シニア・シルバー世代の雇用|メリット・リスクや採用成功のポイント
少子高齢化に伴い労働力人口が減少する中、企業存続においてシニア・シルバー世代の雇用は重要課題の1つとなっています。
シニア人材の活用は、労働力確保やシニアの経験・スキルの継承など自社への良い影響につながることが期待される反面、健康面など就労上のリスクが高い懸念もあります。
この記事では、シニア・シルバー世代の雇用メリットやリスク、採用成功のポイントなどを解説します。
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シニア・シルバー世代の雇用メリットは多い
人材不足が深刻化する中、シニア・シルバー世代の雇用促進に期待をかける企業は少なくなく、就労意欲の高い高齢就業者の採用は、将来的に業種・職種を問わず増加していくものと予想されます。
実際、シニア人材を採用した場合の雇用メリットは、以下の通り数多く存在しています。
- 労働力確保による人手不足解消
- 自社の競争力アップ
- 国からの助成金・サポートを得やすい
メリット1.労働力確保による人手不足解消
シニア人材の雇用による直接的なメリットとして、労働力確保による人手不足解消があげられます。
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)」によると、2022年平均の15~64歳の労働力人口は5,975万人で、前年に比べ6万人の減少となっています。
また、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」においては、2060年の65歳以上人口割合は約38%と、日本人の約4割が高齢者になる未来が推計されています。
様々な統計・推計を鑑みると、日本ではさらに高齢化が進む傾向が見られ、多くの企業で長期的に労働力不足傾向が続くものと考えられます。
そのような中、いわゆる「猫の手も借りたい」状況に陥っている企業においては、社会人経験豊富なシニア人材を採用し、少しでも戦力を確保したいと考えるのは自然な流れと言えるでしょう。
シニア人材の就業意欲も高い
シニア人材を雇用する上で、おそらく多くの企業が気になるのは、シニア人材側の就業意欲ではないでしょうか。
シニア層は「年金で暮らす」イメージが強いかもしれませんが、近年では60代以降でも働くことがより身近になりつつあります。
株式会社リクルート ジョブズリサーチセンターの「シニア層の就業実態・意識調査2023」では、非就業のシニア人材のうち約4人に1人が就労したいと回答しています。
その一方で、非就業かつ就業意欲のあるシニアのうち、5年以内の仕事探しで53.7%が仕事を見つけられていない現状もあります。
考え方を変えると、企業としては、就業意欲の高い有望シニア層を早い段階で労働力として確保することで、同業他社に差をつけられる可能性があります。
新型コロナ禍の影響も収まりつつある
シニア人材の採用にあたり、新型コロナ禍の影響は少なからず存在しています。
2020年から本格化した新型コロナ禍においては、一時的に経済活動が制限された時期もありましたが、WHOが新型コロナ緊急事態宣言を終了したこともあり、経済活動も少しずつ新型コロナ前の状態へと戻りつつあります。
株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」における、人手不足割合の推移を見てみると、次のような変化が確認できます。
<正社員>
- 2019年4月の人手不足割合:50.3%
- 2020年4月の人手不足割合:31.0%
- 2023年4月の人手不足割合:51.4%
<非正社員>
- 2019年4月の人手不足割合:31.8%
- 2020年4月の人手不足割合:16.6%
- 2023年4月の人手不足割合:30.7%
日本で新型コロナウイルスの影響が本格化した2020年は、正社員・非正社員ともに人手不足割合が前年に比べて大幅に下がっていることが分かります。
しかし、2023年4月には、人手不足割合がほぼ2019年の水準に戻っています。
このことから、体調面で不安がないシニア人材であれば、積極的に採用したいと考える企業は多いものと推察されます。
メリット2.自社の競争力アップ
シニア人材を雇用することで、労働力確保の観点からプラスに働くだけでなく、同業他社と比較した際の競争力を高めることが期待できます。
また、シニア人材を雇用すること自体が、自社の対外的な評価を高めることにもつながります。
以下、シニア人材が競争力アップに貢献するポイントとして以下が挙げられます。
- 人生経験を伴う能力が高い
経験豊富なシニア人材は、自分が何かを伝える力だけでなく、話している相手や現場の状況から情報を得る能力にも優れています。
