求人票の給与の書き方を徹底解説|応募者増につながる表現や注意点とは
給与の金額は、仕事内容と並んで求人票で注目されるポイントの一つです。
転職にあたり、給与をもっとも重要な条件として考えている人も少なくないため、書き方を工夫することで応募者を増やすことにつながります。
この記事では、求人票の作成に苦戦している人事担当者向けに、応募者増につながる求人票における給与の書き方・注意点を解説します。
※給与改定での注意点とは?トラブルを避けるための確認事項や最適な時期も解説!
求人票の給与の書き方で注意すべきポイント
給与に関する情報は、求職者側もシビアに判断する部分ですから、正しい情報を表記しなければなりません。
その上で、自社で働くメリットを提示する必要があるため、以下の点に注意して表記することを心がけましょう。
違法な表記は避ける
新しく働いてもらうスタッフに支払う給与は、法的に適正な給与額を提示する必要があります。
必ず遵守しなければならないルールとして「最低賃金制度」があり、使用者は最低賃金法にもとづく賃金の最低限度額(最低賃金)以上の賃金を支払わなければなりません。
また、月給額をあいまいな表記にすることも認められませんから、支払う金額は「採用後に間違いなく支払う給与」を記載します。
きちんと確認せずに表記してしまうと、応募者・内定者とのトラブルに発展してしまうおそれもありますから、記載時は十分に注意しましょう。
求職者とのミスマッチを防止する
給与の表記が具体的な求人票は、応募者も前向きに受け止めやすくなります。
求職者も、仕事内容等と比較検討する際に「給与が高い(安い)根拠」を把握しようと考えるため、正確な給与額を記載することはミスマッチの防止につながります。
給与額の記載につき、求職者にその解釈をゆだねるような表記にしてしまうと、求人票の内容と採用条件が異なる状況が生まれやすくなります。
未経験者と経験者で給与が異なる状況を想定するなど、求職者の気持ちを先回りして考えながら、誤解を生まないように給与額を表記しましょう。
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求人票の給与の書き方で遵守すべき点
求人票の作成において、法的に問題がない給与の書き方を知っておくと、採用トラブルを未然に防げます。給与欄に表記する前に、以下のルールを念頭に置いて給与を設定しましょう。
表記するのは最低賃金以上の金額
求人票に表記する給与額は、最低賃金以上の金額でなければなりません。
仮に、最低賃金額よりも低い賃金を定めたとしても、法律によってその金額は無効となります。
これは使用者・労働者の双方が合意した場合であっても同様で、最低賃金額よりも低い賃金は、自動的に最低賃金額と同等の定めをしたものとみなされます。
また、最低賃金の金額は都道府県や産業によって異なるため、自社で募集する地域や職種を考慮して賃金を設定する必要があります。
最低賃金は年々上昇傾向にあり、例年10月ころに引き上げが行われますから、年度ごとに見直しをかけることも忘れないようにしましょう。
実際に最低賃金を算出する際は、最低賃金が「時間ごとの金額」で定められている点に注意します。
時給制でない職種を募集する場合、金額を期間ごとの平均所定労働時間で割って計算します。
具体的には、以下の公式によって、月給・日給を計算します。
計算する給与 | 公式 |
---|---|
月給 | 月給の金額÷1ヶ月の平均所定労働時間 |
日給 | 日給の金額÷1日あたりの所定労働時間 |
ちなみに、出来高払制・いわゆる歩合給の場合は、所定労働時間による計算ではありません。
労働者が賃金を得るために働いた総労働時間をもとに計算し、最低賃金額と比較します。
最低賃金をチェックするには
最低賃金は、地域別最低賃金と、特定最低賃金の2種類に分かれています。
地域別最低賃金は、産業・職種に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者・使用者に適用される最低賃金です。
これに対して特定最低賃金は、特定の産業について設定されている最低賃金のことをいい、基本的に地域別最低賃金よりも高額です。
特定最低賃金の詳細な金額は、都道府県で対象産業につき定められています。
例えば、令和4年発効の北海道の最低賃金は920円ですが、処理牛乳・乳飲料、乳製品、糖類製造業の最低賃金に関しては954円となっています。
なお、最低賃金をチェックする際は、以下のリンクから金額を確認することができます。
【地域別最低賃金】
あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度 (saiteichingin.info)
【特定最低賃金】
特定最低賃金の全国一覧
支払えない金額は明記しない
求人票に記載する給与額に一定の幅を持たせることは、間違いではありません。
ただしその金額は、入社時に支払う可能性のある金額でなければ、後々になってトラブルを引き起こす可能性があります。
例えば「月給20万円~40万円」という給与額を求人票に記載した場合、経験や能力によって入社時に月給40万円の条件で雇用することがあるという意味です。
入社後の実績によって月給40万円になるということではないので、誤解を与えないようにしましょう。
そのほかの注意点として、労働基準法第24条では、賃金の支払い方について規定されています。
具体的には、以下の原則にもとづいて、賃金を支払わなければなりません。
給与支払いの原則 | 詳細 |
---|---|
通貨払いの原則 | ○賃金は原則として現金で支払うが、労働者の同意を得ている場合は銀行振込み等の方法を選べる ○現物(会社の商品など)の支払いは原則不可だが、労働協約で定めた場合は通貨ではなく現物支給も可能 |
