅行指数:半年~1年遅れで反応する指数

なお、有効求人倍率は一致指数に含まれますが、更新はリアルタイムでない点に注意が必要です。


季節調整値

有効求人倍率における季節調整値とは、様々な季節的要因を除去した上で算出された推計値のことをいいます。

景気動向等の判断においては、毎月のデータ比較をする必要があるものの、以下のような季節的要因の影響から単純比較が難しいケースが多く見られます。

  • 月ごとの稼働日数の違い
  • 社会習慣(年度末・正月など)
  • 各種制度の影響 など

季節調整値を算出する際は、こういった月々の変動の“クセ”にあたる部分を除去するため、以下の公式で計算します。

【原数値 ÷ 季節指数 × 100 = 季節調整値】

季節調整値が重要になるのは、前月・前々月の数値と比較が必要なケースです。

例えば、3月に比べて2月は日数そのものが少なく、同じ条件(日数)として比較するのは難しいことが分かります。


有効求人倍率の計算方法

有効求人倍率は、以下の公式で算出することができます。

【有効求人数÷有効求職者数=有効求人倍率】

有効求人数とは、企業がハローワークに求人を出した数のことです。また、有効求人者数は、求職者(働きたい人)の数のことをいいます。

一例として、次のような状況を想定してみましょう。

○有効求人数      :150人

○有効求職者数   :200人

このケースを公式に当てはめると【150(人)÷200(人)=0.75】となり、有効求人倍率は0.75倍です。

もし、有効求人数が180人・有効求職者数が150人だった場合は【180(人)÷150(人)=1.2】となり、有効求人倍率は1.2倍と計算できます。


有効求人倍率を簡単に理解する方法

有効求人倍率は、倍率が1よりも大きいか、それとも小さいかによって、数値の意味が変わってきます。

この違いを押さえておくと、自社が人材を確保しやすい状況かどうか、簡単に有効求人倍率から判別できます。

有効求人倍率が1よりも大きい場合、企業の求人に対して応募が不足している状況のため、企業にとっては人材の確保が厳しい傾向にあるといえます。

これに対して、有効求人倍率が1よりも小さい場合は、企業の求人に対して応募者数が多い状況です。


有効求人倍率に反映されていない情報

有効求人倍率は、ハローワークに登録されている情報をベースに算出されています。よって、以下の情報は反映されていない点に注意しましょう。

○ハローワーク以外の求人媒体・転職サービスの求人数および求職者数

○新卒の就職活動者数

データ上は有効求人倍率が低い地域であったとしても、地元密着型の求人サイトなど、選んだ求人媒体によっては必要十分な成果が得られるかもしれません。

採用活動においては、有効求人倍率だけを偏重しないよう注意しましょう。


有効求人倍率の見方

有効求人倍率の数値は、大きく「雇用動向」と「景気動向」を読み解く指標として活用できます。以下、具体的な見方について解説します。


雇用動向の指標として見る

有効求人倍率は月ごとに発表されるため、前月・前年同月はどうだったのか推移をチェックすることで、雇用動向をある程度把握することができます。

仮に、前年同月の有効求人倍率が1.2倍で、当月が0.9倍だったとしたら、昨年に比べて採用活動の難易度は下がったことになります。

また、エリア別の求人倍率の差に目を向けると、どの地域に注力して採用活動を進めるべきか考えるのに役立ちます。

例えば、令和5年(2023年)8月の就業地別の有効求人倍率は、神奈川県の有効求人倍率が1.13倍、岐阜県の有効求人倍率が1.64倍となっています。

もし、両方のエリアで求人を出している場合、神奈川県で仕事を探している人材に対して、岐阜へのIターン・Jターンを勧めるようなニュアンスの求人広告を展開する方法も検討できます。


景気動向の指標として見る

有効求人倍率は、労働市場の好況・不況を読み解きたい場合にも役立ちます。

世界的な株価下落・金融不安・同時不況を巻き起こしたリーマンショックは、2008年9月に起こりましたが、その際の有効求人倍率は0.42倍でした。

リーマンショック時は、100人中58人が求人からあぶれる事態となったわけですが、企業側としても、先行きが不透明な中で人材を採用できる余裕がなかったものと推察されます。

