募集要項とは?書いてはいけない表現などを知っておこう!
募集要項は、求職者がその企業に応募するかどうかを決める大切な要素です。本記事では、求人票を作成する担当者に向けて、募集要項の基本について解説いたします。
※募集要項の書き方を解説|求職者が魅力を感じるポイントとは
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「募集要項」とは?
募集要項は、ハローワークや求人サイトなどで求人募集をする際に求職者に対して「この仕事に就いたらどんな条件・環境で働くことになるのか」を伝える情報のことです。
そのため、多くの求職者は各社の募集要項を比較検討して応募先を決めます。
募集要項は求人情報の中でも特に注目される情報のため、適当にまとめてしまうと欲しい人材を集めることは難しくなります。
せっかく時間やお金をかけて求人募集をしたとしても、応募者自体が集まらない可能性があるの注意しましょう。
募集要項に書かなければならないこと
実際に募集要項を作成する場合、職業安定法によって定められている「どの企業でも必ず書かなければならない項目」があります。
具体的には、以下のような項目が該当します。
- ・業務内容(仕事内容)
・契約期間
・試用期間
・就業場所
・就業時間、休憩時間
・休日
・時間外労働
・賃金
・加入保険
・募集主の氏名
加えて、以下のようなことを注意して記載しましょう。
・裁量労働制を採用している場合は、その旨の記載が必要
・時間外労働の有無にかかわらず固定残業代を支払っている場合は、内訳の記載が必要
下図は、厚生労働省が出している資料を分かりやすくまとめたものです。
●最低限明示しなければならない項目
記載が必須な項目 | 記載例 |
業務内容 | 一般事務 |
契約期間 | 期間の定めなし |
試用期間 | 試用期間あり(3カ月) |
就業場所 | 本社(●県●市●ー●)または △試写(△県△市△ー△) |
就業時間 休憩時間 休日 時間外労働 | 9:00~18:00 12:00~13:00 土日、祝日 あり(月平均20時間) 裁量労働制を採用している場合は下記のような記載が必要です。 (例)企画業務型裁量労働制により、●時間働いたものとみなされます。 ※同意した場合には高度プロフェッショナル制度の適用が予定される場合には、その旨の記載が必要です。 |
賃金 | 月給20万円(ただし試用期間中は月給19万円) ※時間外労働の有無にかかわらず一定の手当てを支給する制度(いわゆる固定残業代)を採用する場合は以下のような記載が必要です。 ①基本給●●円(②の手当てを除く額) ②■■手当(時間外労働の有無にかかわらず、●時間分の時間外手当として△△円を支給) ③●時間を超える時間外労働についての割増賃金は追加で支給 |
加入保険 | 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険 |
募集主の氏名又は名称 | 〇〇株式会社 |
派遣労働者として雇用する場合 | 雇用形態:派遣労働者 |
受動喫煙防止措置の 状況 | 屋内原則禁煙(喫煙専用室設置) |
●労働条件明示に当たって遵守すべき事項
○ 明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容としてはなりません。
○ 有期労働契約が試用期間の場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければなりません。 また、試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。
○ 労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です。
○ 労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。
○ 明示する労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせるよう、配慮が必要です。
※参照元:労働者を募集する企業の皆様へ~求人の申し込みや労働者の募集にあたっての注意事項~(R2.1改正)
近年、求人募集にかかるトラブルが増加していることから職業安定法による規制が強化されています。企業側は、応募を増やすという目的はもちろんのこと、求職者が安心して応募ができるようにルールを確認しましょう。
※【職業安定法改正】2022年10月1日からの変更点・注意点のポイントを解説
募集要項で禁止されている表現
募集要項では法令に基づいて、書いてはいけない表現があります。求人トラブルは募集主にとっても大きな損失です。しっかりチェックしましょう。
採用選考の基本的な考え方にそぐわないことは書けない
厚生労働省では、公正な採用選考にあたって、以下の2点を基本的な考え方として実施することとしています。
・応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力に基づいて行うこと
※参照元:厚生労働省 公正な採用選考の基本
採用選考は、応募者の持つ適性・能力が「求人職種の職務を遂行できるかどうか」に焦点を当てて行われなければなりません。
雇用条件・採用基準を満たした人につき、応募者の適性・能力以外の事柄で採否を決定するような文言がある場合は、募集要項として不適切です。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
性別を限定すること
男女雇用機会均等法の中では、応募者の性別を制限する表現を募集要項に含めることは禁止されています。
特定した性別のみを募集する内容は、例えば男性の欠員が出て同性のスタッフを募集しようとするケースであってもNGです。
男女の採用人数に差を付けたり、女性を特に歓迎・優遇するような表現を書き含めたりすることも問題となります。
これは職種名にも当てはまり、経理マンや生保レディのような名称を募集要項に書くことも認められません。
ただし、例外として性別の限定が認められるケースもあります。
男女の格差解消のための積極的取組(ポジティブアクション)を行う場合です。
加えて、性別を限定する合理的な理由がある場合です。
具体的には、重量物の取り扱いを要する業務・モデルや俳優など男性・女性であることが職務上求められる業務などが該当します。
× 男性幹部社員募集!
