アルバイト・パートにも有給が必要!付与条件と注意点を解説
アルバイト・パートとして働く従業員にも、条件によって有給休暇が発生します。
有給休暇が発生すると分かっていても、
「アルバイト・パートの有給休暇をどう与えたらよいのか分からない」
「忙しい時はアルバイトやパートからの有給休暇申し出があったらどうしよう」
そんな不安を抱えている経営者や人事担当者が多いのではないでしょうか?
今回はアルバイト・パートの有給休暇の取得でよくあるお悩みを解決するために、発生する条件や実例、トラブル事例を紹介します。
正しい知識をもとに、適切な対応で有給休暇を付与しましょう。
※労働基準法の年次有給休暇|基礎知識から法改正にともなう変更点まで解説
※有給休暇を5日以上取らせないと罰せられる?対策を解説
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アルバイト ・パート従業員に有給休暇が発生する2つの条件
アルバイト・パート従業員に有給休暇が発生するには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 半年間継続して雇われている
- 全労働日の8割以上出勤している
この要件は労働基準法によって定められており、正社員であってもアルバイト・パートであっても変わりません。
自社内に、「半年以上雇用していて、所定労働日の8割以上働いているアルバイト・パートがいる」という場合は、年次有給休暇の付与対象者です。
該当の労働者が有給休暇を取得できるように、環境を整えておきましょう。
アルバイト・パートの定義
アルバイト・パートの定義は、パートタイム労働法で定められています。
「1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い者」この条件を満たす短時間労働者を、アルバイト・パートと呼びます。
同じ事業所に雇用される“通常の労働者”は、正社員を指しています。
正社員の勤務時間と比較して、週の労働時間が短い場合は、アルバイト・パートの扱いとなります。
アルバイト・パートという呼び名には決まった定義がありませんが、日中の決まった時間に出勤する主婦(夫)やシニアをパート、日中から夜間にかけて勤務する学生やフリーターをアルバイトと呼ぶケースが一般的です。
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有給休暇日数の付与日数
アルバイト・パートが有給休暇を取得できる日数は、労働日数や勤務年数によって変わります。
どの従業員が有給休暇付与対象なのか、計算方法をチェックしてみましょう。
週所定労働日数 | 年間所定労働 日数 | 継続勤務年数 | ||||||
半年 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 | ||
5日以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
継続勤務年数と週所定労働日数によって、付与日数は異なりますが、6か月以上継続勤務したアルバイト・パートには有給休暇を付与する必要があります。
有給休暇付与日数の計算における3つの注意点
有給休暇の日数を計算する際、覚えておきたい3つの注意点があります。
トラブルを未然に防ぐためにも、事前にチェックしておきましょう。
・有給休暇取得日=出勤日
有給休暇を取得している従業員は、出勤扱いになります。
アルバイト・パートが有給休暇を取得している日も、出勤日数に含まれるため、計算を間違えないようにしましょう。
・有給休暇の分割・時季指定は原則禁止
仮に、有給休暇付与日数が12日間のアルバイト・パートがいる場合、有給休暇を申請する時季は労働者が決定できます。
1年の前半に6日、後半に6日といった形で取得を促すなど、分割や時季を指定する行為は原則労働基準法違反になるため注意が必要です。
例外:有給休暇を10日以上付与されたアルバイト・パートは、付与日から1年以内に5日を取得させる義務があります。有給休暇の取得が5日未満のアルバイト・パートには、会社から取得時季を指定してでも取得させる必要があります。
・有給休暇には有効期限がある
有給休暇には最大2年の有効期限があります。1年目で余った分は翌年に繰り越しできますが、2年を過ぎた場合は有給休暇日数が消滅します。
一人の従業員が保有できる有給休暇日数は40日まで、という決まりも合わせて覚えておきましょう。
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有給休暇を取得したアルバイト・パートに支払う給与
有給休暇の申請があったアルバイト・パートには、どのくらいの給与が発生するのでしょうか?