万一、何らかのイレギュラーが生じた場合であっても、過去の経験を紐解き対策を練ることができるでしょう。 - マネジメントの即戦力を採用できる
シニア人材の中には、前職等でマネジメント経験をした人もいるでしょう。その場合、役職を与えることはできなくても、間接的に自社のマネジメントレベルと高めることが期待できます。 - 自社のイメージ向上が期待できる
シニア人材の積極採用は、企業として多様な従業員を尊重するスタンスを示すことにつながり、自社のブランディングにも貢献します。
メリット3.国からの助成金・サポートを得やすい
国としても、高齢化社会に対応すべく、シニア人材の雇用促進のため様々な策を講じています。
企業がシニア人材を採用した場合、次のような制度の恩恵を受けられる可能性があります。
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金とは、65歳以上の人材に対する定年引上げ・雇用管理制度の整備など、高齢有期契約労働者の無期雇用への転換を試みる事業主を助成するものです。
助成金は以下3コースで構成されており、それぞれ満たすべき要件が異なります。
コース | 概要 |
65歳超継続雇用促進コース | 下記のいずれかを実施した事業主への助成 ・65歳以上への定年引上げ ・定年廃止 ・66歳以上の継続雇用制度の導入(希望者全員が対象) ・他社による継続雇用制度の導入 |
高年齢者評価制度等 | シニア人材の処遇につき、下記に該当する措置を“1年以内”で実施した事業主への助成 ・職業能力を評価する仕組み、賃金・人事処遇制度の導入や改善 ・短時間勤務制度・隔日勤務制度等の導入や改善 ・負担軽減を目的とした、在宅勤務の導入や改善 ・研修制度の導入や改善 ・適材適所を実現する制度の導入や改善 ・胃がん検診・生活習慣病予防検診など、法定外の健康管理制度の導入など |
高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者につき、無期雇用に転換させた事業主への助成 |
名称自体は「65歳超」となっているものの、実質的に50代の段階から選べるコースもあることから、優秀な人材を退職させず自社にとどめる上でも利用価値のある助成金と言えるでしょう。
こちらの助成金について、より詳細な情報を知りたい方は、以下サイトもご覧ください。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金は、ハローワーク等の紹介によって、高年齢者などの就職困難者を“継続して雇用する労働者”として雇い入れる事業主への助成金です。
もともとは「生涯現役コース」というコースが対象でしたが、令和4年度末で当該コースが廃止となり、特定就職困難者コースにシニア人材が加わりました。
こちらの助成金について、より詳細な情報を知りたい方は、以下サイトもご覧ください。
厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
70歳雇用推進プランナー等による相談・援助
2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法によって、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施が努力義務となりました。
それに伴い、高齢者の雇用に関する専門知識・経験等を持つ専門家が「70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザー」として認定され、全国に配置されています。
70歳のシニア人材を雇用するにあたり、独自に施策を講じるノウハウが自社にない場合、自社の状況を見極めつつ専門的・技術的なアドバイスをしてくれるアドバイザーの存在は重要です。
また、70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーには無料で相談でき、企画立案に関しても経費の1/2は負担が軽減されるため、事業主としても安心して頼れるでしょう。
その他、サービス詳細について知りたい方は、以下サイトもご覧ください。
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構|70歳雇用推進プランナー等による相談・援助
シニア人材の雇用に関するリスクとは
シニア人材を雇用することに関しては、メリットも多い反面、若年者・中堅世代とは異なるリスクも存在しています。
以下、主なものをいくつかご紹介します。
- 体力面で不安があり、体調不良による離脱も想定される
- デジタル機器の操作・業務の理解が追い付かない
