【2023年最新版】残業時間の上限や法改正について詳しく解説

【2023年最新版】残業時間の上限や法改正について詳しく解説
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こんにちは、人事・採用担当者のためのお役立ちサイト ヒトクルのヒトクル編集部です。

2019年、残業時間の上限に変更が加えられました。この残業ルール変更については広く知られていますが、2023年の最新ルールは把握できていない、という方もいると思います。

そこで今回は、2023年時点でどのような法改正が行われているのか、今後2024年以降に予定されている変更点をまとめました。

どのような点に注意して残業時間と向き合えば良いのか、基準やルールを覚えておきましょう。

【徹底解説】働き方改革関連法の概要や改正点、対応方法や施行スケジュールなど

※採用・人事担当者が把握しておくべき「2023年2024年 法改正まとめ」
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働き方改革関連法の残業時間上限をチェック

残業時間の上限は2019年、働き方改革関連法で定められました。
企業はどのようなルールを順守するべきなのか、内容をみてみましょう。


労働時間の上限規制導入

2019年以降、残業時間に上限規制が導入されました。
大企業では2019年4月以降、中小企業でも2020年4月以降に適用されています。

具体的には、

・時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則月45時間

・年360時間 ・臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない

・臨時的な特別の事情があり同意を得た場合でも、時間外労働:年720時間以内、時間外労働+休日労働:月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内とする 

・原則である月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで 

・法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断

このように決定されました。

参考サイト/厚生労働省:時間外労働の上限規制わかりやすい解説

臨時的な特別な事情があり、労使が合意しているという場合のみ、特別条項付き36協定の締結によって、定められた時間以内の時間外労働が可能です。

特別条項付き36協定については、この後詳しく解説いたします。


働き方改革関連法に違反すると罰則がある


働き方改革関連法の施行以前は、36協定を締結していれば罰則は特にありませんでした。
そのため、従業員負担の大きい時間外労働が、多くの企業でみられました。

2019年の働き方改革関連法では、このルールを変更。
労働基準法改正が行われ、罰則が追加されました。

  • 残業時間が月100時間以上、年720時間を超えた 
  • 月の残業時間が7回以上45時間を超えた 
  • 残業時間と休日労働時間の2~6ヶ月平均が80時間を超えた


という場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金を科される恐れがあります。

「気づいたら規定を超えていた」というミスのないように、残業時間はしっかりチェックしておきましょう。


時間外労働と休日労働の違いをチェック

法改正にあたり、定められた残業時間を遵守するために、時間外労働と休日労働の規定を覚えておきましょう。

時間外労働を考える際、企業で定められた所定労働時間を超える時間が残業、と考えがちです。ですが法律では、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間:週40時間)を超える時間を指しています。

休日労働の場合も、企業カレンダーにある所定休日に労働した時間、という勘違いが多くみられます。

こちらも、法律上では、労働基準法で定められた法定休日に労働した時間を、休日労働としています。

労働基準法では・使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休日を与えなければならないと決められています。

法定休日の労働は割増賃金となるため、法定休日=毎週1回の休日を指すのが一般的です。

仮に日曜を法定休日にした場合、所定休日の土曜に労働した時間は休日労働に該当しません。日曜に労働した時間のみ、法定休日労働になる点を、覚えておきましょう。

法定休日が日曜で、月曜から土曜までの労働時間が40時間を超えた場合、オーバーした時間はすべて時間外労働となります。

労働基準法等の法律における労働時間|人事労務が押さえておきたいポイント

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36協定(サブロク協定)のルール

36協定は、法定労働時間(1日8時間:週40時間)を超える時間外労働や、法定休日の休日労働がある場合、従業員との間で締結しなくてはならない労使協定です。

臨時的な特別の事情がある場合は、36協定に合意の上、残業時間上限を拡大できます。

36協定を締結する際、どのような決まりがあるのか、どこに注意するべきなのか、ルールをチェックしておきましょう。


36協定締結の際の残業時間上限はある?

残業時間の上限を拡大できる36協定ですが、働き方改革関連法で残業時間の上限が定められています。

  • 年720時間以内 
  • 時間外労働+休日労働時間が月100時間未満 
  • 2〜6ヶ月の残業時間が、平均80時間以内 
  • 原則である月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで


雇用者と労働者の間で合意できている場合も、これらの上限規制を遵守してください。


36協定の締結方法

36協定を締結すると決めたら、必要な内容を含めた36協定届を作成しましょう。
なお、複数の事業所や店舗がある場合には、それぞれの36協定の締結と届出が必要です。

36協定届には、どのような業務につくのか、詳しく記載します。
「販売」「製造」といった大まかなジャンルではなく、具体的な内容と時間外労働を求める理由を示しておきましょう。

時間外労働が必要な業務と理由、対象従業員が決まったら、36協定を締結の上、36協定届けを労働基準監督署へ提出してください。

36協定届の記入方法は、厚生労働省による記載例も参考にしてみてください。
参考サイト:36協定届の記載例(厚生労働省)