逆に、有効求人倍率が高い時期に関しては、好景気・または企業が人材不足に悩んでいる状況と考えられます。


有効求人倍率・新規求人倍率の推移

実際に厚生労働省が公表している一般職業紹介状況に目を通すと、全国の数値だけでなく、産業・エリア別の倍率を簡単に確認することができます。

以下、令和6年(2024年)11月分の一般職業紹介状況から、有効求人倍率・新規求人倍率の推移を紐解いていきましょう。


全職種の有効求人倍率

厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況(令和6年11月分)/参考統計表」には、職業(職種)別の有効求人倍率が掲載されています。

全職業の有効求人倍率は1.18倍(パート含む)で、日本標準職業分類の大分類ごとの有効求人倍率は以下のようになっています。

職業

有効求人倍率(パート含む)

管理的職業従事者

1.03

専門的・技術的職業従事者

1.97

事務従事者

0.44

販売従事者

2.12

サービス職業従事者

3.08

保安職業従事者

7.15

農林漁業従事者

1.13

生産工程従事者

1.62

輸送・機械運転従事者

2.29

建設・採掘従事者

5.52

運搬・清掃・包装等従事者

0.75

職業全体を見ると、保安職業従事者、建設・採掘従事者の求人倍率が5倍を超えており、次いでサービス職業従事者が3.08倍と続いています。


有効求人倍率が高い職業・低い職業 

同データの中で、特に有効求人倍率が高い職業としては、次のようなものがあげられます。

職業の種類

有効求人倍率(パート含む)

建設躯体工事従事者

8.87

その他の技術者

7.97

保安職業従事者

7.15

土木作業従事者

6.82

建築・土木・測量技術者

5.97

これに対して、有効求人倍率が低い職業には、次のようなものがあげられます。

職業の種類

有効求人倍率(パート含む)

美術家,デザイナー,写真家,映像撮影者

0.17

その他の運搬・清掃・包装等従事者

0.32

一般事務従事者

0.35

事務用機器操作員

0.36

船舶・航空機運転従事者

0.61


新規求人の有効求人倍率

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和6年11月分)/参考統計表」からは、新規求人倍率も把握できます。

全職業における新規求人倍率は2.35倍(パート含む)で、日本標準職業分類の大分類ごとの新規求人倍率は以下のようになっています。

職業

新規求人倍率(パート含む)

管理的職業従事者

1.89

専門的・技術的職業従事者

3.93

事務従事者

0.97

販売従事者

4.08

サービス職業従事者

5.27

保安職業従事者

11.17

農林漁業従事者

1.86

生産工程従事者

2.87

輸送・機械運転従事者

3.46

建設・採掘従事者

8.41

運搬・清掃・包装等従事者

1.66

新規求人に関しては、保安職業従事者の倍率が圧倒的に高く、建設・採掘従事者、サービス職業従事者、販売従事者も特に高い傾向が見られます。


新規求人倍率が高い業界・低い業界

同データの中で、特に新規求人倍率が高い職業としては、次のようなものがあげられます。

職業の種類

新規求人倍率(パート含む)

その他の技術者

21.92

建設躯体工事従事者

13.65

保安職業従事者

11.17

 建築・土木・測量技術者

10.31

土木作業従事者

9.51

これに対して、新規求人倍率が低い職業には、次のようなものがあげられます。 

職業の種類

新規求人倍率(パート含む)

美術家,デザイナー,写真家,映像撮影者

0.41

鉄道運転従事者

0.57

一般事務従事者

0.79

その他の運搬・清掃・包装等従事者

0.85

事務用機器操作員

0.90


都道府県別の有効求人倍率

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和6年11月分)/報道発表資料」によると、都道府県・地域別の有効求人倍率(就業地別・季節調整値)の平均値は、以下のようになっています。

