圧迫面接はどんな手法? やめるべき理由と予防法3選

圧迫面接はどんな手法? やめるべき理由と予防法3選
目次

企業があえて高圧的な態度で接する、圧迫面接という手法があります。
応募者の本質やストレス耐性の強さなどを調べるため、以前はあえて取り入れる企業が多くみられました。 

しかし時代が変わり、近年は圧迫面接をやめるべきという風潮が広がっています。

一方で、気付かないうちに、昔ながらの圧迫面接を続けてしまっている例もあります。
圧迫面接の手法ややめるべき理由を知り、企業の印象を向上できる、必要な人材を採用できる面接手法に変えていきましょう。

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圧迫面接とは

圧迫面接はその名の通り、応募者が面接官から圧をかけられるタイプの面接手法です。
面接担当者は就活生に対し、

  1. 候補者の発言を高圧的な態度で否定する
  2. 採用に関係ない質問を突然投げかける
  3. 応募者の意見を無視する、関心を持たない
  4. 応募者を理不尽に怒ったり、怒鳴ったりする

といった態度で選考に望みます。

これらの威圧的な態度、ストレスのかかる状況で、どのような行動をみせるのか、企業ごとに定められた採用基準で合否が決定されます。

圧迫面接に対して、すぐに怒り出すような候補者、落ち込んだそぶりを見せるような候補者は、採用されにくいのが特徴です。圧迫面接が多かった時代は、面接をクリアするために、キャリアアドバイザーなどによる面談の練習が行われる例もありました。

圧迫面接は、もともとアメリカ企業から伝わったと言われています。日本でも以前は多くの企業で採用されていました。現在でも、買い手市場の一部業界では、圧迫面接が使われています。

候補者へわざと冷たい態度、怒った態度を取るケースが多いのですが、中には自社の面接スタイルが圧迫面接だと気付いていない場合もあります。

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圧迫面接が採用されてきた2つの理由

人権的配慮に欠けるイメージが強い圧迫面接ですが、なぜ多くの企業で圧迫面接が採用されてきたのでしょうか? 日本で圧迫面接が普及していた、2つの理由をみてみましょう。


学生や中途採用者の回答を深掘りするため

圧迫面接を行う場合、応募者に対して何度も質問を繰り返し、回答を求める場面がみられます。

「なぜ学生時代にその部活を選んだのか」

「部活でやりがいを感じられた理由は何か」

「どうしてやりがいにつながったのか」

など、質問に対して質問で返し、候補者の考えを追究するケースが多いでしょう。

このように、質問を繰り返す過程で応募者のことをよく知ろう、という思惑が、圧迫面接にはあります。ただ意地悪で根掘り葉掘り聞いているのではなく、本音や本心を引き出すために、圧迫面接が選ばれています。


面接担当者のヒアリング力が足りていない

面接担当者が採用活動に慣れていない、就活生の話を聞き出すのが苦手、という場合、意図せず圧迫面接のような形になる場合があります。企業の採用面接マニュアル自体が、圧迫面接に近い内容になっている、という可能性もあるでしょう。

採用担当者の力不足で、怒りや無視、といったマイナス感情なしでの対話が難しい場合、候補者へ悪印象を与えてしまい、選考が不利になってしまいます。

繰り返し話を聞き返したり、思うような返事をしてくれない応募者に苛立ったり、面接官にそんなそぶりがみられる場合は、早めの対策・対処法が必要です。

キャリア採用などの場合は、特に面接官の実力が重要になります。担当者の面接力不足を感じているなら、圧迫面接にならないように、質問や進め方を見直すのがおすすめです。


圧迫面接にはどんな事例がある? 6つのケースを解説

圧迫面接が減りつつある、と言われていますが、まだまだ風土として残っている企業があります。いざ就活をはじめてみて、

「面接官が面接中に、ずっと怒鳴り散らしていた」

「一生懸命自己PRしたけれど、すべて否定された」

「採用担当者の態度が悪く、就職したいとは思えなかった」

「何を話しても、なんで? と返されるばかりで対応に困った」

そんな経験を持つ就活生が少なくありません。

中には、志望する企業が圧迫面接を採用していても大丈夫なように、何を言われてもにこやかに対応できる、怒りの感情をみせずにその場を乗り切れる、といった面接対策をしてから望む就活生もいます。

