働き方改革「社員が自分で決めて取り組む」だから社内に浸透する ~お仏壇のやまきインタビュー【後編】~

働き方改革「社員が自分で決めて取り組む」だから社内に浸透する ~お仏壇のやまきインタビュー【後編】~
目次

株式会社お仏壇のやまき
代表取締役社長 浅野秀浩さま

こんにちは、ヒトクル事務局です。

現政権肝いりの「働き方改革」。昨年からニュースでも取り上げられることも増え、大企業だけでなく中小企業も「長時間労働の是正」「生産性アップ」「女性、シニアの活躍」は生き残りのために取り組みを始める企業が増えています。

しかし取り組みをスタートした企業では
「制度はあるけど、なかなか利用できない」
「会社では残業できないから家に仕事を持ち帰っている」
「ITツールは増えているけど、使いこなせない」
など、様々な課題が出ているようです。

「働き方改革」という言葉すらなかった10年前から取り組みを始め、現在社員の平均残業月3時間でありながら、売上を伸ばしている会社がありました。

静岡県内に6店舗展開する仏壇・仏具・墓石販売をしている株式会社お仏壇のやまきです。

同社の代表取締役社長・浅野秀浩さんに、取り組みの背景や実施のプロセス、苦労した点についてお話しを伺いました。

※前編はこちらから。
10年前から働き方改革に取り組んだのは、優秀な社員が「家族との時間を大切にしていた」から~お仏壇のやまき インタビュー【前編】~


4つの「生産性向上に向けた業務改善」の取り組み

「働き方改革」の取り組みは、2段階に分けて行われたということでした。
導入時は、トップダウンで制度を変えて2年ほどで社内に浸透していったということでした。では次のステップではどんなことに取り組まれたのでしょうか。


次のステップは「生産性向上に向けた業務改善」の取り組みです。

残業が減ったことで、今まで10できたことが8になってしまっては意味がありません。そこで短い時間に、より多くのことができるように4つの取り組みをしました。

まず1つ目が、「作業性を高めるIT技術の導入」です。
・レジのタッチパネル化と文字の拡大
・ハンディターミナルによる商品管理の簡素化
・だれでも使える簡易型CADの開発と導入

高齢者でも働き続けられる職場の整備が必要と感じていましたので、60才以上の高齢者が操作できるオペレーションシステムを研究し、導入前に高齢のスタッフが実際に操作し実証した上で導入しました。

レジのタッチパネルは「文字が大きく」携帯の「らくらくホン」に似た操作盤で、ハンディーターミナルも操作性を優先した機械選定をしました。

また、従来在庫検索は本社に電話で確認をしていました。レジの操作盤からオンラインで検索できるようにし、ポイントカードの捺印も売上金額に応じて自動的に行えるようにしました。

これによって、短い時間に効率的に作業を進めることが可能になりました。

2つ目が、「多能職化=脱専門職化」です。
今までは、レジの方はレジだけ、販売の方は販売だけと単一の仕事しかしませんでした。
そうすると、例えば販売の方が休みを取ると困ってしまうわけです。シフトもうまく組めません。

そこで誰でも自由にお休みを取れるように、レジや販売、経理、設計など全ての作業をこなせるように教育していきました。

また多能職化したことで「こうしたほうが効率がよい」「こんな非効率なやり方をしているの?」といった意見が出て、より業務改善が加速したのです。


モチベーションこそが「時短の源泉」


3つ目が顧客情報共有化システムの導入です。
このシステムは、昨年から始まったプレミアムフライデーがきっかけで、導入しました。
弊社では、プレミアムフライデーは社員の半分が早く帰宅し、あと半分はお客様の対応をしています。

そこで、お客様が「以前接客してくれた担当が不在だ」というとがっかりして帰ってしまう、という問題が起きました。

そこで、顧客カルテを作成し、商談のプロセスを全社員が共有することで、誰でもお客様の対応をスムーズにすることができるようになりました。

また、次回のアクションを入力することで、その時期が来るとアラームが出るようにしたことで、機会損失を防ぐことができるようになったのです。

4つ目は、人事評価制度と報酬制度を改良したことです。私は、モチベーションこそが時短(生産性アップ)の源泉だと考えています。

「いくら売り上げれば、いくら報酬がもらえるのか」を明確にし、昇給と賞与を全てガラス張りにしました。また、店舗をチームと考え、チーム内では店長も新人も同一の賞与にしました。