× 女性スタッフ大歓迎!
〇 女性トイレの清掃スタッフ(女性)
年齢を制限すること
定年制や警備業などの法律による年齢制限、長期勤続によるキャリア形成を目的とした場合など、合理的な理由がない限り原則として募集要項における年齢の制限はできません。
どうしても募集要項の中に記載するのであれば、年齢に関しては「○○歳のスタッフ活躍中!」といった形で、事実をベースに盛り込むにとどまるでしょう。
そのため、主に若年者を雇いたいと考えているなら、応募要件や仕事内容を説明する中で、若年者以外では難しいことを説得できるような表現を書き加える必要があります。
スタッフの平均年齢を記載したり、年功序列がないことをアピールしたりするだけでも、ある程度はミスマッチ防止に役立つはずです。
× ハードな重労働なので50歳以下で募集する
× 高齢者向けの募集なので60歳以上を募集する
〇 18歳以上の人を募集(警備業法第14条の警備業務)
〇 35歳未満の方を募集(経験不問)※長期勤続によるキャリア形成のため若年者を採用
※求人募集・採用時の年齢制限は原則NG|例外的に認められるケースも含め解説
特定の人を差別するようなこと
募集要項には、応募者の国籍・住所・容姿・人格に関する条件を記載できません。
これらの条件を記載したり、国籍等によって労働条件に違いを設けたりすると労働基準法違反とされ、6ケ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑となるリスクがあります。
また、以下のようなことを応募条件として募集要項に記載したり、応募用紙に書いてもらったりすることはできません。
・本籍や出生地に関すること
・家族の職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産等に関すること
・住宅の間取り、部屋数、種類、近郊施設等に関すること
・生活環境、家庭環境等に関すること
・宗教、支持政党、人生観、生活信条、尊敬する人物、思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)を自社に提供すること
・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞、雑誌、愛読書に関すること
※参照元:厚生労働省 公正な採用選考の基本
その他、現住所の略図を求めるような身辺調査等、合理的・客観的に考えて必要性が認められない健康診断を実施することも、採用選考時に配慮すべき事項に含まれるため、募集要項に希望条件等として記載することはできません。
求人サイト等のサービスを利用する場合は、事前にチェックが入って修正することも多いですが、自社サイトに求人を掲載する場合は要注意です。
「元気で明るい方募集します」や「○○区にお住いの方歓迎」といった表現でも、特定の人格や住所を指定・制限していることになりますから、慎重に記載しましょう。
× 応募者書類として住民票を提出してもらうこと
× 英語講師のため「ネイティブスピーカー歓迎」と表記した
× 接客業でお客様との会話が必要なため「日本人の方」と表記した
求職者に響く募集要項のポイント
求職者が目を通したとき「この会社で働いてみたい」と思わせるためには、単純にオリジナリティのある募集要項を作るだけでは不十分です。
自社の魅力をアピールするためには、以下のようなポイントを押さえて募集要項をまとめることが大切です。
採用ターゲットを明確にする
「どんな人に、どんな仕事をして欲しいか」を考えて、ターゲットを明確にした上で募集要項を作成しなければ、希望する人材へのスマートなアプローチは難しくなります。
経験者・即戦力が欲しいなら、具体的な職務や賃金等の条件を詳しく説明する。
未経験者を長期育成したいなら、業界用語等は省いて分かりやすくまとめる。
実務経験に絞って例をあげるだけでも、真逆のアプローチが必要なことが分かります。
本当に欲しい人材を、できるだけ早く採用したいなら、自社が狙うターゲットをできるだけ絞って募集要項をまとめましょう。
ターゲットを決める際に参考になるのが、「自社で活躍している社員」です。どんな方が活躍しているかを明文化することで、ターゲット像を明確にすることができます。
例)
- 異業種からの転職した方が多数活躍しています。
スポーツインストラクター、不動産営業、アパレル販売スタッフなど、コミュニケーション力を活かせる仕事です。 - 短時間のすき間時間で稼ぎたい方にピッタリ!