地域

有効求人倍率(平均値)

北海道

1.05

東北

1.35

南関東

1.16

北関東・甲信

1.43

北陸

1.57

東海

1.30

近畿

1.14

中国

1.42

四国

1.41

九州

1.24

※新規学卒者を除きパートタイムを含む

すべての地域において、有効求人倍率が1倍を切ることはなく、全体の中では北海道が1.05倍と低い傾向にあります。

特に高いのは北陸地方の1.57倍で、次いで北関東・甲信地方の1.43倍、その後は中国地方の1.42倍、四国地方の1.41倍の順に高くなっています。


有効求人倍率が高い地域・低い地域

同データの中で、特に有効求人倍率が高い地域(都道府県)は以下の通りです。

地域(都道府県)

有効求人倍率

福井県

1.91

山口県

1.66

香川県

1.62

富山県

1.58

島根県

1.57

福井県は、他の都道府県を大きく引き離す形で有効求人倍率が高く、同じ北陸地方に含まれる富山県も1.58倍と高い水準にあります。

これに対して、有効求人倍率が低い地域(都道府県)は、以下のようになっています。 

地域(都道府県)

有効求人倍率

北海道

1.05

大阪府

1.07

福岡県

1.08

東京都

1.12

神奈川県

1.12


新型コロナウイルスによる影響は収束?

令和4年(2022年)以降、有効求人倍率は1.3倍前後で推移しており、新型コロナウイルスの影響で1.18倍にまで有効求人倍率が落ち込んだ令和2年(2020年)度に比べると、比較的安定した状況となっています。

令和5年(2023年)5月5日、WHOは新型コロナウイルスの緊急事態宣言を終了すると発表しましたが、この発表により有効求人倍率が大きく変動することはありませんでした。

ちなみに、平成22年(2010年)度以降で最も有効求人倍率が高い年度は平成30年(2018年)で、倍率は1.61倍でした。

※都道府県別の有効求人倍率推移
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有効求人倍率と企業への影響

有効求人倍率は、企業の採用活動に影響をもたらすため、欲しい人材を効率的に採用するには「倍率の高さ・低さ」に注目して対策を講じる必要があります。

以下、有効求人倍率が高いとき・低いときの企業への影響について、それぞれのケースにおける対策例に触れつつ解説します。


有効求人倍率が高いとき(売り手市場)

有効求人倍率が1よりも大きい場合、有効求人倍率が高いと判断できます。

例えば、有効求人倍率が2倍の場合、1人の求職者を2社で争奪する形になり、この状況は「売り手市場」と呼ばれます。

ここでの売り手とは求職者のことであり、売り手市場においては、求職者が多くの企業から内定を得やすくなります。

逆に考えた場合、企業は優秀な人材を採用するのが難しくなるため、求職者に対して“自社を売り込む”必要があります。


売り手市場で企業がとれる対策例

売り手市場において、企業が欲しい人材を確保するためには、求職者に対して「自社の魅力を積極的にアピールする」ことが有効です。

具体的には、求人情報の中で以下の点を詳しく伝えましょう。

対策例

詳細

労働条件の説明

○各種手当の充実(営業手当・家族手当・住宅手当など)

○交通費支給の有無(距離・金額の上限にも触れる)

○各種保険加入の条件(雇用保険・社会保険等)

○労働時間や制度(フレックスタイム制の導入等)

○休日・休暇(完全週休2日制・夏季休暇・リフレッシュ休暇等)

企業方針・社風の説明

○企業理念・ビジョンの説明(文章・動画等を使って丁寧に説明)

○組織としての方向性(経営戦略・事業戦略等)

○実際に働いているスタッフの声(インタビュー記事等)

 