入社したばかりの新人社員は必ず「私はそれほど貢献していないのでもらえません」と言います。私は「だったら1日でも早く貢献できるように仕事を覚えてください」とお伝えしています。

店長も「新人社員にあげすぎでは?」と感じるでしょう。
「だったら、報酬に見合った仕事をしていただけるように、新人社員にもどんどん仕事を任せるようにしましょう」とお伝えしています。

このように「お店がいくら売り上げれば、いくら報酬がもらえるのか」を明確にすることで、社員全員の売上に対する意識が上がりました。


社員が自分で決めて取り組んでいる

御社には女性だけの「ホスピタリティ会議」があるそうですね。

当社では、販売の最前線にいるのが女性です。お客様のことを一番近くで理解している彼女たちのアイデアは、非常に参考になります。

このホスピタリティ会議で決まったことは、無条件で実施することになっています。だから、社員は必死で考えます。

「どうしたら、効率よくできるか」
「どうしたら働きやすいか」
「どうしたらもっと売上があがるか」

自分で考えた施策だから、もちろん実行に移しますよね。僕はほとんど何もしません(笑)仕組みを作っているだけです。

前述した、簡易CADや、顧客情報化共有システムも、社員の意見を聞いて開発してもらっています。導入しても使い勝手が悪いのでは、意味がありませんからね。


新たに取り組んでいることはありますか?

現在65才定年で、70才まで延長できるのですが、さらに80才まで働ける制度づくりに取り組んでいます。
定年後にどんな働き方をしたいかを社員に聞いたところ、「自分の時間を確保しながら、ゆっくり仕事をしたい」という答えが多くかえってきました。

従来の短時間勤務の考え方は、
「1日の場合=1時間を短縮して(例)4時間勤務/日」
「1週間の場合=日にちを短縮して(例)4日勤務/週」
ここまでが従来の制度でした。

それが、ある定年を迎えた社員から「わたしは、まとめて休んでまとめて働きたい」という要望を受けました。
繁忙期である6月~8月は、週5日で出勤し、そのほかの月は海外旅行をしたり、趣味に没頭したりしたいというのです。

そこで新たな「セカンドライフ勤務制度」を作りました。
「1年の場合=月を短縮して(例)3か月勤務/年」です。

余談ですが、この制度を使った社員が休暇の間に描いていた絵画が、なんと二科展でNHK静岡局長賞を受賞する、という嬉しい報告を受けています。


次の世代に負債を残さないために

今後「働き方改革の取り組み」をされる企業に向けてアドバイスをお願いします。

労働人口が確実に減少していく中で、海外にマーケットを持たずに企業が存続していくためには、人の力が非常に重要です。

よい人材に長く貢献してもらうためには、「組織都合の働き方」から「個人都合の働き方」へ方向転換をしていかなくてはなりません。

この方向転換を、やるやらないは企業の都合です。
でもこれを今我々の世代がやらないと、次の世代(後継者)がやることになります。

自分の子供や孫の世代にツケをまわさないためにも、今私たちの世代が汗を流し、この大きな方向転換をしていくべきだと私は考えています。


(取材日/2018年2月2日)

いかがでしたでしょうか?
社長の浅野さんは、静岡大学の教授もされていて、いまや全国から取材がくるほどに「働き方改革」の分野で注目されている存在です。
そのお話しは、ご自分で実践されてきた経験に裏打ちされた説得力がありました。
浅野さん、このたびは取材にご協力をいただきありがとうございました。



取材協力
株式会社 お仏壇のやまき
静岡県静岡市葵区本通り8-41-1
事業内容/仏壇仏具の製造/販売
HP/http://www.yamakibutsudan.co.jp

ヒトクル編集部
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ヒトクル編集部

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