退職代行サービスを使われたらどうする? 企業が取るべき対応を解説!

退職代行サービスを使われたらどうする? 企業が取るべき対応を解説!
目次

退職代行サービスを利用して、従業員が会社を辞めるケースが増えています。

社員本人からではなく、退職代行業者から退社の意思を告げられたら、相手に応じた対処が必要です。

 退職代行からの連絡が入った場合、すぐ対処しなければと焦りがちですが、まず相手の身元を確認する、場合によっては交渉を断る、という選択肢もあります。

退職代行を利用する例は今後も増える可能性があるため、適切な対応ができるように準備しておくと安心です。合わせて、円満退社のコツや、実際に退職代行を使われた企業の事例も紹介いたします。


退職代行サービスとは

退職代行は、代行業者の担当者が労働者に代わり、退社手続きや交渉を進めるサービスです。社員側が退職代行業者へ規定の料金を支払い、退社に関連する手続きを依頼します。

「自分から退職を申し出る勇気がない」
「引き留められた場合に、断る自信がない」
「いやみを言われたり、理不尽に怒られたりしそうで不安」
「パワハラやモラハラなどの被害に遭い、当事者の顔をみたくない」

など、さまざまな理由で退職代行を選ぶ従業員が増えており、退職代行業者の数も増加しています。


退職代行業者の種類をチェック 

退職代行業者には、弁護士が提供しているサービスもあれば、民間業者が扱うサービスもあります。それぞれの違いを確かめておきましょう。


弁護士が提供する退職代行サービス 

弁護士が労働者に代わり、退職手続きを請け負うサービスです。

退社を希望する人の要望に応じて、退職日を調整したり、引き継ぎについて交渉したり、といった業務を担います。

退職代行=退職希望者に代わって交渉や調整を進める人

という風に捉えがちですが、退職日の調整、退職に関連する交渉は、弁護士資格を持つ人だけが行える業務です。


退職代行ユニオン

退職代行ユニオンは、中小企業など労働組合のない企業のための外部労働組合です。正社員、契約社員、アルバイトなど、どのような働き方の人でも加入できます。

退職代行ユニオンは、団体交渉権を有しているため、退職日の希望や給与の未払いなどがある場合は直接交渉可能です。

交渉や調整が上手くいかず、裁判に発展するような場合は、退職代行ユニオンではなく弁護士の仕事になります。


民間の退職代行サービス

退職したい社員の代わりに退職を申し出る、民間の退職代行サービスが増えています。

弁護士や退職代行ユニオンよりも、手頃な価格で相談できる一方で、強引な退社要求や交渉などを行う違法業者との間で、トラブルになるケースがみられます。

民間の退職代行サービスには、弁護士や退職代行ユニオンのような調整・交渉の権利はありません。

認められているのは、退職者に代わり退社の意思を伝える、退職届を提出する業務のみとなります。それ以上の要求をする業者から連絡があった場合は、注意が必要です。


退職代行の連絡があった場合の対処法

入社してすぐや連休明け、賞与を支給したタイミングなどは、退職代行業者の動きが活発になる時期です。

弁護士や退職代行ユニオン、退職代行業者から連絡が入ったら、どのように対処するべきか、6つの手順を見てみましょう。


手順1:退職代行の立場を確かめる

退職を申し出ているのが弁護士なのか、退職代行ユニオンなのか、交渉の権限を持たない退職代行サービスなのかによって、企業が取るべき対応が変わります。

多くの場合、電話連絡からスタートします。

まずは誰が電話をかけてきたのか、身元を確かめておきましょう。

中には、退職代行を名乗る詐欺業者や、社員の身内や知り合いによる嫌がらせ行為という場合もあります。

知らずに話を進めてしまうと、トラブルに発展する恐れがあるため、弁護士を名乗っているような場合も、相手の素性をきちんと把握してください。

弁護士や退職代行ユニオンからの電話の場合は、弁護士事務所の名前や担当者の名前を確かめましょう。

情報を聞いた後、こちらから電話をかけ直して、実在している事務所、人物であることをチェックします。

民間の退職代行業者の場合も、社名や担当者の名前、連絡先を聞き、折り返し連絡しましょう。

業者のホームページがあるかどうか、活動実績はあるかどうか、という点をチェックすると、詐欺などのトラブルを防げます。

担当者の身元が分かったら、相手に応じた対応を速やかに進めましょう。


弁護士・退職代行ユニオンへの対応

相手が弁護士や退職代行ユニオンの場合、担当者は社員の正当な代理人です。

本人の退職申し出と同じ意味を持ちますので、意思を尊重し、退職手続きを進めましょう。

渉や調整の拒否は民法に反する恐れがあります。

突然の退社申し出で困る、といった事情があるかもしれませんが、退職は社員に認められた権利のため、意思を受け入れてください。 

次に、弁護士や退職代行ユニオンから退職者の希望を聞き、退職日を調整したり、退職金を決定したり、交渉や調整に応じます。

要求が、未払いになっている給与の請求やハラスメントへの慰謝料請求、といった場合もあります。