- チーム運営に支障がでる可能性がある
リスク1.体力面で不安があり、体調不良による離脱も想定される
多くの企業は、労働者にできる限り長い間戦力になって欲しいと考えています。
しかし、シニア人材の場合、体力面での衰えを隠せない人も少なくなく、若年者・中堅世代と同様の就労時間で契約するのは厳しい部分があります。
職種によっては、一定ラインの体力がなければ務まらない仕事もあることから、任せたい仕事内容によっては懸念点となるでしょう。
また、体調がすぐれない中働き続けている人材は、やがて体調不良により離脱してしまうおそれもあります。
よって、シニア人材を雇用するにあたっては、体力面での不安や体調不良による離脱のリスクを想定し、働く高齢者の特性に配慮した職場環境の構築が求められます。
考えたい「エイジフレンドリー」
厚生労働省が令和2年(2020年)3月に策定した、エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)によると、シニア労働者には次のような傾向が見られます。
- 60歳以上の雇用者数が第三次産業(商業・保健衛生業)で増加
- 2018年時点での労働災害による死傷者数は、60歳以上の労働者が26%を占める
- 転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べて高く、女性で顕著
このような傾向を踏まえ、働く高齢者の特性に配慮した“エイジフレンドリーな職場”を作ることが、シニア人材を雇用する事業者には求められています。
具体的には、シニア人材の就労状況・業務内容等を鑑み、自社で実施可能な労働災害防止対策に取り組む必要があるでしょう。
リスク2.デジタル機器の操作・業務の理解が追い付かない
DX化が進む現代の職場において、デジタル機器の操作が必要になる場面は増加傾向にあります。
これまでの業務で“アナログ的”に仕事を進めてきたシニア人材にとっては、デジタル機器の操作が大きなストレスとなるおそれがあるでしょう。
デジタル機器の操作を学ぶにあたっては、画像や動画などの撮影によって作業等を覚える方法もありますが、シニア人材の場合はそもそも自力での撮影や動画等の視聴が難しい場合も考えられます。
加えて、記憶力・柔軟性も低下していることが予想されるため、機器の操作だけでなく業務を理解してもらう上でも、独自のマニュアル・メニュー等が必要になるかもしれません。
リスク3.チーム運営に支障がでる可能性がある
シニア人材を新たに雇用しチームの一員として働いてもらうためには、「シニア」と「新人」という、いわば“相反する要素”をどう解釈して現場に投入するかが問題となります。
年長者への配慮が求められる場面が多い日本社会においては、新人のシニア人材に遠慮する場面が増えるなど、現場の運営に支障をきたすおそれがあります。
場合によっては、自分の孫に近い年齢のスタッフと働く状況も十分考えられるため、企業としてはシニア人材が円滑なコミュニケーションを妨げるような状況にならないよう、環境を整える必要があります。
シニア人材側の問題も
シニア人材の雇用に関しては、企業側の受入体制が整っていないケースだけでなく、シニア人材側に何らかの問題があるケースも少なくありません。
株式会社アルバイトタイムスで静岡・愛知の採用ご担当者様に実施した「シニア(60歳以上)人材の活用に関するアンケート」によると、シニアの採用で困ったこと・困っていることとして最も多かった回答は、「頑固で融通がきかない面がある、新しいことを嫌う(17.3%)」というものでした。
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そのため、一から新しいことを覚えてもらうよう努力するよりも、これまでに培ってきた経験・知識を活かせるような仕事を任せた方が、シニア人材を有効活用できるでしょう。
同時に、シニア人材を受け入れる現場スタッフには、人材の個性・期待する役割などについて、事前に話し合いをすることをおすすめします。
シニア人材の雇用を成功させるための準備
シニア人材を正規雇用し自社で活躍してもらうためには、シニア雇用のメリットを最大化し、リスクを最小化するための施策が求められます。
具体的には、シニア人材の採用を検討した段階で、次にご紹介するような準備を進めることが大切です。
- 個々の人材の特徴・能力を把握する
- 過去の経験等を活かせる仕事を任せる
- 安全・健康に配慮した職場環境を構築する
- 複数の勤務形態を用意する
- すべてのスタッフが“つながる”職場を構築する
- 教育・受入体制をシニア向けにアップデートする
個々の人材の特徴・能力を把握する