有効求人倍率が低いときは「買い手市場」

有効求人倍率が1よりも小さい場合、有効求人倍率が低いと判断できます。

仮に、有効求人倍率が0.5倍だった場合、単純計算で2人の求職者のうち企業が採用する人数は1人だけということになり、この状況は「買い手市場」と呼ばれます。

一見、企業にとっては人材確保に有利なタイミングとも考えられます。
しかし、買い手市場では求職者の転職活動に対するマインドが消極的になりやすく、転職希望者数が少なくなった分だけ採用が難しくなるリスクがあります。


買い手市場で企業がとれる対策例

買い手市場において、企業が欲しい人材を確保するためには、求人広告を積極的に出すことが重要です。

有効求人倍率は低い状況であっても、心の中で「条件が合えば転職したい」と考えている人材に対して、自社の求人情報を多角的に広めていく必要があります。

多くの求職者は、興味がある企業の情報収集を目的として、企業サイトを確認します。

より詳細な情報を知りたいと考える求職者は、企業の口コミサイト・転職情報サイト・企業のSNSアカウントもチェックするでしょう。

採用担当者は、このような求職者の行動をあらかじめ予測して、複数のツールで求人情報を公開できるよう準備しましょう。


有効求人倍率を参考にする際に注意したいこと

有効求人倍率の意味を理解することで、比較的簡単に就転職市場の状況を知ることができます。

しかし、採用活動でデータを活用したいと考えている場合、次の点に注意しましょう。


ハローワーク以外の求人は反映されていない

有効求人倍率は、厚生労働省がハローワークに登録されている求人者数・求職者数をもとに算出されます。

しかし、人材確保の手段は年々多様化しているため、ハローワークに登録されている情報だけでは実態を正確に把握できない可能性があります。

例えば、採用方法の1種であるリファラル採用は、自社の社員が友人・知人の中から人材を紹介するという手法です。

リファラル採用が主な採用方法である企業の場合、これまで安定して人材を採用できているなら、あえてハローワークに求人を出していない可能性があります。

より効率的に人材を採用するため、ハローワークよりも求人サイト・転職エージェント等での採用に注力している企業も珍しくありません。

こういった「ハローワーク以外」の採用方法における求人数は、有効求人倍率に反映されていないため、各種転職サービスが算出している転職求人倍率などを別途確認する必要があります。


正社員の求人に絞ったデータではない

厚生労働省が公表している有効求人倍率は、パート・アルバイトを含んだもの・除いたものがそれぞれ計算されています。

しかし、契約社員・派遣社員等の数は正社員と区別されずカウントされているため、正社員だけの有効求人倍率を計算したデータを参照することはできません。

基本的に、有効求人倍率は「すべての雇用形態」が含まれている数値のため、それを理解した上でデータを確認しましょう。


新卒者の求人件数が含まれていない

新卒採用の求人倍率を確認したい場合は、民間企業の調査結果を参考にすることが多くなります。

その理由は、有効求人倍率に新卒者の求人件数が含まれていないためです。

新卒採用の難易度をはかる際は、有効求人倍率の数値を参考にしないよう注意しましょう。


「産業別」または「都道府県・地域別」の数値を確認する

全国の有効求人倍率は、日本全体の景況感を判断する上では役立つかもしれませんが、企業の採用活動にそのまま活用するのは無理があります。

自社の採用難易度をはかる上で、一般職業紹介状況の中で特に参考にしたい資料としては、以下の2点があげられます。

○産業別一般新規求人状況(産業別の数値)

○都道府県・地域別有効求人倍率(都道府県・地域別の数値)

以下、それぞれの資料について解説します。


産業別一般新規求人状況

産業別一般新規求人状況では、各産業の新規求人数と、対前年同月比が公表されています。

産業別一般新規求人状況を確認するメリットは、どの産業で・どれくらいの求人が出ているのかを一目で確認できる点にあります。

例えば、令和5年(2023年)8月における電子部品・デバイス・電子回路製造業の新規求人数(新規学卒者を除く)は2,789人、対前年同月比は-25.3%となっています。