どのような希望があるのか、弁護士や担当者としっかり話をした上で、要望に応じた対応を心がけましょう。


民間の退職代行業者への対応

退職を申し出ている相手が民間の退職代行サービス会社の場合、弁護士や退職代行ユニオンのような調整・交渉はできません。

退職の意思を伝えることはできますが、さらに踏み込む行動がある場合は非弁行為にあたります。

脅すような言動をする業者もありますが、違法行為にあたるため、拒否の姿勢をみせて問題ありません。

このように、弁護士や退職代行ユニオンのような活動をしようとする業者もあれば、依頼者からの相談を受け、退職を伝える電話をかけて終わり、という業者もあります。 

後者の場合も、退職を申し出る以外の手続きはまったくしない、という場合があり、注意が必要です。

代行業者とのやりとりでは退職を進められず、本人へ連絡するしかなくなった、というケースもあります。 

自社社員が民間の退職代行に相談している場合、会社に直接退職を申し出にくい、何が何でも辞めたい、といった気持ちの表れです。

本人との直接連絡や引き留めは難しいケースが多いことから、退社に必要な手続きをすぐ始めた方が、トラブルを減らせるでしょう。

「退職代行業者へ相談したのに、会社が辞めさせてくれない」

などの事情をSNSやYouTubeなどに流される恐れもあります。

民間の退職代行業者から連絡があったら、できるだけ円満な解決を目指すのがおすすめです。 

次の手順2からは、退職にあたってどう手続きを進めるのか、具体的な対応を見てみましょう。


手順2:従業員からの依頼かどうか確認する

退職代行から連絡があったら、担当者だけでなく、従業員の本人確認もしておきましょう。

特定の人物が嫌がらせで退職の連絡をしていたり、その人になりすまして退職代行を利用していたり、というケースがあるため、本当にその社員からの相談なのか、チェックが必要です。

退職代行を利用している場合、本人とは直接連絡が取れないケースがほとんどです。

念のため、メールや電話などで確認の連絡を入れながら、退職代行を担っている相手へ、本人確認を求めましょう。

従業員が委任状や契約書にサインをした書類、退職代行へ提示した身分証のコピーなどを提出してもらい、確認作業を進めてください。


手順3:該当社員の契約期間を確かめる 

従業員の本人確認ができたら、雇用契約を確かめておきましょう。 

雇用した従業員は退職の権利を持っており、企業側は基本的に拒否できません。

ただし、いつまで契約期間なのか、という点については民法627条、628条に則る必要があります。

民法627条

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

 2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 3 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。

民法628条

 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。 

つまり、やむを得ない事情がある場合を除いては、退職を申し出た2週間後、もしくは契約期間に応じて雇用関係終了となります。

労働者本人や退職代行が速やかな退職を求めても、やむを得ない事由がなければ、雇用契約期間内の場合は退職できないため、契約満了日を待って手続きを進めてください。


手順4:退職届を受け取る

退職代行を利用する場合も、退職の意思を示す退職届が必要です。

退職代行を通じて、会社へ送られるケースが多いでしょう。

会社側で指定した様式での退職届が必要な場合は、データや原本を送付し、返送して貰いましょう。

退職届の不備を未然に防ぐために、契約が完了する退職日を手順3であらかじめ調べておくと安心です。


手順5:貸与品を返送してもらう 

退職社員に貸し出している制服やパソコン、タブレット、スマホ、名刺、社員証、社章、会社のキー、マニュアルなどがあれば、まとめて返送を依頼しましょう。

本人が持参するのは難しいケースが多いため、宅配便を利用するのが一般的です。 

健康保険証は退職日に資格を喪失するため、退職日以降に郵送して貰います。

会社のお金で社員が購入した通勤定期は、払い戻しの上、払戻金を会社へ返金するのがルールです。

退職代行経由で、手続きをお願いしておきましょう。 

社内に退職者に荷物が残っている場合もあります。これらの荷物も、送付先を確認の上、宅配便で本人へ送ってください。


手順6:届いた退職届を受理する 

退職代行、もしくは本人から退職届が届いたら、内容を確認します。

不備がある場合は、連絡の上、再度送付をお願いしましょう。

不備なく退職届を受理できたら、退職関連の書類を本人へ送付してください。


退職トラブルを予防する3つのポイント

退職代行から連絡があった際、対応を間違えてしまうと、トラブルに発展する場合があります。

企業が特に注意して進めたい、3つのポイントを解説いたします。


 