直接払いの原則 | ○賃金は、労働者本人に支払う ○未成年者の場合であっても、親に支払うことはできない |
全額払いの原則 | ○賃金は、全額残らず支払われなければならない ○「積立金」等の名目で強制的に天引きすることは認められない ○所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除はOK ○法令で定められているもの以外の控除は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に認められる |
毎月1回以上定期払いの 原則 | ○賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない ○2ヶ月分をまとめて支払ったり、支払日を変動させたりすることは認められない ○臨時の賃金・ボーナスは例外となる |
まとめると、求人票に記載する給与としては、
「毎月1回以上、定められた期日において、通貨で直接労働者に全額を支払える」
金額を明記するものと押さえておきましょう。
固定残業代の表記は慎重に
自社で固定残業代制(みなし残業代制度)を採用している場合、固定残業代の表記方法にも注意が必要です。
具体的には、求人票の中で以下の内容を明記するようにします。
○固定残業代を除いた基本給がいくらか
○固定残業代の計算方法(労働時間数と金額等の関係)
○固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に対して割増賃金を支払う旨
諸手当を除く基本給を記載する場合は、何時間分の固定残業代につき、いくら支払うのかを併記するイメージです。
固定残業代を含めた金額を記載するのであれば、その金額の中に含まれる固定残業代につき、何時間分・何円の手当が含まれているのかを書き足します。
<記載例>
月220,000~300,000円+諸手当
(固定残業代20時間分41,180~56,160円を含む、超過分は追加で支給)
応募率を高める給与の書き方とは
法律を守って誠実な金額を記載することは、ペナルティやミスマッチを防ぐ上で重要ですが、ルールを守るだけでは求職者に十分なアピールができません。
自社で公開できる情報については、積極的に給与欄に盛り込むようにしましょう。以下、応募率を高める求人票の給与の書き方について、主なポイントをまとめました。
他スタッフ・役職別の月収例などを併記する
求職者は、求人票の給与の表記を見て「自分だったらいくらもらえるのか」を想像します。それは、入社当初だけでなく、将来に関しても同様です。
求職者の多くは、入社1年目・3年目・5年目といった年数や就いた役職によって、どのくらい月収・年収が増えるのか知りたいと考えています。
自社で働いているスタッフの月収例・年収例をあげると、求職者が自社で働くことを自分事としてとらえやすくなるでしょう。
<記載例>
○入社1年目:383.万円(役職なし)
○入社4年目:445万円(主任職)
○入社8年目:521万円(課長職)
賞与・昇給・諸手当なども詳しく記載する
求人票の中で、求職者が給与情報をチェックする際に気にするのは、基本給だけではありません。
賞与があるかどうか、昇給のペースはどうか、住宅・家族手当はあるかなど、自分たちの暮らしに必要な金額を吟味して判断します。
よって、基本給以外の部分、各種手当や賞与などの情報を詳細に盛り込むことで、求人票の説得力が増します。
できるだけ、直近の実績を踏まえた上で、詳しく記載するようにしましょう。
<記載例>
○昇給年1回有
○賞与年2回有(8月・12月)※昨年度実績2.8か月分・業績連動
○住宅手当(月2万円支給)
○子供手当(高校生以下1名につき月5,000円)
検索結果で目立つ表記を考える
求人サイトや求人検索エンジンなどを使って、求職者が求人を閲覧する際は、自社以外にも複数の求人が検索結果として表示されているはずです。
その中で、求職者に自社の求人を見てもらうためには、できるだけ目立つ表記を考えなければなりません。
例えば、多くのライバルが月給を表記している中で、年俸を表記している案件があれば、職種によっては目をひくかもしれません。
他の求人情報に埋もれないよう、かといって不自然にもならないよう、表記を工夫しましょう。
“給与フラグ”についても意識しよう
求職者が転職・求人サイトに掲載されている求人情報を検索する場合、複数の情報を見比べて判断するケースよりも、月収等を条件に求人案件を絞り込むケースの方が多いでしょう。
例えば、フリーワード検索で「年収400万円」などと入力すると、条件に合致する求人案件を検索することができます。
求職者が求人を絞り込んでチェックすることを想定して、給与フラグを設定しておくと、自社の提示する年収に魅力を感じる人材が集まりやすくなります。
年収だけでなく、月収をアピールする方法もありますから、転職サイト等のルールを理解した上で、自社が伝えたい情報を含んだフラグを立てることを意識しましょう。
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まとめ
求人票の給与欄には、具体的な数字を記載しなければならないので、金額以外でアピールできる部分がどうしても少なくなります。
給与欄に記載する内容をまとめる際は、自社の給与体系や各種手当を踏まえ、他社にはないものを洗い出してから記載するようにしましょう。
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求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。