自社が同じ産業に含まれており、これから新しい人材を探したいと考えている場合、求人を出してもライバルは少ないものと推察されます。

これに対して、宿泊業、飲食サービス業における飲食店の新規求人数(新規学卒者を除く)は56,900人、対前年同月比は13.2%となっています。

数値を見る限り、多くの飲食店で前年以上に人材を募集していることが分かるため、少なくとも前年より人材確保の難易度は上がるものと予想できます。


都道府県・地域別有効求人倍率

都道府県・地域別有効求人倍率には、47都道府県の有効求人倍率のほか、以下の地域別の有効求人倍率がまとめられています。

○北海道(北海道)

○東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)

○南関東(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)

○北関東・甲信(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県)

○北陸(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県)

○東海(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)

○近畿(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)

○中国(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)

○四国(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)

○九州(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県) 

複数の拠点・営業所を持つ企業にとって、都道府県・地域別有効求人倍率の数値は、それぞれの都道府県・地域での採用難易度を把握する上で重要になるでしょう。


職業別の有効求人倍率は「参考統計表」をチェック

職業別の有効求人倍率を知りたい場合は、厚生労働省公式サイト・一般職業紹介状況のページ下部から、参考統計表を確認しましょう。

複数の職種で人材を募集する場合など、職業別の採用難易度を把握するのに役立ちます。


タイムリーな数値ではない

有効求人倍率は、データの集計に時間がかかることもあり、タイムリーな数値を公表するのが難しい傾向にあります。

例えば、令和5年8月分の有効求人倍率が公表されたのは令和5年9月29日ですから、数値が分かるまでおよそ1カ月の時間を要していることになります。

数値が公表される間に、業界等で何らかの新しい動きが見られた場合、そちらを重視して採用活動を進めた方が良いケースも考えられます。

採用のチャンスを逃さないために、業界の動きや社会情勢にも目を向けつつ、有効求人倍率だけにとらわれないよう注意しましょう。


推移もチェックする必要がある

採用活動を進めるにあたり、有効求人倍率をチェックする際は、新しいデータを気にする人が多いかもしれません。

しかし、直近の月の有効求人倍率だけをチェックしても、それだけでは指標として十分に活用するのは難しいところです。

基本的に、特別な出来事が発生しない限り、月々の有効求人倍率は急激に変わることはありません。

過去の倍率と最近の倍率を見比べながら、全体的に上向きなのか下向きなのかを確認した上で、今後の採用活動の進め方を検討しましょう。


ニュース等の情報も踏まえて判断する

直近の月で有効求人倍率に大きな変動が生じた場合、その時期のニュース等を見直してみましょう。

リーマンショックや新型コロナウイルスのように、有効求人倍率が下がる・または上がる背景には、何らかの社会問題・突発的な出来事が生じている可能性があるからです。

過去の推移にも目を向けて、似たようなケースがないかどうか調査すると、倍率の変化につき共通点が見えてくる場合があります。

ニュースと有効求人倍率が、どのように連動しているのかを知ることで、今後の採用活動における対策を立てやすくなるでしょう。


自社独自の指標と合わせて活用する

ここまでお伝えしてきた通り、有効求人倍率は、ハローワークに登録されたデータをもとに算出されています。

よって、有効求人倍率だけを鵜吞みにして、採用活動を進めるべきではありません。

インターネットの普及にともない、新たな採用手法が生まれている状況においては、複数の採用手法を試してみることが大切です。

その上で、それぞれの採用方法を試した結果、どのような成果が出たのか、自社独自のデータとして蓄積するようにしましょう。

具体的には、以下のようなデータを収集することで、効果のあった採用方法が見えてくるはずです。

○採用選考の応募状況

○採用内定率

○入社辞退率

○離職率                      など

その他、各種ツールで確認できる情報も、これまでの採用活動を見直す上で役立ちます。


まとめ

有効求人倍率は、企業が採用活動を効率的に進める上で、重要な指標となります。

有効求人倍率が高いときと低いときでは、求職者に対するアプローチも変わってくるため、産業別もしくは都道府県・地域別の数値も確認しつつ、必要に応じて対策を講じましょう。

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ヒトクル編集部
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