次に、圧迫面接にはどのようなパターンがあるのか、主な6つの事例を紹介いたします。自社の面接が圧迫面接になっていないか、事前にチェックしてみましょう。


事例1:とにかく否定する

圧迫面接で多くみられるのが、応募者の否定です。自信をもって進んできたこれまでの経験、考え方を全否定し、それに対してどのような態度をみせるのか、反応をチェックする手法です。

応募者の反応ではなく、単純にストレス耐性をみているだけ、という場合もあります。否定に対してふてくされたり、反論したりしないかどうか、といった部分が選考の対象です。

企業の理念に近い回答が出るまで否定し、方向性をすり合わせるケースもあります。求める回答が得られない場合、より厳しい言葉で卑下したり、怒る、という例もみられます。


事例2:応募者に怒鳴る、暴言を吐く

圧迫面接では、応募者に対して怒鳴ったり、暴言を吐いたり、という面接官の行動がよくみられます。「君、この仕事向いてないよ」「何しに来たの?」「そんな態度で社会人になれると思ってるの?」そんなきつい発言が出るケースもあります。

面接官がストレス発散をしているのでは? そう感じるほど、怒りに満ちた面接が少なくありません。


事例3:候補者を質問攻めにする

・面接官の質問に対して、何度も何度も質問を繰り返す

・「どうして?」「なぜ?」ばかりを投げかける

・就活生が答えに困っても助け船を出さない

・質問の回答に興味があるのではなく、質問攻めが目的になっている

圧迫面接はこのように、候補者へ質問を次々に浴びせる傾向がみられます。

質問を投げかけるだけ投げかけて、反応をしなかったり、最後には否定したり、というケースもあります。


事例4:偉そうな態度をとる

面接官が肘をついた状態で対応する、上から見下すような視線を送る、足を組んでふんぞり返っている、といった行動が圧迫面接では多くみられます。採用担当者の年齢が高ければ高いほど、偉そうな態度になりやすいでしょう。

採用優位な人気企業の場合、就活生よりも面接官の方が立場が上、という風土がまだ残っています。そのため、面接官の偉そうな態度が当たり前、という会社もあります。


事例5:面接の場で説教する

採用面接の場で、面接官から候補者へ説教するケースです。履歴書の学歴や経歴に文句を言ったり、面談で引き出した成績や挑戦してきたことを馬鹿にしたり、といった言動がみられます。

面接官の本音ではない場合もありますが、厳しい口調になる場合が多いでしょう。候補者側は、いかに聞き流せるか、表情を変えないか、というスキルが求められます。


事例6:応募者の言動を無視する

候補者の話を無視する、一生懸命話しても聞き流す。このような話を聞かない行動も圧迫面接の特徴です。応募者の不安を煽り、チャンスがないのでは? 自分は必要とされていないのでは? という気持ちにさせます。

無視に対して黙ってしまった候補者へ、なぜ黙っているんだ、自分の意見はないのか、と叱責する場合もあります。


圧迫面接を導入するべきではない理由5つ

現在は、圧迫面接を導入するべきではない、という動きが広がっています。なぜ圧迫面接を避けるべきなのか、5つの理由をみてみましょう。


理由1:企業の価値を下げてしまう

圧迫面接を導入している場合、企業の面接スタイルについて、SNSなどで拡散される場合があります。圧迫面接で嫌な思いをした、という情報が広まった結果、噂になっている企業には就職したくない、その企業の商品やサービスを購入したくない、といった動きが起きるケースもあるでしょう。

いまだに圧迫面接を取り入れている古い企業、というレッテルを貼られる場合もあります。応募したくなる企業、評判の良い企業を目指すなら、圧迫面接以外の手法が適しています。


理由2:採用活動が不利になる

圧迫面接が多くみられた時代は、企業側の買い手市場でした。就職が難しく、圧迫面接を乗り越えてでも入社したい、という応募者がたくさんいたため、それほど大きな問題になりませんでした。

しかし現在は、企業が思うように採用できず悩む時代です。この状況で圧迫面接を続けていては、入社する人材がどんどん減ってしまいます。採用を有利に進めるなら、圧迫面接を避けて、途中離脱や内定辞退を未然に防ぎましょう。


理由3:時代に合っていない

圧迫面接だけでなく、人を傷つけるような言動、態度に厳しい目が向けられる時代です。誰もが対等に扱われて当たり前の今、圧迫面接という手法は時代に合っていません。

圧迫面接を続けた結果、古い体質の企業だと思われるケースもあります。SDGsに配慮した企業作り、差別のない事業所経営を目指すなら、圧迫面接以外の方法を選びましょう。