36協定に違反した場合の罰則

36協定の締結は企業の義務です。36協定を締結していない、36協定届を提出していない場合、法令違反となり罰則の対象となります。

協定を締結し届けを出していても、年間720時間以内などのルールを守らない場合は違反となります。

違反による罰則内容は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。上記の違反をすると、事業者側にこれらの罰則が科せられる場合があります。

特に残業時間が45時間を超えて良いのは年6ヶ月まで、というルールを超えてしまう例が多くみられます。

違反しないためにも、従業員一人一人の残業時間を、きちんと管理しておきましょう。

36協定の内容について、いつでも人事や上司などに確認できる体制を整えておくと、従業員が不安や疑問を感じた時にすぐ説明できます。安心して働いてもらうためにも、ルールを守って対応しましょう。


36協定が適用されない業種もある

雇用者と労働者の間で締結が求められる36協定ですが、中には適用されない業種もあります。
以下の4種類の業種は、2024年3月31日まで適用の猶予期間が設けられています。

  • 建設事業
  • 自動車運転の業務
  • 医師
  • 鹿児島県および沖縄県の砂糖製造業

2024年以降の法改正については、本記事で後ほど解説するので参考にしてください。
また、新技術や新商品等の研究開発業務においては36協定の対象外とされています。

ただし、週40時間を超える時間外労働が月100時間を超えた場合は、労働者が医師の面接指導を受ける義務が生じるため注意が必要です。


管理職

企業の管理職(労働基準法では管理監督者)は、労働者ですが36協定が適用されません。
そのため、法律で定められている月45時間:年360時間の上限を超えた残業をしている例が少なくありません。

このことから、実際は管理職の仕事をしていない“名ばかり管理職”が問題視されています。

チェーン展開している飲食業や小売業の店長や、課長などの中間管理職を労働基準法上の管理監督者扱いにして、残業代の支給をしないというものですが、労働基準法で認められている管理監督者は、以下の条件をすべて満たす必要があります。

● 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な職務内容を有していること

● 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること

● 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること 

● 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること 


これらの条件を満たしていないにも関わらず、労働基準法上の管理監督者としている場合は、法違反になる可能性があります。

上記4つの着眼点で、管理監督者として扱うことがふさわしいのか、確かめておきましょう。

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2023年以降の時間外労働はこう変わる!

2023年以降、時間外労働についての法改正が待っています。
中小企業にも関連している法改正ですので、内容をしっかり覚えておきましょう。

あなたの会社は大丈夫?採用・人事担当者が知っておくべき2022~2024年の法改正まとめ


中小企業の法定割増賃金率引き上げ

これまで月60時間を超える残業に対する割増賃金率は、大企業50%、中小企業25%に定められていました。ですが、 2023年4月1日から、中小企業も大企業と同様の取り扱いとなります。

60時間以内の場合は25%で変わりありませんが、60時間を超える場合は変更になるため注意しましょう。


労働基準法違反に注意

2023年以降の法改正を知らず、月60時間を超える残業に対して、これまで通り25%の残業代を計算してしまうと、労働基準法違反になります。

また、「60時間を超えると割増賃金率が上がってしまうから」という理由から、割増賃金率35%以上となる休日振替を選択する方法も控えましょう。

厚生労働省がすでに、「月60時間超の割増賃金率50%の適用を回避するために、休日振替をおこなって休日割増賃金率35%とすることは法の趣旨に照らして望ましくない」という見解を出しています。


2024年以降の法改正も合わせてチェック

2023年だけでなく、すでに2024年の時間外労働に関連する法改正が決定しています。

変更があるのは、これまで猶予されていたドライバー業務や建設業、医師です。該当するスタッフがいる場合は、間違いのないように、チェックしておきましょう。


ドライバー職の法改正


【2024年問題】物流業界の働き方改革|企業やドライバーの課題・対策を解説

2024年4月1日以降、ドライバー職(自動車運転の業務)にも時間外労働の上限規制が提供されます。運送業であっても、運行管理者や整備、事務などの仕事についている場合は、先に解説した一般企業と同じ扱いになります。

ドライバー職の場合は、年960時間:月平均80時間(休日労働を含まず)が残業時間の上限です。

将来的にはドライバー職も同じ扱いになる予定があるため、ドライバーを雇用している場合は、定期的に情報を調べておきましょう。


建設業の法改正

建設業も、く2024年4月1日から、一般企業と同じ時間外労働の上限規制が適用されます。特別条項付き36協定の締結も求められますので、準備しておきましょう。

基本的には一般企業と同じですが、建設業ならではの特例もあります。

災害からの復旧や、復興などの事業に携わる場合、

1.時間外労働と休⽇労働の合計を⽉100時間未満に収める 
2.時間外労働と休⽇労働の合計を、「2~6カ月平均」が全て1⽉当たり80時間以内に収める



上記項目は適用外となります。


医師の法改正

2024年4月1日以降、医師にも罰則付きの時間外労働の上限が定められます。
適用される上限時間は、医師の働きかたによって変わるため、覚えておきましょう。

A(一般労働者と同程度の医師) 年間960時間以下 

連携B(医師を派遣する病院) 年間1860時間以下(各院では960時間以下)