シニア人材は、ともすればステレオタイプで括られやすく、組織内で「一人ひとり違う人間である」ことが忘れられてしまいがちです。
シニアだからといって体力がないとは限りませんし、ITの知識・センスに優れるシニアも一定数存在しています。
個々の人材の特性を把握できるようヒアリングに努め、同時に家族の事情にも配慮しつつ、任せる仕事や配置先などを決めましょう。
過去の経験等を活かせる仕事を任せる
シニア人材の多くは、すでに社会で多くの経験を積んでおり、そこから得られたスキルを実務に活用したいと考えています。
一から新しいことを覚えるのが苦にならない人材を除き、基本的には過去の経験等を活かせる仕事を任せた方が効率的でしょう。
具体的な施策としては、配置について複数の選択肢を提案したり、経験・スキルを前面に出した肩書を用意したりするのが効果的です。
その際は、新しく採用するシニア人材だけでなく、現在自社で働いている従業員が60代以上になった場合の活動方針も決めておくとスムーズです。
安全・健康に配慮した職場環境を構築する
シニア人材の安全・健康確保を実現するためには、業界・職種に応じて、シニア人材の特性に配慮した職場環境づくりが求められます。
例えば、介護現場での転倒リスクといっても、何もないところでつまずく、水や洗剤で滑って転倒するなど複数のケースが考えられるため、普段の業務フローの段階からリスクを軽減できるようにしましょう。
可能であれば、階段に手すりを設ける、不自然な作業姿勢にならないよう作業台の高さを調整するなど、ハード面での対策も講じておきたいところです。
複数の勤務形態を用意する
シニア人材の中には、就労意欲はあっても体力が続かない人や、家庭の事情からフルタイムで勤務できない人なども少なくありません。
雇用契約を結ぶ際に備えて、午前中あるいは午後だけの勤務、週3~4日勤務など、様々な勤務形態を用意しておくと、より多くの人が働けるでしょう。
特に、24時間稼働する現場においては、子育て世代の負担軽減を目的として、早朝・深夜帯にシニア人材を割り当てる選択肢もあります。
その際、短時間シフトで複数人を配置すると、より多くの人材の雇用を創出することにつながります。
すべてのスタッフが“つながる”職場を構築する
若年者が比較的多い職場でシニア人材を採用する場合、ジェネレーションギャップを危惧する声が大きくなるおそれがあります。
この点に関しては、スタッフだけに人間関係の構築を任せてしまうと、なかなかスムーズなコミュニケーションは進まないでしょう。
よって、シニア人材の採用担当者・管理職などが、スタッフ同士で“つながる”機会を積極的に創出することが大切です。
互いの強みを教え合う機会を作ったり、シニア人材を採用する背景を周知したりすることで、相互理解を進めることにつながります。
教育・受入体制をシニア向けにアップデートする
シニア人材の教育・受入に関しては、若年者と同じように行うのは難しいため、シニア向けに体制をアップデートすることも重要です。
シニア人材が仕事を理解して覚えるスピードは、どうしても若年者に比べて遅くなりがちですから、同世代のスタッフに教育係を担当してもらうなどの工夫が必要になってきます。
また、入社後すぐに配置を検討するのではなく、個々の習熟度・体力を考慮しながら配置を考えていくことが望ましいでしょう。
シニア層をターゲットにした場合の求人広告事例
これからシニア層をターゲットに求人広告を出そうと考えている場合、求人記事や募集要項の表現にも気を配りましょう。
特に、年齢や体調面での不安から「自分でもできるだろうか……」と不安を抱いているシニア求職者は少なくないため、安心感を与えられる文面を意識したいところです。
具体的には、次のような表現で好反応を得られた企業が多く見られます。
- 50代は若手!?70歳の女性がいきいき活躍中
- 定年退職後の体力づくりにぴったり
- 家事の延長でできます など
- 体力的な負担もなく安心
- 健康的に体を動かせるお仕事です
このほか「○名体制だから安心」・「○週間でできるようになる」など、具体的な数字も加えてアピールするのも効果的です。
まとめ
シニア人材の雇用は、単純な労働力確保にとどまらず、自社の競争力アップや対外イメージの向上につながります。
その一方で、採用後の離脱・ミスマッチ等のリスクは若年者・中堅世代に比べて高くなることが予想されるため、企業としてもサポート体制を整えた上で人材を募集・雇用する必要があるでしょう。
すでに一定のシニア採用実績があり、体制を整えているにもかかわらず応募者が集まらないとお悩みの採用ご担当者様は、株式会社アルバイトタイムスの採用支援サービス「ワガシャ de DOMO」をご利用ください。
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