理由4:法的に問題が起きる場合がある

圧迫面接自体は違法ではありませんが、面接を通じて応募者の人権を無視してしまった場合、法律違反になる可能性があります。職業安定法や男女雇用機会均等法などに則っていない採用活動は、行政指導や処分の対象になる恐れもあり、注意が必要です。

採用活動に支障が出るだけでなく、取引先や社員の信頼を失うケースも考えられます。トラブルを避けるためにも、採用は応募者の気持ちを大切に、慎重に進めましょう。

【採用面接のNG質問】面接官が応募者に絶対聞けないタブーとは


理由5:訴訟に発展する恐れがある

圧迫面接で候補者に厳しい態度を取ってしまった場合、パワハラやモラハラとみなされ、訴訟に発展する恐れがあります。

現在は、面接の内容を、スマホやレコーダーなどで簡単に録音できる時代です。面接の内容が外部に漏れやすいことから、より訴訟の可能性が高いと言えます。

訴訟に発展してしまうと、企業に非がない場合も、印象が悪くなります。訴訟対応や和解金の用意など、余計な時間や費用が発生する可能性もあるため、避けた方が賢明です。


圧迫面接から脱却する3つの方法

圧迫面接を避けて、応募者に寄り添った面接にするために、企業が取り入れるべき手法があります。まだ実施していない施策があれば一つひとつ取り入れて、働きたくなる企業を目指しましょう。


方法1:傾聴を意識する

圧迫面接を避けるなら、応募者の声に耳を傾ける、傾聴を意識しましょう。面接担当者が主役になるのではなく、候補者の話を聞くことを第一に、丁寧に話を引き出してください。

ただ聞くだけではなく、相手へ関心を持っているという姿勢、相づち、表情なども重要です。話しやすい雰囲気を大切に、自分のことをもっと知ってもらいたい! そう感じられる場にしましょう。

面談の雰囲気が重くならないように、見通しの良い場所を選ぶ、開放感のある空間で実施する、というのも良い方法です。

傾聴にはコツがあります。採用担当者向けに傾聴を学ぶ機会を取り入れる、専門の講師を招く、といった取り組みもプラスしながら、聞き上手な会社になりましょう。


方法2:アイスブレイクを取り入れる

アイスブレイクは、初対面の人間が多く集まるイベント時などに、相手との距離を縮める目的で取り入れられます。アイスブレイクを先に実施しておくと、候補者の緊張がほぐれ、柔らかい雰囲気で面接を進められます。

簡単なゲームを実施したり、身体を動かしたり、さまざまな手法がありますが、面接の場では雑談から進めるのがおすすめです。

面接の本題へ入る前に、天気の話や来るまでの交通事情、ちょっとした世間話などをしながら、気持ちをほぐしましょう。

アイスブレイクがメインになってしまうと、重要な質問の時間が減ってしまいます。適当なところで切り上げて、じっくり応募者の話を聞き出してください。

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方法3:面接官の見た目・態度を見直す

面接官が偉そうな態度を取らないのはもちろん、話しやすい雰囲気であるかどうか、面接に見合った準備ができているかどうか、事前に確かめておきましょう。

作業着で面接に臨んでいる、面接場所に灰皿がある、という場合、清潔感あふれる身だしなみに変える、面接の場ではタバコを吸わないなど、企業風土の見直しが必要です。

若手社員の声などにも耳を傾けながら、時代が求める環境・態度かどうか、チェックしてみてください。


まとめ

圧迫面接は、企業にとってさまざまなマイナスがあると分かりました。まだ圧迫面接やそれに近い手法が取り入れられている場合は、採用が不利になる恐れがあります。

候補者に寄り添った面接、相手の気持ちを大切にした面接が求められる時代です。しっかりと応募者の話を聞き、自社に適しているかどうか確かめながら、必要な人材を獲得しましょう。






ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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弁護士法人 永 総合法律事務所 代表弁護士  永 滋康(えい しげやす)
監修した人
弁護士法人 永 総合法律事務所 代表弁護士 永 滋康(えい しげやす)

慶應義塾大学法学部法律学科 卒業。中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の代表弁護士。日本弁護士連合会代議員。第二東京弁護士会常議員。文部科学省再就職コンプライアンスチームメンバー。東京家庭裁判所 家事調停委員。

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