民間の退職代行業者と調整・交渉しない

民間の退職代行サービスは、退職について調整・交渉する権利を持ちません。

企業に対して、調整や交渉といった行動が見られる場合は、非弁行為であると伝えてください。 

民間の退職代行業者と調整・交渉をした場合、企業側は罪に問われません。

一方で、発覚した場合は、退職代行業者にペナルティがあります。

場合によっては、手続きが振り出しに戻り、再度一からの退職手続きになったりするため、会社側の負担が大きくなります。 

民間の退職代行業者が強引に交渉を迫る場合は、顧問弁護士へ相談するのも良い方法です。

企業として、交渉や調整を求める民間業者は一切認めない姿勢を貫きましょう。


有給休暇を消化しておく

退職者の有給休暇が残っている場合、企業には直近の付与日から1年間に5日間の有給を消化させる義務(5日間の時季指定義務)があります。

5日間の時季指定義務が果たされていあにと、労働基準法に違反してしまうため、注意しましょう。

有期契約の場合でも、5日間の時季指定義務が果たされているかを確認し、5日間に満たない場合は、不足日数分を消化して退職するよう促しましょう。


できるだけ早く手続きを進める 

退職代行を通じた退職願いは、すぐにでも辞めたいという気持ちの場合がほとんどです。

契約の関係で時間がかかる場合は、担当者に理由を伝えた上で、できる限り急ぎで手続きを進めましょう。

休職を申し入れたり、引き留めたり、といった行動をした場合、「退職手続きをきちんと進めてくれない」といったマイナスのイメージを持たれてしまいます。 

SNSに悪口を書かれたり、口コミで悪い評判が拡散されたり、というケースも考えられるため、退職代行を使われた場合は、早期対応が重要です。

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退職を直接伝えられる会社づくりのコツ

退職代行を使われてしまうと、手続きが煩雑になったり、一緒に働いている従業員から不信感を抱かれたり、といったデメリットがあります。

社員から直接相談される企業がしているコツを知っておきましょう。


風通しの良い企業経営

従業員に退職代行を使われた場合、退職を言い出しづらい雰囲気の企業になっている可能性があります。

直属の上司、同僚との間にトラブルが起きている、社内全体の雰囲気が悪くなっているという場合、突然退職代行から電話がかかってきた、という事態になりかねません。 

会社の風通しが良くない場合、退職を検討する人が増え、離職率が高くなります。

誰もが自分らしく働ける会社、言いたいことが言える会社を目指して、退職代行を使われる可能性を減らしましょう。

全体的な離職率の低下にも繋がり一石二鳥です。

社員が悩みを相談できる窓口を用意する、新入社員や若手社員が安心して働けるようにメンター制度を導入する、社員同士の仲や信頼関係が深まるイベント・施策を講じるなどの方法で、風通しの良い環境づくりを意識してみてください。


退職代行へ相談した理由を考える

社員から退職代行を使われたら、なぜ直接相談できなかったのか、上司や同僚など周囲の人間も含めて理由を考えてみましょう。

言い出しづらい雰囲気はなかったか、パワハラやモラハラといった対応をしていなかったか、取引先との関係や仕事の進め方で悩みを抱えていなかったか、など、原因を解明できると適切な対策を講じられます。

退職代行が、退社にいたった理由を教えてくれる場合もあります。

退社の事実を受け止めるだけでなく、理由を受け止め、できる部分は改善してみてください。 

合わせて、退職代行を利用する例が多い、主な理由と対策をチェックしてみましょう。


1:精神的に追い詰められていた

「時間外労働などで仕事が忙しく疲れていた」
「社内の人間からハラスメントやいじめ行為を受けていた」

など、精神的に追い詰められた状態になっている場合、自分から退職を申し出る気力が失われがちです。

うつなど心の病気になっている可能性もあるため、早期フォローできる体制を整えておきましょう。

具体的には、社内アンケートや外部の調査などで、ハラスメントが起きていないか確認したり、労働時間が適正かチェックをしたりして、気持ち良く働ける労働環境を心がけます。