 B(救急医療等) 年間1860時間以下

 C-1(臨床・専門研修) 年間1860時間以下

 C-2(高度技能の修得研修) 年間1860時間以下 



またBCに該当する場合、多くの残業が予測されることから、

・月100時間以上の時間外

・休日労働時間が見込まれる医師全員に対する面接指導 

・9時間以上の勤務間インターバル確保 

・連続勤務時間制限28時間 

・代償休息(未取得の休息を別に付与)しての勤務


という4つの項目も義務化されます。


残業時間の上限規制に向けて企業がするべき対策3つ

残業時間の上限規制を守るために、企業がするべき対策があります。今すぐ取り入れられる、3つの対策方法をみてみましょう。


1.適切な勤怠管理

従業員がどのくらい残業しているのかを把握するために、適切な勤怠管理が必要です。
手書きや手打ちのタイムカードを使っている場合、残業時間が見えにくくなります。

正確に時間をチェックするためにも、オンラインで管理できる勤怠管理システムの導入がおすすめです。

給与計算がスムーズになったり、リモートワークでも管理できたり、といったメリットもあります。まだ導入していない企業は、自社に合ったシステムを探してみてください。


2.残業が少ない環境を整える

残業時間の上限を気にしたくない、特別条項付き36協定の締結を避けたい、という場合は、残業を減らせるように取り組んでみましょう。

勤怠管理を取り入れると、残業の多い部署や人材がみえてきます。
この部署の仕事を別の人材で補ったり、作業を減らせるシステムを導入したり、といった配慮をしてみてください。

会議を効率化したり、業務委託したり、といった手段もあります。
どこで残業が増えているのか、どうしたら無駄を削減できるのか、検討してみましょう。


3.1か月変形労働時間制を導入する

・月末はいつも仕事が忙しくなる。
・月の半ばにしなければいけない作業がある

など、従業員の業務量が月の一定時期によって違う場合、1か月変形労働時間制を導入すると、決まった時期の残業を減らせます。

例えば、忙しい時期の所定労働時間を8時間から9時間にして、忙しくない時期の所定労働時間を8時間から7時間にするなどの勤務形態が可能となります。

1か月変形労働時間制は、1か月で平均して週40時間以内の労働時間にすれば、1日または1週の労働時間が法定労働時間を超えてもよい制度です。

明らかに仕事量がある週やある時期によって違う場合は、1か月変形労働時間制の導入を考えてみましょう。

導入にあたっては、従業員の理解・協力が不可欠のため、あらかじめ導入の意図や導入後の労働時間の態様について、相談しながら進めましょう。


残業が続く場合に従業員ができる対策4つ

長時間の残業が続いている場合、従業員は以下のような対策を取ることができます。

  • 36協定を確認する
  • 上司に相談する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 弁護士に相談する

それぞれどのように対応するのか見てみましょう。


36協定を確認する

企業には36協定を従業員に周知する義務があります。企業が適切に義務を果たしていれば、従業員は以下のいずれかの方法で36協定の確認が可能です。

  • 職場に備え付けられている書類を確認
  • 直接交付された書面を確認
  • 会社のシステムを通してオンライン上で閲覧

36協定を確認すれば、現在の働き方が違反していないかどうかを確認できます。
どの方法で確認できるか分からない場合は、人事部の担当者に相談してみましょう。


上司に相談する

36協定に違反していないものの残業時間について悩みがある場合は、上司への相談を検討してみてください。

どのような理由で残業が増えているのか、無駄な残業を減らす方法はないかなどを話してみるとよいでしょう。説明を受けることで納得感を持って業務に当たれます。


労働基準監督署に相談する

会社が36協定に違反している場合、労働基準監督署に相談するのも一つの方法です。

労働条件の相談のみであれば匿名でも可能ですが、対応を依頼する場合は残業時間を把握できる証拠を用意し、実名で申告する必要があります。

申告することによって会社に労働基準監督署からの指導が入り、労働環境が是正される可能性があります。


弁護士に相談する

違法な労働環境の是正とあわせて未払いの残業代の支払いを求める場合は、弁護士への相談を考えましょう。

労働環境に応じた法的観点での対処法のアドバイスや、専門的知識が必要な労働審判・訴訟の手続きを行ってもらえます。

また、弁護士を通した交渉ができるため、自分で会社に交渉する負担も軽減できます。


まとめ

残業時間の上限ルールは、年々変化しています。
今はどのような決まりになっているのか、チェックした上で、労働基準法などの法律を遵守してください。

残業を減らす努力をする、必要に応じて36協定を締結する、法に則った残業代を支払う企業は、従業員にとって信頼のおける企業です。
現状のルールを守り、働きやすい職場を提供しましょう。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

「ヒトクル」は、株式会社アルバイトタイムスが運営する採用担当者のためのお役立ちサイトです。

「良いヒトがくる」をテーマに、人材採用にかかわる方々のヒントになる情報をお届けするメディアです。「採用ノウハウ」「教育・定着」「法務・経営」に関する記事を日々発信しております。各種お役立ち資料を無料でダウンロ―ドできます。

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社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。