主に使われている、3つの算出方法について解説します。
通常賃金から算出
所定労働時間が決まっている場合、通常の労働時間×時給で給与を計算できます。
曜日や時期によって労働時間が違う、という場合は、通常その曜日、時期に支払っている給与で計算しましょう。
平均賃金から算出
平均賃金は、労働基準法で定められた算出方法で計算できます。
① 過去3か月間に支払われた賃金総額÷3か月間の暦日数
② 過去3か月間に支払われた賃金総額÷期間内実労働日数×60%
①②のうち、金額が高い方が労働者への支給額となります。
※この方法を選択する場合は、就業規則に明示する必要があります。
健康保険の標準報酬日額で算出
健康保険の標準報酬日額を支給する方法も選択肢の一つとなっています。標準報酬日額は、標準報酬月額を30で除して算出します。
※この方法を選択する場合は、労使協定を締結する必要があります。また、この方法を選択する会社はほぼありません。この方法を検討したい会社は、まず管轄の労基署にご相談ください。
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アルバイト・パートの有給休暇取得に関連する5つの注意点
従業員の有給休暇取得にあたり、企業や店舗経営者が気を付けるべき点があります。
どのような部分に注意すればよいのか、5つのポイントをみてみましょう。
注意点1:有給休暇はアルバイト・パートの希望日に
有給休暇をいつ取得するのか、企業や店舗経営者側では決められません。
アルバイト・パートの希望を聞いて、希望する日に取得させましょう。
アルバイト・パートの有給休暇取得によって業務に支障が出る場合、時季変更権を行使すればタイミングをずらせます。
時季変更権:労働基準法第39条5項
「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」
時季変更権は企業が持つ権利ですが、取りたい日に有給休暇を取得できない場合、アルバイト・パートが不満やストレスを抱えてしまう恐れがあります。
気持ちよく働いてもらうためにも、できるかぎり希望した日に休みがとれるようにしましょう。
注意点2:年次有給休暇を取得する理由は不問
正社員であってもアルバイト・パートであっても、有給休暇を取得する理由は不問です。
企業には休暇を取らせる義務はあっても、休暇の理由を聞く権限はないと覚えておきましょう。
「事業の繁忙期に個人的な旅行で休む」など、理由が分かっている場合も、有給休暇取得は止められません。
有給休暇取得を理由に時給を下げる、別日の業務を増やす、といった行為も厳禁です。
注意点3:退職時の有給休暇消化は可能?
アルバイト・パートの退職時に有給休暇日数が残っている場合、
「退職までの期間を有給休暇にしてほしい」
「残ってしまった有給休暇を買い取ってほしい」
という相談を受ける場合があります。
退職1ヶ月前などで有給休暇が残っている場合は、できるかぎり消化できるように配慮しましょう。
退職日を迎え、まだ有給休暇が余っている場合は、有給休暇の買い取りが認められています。
有給休暇の買取は、義務ではありません。あくまでも、買取っても違法ではないという解釈です。また買取る場合の金額も自由に定めてよいこととされています。
「事業が忙しい」といった理由で、有給休暇の買取りを制度として設けることは禁止されています。
有給休暇制度には、従業員をリフレッシュさせるという趣旨があります。
この目的に沿って、従業員の気分転換や休養のために使ってもらいましょう。
注意点4:有給休暇の期限に注意
先ほども触れたとおり、有給休暇には最大2年という期限があります。
期限内であれば繰り越しできますが、過ぎた分は消滅してしまいます。
アルバイト・パートが期限のルールを知らず、トラブルになるケースが少なくありません。
雇用時に有給休暇制度について説明する、保有している有給休暇日数や期限をすぐチェックできるようにする、といった配慮が必要です。
注意点5:最低5日の消化義務
10日以上の有給休暇を付与された者は、付与日から1年以内に5日の有給休暇の取得をさせる必要があります。
以前は、「有給休暇があっても仕事が忙しくて取得できない」というケースが多かったのですが、働き方改革関連法により、最低5日の取得が義務付けられました。
従業員が付与から1年以内に有給休暇を5日以上取得できていない場合、法律違反となり「30万円以下の罰金」が科せられてしまいます。
計画的に有給休暇を使えるように、企業や店舗経営者側から働きかけましょう。
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有給休暇取得にあたるトラブル事例