- 洋服のお直しの仕事!「お裁縫が好き」「リメイクが好き」という方大歓迎です
求職者に「この仕事なら働けるかもしれない」とイメージさせる
募集要項は、できるだけ具体的に書いた方が、求職者が職場で働くイメージを描きやすくなります。
例えば、企画営業の募集要項を作成するならどんな企業にアプローチするのか、広告制作は自分で行うのかなど仕事の流れを明確に記載します。
例)
- 1日3時間空いた時間でできるお仕事です。簡単な日常清掃で、力仕事はありません。
- 毎日決まったルートへお食事をお届けするお仕事です。集金業務はありません。事前に2週間ほど同行して、しっかりと覚えてからの独り立ちとなりますので安心して応募ください。
自社の魅力と求職者のニーズをマッチングさせる
募集要項をその他の企業と似たようなものにしないためには、自社が自信を持って紹介できる魅力や特徴を目立つように記載することが大切です。
シングルマザー・シングルファーザーが家事と育児を両立している例が多いなら、サポート体制をアピールすることで、ワークライフバランスの実現に魅力を感じている求職者に訴えることができます。
逆に、どんな人材でも受け入れられるようなスタンスの表現は、かえってミスマッチを招きやすくなります。
自社の特徴と求職者のニーズがマッチする条件をピックアップして、募集要項に盛り込みましょう。
例)
- 店長の絶品まかない付(インドカレーが最高)
- 急な遅刻や早退などシフト調整を考慮しているので家庭との両立が可能です
- 未経験からキャリアップ可能!正社員登用あり
具体的な数字やデータを盛り込むなど、表現を工夫する
表現の具体性を増すには、数字やデータを盛り込むことが効果的です。
例えば、リフレッシュ休暇について触れる場合は、単純に「リフレッシュ休暇制度あり」と書くだけでなく、勤続3年ごとに5日間などと具体的な日数を書き加えます。
休日や福利厚生以外で数値化できる要素としては、従業員満足度や営業成績などがあげられます。
どのような形で数字を盛り込むにせよ、求職者に「安心して働けそう」だと思ってもらえるような工夫をしましょう。
例)
- 有給取得率95%
- 残業は月で20時間程度
- 男性スタッフ5人、女性スタッフ3人が活躍しています
記事をプロに依頼する
募集要項も含め、効果の出る求人記事の作成を自社で行うには、各種求人サービスを利用する中で得られたノウハウが必要です。
しかし、思ったような成果が出ないまま、漫然と募集要項・求人記事の作成を行っている企業は決して少なくありません。
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まとめ
募集要項は、書くべき項目が決まっていて分かりやすくまとめやすい反面、過去の内容をそのまま使い回すだけでは理想的な人材の興味を引く情報が届きにくいものです。
他社と自社がどう違うのかに触れつつ、情報をより具体的に記載することで、ミスマッチを防ぎましょう。
「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。
「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。
アルバイトタイムス:https://www.atimes.co.jp/
求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。