必要に応じて人員を異動させる、社内環境を改善する、といった対策で、健全なメンタルで働ける会社を目指してください。

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2:退職相談の際に引き留められた 

従業員が会社を辞めたい、と相談したとき、企業として止めに入るケースがほとんどです。

この時、辞めたい理由に耳を貸さなかったり、人員を確保するために無理やり引き留めたり、といった行動をした場合、「言っても無駄だ」と退職代行を選ぶ場合があります。 

「君や辞めてしまったら、この仕事をできる人がいない」 

といった言葉を使うケースがみられますが、この行為は在職強要にあたります。違法行為として訴えられる恐れがあるため注意しましょう。

人手が足りない部署がある場合は、派遣やIT化など新しい対策を導入する、誰にでもできるように業務を簡素化する、マニュアルを作成する、といった方法を取り入れてみてください。

退職相談の際は、相手を引き留めるのではなく、辞めたい気持ちに寄り添いながら、環境を変える提案をしてみましょう。


3:職場の人間関係に不満を感じている

職場の上司や仲間に不満を感じている場合、原因である相手へ退職を言い出せない、言いたくない、という心境になりがちです。

その人の顔を見るのも嫌になり、出社しなくなり、退職代行からの連絡が入る、というのも良くあるパターンです。

人間関係は目に見えにくい部分ですが、退職する社員が多い部署、退職代行を使われた部署があれば、注意して様子をみてみましょう。

社員がメンタルに不調を抱えてしまう前に、早期対応を心がけてください。


4:未払いの給与や有給の交渉がしたい 

退職を考えているけれど、自分から言い出したら有給休暇がそのままになってしまいそう、未払いの給与が払われないかもしれない、などの理由で退職代行を検討するケースがあります。

弁護士や退職代行ユニオンのサポートで、希望通りの退職を求める例です。

未払い賃金の支払いや有休消化は、企業としてかならず対応するべき問題ですが、社員に伝わっていなければ退職代行への相談に繋がります。

面接時や社内報など、社員へ届く形で、退職時対応をきちんとしている姿、実績をみせると、相談しやすい会社になれるでしょう。


5:できるだけ早く退職したかった 

社員の中には、転職先が決まっていたり、やりたいことがあったり、といった理由で、退職を急いでいる場合があります。

この時、直接申し出て、引き留められて、またお願いして、といった時間を省くために、退職代行を利用する人材が少なくありません。

退職代行を使われないようにするには、早期退職を求める社員の要望に応える土壌が必要です。

引き留めても無理そうだと判断した場合は、希望のスケジュールで退職できるように、サポートしてあげましょう。


6:入社してすぐのため相談できなかった

入社してすぐのゴールデンウィーク明けなどは、退職者が増える時期です。4月に入社したばかりの社員の場合、

「まだ配属先が決まっていない」
「部署の仲間と信頼関係を築けていない」

といった状態の社員が多く、相談相手を見つけられなかった結果、退職代行へ相談するケースがあります。

人事や上司を中心とした入社後サポート体制を整えて、気軽に相談できる会社を目指してみてください。


7:体調を崩してしまっている 

仕事とは関係ない部分で体調を崩してしまった結果、自分では退職手続きができず、退職代行へ相談する場合があります。

ケガや病気を理由に、会社へ迷惑がかかるから、といった気持ちで退職を選ぶケースもみられます。

体調を理由に社員を失いたくない場合は、ケガや病気、メンタルのサポート体制を整えて、身体の状態を万全にしてから戻れる仕組みを作っておきましょう。

ケガや病気の時に使える手当、保障、休業システムについて、情報共有しておくと退社を避けられる場合があります。


退職代行は断っても良い?