有給休暇取得をめぐって、アルバイト・パートとトラブルが起きる場合があります。
実際にあった2つの事例をチェックしてみましょう。
事例1:退職時にまとめて取得したいと言われた
アルバイト・パートから退職の意思を伝えられ、残り日数を有給休暇にしたいと相談されるパターンです。
アルバイト・パートの労働力を頼りにシフトを組んでいる場合、急な申し出に戸惑ってしまうでしょう。
この時、「休んでしまうとお店や工場が回らない」といった事情があったとしても、有給休暇を取らせないのは法律違反です。
退職が決まっているため、時季変更権の行使もできません。
基本的には取得を認めるしかないのですが、困っている事情を伝えて、退職時期を延ばしてもらう、どうしても人が必要な日だけお願いしてみる、といった交渉はできますので、相談してみましょう。
交渉に応じてもらえない場合は、従業員の希望通り、有給休暇を付与しましょう。
事例2:前触れなく急に有給休暇の取得を求められた
「明日有給休暇を使って休みたいです」アルバイト・パートから、突然このような相談を受けるケースがあります。
「有給休暇を使う場合は、○日前までに伝えてください」といった独自のルールがある場合も、従業員が希望している限り、基本的には応じる必要があるでしょう。
他のアルバイト・パートに相談したり、該当の従業員なしでの業務を検討したりした上で、どうしても人手が足りない場合は、時季変更権の行使を検討してください。
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有給休暇にまつわるトラブル回避術
有給休暇の取得に関連するトラブルは、事前の準備で回避できます。
知っておきたい3つのトラブル回避術を紹介いたします。
回避術1:有給休暇取得ルールの策定・周知
有給休暇をどのように取得するか、事前に企業や店舗でルールを作成しておくと、アルバイト・パートが休みを申請しやすくなります。
・有給休暇を取得したい場合は休む1週間前に相談する
・バイト控室にある用紙を使って、有給休暇を申請する
・有給休暇を取得する場合は、その他従業員のシフトを考慮する
・有給休暇取得の理由は記載しなくても良い
・保有有給休暇日数は給与明細で確認できる
・時季変更権のルールについて、周知しておく
など、有給休暇を申請、取得しやすい職場であれば、トラブルが起きにくくなります。
アルバイト・パートが持つ当然の権利として有給休暇制度がある事実を、しっかり伝えておきましょう。
回避術2:計画的な年次有給休暇の付与
付与日数が10日以上のアルバイト・パートには、年に最低5日の有給休暇を与える義務があります。
ところが、待っているだけではアルバイト・パートが有給休暇を申請してくれないケースがみられます。
企業経営面を考えると、複数のアルバイト・パートに5日分の有給休暇を一気に取得させるのは難しい、という現実もあります。
このような問題を回避するために、計画的な年次有給休暇を設定しておきましょう。
・自分や家族の誕生日、記念日に有給が使えるアニバーサリー休暇
・学業や資格取得を支援する試験前有給休暇
・企業や店舗の繁忙期以外に有給休暇が取得できる閑散期休暇
など、独自の計画を策定しておけば、アルバイト・パート同士の休みがかぶりすぎることなく、スムーズに有給休暇を消化できます。
尚、計画有休を制度とするためには、最低5日、従業員が自由に設定できるようにする必要があります。
回避術3:急な休みの場合は事後承諾を認める
アルバイト・パートに従業員の中には、家族の不幸や急な病気、ケガなどで休まざるを得ないケースがあります。
この時、「先日の休みの分を有給休暇扱いにしてほしい」このように相談される例が少なくありません。
会社や店舗として、「有給休暇は○日前までに申請」というルールがある場合でも、急な休みでやむを得ない場合があります。
有給休暇の事後承諾は、会社の義務ではありません。しかし、急な休みで困っているアルバイト・パートには、事後の有給休暇を認めてあげましょう。
まとめ
アルバイトやパートに気持ちよく働いてもらうために、有給休暇の付与が欠かせません。消滅してしまう前に使いきれるように、休暇資格に関連するルールをしっかり策定、周知しておきましょう。
事前に有給休暇についての対策ができていれば、トラブルを未然に防げます。有給休暇が付与される基準、申請方法、有給休暇付与日数など正しく伝えて、勤務しやすい環境を整えてあげてください。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。