退職代行から連絡が入った場合、断りたい気持ちが芽生えがちです。

退職代行を断って良いのか、拒否できるケース、できないケースをみてみましょう。


法律に則っている場合は申し出に従う

弁護士や退職代行ユニオンなどが法律に則って退職を申し出ている場合、退職のタイミングが企業の規則に反していない場合は、退職希望を断れません。

民間の退職代行業者の場合も、交渉や調整を行っていないケースは、会社に断る権利はありません。


有期雇用契約によっては継続できる 

6ヶ月以上の有期雇用契約の場合、退職の申し出は3ヶ月前という決まりがあります。

このルールに該当する場合、すぐ退職したいという希望があっても、3ヶ月後までは契約を継続できます。 

この6ヶ月以上の有期雇用契約は3ヶ月前までに申し出る、というのは民法で定められたルールです。

企業内の規約で退職の意思は半年前まで、4ヶ月前まで、などと規定している場合も、民法のルールが適用されるため、最大でも3ヶ月の継続となります。

退職の理由に、やむを得ない理由がある場合は、3ヶ月をまたずに退職できます。

パワハラや賃金未払いなどで信頼関係が築けない、家族の介護、病気やケガといった理由がある場合は、退職を認めましょう。


非弁行為がある場合は拒否できる        

対応している退職代行が弁護士や退職代行ユニオンではなく、民間の退職代行業者であり、企業に調整や交渉を求めている場合は非弁行為にあたります。

この場合は、退職の連絡や退職届の受け取りを拒否して構いません。

必要に応じて、弁護士へ相談しながら、適切に対応しましょう。


退職代行を使われた企業の本音

退職代行を使われたとき、企業の経営者や上司はどのような気持ちになるのでしょうか?

退職代行からの連絡を体験した、5つの例を見てみましょう。


業者からの連絡に落ち込んだ

「これまで一緒に働いてきて、仲良くしてきたはずの社員から退職代行を使われた」

このような状況を前に、頼関係が構築されていなかった、直接相談できる雰囲気の会社になっていなかった、という事実へショックを受けるパターンです。 

上司が優しすぎるから言い出しづらい、というケースもありますが、利用した本当の理由は分かりません。

従業員との距離が近ければ近いほど、落ち込んだり、残念に思ったり、という感情が生まれやすいでしょう。


退職代行をきっかけに企業改善に乗り出した 

退職代行からの連絡をバネに、会社の体制を見直すケースです。

できていない部分を早めに改善したり、新しい施策を取り入れたりできれば、今後の退職代行利用や離職を減らせる場合があります。

会社の雰囲気や待遇が良くない場合、退職代行すら利用されず、無断欠勤のまま行方不明、といった最悪の事態も考えられます。

可能であれば、退職代行を利用した理由を聞いて、改善を目指してみてください。


一部社員の怒りや反発を買ってしまった

退職代行というサービスを知らない社員、古い体質の上司などがいる場合、直接退社を申し出ない従業員に対して怒りを覚える場合があります。

中には、その社員にたいして直接連絡を取り理由を聞いたり、叱ったりしようとする人がいるかもしれません。

ですが、弁護士や退職代行ユニオンによる退職申し出は違法ではありません。

退職の自由も社員に認められている権利です。

間違った対応で、問題が大きくならないように退職代行や対応法についての周知が必要です。


退職代行を使われて意外な気持ちになる

退職代行を使用した社員との関係が悪くない場合、昨日まで普通に仕事をしていたのに、先日も一緒にランチへ行ったばかりなのに、といった意外な気持ちを覚える場合があります。

人間関係が良好だったり、仕事にやりがいを感じていたりという場合、介護などの問題や、自分自身の体調など、どうしようもない理由が隠れているかもしれません。 

遠慮なく相談して欲しかった、と感じる場面ですが、社員の意思を尊重して、退職代行手続きに応じましょう。


退職理由や退職方法は特に気にしない

退職代行サービスがテレビなどで話題になっている今、社員が持つ当たり前の権利として受け止めている企業もあります。

退社の意思を示すのは、本人からでも退職代行からでもどちらでも良い、という考えです。 

従業員数が多く、人の入れ替わりが激しい場合、人事は常に手続きに追われていることもあり、退職方法よりもスムーズな事務処理の方が重要、ケースもあります。

人事や担当者が忙しくしている場合は、退職理由や方法を問わず淡々と対応する、という体制が必要かもしれません。


まとめ         

退職代行を使われたら、まずは相手の身元を確かめて、求めに応じた対応を検討しましょう。

退職代行を利用する従業員は、辞めたいという意思が強いため、引き留めるのではなく早期対応が重要です。

退職代行をきっかけに社内環境を見直すと、企業の風通しが良くなったり、離職率を減らしたり、といったプラスになる場合もあります。

退職代行は、今後も増えると予測されます。正しい対処法を知り、企業としての対応を決定しておきましょう。

ヒトクル編集部
記事を書いた人
ヒトクル編集部

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社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 
監修した人
社会保険労務士法人ローム静岡 所長 杉本雄二 

求人情報誌発行・人材派遣の会社で広告審査や管理部門の責任者を18年経験。 在職中に社会保険労務士試験に合格し、2005年に社会保険労務士杉本事務所を起業。 
その後、2017年に社会保険労務士法人ローム(本社:浜松市)と経営統合し、現在に至る。 静岡県内の中小企業を主な顧客としている。
顧客企業の従業員が安心して働ける環境整備(結果的に定着率の向上)と、社長(人事担当者含む)の悩みに真摯に応えることをモットーに活動している。